【獣医師監修】愛犬が震えていて元気がない!病院へ行くべき?原因や対処法は?

2024.10.14

【獣医師監修】愛犬が震えていて元気がない!病院へ行くべき?原因や対処法は?

愛犬が震えている様子をみたことがあるでしょうか。ブルブルと小刻みに震えている状態で、さらに元気までなければ不安を感じる飼い主さんも多いと思います。今回は犬の震えについて、その原因や対処法などを紹介していきましょう。病院へいくべきケースと自宅ケアで大丈夫なケースの見分け方についても解説します。ぜひ、参考にしてみてください。

犬が震える原因

震える犬

犬の震えの原因は様々で、心配不要の場合もあれば、病気が原因で動物病院への受診が必要なケースもあります。
まずはどんな理由が原因として考えられるのか、紹介していきましょう。

◆一時的な要因

震えが一時的であれば、それは生理的な震えである可能性があります。

◎寒さによる震え

人間も寒さを感じると震えが起こりますよね。これと同様で、犬も寒さから体が震える場合があります。
寒いと脳から筋肉に指令が出て、全身の筋肉が小刻みに震えるのです。これは、熱を産生して体温を維持するための反応です。
一般的に寒さに強いといわれる犬ですが、子犬や高齢犬、またチワワやトイ・プードルなどの小型犬種は比較的寒さに弱いです。寒い時期の散歩や室温調節には注意が必要でしょう。

恐怖・緊張・ストレスによる震え

恐怖や緊張、ストレスを感じたことが原因で、体が震える場合もあります。これは、自律神経のバランスの変化によって震えが生じているのです。
例えば、病院が苦手な子が診察台に乗った時や、雷・花火などの大きな音に驚きや恐怖を感じた時などにみられでしょう。

興奮状態からくる震え

興奮状態から震えが起こることもあります。散歩や食事の時間などが近付くと、期待感や興奮から震える子がいますよね。これが、興奮状態からくる震えにあたります。
愛犬が楽しみにしていることへの反応なので、心配や特別な対策は必要ないでしょう。

注目されたい心理からくる震え

「震えたら飼い主さんに構ってもらえた」という経験をしたワンちゃんが、飼い主さんの気を惹きたい、注目されたいという思いから震えをみせることがあります。コミュニケーション手段として、震えているというわけですね。
要望があったり、伝えたいことがあるという心理が、その背景にはあるのかもしれません。愛犬の様子をみて、欲しているものがないか、身体的な問題がないかを確認してみましょう。

◆健康上の問題

生理的な震えではなく、病気や身体の問題、健康上の理由から震えが起こることもあります。原因によっては獣医師への相談・診察が必要となるケースもあるので覚えておきましょう。

筋力の衰えによる震え

高齢化・運動不足などにより筋肉量が減少していくと、踏ん張りがきかなくなったり、上手く歩けずに震えがみられることがあります。

内臓(腎臓・肝臓など)の機能障害による震え

通常、腎臓は尿素などの老廃物を、尿の中に排泄する働きをしています。本来、尿から排泄されるはずの老廃物が体内に蓄積すると尿毒症という状態になってしまいます。これを発症することで、震えやけいれんが起こる場合があるのです。
そして肝臓には、体に有害な物質(アンモニアなど)を解毒する働きがあるのですが、肝硬変・門脈シャントといった病気や薬の中毒などにより肝臓の機能が低下すると、有害物質を解毒できなくなり、この有害物質が脳に達することで震え・痙攣などを起こす肝性脳症という状態に陥ります。

低血糖による震え

元気がなかったり、フラフラしている、ぐったりしている、よだれが出ているなどといった様子が見られる場合は、低血糖の状態である可能性が疑われます。
低血糖は、意識障害やけいれん発作を起こすこともあり、血糖値が低くなりすぎると命の危険もあるため、決して軽視してはいけません。
特に、糖尿病でインスリンを投与している犬や、基礎疾患(腫瘍・肝疾患など)がある犬、誤食癖がある犬には注意が必要です。

中毒からくる震え

体に毒性のある物質を摂取することで生じる有害作用のことを、中毒といいます。
人間にとって害はなくとも犬が食べると危険な食べ物(ぶどうやキシリトールなど)が、たくさんありますよね。こういった食べ物や人間の内服薬、害虫駆除剤などを摂取すると、中毒症状を起こすことがあるのです。
中毒によって、尿毒症・肝性脳症・低血糖症などの状態を発症すると、震えの症状がみられるケースがあります。

