1.犬の変な座り方
1-1.犬の変な座り方①お姉さん座り
1.犬の変な座り方②あぐらをかいたように座る
1-3.犬の変な座り方③足を開いた座り方
2.犬の座り方が変になってしまう病気
2-1.股関節形成不全
2-2.前十字靭帯の問題
2-3.膝蓋骨脱臼
2-4.関節リウマチ
犬の変な座り方
犬は色々と変わった座り方をすることがあります。ここでは、よく見られる犬の変わった座り方を解説します。
◆犬の変な座り方①お姉さん座り
犬の変わった座り方の代表的なものに「お姉さん座り」があります。後ろ足を左右片側に投げ出す座り方です。見ていてとても愛嬌のある座り方ですよね。
犬がこの「お姉さん座り」をしている場合、考えられる原因がいくつかあります。
まず単純に日頃からの癖でこういった座り方をするケースがあります。私たちも人それぞれ姿勢や座り方が異なるように、単に愛犬の好む座り方や癖で「お姉さん座り」をしている場合です。この場合、特に関節などに異常は見られず、立ち上がる時や歩く時もスムーズに動けます。
また、良くリラックスしている時に足を投げ出して座る犬もいます。
「お姉さん座り」をしたから必ず病気というわけではありません。
ただし、日頃はまっすぐ座る犬が、急に「お姉さん座り」を始めた場合、股関節や膝関節の異常が起こっているサインである場合もあります。
特に以下のような様子が見られる場合は、関節に異常が生じている可能性が高いです。
- 急に変な座り方をするようになった
- 座り方だけではなく、歩き方もおかしい
- おすわりをさせてもきちんと出来ない
- 身体を触られることを嫌がるようになった
こういった場合は、速やかに動物病院を受診して、関節などに異常が出ていないか診察を受けましょう。
◆犬の変な座り方②あぐらをかいたように座る
犬が後ろ足を前に投げ出して座る、「あぐらをかいたような座り方」をする場合はどうでしょうか?
「あぐらをかいたような座り方」は、フレンチブルドッグなどによく見られ、「フルブレ座り」や「手足足手」などとも言われています。両方の後ろ足を前に出して、その外側に左右の前足を置くため、外側から順番に「手、足、足、手」と並ぶため、こう呼ばれます。
フレンチブルドッグやパグなど足が短い犬種は骨格上、普通のオスワリができない場合があり、こういった座り方を常にしている犬もいます。
このような「あぐらをかいた座り方」も、「お姉さん座り」の時と同様に、急に座り方が変わった場合や歩き方までおかしい場合、痛がる様子が見られる場合は、すぐに動物病院に相談してください。
また、フレンチブルドッグやパグなどは、生まれつき関節が弱いことが多いので、成長期やシニア期は特に注意が必要です。急な変化が見られなくても、定期的に診察を受けることをおすすめします。
◆犬の変な座り方③足を開いた座り方
後ろ足を開いて、泳いでいるカエルのような形になる、いわゆる「カエル座り」をする犬もいます。この「足を開いた座り方」も、本人の癖で行っていたり、非常にリラックスしている時に見られたりします。また、身体が柔らかい子犬の時期によく見られます。
ただし、他の座り方と同様に、急に「足を開いた座り方」をし始めた場合や、立ち上がる時や歩く時などにも異常が見られる場合は要注意です。単なる癖などでは無く、膝や股関節に問題が生じている可能性があります。
また、加齢に伴い、足のふんばる力が弱くなってきて、足が開きがちになる場合もあります。こういった場合は、原因として関節炎や筋力の低下などが考えられます。
日頃と違う様子が見えた場合は、やはり早めの受診をオススメします。
犬の座り方が変になってしまう病気
ここまで代表的な犬の変わった座り方をご紹介しました。
犬がこうした座り方をする場合は、癖などで健康に異常が見られない場合も多いですが、病気のサインであることも多いです。
それでは犬の座り方が変になってしまう病気にはどのようなものがあるのでしょう?座り方に影響する病気の多くは膝や股関節に関するものです。
ここでは、犬の座り方が変になってしまう代表的な病気を解説します。
◆股関節形成不全
股関節形成不全は大型犬や超大型犬によく見られる疾患ですが、小型犬や猫などでも起こることがあります。股関節が成長に伴い異常に形作られていく病気です。骨格が作られていく成長期に骨の変形や関節の緩みなどが起こり、骨盤の骨と後ろ足の骨で作られる股関節が正常に形成されなくなります。
股関節形成不全が起こると、足を横に投げ出して座る「お姉さん座り」をする場合があります。上述の通り、「お姉さん座り」をすることが必ずしも股関節形成異常のサインでは無いですが、急に座り方が変わった場合や成長期は特に注意が必要なので、獣医師に相談しましょう。
