【獣医師監修】愛犬の目の下が腫れている!?原因や対処法は?

2025.02.23

【獣医師監修】愛犬の目の下が腫れている!?原因や対処法は?

犬にとって目の病気は比較的かかりやすいものが多く、日常的なケアやチェックが必要とされる場所でもあります。今回はその中から、目の下の腫れに注目していきましょう。その原因や治療法・対処法、観察するポイントなどを紹介していきますので、万が一に備えてしっかり確認しておきましょう。

犬の目の下が腫れる原因は?

目の大きな犬

犬の目の疾患として結膜炎や白内障・緑内障などの知名度が高いですが、炎症性の病気や腫瘍、まぶたなど目の周辺組織が原因となる病気もさまざまあります。

まずは目の下に腫れがみられる病気や症状について、代表的なものをいくつか紹介していきましょう。

◆アレルギー反応

アレルギー反応によって、皮膚炎を発症したり、目の周囲が腫れることも珍しくありません。このような症状がみられた場合は、直前に普段と違ったことをしていないか思い返してみましょう。
例えば、散歩のルートを変更したフードの種類を変えたケージの場所を移動した、など今までと少しでも変わった行動を飼い主さんが起こしていないでしょうか。植物・食べ物・埃や化学物質など、些細な変化でアレルギーが発症するケースもよくあるのです。

一般的にアレルギーは時間が経つと収束していくことが多いですが、重度となり緊急対応が必要となる場合もあるため、念のため動物病院を受診して獣医師の診断を仰ぐことが推奨されます。
ちなみにアレルギー体質のワンちゃんが発症しやすい疾患もあるので、ここで併せて紹介しておきましょう。

◎マイボーム腺炎
まぶたの裏にあるマイボーム腺が炎症を起こした状態を、マイボーム腺炎といいます。
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と霰粒腫(さんりゅうしゅ)の2種類があるのですが、麦粒腫はいわゆる「ものもらい」のことを指し、特に若い犬に起こりやすい目のトラブルです。そして霰粒腫は、マイボーム腺の詰まりが原因となって発症するものであり、慢性的な炎症がみられるようになります。

まぶたの辺りに小さなイボのようなものができる、まぶたの縁の辺りが赤く腫れるなどが主な症状で、感染症である麦粒腫は、内服薬・点眼薬での治療が一般的ですが、 霰粒腫については外科的措置を取らなければならないケースがあるようです。

◆目の感染症

目の周りが腫れる原因となる病気や感染症はさまざまあります。その中で代表的な眼瞼炎(がんけんえん)について解説していきましょう。

◎眼瞼炎
ウイルスなどの細菌感染、寄生虫感染による皮膚炎などが原因で発症する眼瞼炎。まぶたの一部や全体が赤くなったり、腫れあがったりする症状がみられます。
蚊に刺されるなどしてアレルギーを起こし、それが原因で眼瞼炎につながるケースもあるそうです。
発症すると目の周りを掻くような動作をすることが多く、涙を流したり、まぶたの毛が抜け落ちるなどの様子もみられるようになるでしょう。

発生原因がさまざまあるため、治療は原因に合わせた方法を選択することとなります。
例えば、細菌感染が原因の場合は抗生剤を処方、真菌感染が原因の場合は抗真菌薬の投与、などといったように原因によって治療法が変わってきますので、来院先で適切な診療を受けるようにしましょう。
症状が治まるまでに目を掻くと悪化しやすいため、エリザベスカラーをつける場合もあります。

◆歯の問題

歯周病も犬のかかりやすい病気として有名ですよね、目の下の腫れと歯の病気では関係性が無いように感じられるかもしれませんが、実はそうではないのです。
上顎の歯根が悪くなり歯周病が重症化すると、ちょうど目の下辺りが腫れてそこから排膿してしまいます。

日々のデンタルケアで予防できる歯周病ですが、これを怠ると発生しやすいのが以下の病気となります。

◎眼窩下膿瘍(がんかかのうよう)
口内が不衛生な状態になると歯垢が作られて、それが歯石に変化してしまいます。蓄積した歯石で細菌が繁殖すると歯槽膿漏となって、さらに症状が進行すると歯の奥に侵攻した細菌が膿を作ります。これが、眼窩下膿瘍です。

