1.犬が1日に必要とするカロリーはどれくらい?
1-1.年齢や体重、運動量によって変わる
1-2.子犬
1-3.成犬
1-4.シニア犬
1-5.妊娠・授乳中の犬
2.犬の必要カロリー計算方法
2-1.1日に必要なカロリーを計算する式
2-2.1日中安静にしている時に必要なカロリーを計算する式
2-3.その子に必要なフードの量を計算する式
3.栄養が不足しているとどうなる?
3-1.栄養失調時にみられる症状
3-2.栄養失調を予防するには
犬が1日に必要とするカロリーはどれくらい?

まず、犬が1日に必要とするカロリーについての考え方を解説します。
◆年齢や体重、運動量によって変わる
愛犬に必要な1日分のカロリーは、その子の年齢や体重、運動量によって変わります。
ドッグフードのパッケージに記載されている給与量の目安は、体重によって量が異なります。体重の軽い子は目安量が少なく、重い子は多くなっていますね。
同じ体重でも、個体によって運動量は異なります。お散歩好きの子は運動量が多くなりますし、飼い主さんが忙しくてお散歩が短めなら運動量は少なくなりますね。運動量が多い子は消費するカロリーが多くなるので、たくさんのカロリーが必要です。
年齢(子犬・成犬・老犬)によって、フードが異なるのは、飼い主さんの多くがご存知でしょう。
これは、それぞれの年齢によって、必要とするカロリーが異なるからです。基本的に、成長期の子犬には多くのカロリーが必要で、基礎代謝が下がり、運動量も減ったシニア犬が必要とするカロリーは少なくなります。
◆子犬
子犬期はしっかりとした体を作り上げるために、多くのカロリーを必要とします。十分なカロリーを得ることができなければ、筋肉や骨だけではなく、内臓や脳も正常な発達をすることができません。
子犬期は、【授乳期】【離乳期】【発育期】に分けられます。
授乳期は生後3週ごろまでで、母犬から母乳を貰っている時期です。授乳期には、初乳を飲ませることで母犬から免疫を子犬に移行させ、十分な栄養を与えます。
離乳期は生後1ヶ月ごろからで、本格的な食事が必要になる時期です。離乳期は、食欲が非常に旺盛なので、食べ過ぎに注意しなければなりません。
発育期は、離乳が終わってからの時期です。発育期には、平均成長率に沿って成長することが食事の目的となります。
3ヶ月齢までの子犬に必要なエネルギー量は、成犬の維持エネルギー量の約2倍と言われています。また、その後は体重の増加に伴い、必要な総エネルギー量が成長とともに多くなります。
◆成犬
成犬になった時の期待(理想)体重の約90%に達すると、成長期はほぼ終了して維持期になります。
維持期の食事では、その子の最適体重と体調を維持させることがポイントです。したがって、体重と運動量などによって、必要とするカロリーが決まります。
◆シニア犬
実は、「○歳以上からシニア犬」という明確な定義はありません。しかし、一般にフードをシニア用に切り替える際には、7歳以上を目安としています。
7歳前後から、犬の体にはさまざまな変化が起こりますが、特に筋肉量の低下や代謝率の低下、運動量の低下は1日に必要とするカロリーを減少させます。
老化に伴って筋肉は自然と衰えて、量が減っていきます。基礎代謝には、筋肉量が深くかかわっているため、筋肉量が低下すると代謝率の低下に直結するのです。
さらに、筋肉が減ることで、動くことが億劫になり、運動量も低下します。シニアになると多くなる関節炎や心臓病なども、運動量の低下の原因です。
◆妊娠・授乳中の犬
妊娠・授乳中の犬は、維持期に必要とするカロリーに加えて、胎児や母乳の分の栄養を必要とします。
妊娠期の初めの2/3(妊娠6週くらいまで)は維持期の食事と同様ですが、残りの1/3になると維持期の食事を20~30%増やすか、成長期用の食事を与えます。
授乳期には、母犬が体調を崩さないことが重要です。授乳中は、維持期の2~4倍のエネルギーを必要とします。一般的に、出産後第1週は維持期の1.5倍、第2週で2倍、第3週から離乳までが3倍とされています。
犬の必要カロリー計算方法
次に、犬に必要なカロリーの計算方法とフード量の計算方法を順に解説していきます。
◆1日に必要なカロリーを計算する式
1日に必要なカロリーは、「エネルギー要求量」(DER)といい、体重維持に必要なエネルギー量です。
個体に適した1日のエネルギー量を、環境や年齢から求める場合は
DER=維持エネルギー必要量(MER)×活動係数
の計算式を使います。※MERについては、次項で詳しく解説します。
-
活動係数は、下記のとおりです。
- 非活動―――――――――0.8
- 軽労働(1時間)―――――1.1
- 軽労働(終日)――――――1.4~1.5
- 重労働―――――――――2~4
- 妊娠(初期6週間)――――1
- 妊娠(末期3週間)――――1.1~1.3
- 授乳期―――――――――1+0.25×新生子数
- 出生~3ヶ月齢――――――2
- 3~6ヶ月齢―――――――1.6
- 6~12ヶ月齢―――――――1.2
また、犬のライフステージや状態を元に計算する場合は
DER=安静時エネルギー要求量(RER)×係数
の式で求めます。※RERについては、次項で解説します。
-
用いる係数は、下記のとおりです。
- 健康で去勢避妊をしていない――――――――1.6
- 健康で去勢避妊をしている――――――――――1.4
- 少し太り気味――――――――――――――1.2
- ダイエットをしているー――――――――――――1.0
- ケージでのみ生活などの安静時――――――――――――――1.0
- 成長期(小型犬:生後4ヶ月まで、大型犬:生後5か月まで)―――3.0~2.5
- 成長期(小型犬:生後4ヶ月以降、大型犬:生後5ヶ月以降)―――2.0~1.6
- 高齢期――――――――――1.1~1.4
成長期は、月齢が低いほどエネルギー要求量が高いため、月齢が低いほど高い係数を用い、成長とともに減らしていきます。
◆1日中安静にしている時に必要なカロリーを計算する式
温和な気温で、基本的な生命活動を行うのに必要なカロリーを「基礎エネルギー必要量」(BER)と言います。BERは、体表面積に比例するので、体表面積が大きいほど(体格が大きいほど)大きくなります。体表面積1平方メートル当たり約1,000kcalとされています。
BERに「体重維持のための食べ物の摂取量」と「その利用に必要なエネルギー」を加えたものが、「維持エネルギー必要量」(MER)です。
MERは通常の活動をしながら体重を維持するのに必要なエネルギー量と言えます。犬のMERは、BERの約2倍です。
MERの計算式は、下記のとおりです。
MER(kcal)=70×(体重kg)^0.75
※^0.75は、0.75乗のこと
ここで用いる体重は、現在の体重ではなく、その子の適正体重(理想体重)です。
一日安静にしているときに必要なエネルギーについて、一般に多く用いられているのは、「安静時エネルギー要求量」(RER)です。RERの計算は、体表面積に基づく計算法と体重に基づく計算法があります。
体表面に基づく計算式は、上記のMERの計算式と同じです。
一方、体重に基づく計算式は、RER=30×体重(kg)+70です。
これは、体重2~45kgの子の目安量とされていますが、体重が増加するにつれて、体表面積に基づいて計算した結果と差が開いていきます。
したがって、愛犬のサイズが大きければ大きいほど、より正確に計算できる体表面でに基づく計算式を用いる方がよいでしょう。
◆その子に必要なフードの量を計算する式
最後に、その子に必要なフード量を計算しましょう。
フードの量は、DERと、与えるフード1g当たりのカロリーを用いて計算します。
通常、フードのカロリー量は、パッケージに100gあたりで記載されているので確認してください。
1日に必要なドッグフードの量を求める計算式は、
フード量(g)=DER÷フード100g当たりのカロリー×100
です。これを、与える回数で割ることで、1回に与える量を計算できます。
栄養が不足しているとどうなる?