発熱での震え

感染症などが原因で発熱することがあります。発熱とは、体温を普段よりも高くする状態のことをいいますが、これは病原菌・ウイルスの増殖を抑えたり、免疫細胞の働きを活発にしたりする目的で起こります。
熱の産生方法のひとつに筋肉を震わせる方法があるため、発熱時に震えの症状が認められるのです。

痛みが原因の震え

痛みによっても、震えの症状がみられることがあります。
犬に多い病気の一つである椎間板ヘルニアや、他の病気・ケガが原因で犬が痛みを感じている時、この痛みのせいでじっと動こうとせずに、体が震えている状態がみられることがあるのです。

◆神経系の問題

犬のてんかんとは、脳の異常な興奮が身体の痙攣や意識障害を引き起こす神経症状で、原因不明の特発性てんかんと、脳炎・脳腫瘍・水頭症などの病気が原因の症候性てんかんに分類されています。
倒れて手足が突っ張り、全身が震える、けいれん性全般発作が分かりやすい症状としてありますが、手足の震え・口をくちゃくちゃする・落ち着きがない、などの部分的な症状のみがみられる焦点性てんかん発作と呼ばれるものもあります。


犬が元気がない原因

愛犬に元気がないように感じる時は、心身になんらかの異常が起こっている可能性も考えられます。震えの症状に加えて元気がない状態であれば、尚の事心配になりますよね。
病気や怪我が原因なのか、心理状態によるものなのか、その判断を早めにできるように、普段から愛犬の様子を確認しておくことが重要です。
元気がなくなる主な原因を挙げていきますので、参考にしてみてください。

◆健康上の問題

元気がなく、さらに震えがみられる場合は、筋力の低下・痛み(ケガ)・病気などが原因として考えられるでしょう。
前述したように、筋力の低下は加齢などからみられるものですが、シニアと呼ばれる年代に入ると成犬期と比べて活動する時間が減ったり、寝る時間が増えるなど、元気がないように感じられる方も多いのです。
そして病気や怪我が原因の場合ですが、これも痛みや不快感に耐えて我慢しているために元気がないように感じられます。
犬は、基本的に痛みを我慢する生き物です。このため、病気の初期段階や怪我をしている時は、眠って痛みにジッと耐えることが多いのです。
愛犬が普段よりも元気がなく、同時に以下の状態が当てはまる場合は、体調を崩していたり、病気や怪我を発症している可能性が高いといえるでしょう。

    ◎食欲がない
    ◎下痢や嘔吐がみられる
    ◎歩き方に違和感がある
    ◎少しよろけながら歩いている(ふらつきがある)
    ◎触ろうとすると嫌がったり怒ったりする
    ◎ずっと眠っている

このような状態がみられたり、普段とは違う様子が気になる場合は、早めに病院で診てもらった方がよいでしょう。

◆心理的な要因

病気などが原因ではなく、心理的な要因から元気がないようにみえる場合もあります。様々な理由が原因として考えられますが、代表的なものをいくつか挙げていきましょう。

疲れている

人間も疲労から元気がなくなりますが、犬もそれは同様です。例えば病院やトリミングサロンなどの愛犬にとって緊張しやすい環境や場所に行った後や、初対面の人や犬との触れ合いをした後など、疲れを感じて元気がなくなっている可能性があるのです。

落ち込んでいる

愛犬が急にションポリして元気がなくなった時は、何かしらの理由から落ち込んでいるのかもしれません。イタズラをしたから叱った、粗相をしたから叱った、愛犬とのスキンシップが取れていないなど、愛犬が落ち込むようなことが事前にあったのではないでしょうか。
毎日のように落ち込むとストレスを溜めこみ、病気を発症したり信頼関係が崩れることがありますので、心当たりがある方は愛犬との接し方を見直してみましょう。

拗ねている

犬は感情豊かな動物です。人間と同じように、拗ねてしまうこともあるのです。こういった時は、飼い主さんに呼ばれてもフテ寝や無視をすることがあり、そんな姿をみて元気がないのかな?と飼い主さんが感じる場合があるのです。
愛犬を無視して他の人・犬と仲良くしたり、おやつのおねだりや遊びの誘いに応えなかったりなど、愛犬が拗ねる原因を作っていなかったか思い返してみてください。心当たりがあるのなら、拗ねた状態が元気がないようにみえている可能性があります。要求に全て応える必要はありませんが、心と体に負担がかからないよう良いバランスを保ちましょう。