主な症状として、目の下の腫れや口臭、よだれに血が混ざるなどの状態がみられます。また、蓄積した膿が限界を超えると皮膚を破って、目の下辺りから膿が出てきてしまうケースも多くあるようです。
抜歯することが一般的な治療法となりますが、高齢犬の場合は大きなリスクとなるので、抗生剤を用いた治療が選択されることもあります。

◆外傷や感染症

なんらかの外傷が原因だったり、異常を感じて目を掻いたり擦りつけてしまった結果、目の下や周囲が腫れることもあります。放置すると悪化する可能性もあるので、決して軽視してはいけません。
目の外傷から角膜潰瘍という病気を発症するケースもあるのでチェックしておきましょう。

◎角膜潰瘍
角膜とは、眼の表面にある複数の層からなる透明な膜のことです。外傷・刺激物質・感染症・ドライアイなどの影響でこれが傷つくと、角膜潰瘍という病気を発症する可能性があります。
角膜の深層まで侵されると穴が開き、眼球内部の炎症・感染の他、視覚障害に至ることもある恐ろしい疾患だといえるでしょう。

眼の痛み・流涙・目やに・目の赤み・瞳孔が小さくなる、などの症状が代表的ですが、角膜潰瘍以外の眼科疾患でも似たような症状がよくあるため、眼科疾患の見分けは難しいといわれています。
ある程度進行すると、眼の表面のへこみ・穴・デスメ膜瘤のふくらみ、などが肉眼でも分かることがありますが、少しでも異常を感じた場合は早めに獣医師に相談してください。

◆腫瘍

◎眼瞼腫瘍(がんけんしゅよう)
まぶたに発生する良性または悪性の腫瘍で、 猫のまぶたにできる腫瘍は悪性のものが多いといわれますが、犬の場合は良性ものものが多いという特徴を持っています。
まぶたが一部膨らみ、しこりができてから気付くことが多く、腫瘍が大きくなった場合、まばたきをするたびに目に刺激を与えることとなるため目が傷ついてしまいます。
この刺激が原因となって、角膜炎結膜炎、前述した角膜潰瘍を併発し、目の赤みや目やになどの症状が現れるケースも少なくありません。

良性の場合は子犬の頃に手術できればほとんど再発することはないようですが、小さくて気にならないからと放置してしまうと、気づかないうちに大きくなることもあるので早めの切除がすすめられます。
悪性だった場合は、外科的切除以外の治療が必要になるケースがあるようです。

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◆チェリーアイ

チェリーアイという詳しい原因が分かっていない病気によって、目が腫れる場合も考えられます。
瞬膜腺と眼窩骨(がんかこつ)を結ぶ線維性組織が弱いことが、考えられる原因として挙げられているのですが、チェリーアイになりやすい犬種がいること、若い犬で起こりやすいことから、遺伝的な関与も疑われているようです。

「瞬膜腺の脱出」や「第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)の脱出」などとも呼ばれるこのチェリーアイは、その名の通り瞬膜腺(第三眼瞼腺)が飛び出てしまった状態のことで、飛び出た瞬膜腺が次第に赤く腫れて、その様子がさくらんぼ(チェリー)のように見えることからこう呼ばれるようになりました。
瞬膜腺が飛び出ている状態だと炎症・乾燥を起こしやすいので、目が赤く腫れている・目がしらに赤い塊がある・目やにがでている、などの異常が見られた場合は早めに動物病院を受診する必要があります。

チェリーアイであれば特徴的な見た目のため、診断はすぐにつくでしょう。治療法は内科的治療から外科的治療まで様々です。獣医師としっかり相談して、治療法を確認してください。


犬の目の下が腫れた際の観察するポイント

紹介してきたように、目の下が腫れる原因はさまざまです。その症状のレベルも軽度のものから、放置することで重症化するものまでと多様に存在します。
いずれにせよ獣医師の診断を仰ぐことが一番安心ですが、まずは以下のポイントをおさえて症状の状態をチェックしましょう。
獣医師に電話で相談したり、動物病院を受診予約する際や診療を受ける時にも、適切な情報を伝えることができます。

