犬に洋梨を与えても大丈夫?
洋梨は、ヨーロッパ原産のバラ科ナシ属の果物で、日本では「ラフランス」という品種が有名ですよね。
形に加えて、和梨とは違う食感が特徴的なこの洋梨ですが、基本的には犬が食べても大丈夫な果物だといえます。
しかし、やはり与える上ではいくつか注意点があるので、しっかりとメリットとデメリットを理解しておく必要があるのです。
まずは、洋梨がもつ栄養成分について紹介していきましょう。
◆洋梨の栄養価
洋梨には、犬の健康にとっても魅力的な成分が含まれています。主な栄養素は以下の通りです。
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◎洋梨(西洋なし)100gあたりに含まれる主な栄養素
- エネルギー 48kcal
- 糖質量 12.5g
- 食物繊維 1.9g
- カリウム 140mg
- ビタミンC 3mg
- カルシウム 5mg
- アスパラギン酸 88mg
このように、洋梨は食物繊維やカリウムが豊富に含まれる果物であり、さらにビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンC・葉酸などのビタミン類、そしてカルシウム・マグネシウム・鉄などのミネラル類、などといった幅広い栄養素をもっているのです。
それぞれの含有量はそれほど多くはありませんが、洋梨の食物繊維には、便質を改善し便通を促す不溶性繊維、善玉菌のエサとなって腸内の不要なものを排出する水溶性繊維の両方が含まれています。このため、腸内環境の改善にも役立つ存在だといえるでしょう。
また、水分が多いためカロリーも低めです。水分含有量は、りんごとほぼ同じくらいあるそうですよ。ダイエット中のワンちゃんのおやつとしてもおすすめできる食材ですね。
◆丸い梨も同様にOK
日本の梨というと丸くてシャリシャリした和梨が浮かぶと思いますが、こちらの梨も基本的には犬に与えて問題ないとされています。
水溶性食物繊維が含まれていないだけで、他の成分はほとんど洋梨と同じです。ただ、エネルギー・糖質・食物繊維は、洋梨の方が多く含まれているそうです。
犬に洋梨を与えるメリットデメリット
次に犬に洋梨を与えることで得られるメリット、そして被る可能性のあるデメリットについて、それぞれ解説していきましょう。
◆メリット
洋梨を与えることで、主に以下の4つのメリットを得ることができます。
◎水分補給ができる
洋梨には、全体の約90%近くもの水分が含まれています。このため、洋梨を与えることで水分を補給することができるのです。
あまり水を飲んでくれないワンちゃんにとっては、水分補給を手助けしてくれる存在となるでしょう。
◎お通じをよくする
洋梨にはソルビトールという成分が含まれています。
このソルビトールとは糖の一種であり、便のphを下げて便を軟らかくしたり、吸水することでお通じを良くする働きをもっているのです。
加えて洋梨に含まれる不溶性食物繊維には、便の水分を増やす機能があるため、便秘解消に効果をもたらしてくれます。
◎消化を助ける
洋梨にはタンパク質分解酵素が含まれています。これにより、消化を助けてくれる効果が期待できます。
◎疲労回復
洋梨に含まれるアスパラギン酸は、非必須アミノ酸の成分です。タンパク質の代謝を促し、エネルギーを産出する働きを持っているため、疲労回復に効果があります。
◆デメリット
洋梨にはカリウムが含まれています。このカリウムには利尿作用や、過剰な塩分を排出して血圧を下げる効果があるのですが、腎臓に不安のあるワンちゃんには注意が必要な成分となります。
腎臓を患っていたり、腎臓機能が衰えている場合、カリウムの摂り過ぎが原因で腎臓に悪影響を及ぼすことがあるのです。
腎臓病などの疾患をもつワンちゃんには、与えないほうが賢明でしょう。心配な方は一度、かかりつけの獣医師に相談してみるのがおすすめです。
犬に洋梨を与える際の注意点
魅力的な栄養素をもつ洋梨ですが、誤った与え方をすると健康被害の原因となる可能性もあります。
愛犬に洋梨を与える場合は、以下のポイントに注意しましょう。
◆与えすぎない
比較的カロリーの低い洋梨ですが、やはり与えすぎると肥満の原因となってしまいます。
また消化不良を起こし、下痢や嘔吐などの症状がでてしまう場合もあるのです。
本来、犬にとって洋梨は馴染み深い食べ物ではありません。そのため、食べさせ方には注意が必要というわけですね。初めの内は少量を与えて便の様子を見ながら、量を調整していくとよいでしょう。
