【獣医師監修】犬の安楽死って実際どうなの?考え方、手順や費用を徹底解説!

2021.05.22

【獣医師監修】犬の安楽死って実際どうなの?考え方、手順や費用を徹底解説!

「犬の安楽死」犬を飼っている人なら誰もが聞いたこと、考えたことがある言葉なのではないでしょうか。非常に重みのある言葉で、犬のために行うことなのですが、ネガティブにとらえている人も多数います。手順や費用、なんのために行うのかをきちんと理解することが、捉え方の変化に繋がります。 そんな犬の安楽死ですが、海外と日本とで捉えられ方が大きく異なります。今回の記事では、犬の安楽死の事情や海外との違い、手順や費用について説明をしていきます。 あまり考えたくないことですが、きちんと理解しておくことが大切なので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

犬の安楽死とは

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犬の安楽死とは、犬が苦しまないよう、眠るように死を迎えさせる処置のことです。事前に意識を無くす薬を投与し、その後に心臓を止める薬を投与します。犬が苦痛を感じないように細やかな配慮をしながら行われるため、安楽死の際に犬が苦しむことは基本的にありません。

ネガティブなイメージのつきやすい言葉ですが、安楽死は犬のためを思って行われていることです。しっかりとした理解を持って向き合うことが大切です。

◆安楽死を提案される状況

犬の安楽死は、もう治る見込みのない病気やけがで犬が苦しんでいる際に行われます。手術を行っても効果が薄そうな場合や、かえって術後の痛みなどで苦しめてしまいそうなときにも選択されることがあります。基本的に獣医さんから提案されることはありませんが、何年も診てくださっている獣医さんからは、選択肢として提示されることもあります。日を決めて行う場合もあれば、その場ですぐに行われることもあります。重要なのは、犬のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)です。

最終的な決定権は飼い主さんの意思に委ねられるので、ワンちゃんのことをしっかり考えて決めてあげましょう。

また、犬の最期の日が決まってからは、なるべく犬にとって幸せで楽しく過ごさせてあげましょう。

別な面として、飼えなくなった犬や野良犬が保護される動物愛護センターでも犬の安楽殺が行われています。動物愛護センターで保護される犬の数には限りがあるため、保護されてある程度の日数が経つと安楽殺という手段がとられるのです。安楽殺を減らすために各自治体で様々な対策がとられていますが、未だゼロには出来ていないというのが現実です。


安楽死についての考え方

ここまで安楽死の概要を説明してきましたが、実は海外と日本とでは犬の安楽死についての考え方が大きく異なっています。ここからは、その違いについて詳しく説明をしていきます。

◆日本

日本には、犬の安楽死に対して抵抗のある人が他の国々に比べて比較的多く存在しています。そのため、犬の安楽死に対して過激な主張をする人も少なくありません。悪い点ばかりではなく、安楽死や安楽死への反対の声が大きいおかげで、保健センターにおける安楽殺の件数の減少にもつながっています。双方の意見や考えを正しく理解し合うことが大切です。

また日本では、実際に安楽死を行う割合も世界的にみると少なく、安楽死処置を行ったことのない獣医師も存在しています。方針として、飼い主さんに頼まれても安楽死は行わないという獣医さんもいます。

先述の動物愛護センターでも安楽殺を減らす取り組みがなされており、中には、安楽殺ゼロを達成した自治体も存在しています。やはり日本の安楽死に対する抵抗は比較的強いと言えるでしょう。

◆海外

海外では、日本ほど安楽死に対しての抵抗は強くありません。スウェーデンでは犬の死因の大部分は安楽死で、アメリカや他の欧米諸国でも安楽死はとても一般的です。これらの国々では、老犬が受診する際には「治療」か「安楽死」かの2択を等しく迫られるといわれています。それほどに安楽死はポピュラーなのですね。

しかし、このように安楽死への抵抗が薄い国々の抱える問題点として、安楽死という結論に至るまでの道筋がとても短くなっているということが挙げられます。先述のように、獣医さんが、日本よりも早い段階で安楽死を勧めるようです。そのため、「治療」か「安楽死」かの選択がより重要になります。

また、今の時代はインターネットで簡単に安楽死の仕方についての情報を得ることが出来ます。そのため、飼い主さんが自ら方法を調べ安楽死処置を行うこともあるそうです。決してこのような方法を取ることが間違っているわけではないのですが、少し短絡的な印象を抱く人も少なくないかもしれませんね。やはり、海外は日本に比べて安楽死への抵抗が薄いと言えそうですね。


