犬の声が枯れてしまう原因
私たち人間は、喉を使いすぎたり風邪を引いたりすることで、声がかすれてしまうことがよくありますよね。では犬の場合、声が掠れる理由にはどんな原因があるのでしょうか。
実は、病気などの身体的トラブルに限らず、精神的なトラブルが原因となって声が枯れる場合もあるのです。
愛犬の鳴き声がいつもと違うと感じたら、まずはその原因を探り、場合によっては動物病院を受診することが必要となるでしょう。
ちなみに身体的・精神的トラブルのいずれでもなく、ただ単に声変りが原因であるケースもあります。犬も人間同様、声変りをするといわれているのです。
人間のような性差での大きな変化があるわけではないのですが、子犬の頃の「キャンキャン」という高く鋭い鳴き声から、成犬になると「ヴォンヴォン」「グルグル」などという低く重たい声に変っていきますよね。
この声変りには首・咽頭・声帯の発達が関係しており、体の成長と共に徐々に変化していくのが通常なのですが、この期間に喉に変調をきたして声が枯れてしまう子もいるというわけです。
こういった声変りが原因の場合は特に心配することはありません。しかし、早めの対処が必要なトラブルが問題となっている場合は注意が必要です。
大きく分けて以下の3つが、声の枯れる原因として考えられるので覚えておきましょう。
◆吠えすぎ(分離不安など)
愛犬の声が枯れる原因の一つとして、長時間鳴き続けていた可能性が考えられます。
もしお留守番の後にそのような状態になっていたのであれば、飼い主さんが不在の間ずっと吠え続けていたのかもしれません。
このようなケースでは、愛犬が分離不安症であることが疑われるでしょう。分離不安症とは不安障害の一つで、犬の精神的な疾患です。飼い主さんと離れることで極度に不安を感じ、その不安からパニックのような状態になることを指します。留守番時に限らず、飼い主さんが家にいても姿が見えなくなっただけで不安を感じる子も少なくありません。
不安を感じた際にみられる症状・状態として、以下のような例が挙げられます。
◎吠える、鳴き続ける。
◎物を壊す。
◎食欲低下
◎下痢・嘔吐
◎自傷行為 …など。
そして飼い主さんの帰宅時、また姿が見える時には次のような行動を起こすでしょう。
◎帰宅時に嬉ションをするほど興奮する。
◎室内で、ずっと飼い主さんの後追いをする。
◎飼い主さんが出掛ける前に、大騒ぎしてしまう。
このように分離不安症は生活する上でも問題になりますし、無駄吠えによる近所トラブルにも発展しかねません。何より愛犬自身が強いストレスを抱え続けることとなるのです。
早めの対処が必要となりますが、分離不安はその度合いによって対処法が異なります。
比較的軽度である場合は、飼い主さんと離れることに慣れていくトレーニングを行うことで改善する可能性があるでしょう。不安を与える要素を排除して、姿が見えなくても安心して過ごせるようにしてあげなくてはいけません。
愛犬が飼い主さんに依存し過ぎていることも要因となりますので、接し方の改善が必要になることもあるでしょう。
しかし症状が過剰であれば、行動を改善する対策に加え、薬物療法(精神安定剤など)が必要になるケースもありますので、一度、かかりつけの獣医師さんに相談することをおすすめします。
◆ケンネルコフ
犬の感染症の一つで、伝染性呼吸疾患の総称であるケンネルコフ。その原因となる細菌やウイルスは様々あり、感染力がとても高い病気です。
犬が密集する場所で感染しやすく、混合感染してしまうと更に症状が重くなる場合があります。原因となるウイルス・細菌を保有する個体と直接的に触れ合わなくても感染することがあるそうです。特に生後6週から半年ほどの子犬にかかりやすいといわれているので注意しましょう。
ケンネルコフの主な症状は以下の通りです。
◎咳
◎発熱
◎ぐったりする
◎苦しそうに呼吸する
◎肺音の異常◎食欲不振 …など。
このように、人間の風邪のような症状が起こるので、風邪を引いたかな?と勘違いしてしまうかもしれません。風邪だと考えても問題はないのですが、体力・免疫力が低下していることも要因の一つとして考えられるため、特に老犬など体力や免疫力の低下が著しいワンちゃんが感染した場合、高熱が出たり肺炎を併発するなどの危険性が考えられます。死に至るほどのリスクとなる可能性もあるので、軽視しないようにして下さい。
基本的にはワクチン接種で予防、重症化を防ぐことができます。発症した場合は自然治癒も可能なのですが、あまりに症状が重い場合は早めに動物病院で診察を受けましょう。
ちなみにケンネルコフの「コフ」は、咳を意味しています。気管が圧迫されたような咳がみられるので覚えておいて下さい。犬の咳は人間と違って、吐きたそうにしている様子に似ている場合もあるので判断に注意しましょう。