◆栄養失調時にみられる症状
栄養失調時に見られる症状として、下記が挙げられます。
- 不眠
- 歯がかける、抜ける
- 皮膚病
- 被毛が抜ける
- 口臭や体臭が臭い
◆栄養失調を予防するには
栄養失調とは、偏食や食事の不足で不健康な状態にあることを言います。多くの場合、食事で十分なカロリーや栄養素を摂れていないことが原因です。
したがって、栄養失調を予防するには、愛犬に必要なカロリーを把握し、栄養バランスの良いドッグフード(総合栄養食)を与えることが大切です。ドッグフードの成分表示は、使用料の多い原材料から記載されています。1番最初に記載されているものが、第1主原料です。
栄養が過剰になっているとどうなる

◆肥満傾向の犬にみられる症状
犬の肥満については、5段階のボディ・コンシャス・スコア(BCS)に基づいて判断します。BCS4はやや肥満、BCS5は肥満です。
肥満傾向になると、関節や心臓への負担、糖尿病などのリスクが高まります。気をつけたい症状は、下記のとおりです。
- 体重の増加
- 外観の変化
- 運動をしたがらない
- 呼吸が荒くなった
- 呼吸困難からチアノーゼに陥る
◆肥満を予防するには
肥満とは、体内に中性脂肪がたまりすぎた状態を指します。
肥満の主な原因は、運動不足や、多すぎる食事、不妊手術、加齢、遺伝、病気やケガです。
食べ過ぎが原因の肥満の場合には、食事の量を調節して体重を極力減らしましょう。
病気が考えられる場合には、動物病院を受診します。
犬が太る原因として考えられる病気には、下記のようなものがあります。
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
- 甲状腺機能低下症
- 肝臓疾患
- 循環器疾患
まとめ

人と同様、犬も栄養失調や肥満になると、健康上のリスクが高まります。
これを防ぐには、愛犬に必要なカロリーを把握して、食事量の調節を行うことが必要です。カロリーを基に、1日のフード量を計算し、おやつは必要なカロリーの10%以内に留めます。
必要なカロリーを計算するには、その子の適正な体重と現在の体重を知ることが必要です。
一般に適正体重は、成犬になった時期(一般に1歳になったころ)の体重とされますが、犬種や個体によるため獣医師さんに相談することをおすすめします。
記事中でご紹介した計算式を用いて、愛犬に必要なカロリーとフード量を計算して、食事量を調整し、愛犬の健康を守ってあげましょう。ネット上には、体重や係数を入力すると必要なカロリー量を無料で計算できるサイトが複数あるので、活用するのもおすすめです。
ただし、あくまでDERは目安です。愛犬の体重や体調を見ながら、ご飯の量を調節してあげてくださいね。
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