【獣医師監修】犬がご飯を食べにくそう。それってエプリスかも?イチから徹底解説!

2021.07.23

【獣医師監修】犬がご飯を食べにくそう。それってエプリスかも?イチから徹底解説!

皆さんの愛犬の中に、最近ご飯を食べにくそうにしている子はいませんか? よく見ると、口の中に腫れている何かが見えるような・・・ それ、実は「エプリス」という病気かもしれません。 でも、エプリスなんて病気、あまり聞いたことがありませんよね。 そこで本記事では、犬のエプリスについて分類から症状、治療法や予防法までまとめて解説します。 実は放っておくと怖いエプリスという病気。この機会に是非一度ご覧ください。

エプリスとは何か

シェパード

「エプリス(Epulis)」とは、犬の口の周りの歯周組織にできるシコリのような塊のことを言い、「歯肉腫」とも呼ばれます。
顎と骨を結ぶ靭帯から発生し、歯肉が内側から盛り上がり、コブのような見た目をしています。

◆種類

犬のエプリスの分類については未だ議論が続いていますが、2021年現在では2種類に分類されています。

末梢性歯芽形成線維腫(旧分類:線維性エプリス・骨性エプリス)

一般的に犬のエプリスというとこのタイプを指します。
これは腫瘤(しゅりゅう)と呼ばれるもので、口の中の「できもの」と考えていただけると良いかもしれません。
以前までの分類では、できものの中に骨の成分が混じっていると「骨性エプリス」と呼ばれ、そうでないものは「線維性エプリス」と分類されていましたが、腫瘤の性質としては似通っているため、1つにまとめられました。
犬の末梢性歯芽形成線維腫は、骨まで浸潤することはまれです。進行も遅く、良性の腫瘤と言われています。
犬だと、上顎の前部や鼻の真下にみられることが多いです。

棘細胞腫性エナメル上皮腫(旧分類:棘細胞性エプリス)

これは末梢性歯芽形成線維腫と違い、周囲の組織を浸潤、つまり破壊しながら成長するタイプです。
以前までは「棘細胞性エプリス」と分類されていました。
しかし、癌のように転移こそしないものの、局所的に周囲の組織を破壊しながら無尽蔵に大きくなってしまう、悪性腫瘍のような振る舞いをします。
よって最新の分類では、エプリスではなく「腫瘍」のひとつとして分類されるようになりました。
進行が早く、切除しても再発するリスクが高いと言われています。
処置をせずに進行し、顎の骨にまで腫瘍が到達すると、顎の骨が変形したり、骨折したりすることも。
犬だと下顎の前歯部に最もよくみられると言われています。

見た目ではどちらのタイプか判断できないため、動物病院では腫れ物を切り取って調べる病理検査や、犬の顎のCTスキャンを元に診断します。

◆かかりやすい犬種

エプリスはどんな犬種でも発生しうる病気ですが、ボクサーブルドッグのような鼻や口がとても短い犬種がかかりやすいと言われています。
また棘細胞腫性エナメル上皮腫は、シェットランド・シープドッグイングリッシュ・シープドッグが遺伝的に発生しやすいことがわかっています。
平均発生年齢は7〜8歳と、中年以上の犬に多く発生しています。

まとめると、エプリスには

•周囲の組織を浸潤しない「できもの」のような良性のタイプ(末梢性歯芽形成線維腫)
•周囲の組織を破壊しながら大きくなる腫瘍のような悪性のタイプ(棘細胞腫性エナメル上皮腫)

の2タイプがあり、これらは見た目からは判断できず、どんな犬にも発生しうる可能性があります。
「ただの腫れと思っていたものが実は腫瘍だった」なんてこともあるエプリスという病気。
次は、なぜエプリスが発生してしまうのか、その原因を解説します。


犬がエプリスになる原因

犬でエプリスが発生する原因は、一部のシープドッグのように遺伝的な原因があると言われていますが、はっきりとはわかっていません。
しかし、歯肉にダメージが蓄積することで発生することがあると言われており、口腔内のケア不足が原因の1つと考えられています。

口腔内のケアが不十分だと、歯や歯肉のくぼみに歯垢や歯石が付着し、たくさんの細菌が増殖することで、歯肉にダメージが蓄積してしまいます。
これがいわゆる「歯周病」ですね。人間でもよくあるように、飼い犬の80%が程度の差こそあれ歯周病を発症していると言われています。

線維性エプリスを発症した犬は歯周病を併発していることが多いため、口の中がケアされていないとエプリスが発生しやすいのかもしれませんね。

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エプリスの症状

それでは、エプリスにはどんな症状があるのでしょうか。最近、愛犬に次のような症状が現れたことがないか、ぜひチェックしてみてください。

    •口臭
    •よだれが増える
    •餌を食べにくそうにする
    •体重が減ったり、元気がなくなったりする
    •歯が沈んだり抜けたりする
    •唾液に血が混じる

◆口臭

先ほども述べたように、エプリスは歯周病を併発していることが多いため、口腔内の細菌が増殖し、口臭が臭くなることがあります。

◆よだれが増える

これも歯周病の症状の一つで、口の中の環境を改善しようと犬の体が唾液を多く分泌し、よだれが増えることがあります。

◆餌を食べにくそうにする

エプリスができると歯肉に腫れができるわけですから、噛み合わせが悪くなったり痛みが出たりします。
そのため、犬はエプリスが発生していない片側の顎だけで食べたり、痛みを我慢してゆっくり噛んだりと、餌を食べにくそうな様子を見せます。