同じような症状がみられる犬の病気には、フィラリア症や犬ジステンパーなどもあります。気になる様子が見られる場合は、一度獣医師に相談することをおすすめします。
◆呼吸器系の病気
前述したケンネルコフも呼吸器系の病気ですが、他にも声が枯れたり、咳を伴う可能性のある呼吸器疾患があります。主な病気を挙げていきますので確認していきましょう。
気管支炎
下を向きものを吐き出すような掠れた咳を繰り返す、痰が絡まるような咳をするなど、このような様子がみられる場合は気管支炎にかかっている可能性が考えられます。酷い時には呼吸困難に陥ることもあるので、決して軽視できません。
ケンネルコフなどによって、気管支炎が誘発されるケースもあります。炎症を抑える薬や咳止めなどの処方薬で治療することで、改善が望めるでしょう。
気管虚脱
ガチョウの鳴き声のような独特な呼吸音や重い咳が出る、よだれが多く出る、といった特徴をもつ気管虚脱。本来ホース状であるはずの気管が押しつぶされてペチャンコになるため、呼吸困難などの苦しい症状を伴います。症状が重篤な場合には、手術を要するケースもあるでしょう。
チワワやポメラニアンのような小型犬、パグやブルドッグなどの短頭種、そして老犬や肥満傾向のワンちゃんに発症しやすく、症状が落ち着いても再発しやすいことから日頃の健康管理や肥満に十分注意が必要です。
咽喉頭炎
咽喉頭炎とは喉が炎症を起こすことで、ウイルスや細菌感染、有害ガスの吸引、食事を飲み込む際に喉が傷つく、などの原因で起こります。
初めの内は軽い咳が出る程度ですが、徐々に重い咳となり、食欲の減衰や吐くような動作などがみられるようになるでしょう。
咽頭麻痺
咽頭(喉仏の部分)の筋肉・神経に異常が出て、麻痺がおこる病気を咽頭麻痺といいます。
先天性と後天性の場合があり、犬の場合はほとんどが後天性だといわれています。
先天性の場合は1歳前後の若い頃に、後天性の場合は10歳前後と高齢になってから発症することが多くあるそうです。
主な原因は以下の通りです。
◎原因不明の特発性
◎筋肉の異常が起こる病気
◎神経の伝達障害・変性
◎甲状腺癌などの腫瘍
◎外傷 …など。
ちなみに、咽頭麻痺を起こす可能性のある筋肉の病気として重症筋無力症や多発性筋炎があります。
これらの場合、声のかすれやチアノーゼ、ゼーゼーという呼吸音などの症状がみられるでしょう。また、呼吸困難を起こすといった特徴もあります。
呼吸が苦しいために胸を大きく動かす努力性呼吸をするようになり、熱中症・不整脈・失神などの症状が出る場合もあるでしょう。
愛犬の声が枯れ、且つ上記のような症状がみられる場合は、できるだけ早く病院を受診するようにしてください。
老犬の声のかすれには要注意
老犬の場合、免疫力や気管の働きの低下によって、声がかすれてしまうことがあります。咳が出るようになり、それが重症化すると呼吸器系に更なる負担がかかることとなるでしょう。
老犬の咳には、心臓病などが潜んでいる可能性も高く、愛犬自身も苦しみを感じるようになります。
シニア期を迎えた愛犬に声が枯れる様子や咳がみられるようになったら、早めに動物病院で診察を受けることが大事です。
ちなみに元々虚弱体質であるワンちゃんにも同様のことがいえるので、心配な場合は違和感を感じる程度でも一度獣医師に相談すると安心できるのでおすすめです。
まとめ
愛犬の声が枯れている場合、主な原因として考えられるのは、声変りや吠えすぎ、そして呼吸器系の病気です。
声変りは成長と共に落ち着きますが、吠えすぎることで声が枯れている場合は何らかの対策が必要でしょう。分離不安が疑われるのであれば、飼い主さんと一緒に克服できるよう努力しなくてはいけません。
病気が原因の場合は、まず獣医師に相談してください。決して軽視せずに、必要であれば早急に治療を受けることがすすめられます。
声が枯れる原因が、病気か吠えすぎる行為か、まずはしっかり判断する必要がありますので、日頃から愛犬の観察や体調管理を怠らないようにしてくださいね。
犬の病気については様々な記事でも紹介されていますし、名前入りの獣医師監修の情報が閲覧できるものもあります。コメント欄などを活用して、愛犬の気になる症状と似ている方がいれば参考になると思いますので、声の枯れや咳が心配な方は情報を集めてみると良いでしょう。
ペットの健康を守るのは飼い主さんの大切な役目の一つです。少しの違和感でも放置せずに、しっかりと適切な対応ができるよう尽力していきましょう。
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