1.犬のうんちが黒い理由
1-1.食べ物:肉類の摂取量が多い
1-2.薬:鉄分が含まれている
1-3.病気:胃腸から出血がある
2.犬のうんちが黒くなる病気
2-1.胃腸炎
2-2.急性膵炎
2-3.腫瘍または潰瘍
2-4.異物誤飲や中毒
3.すぐに動物病院へ行くべき症状
3-1.タール状や下痢便
3-2.嘔吐をする
3-3.黒いうんちが数日続く、または濃くなる
3-4.元気がなく、食欲もない
3-5.うんちが異様に臭い、異物混ざっている
犬のうんちが黒い理由
犬のうんちは「健康状態をチェックできるバロメーター」とも言われています。うんちの色が変わった時には、日頃の日常生活における変化や、病気を発症している可能性がないかなど、きちんと理由を考えてみることが大切です。
犬のうんちが黒い理由として思い当たることはないか、ぜひチェックしてみましょう。
◆食べ物:肉類の摂取量が多い
犬のうんちが黒い色をしていても、直前に食べさせたご飯が鉄分を多く含む肉類がメインの内容であった場合は、食欲や元気さ、便の形状には問題がなく、病気ではないケースがほとんどです。
こういった食餌由来の黒いうんちは、レバーなどを混ぜた手作りご飯や生肉食、近年増えている高タンパクのドッグフードなどを普段のご飯として摂取している犬に多い傾向があります。
また、犬用のアレルギー対応療法食の中にもうんちが黒い色になりやすいものがあるので、獣医師の処方によりフードを変更する時には、うんちの色が変化する可能性があるかどうかを聞いておくと安心できるでしょう。
◆薬:鉄分が含まれている
鉄分を多く含むサプリメントや薬を飲んでいる場合も、犬のうんちが黒くなることがあります。貧血などの治療のために飲んでいるサプリメントや薬によって犬のうんちが黒いのではないか、獣医師に確認してみましょう。
腎臓病や誤食後のケアとして処方されることがある薬用の吸着炭などを飲んでいる犬も、うんちが黒い色に変化することが多いです。
◆病気:胃腸から出血がある
食道や胃、小腸などの、消化管の中でも上の方から出血し、黒い血便として出ている場合は注意が必要です。
血便は、「赤い血(鮮血)」がうんちに混じるイメージを持っている飼い主さんは多いですが、出口(肛門)から遠い食道や胃、小腸で出血すると、排出されるまでに時間がかかり、その間に血液中のヘモグロビンに含まれる鉄が酸化して、黒い色のうんちとして現れます。
胃や小腸の出血は、重篤な病気や健康状態の悪化を示していることも少なくないため、早めに対処しましょう。
犬のうんちが黒くなる病気
犬のうんちが黒くなる時には、次のような病気が隠れていることがあります。動物病院で必要な検査を行い、原因を探してもらいましょう。
◆胃腸炎
犬の消化管出血の原因となりやすいのは、胃腸炎です。犬の胃腸の粘膜が荒れて、出た血液が黒いうんちとして混じる胃腸炎の原因には、ウイルスや寄生虫、細菌などが関わっていることが多いです。
有名なもので言うと、犬パルボウイルス、犬コロナウイルスといった混合ワクチンにも含まれる下痢を引き起こしやすいウイルス、腸粘膜に咬みつき出血させる犬鉤虫などの消化管内寄生虫、クロストリジウムやカンピロバクター、サルモネラなどの細菌感染があげられます。
また、犬自身の免疫が体内で過剰に働き続けることで起こる腸炎や、そもそも原因不明の消化管の慢性的な炎症が続く炎症性腸疾患(IBD)など、黒いうんちからだけでは胃腸炎の原因がわからないことがほとんどのため、必要に応じて内視鏡検査などを行うこともおすすめします。
◆急性膵炎
急性膵炎は、消化液の分泌や血糖値をコントロールするホルモンを放出する膵臓に急激な炎症が起き、激しい嘔吐とお腹の痛み、下痢を引き起こす病気です。
重症化すると多臓器不全などによる命の危険も伴うため、すぐに対処しなければいけません。
急性膵炎を発症する要因にはさまざまなものが言われていますが、脂質が多いご飯やおやつを一度に多量に食べたり、肥満傾向の犬に発症することが多いとされています。
◆腫瘍または潰瘍
犬の食道から小腸にかけての上部消化管に潰瘍や腫瘍ができ、そこから出血するせいで黒いうんちが出ているケースもあります。
一般的に、犬は人間と比べると、ストレスに伴う胃潰瘍は少ないと言われています。
しかし、ステロイドや痛み止めとして処方される非ステロイド系鎮痛薬(NSAIDs)などの薬剤の副作用や、がんの1種である肥満細胞腫が胃酸の分泌を刺激するヒスタミンを放出することで慢性胃炎になり、胃潰瘍を発症することもあるので、二次的に潰瘍ができるパターンは気にかけておく必要があるでしょう。
また、発生数としてはまれですが犬の胃内に腫瘍ができるケースもありますし、犬に多い悪性腫瘍の1つであるリンパ腫では、腸管粘膜などで腫瘍細胞が増殖する消化器型も存在します。
黒いうんちが出る犬の腫瘍疾患は命に関わることが多いので、定期的な健康診断や、日頃の健康チェックが大切です。