その他に見られる症状としては、「モンローウォーク」と呼ばれる腰を左右に揺らした歩き方が見られたり、階段や段差を避けるようになります。痛みから触られることを嫌がる場合もあります。
早期発見・早期治療が大切なので、異常を感じたら早めに動物病院を受診してください。
◆前十字靭帯の問題
前十字靭帯とは、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぎ、関節を安定させて膝の曲げ伸ばしをスムーズにしている靭帯のひとつです。
前十字靭帯は肥満による負担や体質、激しい運動などで痛めてしまう場合があります。前十字靭帯断裂や損傷などの問題が生じると、痛めている方の足を「びっこ」したり、片側に足を投げ出す「お姉さん座り」をしたり、スムーズに歩けなくなったりします。
こうした前十字靭帯の異常は、激しい運動や外傷などで急性に起こるケースと、徐々に靭帯に変性が起こり進行していくケースがあります。
靭帯は自然治癒しにく組織なので、放っておくと足を庇った歩き方が長く続いてしまいます。その結果、庇っている足の筋肉が落ちたり、他の足に負担が掛かったりして、ますます治癒が困難になります。
こうしたことを避けるためにも、座り方や歩き方がおかしい場合は早めに診断・治療を受けてください。
◆膝蓋骨脱臼
犬で非常に多く見られる膝の問題が膝蓋骨脱臼です。「パテラ」とも呼ばれます。膝のお皿のような骨である膝蓋骨が、正常な位置から内側もしくは外側にズレてしまう異常です。全ての犬種で認められる病気ですが、特に小型犬が多いです。
初期の症状は、たまに後ろ足を挙げたり伸ばしたりといったことがみられます。また、時折スキップを見せるようになります。
足を痛がったり、挙げたりしている場合は、重度である可能性が高く、犬も強い痛みを抱えています。
徐々に進行していくことも多いので、なるべく早期に治療やケアを開始した方が良いです。特に成長期に「びっこ」が見られると、身体の成長に影響を与えてしまうので、より注意が必要です。
また、進行性の場合や重度の場合は手術が必要になります。
◆関節リウマチ
本来、身体を守る役割を持つ、自分の免疫によって自身の細胞がダメージを受けてしまう病気で、関節に炎症が起こります。
関節の軟骨や骨が徐々に破壊されて、正常な運動ができなくなったり、痛みやだるさを感じるようになります。その結果、上手く歩けなくなったり、階段を登れなくなったり、元気や食欲が失われたりします。
炎症が強いと、発熱やリンパ節の腫れも見られます。関節に異常が起こるため、座り方も変化する場合があります。
治療には、通常の炎症止めでは効果が薄く、免疫異常を抑えるために、ステロイドや免疫抑制剤が使われます。完治は難しい病気ですが、治療を行うことで悪化を防ぎ、生活の質を改善させることができます。
注意が必要な犬の座り方や歩き方
上記のように、股関節や膝関節の問題では犬の座り方が変わってしまうことがあります。
変わった座り方をした場合に、必ず特定の病気だと診断がつくわけではありませんが、日頃違う様子が見られる場合は何かしら身体に変化が起こっているサインですので、注意しましょう。
また、成長期の子犬の場合は先天的な異常が隠れていたり、成長の過程で異常が出てきている可能性もあるので早めに動物病院に相談しましょう。
歩き方に関しても、足や腰、関節の異常で強く痛みを訴えるケースもあれば、痛がる素振りは無く、なんとなく歩き方がおかしいだけというケースもあります。
いつもと違う歩き方が続く場合は獣医師に相談しましょう。
その際、いざ動物病院を受診すると、家で見せている変わった座り方や歩き方を診察室で見せてくれないことが多いです。動物病院の診察室で緊張していたり、他の犬を見て興奮していたりなどで、力が入っていつもの座り方や歩き方をしなくなります。
こうした可能性があるので、変わった座り方や歩き方が見られた場合はスマートフォンなどで動画に残しておくと診察の際に説明しやすくなります。動画で残して置くことで、左右どちらかに足を投げ出して座る場合や「びっこ」をひいている場合に、どちら側の問題か正確に伝えることが出来ます。いざ診察室に行くと、犬も症状を現わさなかったり、飼い主さんも上手く伝えることに苦労する場合が多いので、こういった記録はとても役に立ちます。
まとめ
今回は犬の変な座り方について解説しました。犬の変わった座り方は見ていて可愛いものですね。しかし、場合によっては膝や股関節などに問題を抱えていて、いつもの座り方が出来ないこともあります。その中には、進行性の病気や、重症化すると歩くことも出来なくなるものもあります。日頃から犬の座り方にも注意して問題がありそうであれば早めに気づいてあげられるよう努めましょう。
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