緊急性の判断

鼻水が出る犬

愛犬が震えている様子は、飼い主さんにとって非常に心配な状況ですよね。
その震えが日常的(一時的・生理的)なものであれば問題としてのレベルは低いですが、震えが突然始まる、頻繁に繰り返されるなどの様子が見られる場合は、何らかの病気である可能性が否定できません。
震えはしばしば病気の初期症状となるため、軽視したり安心できるものではないのです。病気の早期発見や適切な治療を開始するためにも、震えが生じた原因を理解して判断することが重要でしょう。
愛犬を守るためにも、以下のポイントをしっかりおさえておいてください。

◆震え以外の症状を確認

震えの他に以下の症状や様子が見られないか確認しましょう。

    ◎震えが痙攣に進行してしまう
    ◎震えている時に呼びかけても聞こえていない様子が感じられる
    ◎一時的な震えである原因が思い当たらない
    ◎犬自身が身体を動かさないようにしている(動きたがらない)
    ◎元気や食欲がない
    ◎下痢や嘔吐が見られる

◆いつ病院に行く?

震えに加えて上記の症状・様子がみられる場合は、何らかの体調不良が原因である可能性があります。
早めに動物病院を受診するようにしましょう。
震えの原因が特定できない場合も、一度獣医師に相談することをおすすめします。受診して問題なければないで不安も払拭できるでしょう。誤った自己診断の結果、治療が遅れるよりは断然よいですよね。少しでも気になることがある場合は、躊躇せずに病院を受診してください。


緊急性がない震えの場合の自宅での対処法

寝ている犬

前述した、寒さ・恐怖心・ストレスなどの一時的なものや、加齢による筋力低下などが震えの原因である場合は、病的なものではないため大きな心配はいらないでしょう。
震えの原因が明らかであり、こういった理由からくるものであれば、自宅で様子を見ても問題ない場合が多いです。
次に、その際の対処法について紹介していきますので参考にしてみてください。

◆原因を取り除く

一時的要因から震えが起こっている場合は、その原因を取り除くことが効果的な対処法となります。
寒さから震えが起こっているのであれば、エアコンなどの暖房器具で室温をあげて、室内環境を整えてみましょう。冬場の散歩の際は、防寒着を着用させてください。外出前に体を動かして温めておくのもよい予防方法ですよ。
そして、不安・緊張・ストレス・恐怖などが原因で震えが起こっている場合は、その原因を遠ざけることで震えが収まる可能性があります。
例えば花火などの予定が分かるものであれば、窓を閉めたり室内を賑やかにしておくなどの事前準備をして臨んでみましょう。
しっかりと愛犬の苦手なものを把握しておき、回避する方法が有効的なのです。恐怖やストレスを感じる場所には近づかないなど、愛犬の性格や好みにあわせて工夫してくださいね。
また、飼い主さんが優しく声をかけて撫でてあげることで安心させ、落ち着かせてあげることも大切です。
恐怖心やストレスなどは、原因が取り除かれないと元気・食欲減退がみられて体調を崩す場合があるので注意しましょう。

◆安静にさせる

室内環境を整えた上で、愛犬が安静を保てるようにしましょう。
震えが起きている時は、常に様子をみておくことも重要です。寒さが収まらないようであれば毛布をかけたり、状況に応じて対処してあげてください。
ゆっくり休ませてあげることで震えが収まったり、気持ちが落ち着いたりする場合も多いです。

◆食事や水分補給

毎日の適切な食事や水分補給は、健康を守る上でも必要不可欠です。
脱水状態で震えが起こるケースもありますので、愛犬の食事量や水分補給量は日々チェックしておきましょう。
低血糖を予防するために適切量の糖分を摂ったり、栄養バランスが崩れないような食事を選択すること、適度な運動をすることが、健やかな毎日を過ごすための重要なポイントとなるでしょう。


まとめ

犬の震えの原因は様々です。病院へ行くべき症状なのか、普段からみられる一時的な様子なのか、しっかり判断して対処することが大切です。
犬の震えがイメージできない方は、動画などを探してみるとよいでしょう。様々な記事などから情報を集めておくことで、万が一に備えることもできます。
病気が原因の場合は、早急に病院を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。治療法について不安がある場合は、遠慮せずに獣医師に確認・相談をしてくださいね。
また、定期的な健康診断も病気の早期発見につながります。最低でも年1~2回は受けることがすすめられるでしょう。
いずれの理由にせよ、犬の震えは何らかのサインです。いち早く異変に気付くためにも、普段から愛犬の様子をしっかり観察しておくようにしましょう。

●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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