◆体重が減ったり、元気がなくなったりする

エプリスができ、餌が食べにくくなると、犬は満足な栄養が摂取できなくなるため、体重が減ったり、元気が無くなったりします。

◆歯が沈む、抜ける

エプリスによって歯肉が脆くなると、歯を支える力が弱くなります。すると歯がぐらぐらしたり、歯肉に沈んだり、悪化すると歯が抜けたりします。

◆唾液に血が混じる

エプリスとなって腫れた部分が傷ついたり、棘細胞腫性エナメル上皮腫の場合は腫瘍が組織を浸潤したりすることで出血することがあります。
他にも、たまたま自然にエプリスが取れることがあります。その際にできた傷口から出血し、唾液に血が混じることもあります。

いかがでしたでしょうか。皆さんの愛犬の中に、このような症状を示した子はいませんでしたか?
エプリスは自然に取れることもありますが、基本的には獣医さんの元で治療してもらうことになります。
では、具体的にどんな治療法があるのかをご紹介していきます。



犬がエプリスになった際の治療法

犬とおもちゃ

犬のエプリスの治療法は、現在3種類知られています。メジャーな順に、

•外科手術
•放射線治療
•化学療法

の3種類です。
では、1つずつご紹介していきます。

◆外科手術

最も基本的な治療法です。軽度なエプリスから重度のエプリスまで、あらゆる病状においてもまず外科手術で治療することが検討されます。
末梢性歯芽形成線維腫の場合、エプリスだけを表面的に摘出する手術がとられることが多いです。腫れている部分を切り取ってしまう方法ですね。
早期発見ができればエプリスが小さいため手術も短時間で終わり、犬の体にかかる負担も最低限で済みます。

しかし比較的悪性の棘細胞腫性エナメル上皮腫だった場合、完治させるのであれば顎の骨ごと切除し摘出します。この腫瘍は顎の先端部分に発生することが多いため、顎先の部分を切断した上で残った部分を丁寧に縫い合わせる手術になります。
なぜ、腫瘍を顎ごと切除しなければならないのでしょうか。それは、腫瘍や周囲の歯肉部分だけの摘出だと不完全な切除となってしまい、再発するリスクが非常に高まるからです。再発してしまうと何度も手術を行うことになり、最終的に犬の体にかかる負担がとても大きくなってしまいます。それを避けるために、できるだけ一度の手術で完治させてしまうことを優先するのです。

顎ごと切除すると聞くと、犬の見た目が大きく変わってしまうのではないかと感じられるかもしれません。確かに、手術直後は痛々しい見た目となってしまいますが、時間が経過し体毛が生え変わると、見た目はかなり改善されます。

◆放射線治療

外科手術よりは採用されることが少ない方法ですが、病変が小さかったりするときや過去に切除したエプリスが再発したときにとられることがあります。

◆化学療法

エプリスにプレオマイシンなどの癌細胞に効く抗生物質を直接注射して、エプリスを小さくする方法です。
この方法は他の治療法より有効性が低いため、犬の体が外科手術に耐えることができないなどと判断された場合にのみとられる、最終手段です。

以上が、犬がエプリスになった際の治療法になります。
外科手術が最も一般的かつ効果的な方法で、ついで放射線治療、化学療法が検討されます。
ここまで読んでくださった読者の皆さんの中には、特に外科手術の内容に少なからずショックを受けた方もいらっしゃるかもしれません。
しかしエプリスの手術は、これまでに犬種や年齢に応じた様々な治療方法が世界中で検討されてきました。その方法論は、近年のインターネットの発達とともに、世界中の獣医さんの元へ共有されています。きっと、あなたの愛犬にあった手術が施されると思いますから、もしエプリスかもと思われても安心してかかりつけの獣医さんと相談してみてください。

それでは最後に、犬のエプリスをどうやったら予防できるのかをご紹介します。

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犬のエプリスの予防法

犬のエプリスはその原因がはっきりしていないことから、確立された予防法はまだわかっていません。
しかし、口腔内の健康を保つことは重要な予防法になるでしょう。
最低限、月に2、3回、1回につき数分で構いません。定期的にブラッシングをしてあげて、犬の口腔内の環境を観察しましょう。

    •口臭がひどくなっていないか
    •歯肉に異変がないか
    •出血しているようなところはないか
    •変に痛がっているところはないか

このようなポイントを抑えながら観察しながら市販の犬用歯ブラシを使い、溜まっている歯石や歯垢を取り除いてあげましょう。ペット犬は歯周病にもなりやすいですから、そちらの予防にも繋がります。

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もし愛犬がご飯を食べにくそうにしていたり、口腔内の環境に何か異変があったら、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。
どんな病気も、早期発見が予防のキーです。それができるのは、飼い主である読者の皆さんです。常に愛情を持って接してあげることが、犬にとって何よりの予防法になります。


まとめ

今回は、犬のエプリスについて解説しました。いかがだったでしょうか。
エプリスには良性のものと悪性のものがあり、それに応じて手術によって治療が施されます。
いずれも早期発見と適切な治療がキーになりますから、定期的なブラッシングから口内環境の観察を継続することが大切です。

逆に放っておくとどんどん病状が進行してしまうのがエプリスの怖いところ。この記事を読んで、最近の愛犬の様子にどこかひっかかると感じられた読者の方は、ぜひ一度、かかりつけの獣医さんに相談されてみてください。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に14医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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PetSmilenews編集部

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