基本的に、総合栄養食であるドッグフードが毎日与えるべき犬の食事となります。愛犬に洋梨を与える際は、おやつとしての適量を心がけましょう。ちなみに、1日の最適カロリー量の10%が、おやつとしての適量の目安なので覚えておきましょう。
犬のサイズ・体重ごとに、1日の摂取可能目安量も紹介しておきますので、参考にしてみてください。
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◎1日あたりの洋梨摂取可能目安量
- 超小型(2kg程度)…70g(中1/3個)
- 小型(3~5kg程度)…94g~139g(中1/2〜2/3個)
- 中型(6~15kg程度)…159g~316g(中5/6〜1個)
- 大型(20~30kg程度)…392g~532g(中1.1/6〜1.5/6個)
なお、犬にも個体差がありますので、上記の数値はあくまで目安として参考にするようにしてください。
また、愛犬が適正体重を上回っている場合、現体重ではなく適正体重に基づいた摂取可能量を与えるよう気を付けましょう。
◆熟した洋梨を与える
愛犬に洋梨を与える場合、熟した洋梨を選ぶ必要があります。これは、未成熟な洋梨にアミグダリンという成分が含まれているためです。
この成分には、体内で分解される際に毒性のあるシアン化水素に変化するという特徴があるので、十分注意しましょう。
一般家庭において、未成熟の実を愛犬が口にすることはほとんどないとは思いますが、例えば家庭菜園で洋梨を栽培している方や、洋梨農園で犬を飼っている場合は気をつけて下さい。木から落ちた未成熟の実を、愛犬が口に入れないよう十分な注意が必要となります。
ちなみに、洋梨を押して硬いと感じる時は、新聞紙などで包み直射日光を防いで、15℃〜20℃程度で室温保存してみてください。そうすることで、追熟が可能だそうです。軸周りが柔らかくなり、芳醇な香りがしてきたら食べ頃の合図ですよ。ぜひ、試してみてください。
◆加工食品は与えない
洋梨に限ったことではありませんが、人間用に加工された食品の多くは、犬にとって塩分・糖分過多となるものが多いです。酸味料・香料・酸化防止剤など、不要な成分や有害な添加物が使用されている場合もあるでしょう。
洋梨でいうと、甘く煮た缶詰やドライフルーツ、ゼリーやジュースなどが販売されているのをよく見かけると思います。
いずれも、糖分や甘味料などが含まれているものがほとんどなので、基本的に人間用に味付けされたものは与えないようにしてください。
自宅で洋梨を材料として手作り食やおやつを作る場合も、余計な味付けはしないように気をつけましょう。
ペット用の手作りレシピを紹介している記事は、ネット上でも簡単に見つけることができます。情報を集めて、参考にしてみるのもおすすめですよ。
◆アレルギーに注意
現代の犬たちは雑食だといわれているため、何でも食べられるイメージを持っている方もいるかもしれません。
玉ねぎやチョコレートなどは、犬が中毒を起こす可能性のある食品として知名度が高いですが、実は他にも食べられない食品は意外とあり、約40%の犬が食物アレルギーを持っていたり、症状がでていないだけで食物アレルギーの可能性があるといわれているそうです。
洋梨にも同様のことがいえるため、初めて洋梨を愛犬に与える場合は、アレルギーに注意しましょう。
まずは少量を与えて様子を見ることを徹底してください。
主なアレルギー症状としては、下痢・嘔吐・皮膚の痒みや赤み・脱毛、などが挙げられます。
何らかの症状が出た場合は、すぐに与えるのをやめて動物病院を受診するようにしましょう。
◆実だけを与える
洋梨は、皮・芯・種を取り除いてから与えるようにしましょう。
皮には農薬が残っている可能性がありますし、種には前述したアミグダリンという有害成分が含まれています。
また喉に詰まらせるのを防ぐためにも、小さくカットしてから与えることが推奨されます。特に子犬や老犬、小型犬などは注意してください。
果肉部分を生のまま、ブレンダーなどでジュースやスムージー状にして与えるのがおすすめですよ。
まとめ
洋梨は、犬にとっても魅力的な栄養素をもつフルーツの1つです。
皮や種、芯などを取り除いて小さくカットすることで、飼い主さんと一緒に旬の味覚として楽しむことができるでしょう。
ただし、与えすぎると健康被害を招く可能性もありますので、必ず適量を食べさせるようにしてくださいね。さらに目安量はあくまで目安として、愛犬の様子を見ながら適量を探るようにしましょう。
注意点に配慮しながら適切な量を与えることで、お腹の調子や健康をサポートしてくれる食材となります。
愛犬と一緒に季節のフルーツとして、自然の甘みや独特な食感を、ぜひ味わってみてくださいね。