◆腫れの場所と範囲

犬の目の異常は、片側の目から発症することが多いといわれています。両目同時に現れることは、あまりないそうです。
このため、左右の目を見比べることで異常を発見しやすくなりますので、まずは左右差を見つけてみましょう。
腫れている部位や範囲によっても、発症している疾患が絞り込める場合もあります。目の周り全体なのか、目頭なのか、目の下の方が腫れているのか、しっかり確認してください。

◆腫れの進行具合

腫れの進行具合も原因によって異なります。腫れの発見後、すぐに動物病院を受診できない場合もあるかもしれません。
そんな時は、異常に気付いた日からメモなどをとり、腫れの大きさや赤みが変わっていないか、またその変わり具合などを的確に記録し、受診の際に獣医師に伝えられるよう準備しておきましょう。診断や治療に大きく役立ちます。

しかし、時間の経過と共に悪化するものも多いので、できるだけ早く獣医師に診てもらえるように努めてくださいね。

◆目の下の腫れ以外の症状

腫れ以外の症状に関しても、しっかりチェックしておきましょう。普段と違う様子や行動が見られたり、明らかに痛みを感じているなど、愛犬が辛そうな状況であれば一刻も早く獣医師に診せるべきです。他の病気が原因で、腫れが起こっている可能性もあります。

犬の目の異常として現れやすい代表的な症状としては、目の左右差・充血・眩しそうにしている・白濁・目やに・流涙・涙やけなどが挙げられますので、これらに併せて、食欲や排泄に問題はないか、元気はあるか、水分がちゃんととれているかなど、腫れが起きてから変わった様子があればきちんと獣医師に伝えるようにしましょう。

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犬の目の下が腫れた際の対処法

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愛犬の目に腫れがみられた場合は、適切に対処することが必要です。以下の注意点をしっかり覚えておきましょう。

◆動物病院に行くタイミングは?

腫れを発見した時点で、一度動物病院に相談することがすすめられます。特に目の下の腫れは病気の可能性が高く、解説してきた通り放置すると状態悪化を招くケースが多々あります。
愛犬の目になんらかの異常を見つけた場合は、できるだけ早く獣医師の診療を受けるようしてください。

◆家庭でできる応急処置

目の腫れに関して家庭でできることは、愛犬が気にして引っ掻いたりしないように注意することです。
原因によって治療法が異なるため、まずは獣医師の診断が必要となります。それまでは飼い主さんが勝手になんらかの処置をすることはおすすめできません。
自宅にエリザベスカラーがあればそれを装着し、目を引っ掻いたり擦ることで腫れを悪化させることを防ぎましょう。そしてできるだけ早く、病院を受診してください。

自宅で出来るのは、予防可能な病気に関しては予防法を実践すること、病気を招き入れないために普段から目や歯のケアを怠らずに健康的な生活を続けることです。
子犬の頃からお手入れに慣れさせておき、嫌がらずにケアをさせてくれるようにしておきましょう。
詳しいケア方法を載せている記事もたくさんありますので、情報を集めて参考にしてみてください。

◆やってはいけないこと

愛犬の目に異常を発見したからといって、慌てて腫れた部分を触って確認しようとしたり、自己判断で薬を与えるような行動をとってはいけません。
症状を悪化させる結果に繋がる可能性が大いにあります。

再三お伝えしてきましたが、目の病気は原因によって対処法が違います。まずは獣医師にしっかり診断してもらい、適切な処置を受けることが重要なのです。


まとめ

犬の目は、病気など何らかの異常が発生しやすい、デリケートな部分です。腫れの原因は、身体の外側にも内側にも存在します。普段と違う様子がみられた場合は、すぐに病院を受診するようにしましょう。
少しでも早く異常に気付くために、愛犬の状態を毎日観察しておくことや、定期検診を受けることが大切ですよ。

病院の中には、犬の目のことなら当院へ!といったように、眼科に強い専門医がいる所もありますので、かかりつけの病院で診断がつかない場合は、他の病院に相談してみるのも一つの手でしょう。
家族の一員である大切なペットの健康を守るのは、飼い主さんの重要な役目の一つです。毎日を元気に過ごせるように、家族みんなで支え合っていきましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に16医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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