◆異物誤飲や中毒
犬が食べ物ではない異物を誤飲すると、消化管を通りきらずに詰まってしまう通過障害が起き、胃や腸からの出血を引き起こして、黒いうんちとして症状が現れることがあります。
特に、元から先端が尖ったものや、木やプラスチック製品などを噛み砕きながら飲み込んだ場合は、粘膜を傷つけながら誤飲したものがお腹の中を移動してしまうことがあり、注意が必要です。
また、中毒を引き起こす食べ物や成分を誤食・誤飲した時も、消化管からの出血や粘膜のただれを引き起こすことがあるので、犬が変なものを食べた可能性がある時にはすぐに動物病院に相談してください。
すぐに動物病院へ行くべき症状
犬の黒いうんちを見つけた時には、「いつから」「どんなふうに始まったのか」を振り返り、過去から現在にかけて緊急性が疑われる症状が出ていないかよく観察しましょう。
動物病院に行く時には、出たうんちの写真やうんちそのものも持参すると、診断の手がかりとなります。
◆タール状や下痢便
ドロッとした粘り気のある真っ黒なタール状のうんちが出ている時には、すぐに動物病院へ行きましょう。
犬のうんちをパッと見て、「黒色」か「黒に近い焦げ茶色」かがわかりにくく、タール便とはどんなものなのか判断がつかない時もあるかもしれませんが、「うんちとしての形がない」のは異常です。
また、タール便でなくても、手で拾うことができない崩れやすい形状の軟らかいうんちが出ている場合も、併せて受診することをおすすめします。
◆嘔吐をする
短時間で頻回に嘔吐したり、一度止まっても断続的に嘔吐を繰り返す場合は、重篤な病気のサインである可能性が高まります。
中でも、嘔吐物に赤~茶褐色の液体が混じっている場合は、上部の消化管からの出血がかなり疑われるので、黒いうんちと同時に症状が現れた場合は注意しましょう。
◆黒いうんちが数日続く、または濃くなる
形はしっかりとあっても、食事の変更やサプリメントの投与などを行っていないにもかかわらず、犬の黒いうんちが数日続く時は、動物病院で原因を探してみてください。
はじめのうちは茶色のうんちだったのが、徐々に黒い色に近づいていく場合も、消化管内での出血がどんどん増していっている可能性があります。
◆元気がなく、食欲もない
うんちの異常とともに、食欲や元気の低下がある時には、犬の体調がかなり悪化しているサインと言えます。
犬が「ぐったり」した状態である時は、発熱を伴っていることもあるので、触った時の熱感も確かめてみると良いでしょう。
◆うんちが異様に臭い、異物混ざっている
犬のうんちが黒い時に、鉄臭い嫌な臭いもある場合は、血便である可能性が高いです。
また、うんちの中に異物が混じっているのであれば、誤飲したものが一部出てきているかもしれないため、どんなものがうんちに含まれているのかを確認した上で、部屋の中でなくなっているものがないか調べてみましょう。
犬の呼吸が荒い、よだれを垂らしてぼーっとしている、お腹が膨れている時などは、消化管内で異物が閉塞している緊急事態であることも多いので、すぐに動物病院に連絡し、搬送してください。
犬の黒いうんちを避けるために重要な健康管理
犬の黒いうんちを避けるためには、消化管内の出血を引き起こす感染症予防や、誤飲事故を防ぐ対策を行っておくことが大切です。また、お腹の調子を崩してしまうような食事の与え方にも注意しましょう。
主な予防方法としては、
・ワクチン接種や駆虫薬の定期投与で感染症を予防する
・他の犬や猫がした排泄物を避ける(臭いを嗅がせない)
・食べ物や物品は出しっぱなしにしない
・食べ慣れないものを与える時は少量に留める
などがあげられます。
おもちゃや人の食べ物は、犬の手足や口が届かないと思った場所に置いていても、犬の目に見える場所にあることで、椅子やテーブルを利用してなんとかよじ登って口にする犬もいます。
また、人間にとっては問題のない植物なども好奇心旺盛に食べてしまい、中毒を招く恐れがあるため、できるだけ自宅から取り除く方が良いでしょう。
膵炎の原因になりがちな脂肪分の多いご飯として、普段の飼い主さん用ご飯のおすそ分けだけでなく、誕生日ケーキやクリスマスチキンの食べ過ぎといったイベント関連での食事が原因になることも多いので、楽しいひとときには注意してあげてください。
まとめ
犬の黒いうんちの原因は、問題のないものから病気が関わるものまでさまざまであり、簡単に判断がつくものでもありません。
ただし、黒いうんちは犬が重症度の高い病気にかかっているサインかもしれないので、食欲や元気、嘔吐の有無などを確認しながら、必要に応じて受診しましょう。
病気であったとしても、進行する前に早期発見することで治療の選択肢が増えたり、完治につながることもあるため、かかりつけの動物病院と連携しながら原因や治療法を探してみてください。
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