安楽死までの手順やかかる費用

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ここまでで、日本や海外の安楽死について大体のことはわかったでしょうか?ここからは、実際に安楽死処置を行う場合の手順や費用について説明をしていきます。

◆手順

安楽死を行う前に、本当にその選択で良いのかをきちんと考えましょう。家族での話し合いや、獣医さんに意見を聞いてもいいかもしれません。きちんと考えて決定した上で、安楽死させるという意思を獣医さんに伝えます。病院によっては、同意書を記入するところもあります。その後、実際に行う日程を決定します。病気やけがが差し迫った状況の場合、その場で行うこともあります。また支払いに関しては、処置の前に行う病院と後で行う病院とで様々なようです。

その後の安楽死には、基本的にペントバルビタールという薬剤を使用します。ペントバルビタールは鎮静催眠薬で、つよい催眠作用により生命活動を停止させます。この薬剤を投与する前に麻酔をかけ、苦しむことがないようにしておきます。ペントバルビタールを投与されると、やがて心臓や臓器の生命活動が停止し、やがて眠るように息を引き取ります。

犬が息を引き取った後はお清めを行う動物病院もあるようです。最後まで面倒を診てもらえると嬉しいですね。
 

◆費用

犬の安楽死にかかる費用は病院によって異なっていますが、大体1万円前後のところが多いようです。行きつけの動物病院がある人は、直接聞くことで値段を知ることができるでしょう。また、追加でお清めなどをしてもらう場合はその分の料金が発生することもあり得るので、事前に確認をして置くことが大切です。

「最後だというのにお金を払うなんて…」と思う人ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、これが愛犬にお金をかけてあげる最後の機会です。きちんと愛犬のことを考えてあげた結果ならば、金額に糸目はつけず、きちんとお別れをしてあげましょう。

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犬のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)について

導入の部分でも書きましたが、犬の安楽死を視野に入れるにあたって最も重視すべき大切なことは、犬のQOLです。QOLという言葉に対して馴染みのない人もいると思うので、最後にここから、犬のQOLについて説明していきたいと思います。

◆QOLとは

QOLとは、クオリティ・オブ・ライフの頭文字をとって作られた言葉で、直訳すると「生活の質」という意味になります。このQOLは後述の「動物の5つの自由」をもとに判断され、いかにこれを満たせているかが非常に重要になってきます。これは人でも同様の考え方が提唱されているため、ご存知の人も多いかもしれませんね。

安楽死について考える時には、このまま生かし続けることが本当にこれらの自由を尊重できているのか、あるいは逆に、安楽死させることがこれらの自由を守ることに本当につながっているのかということをきちんと考えてあげましょう。ちゃんと考えた上の結果であれば、きっとワンちゃんも理解してくれるはずです。

◆動物の5つの自由

先ほど、動物の5つの自由でQOLが判断されると説明しました。その動物の5つの自由には、【1.飢えと渇きからの自由 2.不快からの自由 3.苦痛、障害、病気からの自由 4.恐怖、抑圧からの自由 5.行動表現の自由】が含まれます。

それぞれを詳しく説明すると、5つの自由にはそれぞれ

1.飢えと渇きからの自由

・適切な食事をとることができているか
・綺麗な水を飲むことができているか

2.不快からの自由>

・清潔な環境で生活できているか
・雨風をしのげる環境にいるか

3.苦痛、障害、病気からの自由

・病気にならないようきちんと健康管理されているか
・病気やケガに対し適切な治療を受けられているか

4.恐怖、抑圧からの自由

・ストレスや精神的苦痛を感じていないか

5.行動表現の自由

・暮らすのに十分な広さが確保された環境か
・習性に応じた環境で飼育されているか    

などが含まれています。これらをきちんと理解した上で、愛犬のQOLについて考えてあげましょう。

これらの自由は動物福祉という考え方で提唱されているものです。自分が犬に対して行っている行動が動物の自由的にどうなのか気になる人は、調べてみてもいいかもしれません。


まとめ

ここまで、犬の安楽死について説明をしてきました。大切なのは、愛犬の苦しみを取り除き、QOLを尊重してあげることです。愛犬にとってどうするのが幸せなのかき、どうやったらQOLを尊重してあげられるのかをきちんと理解し、最善の方法をとってあげましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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