室内飼育が犬に与えるストレスについて
犬はとても好奇心が旺盛な動物です。また先祖がオオカミであることに由来するように、社会的集団を作って行動する性質があります。そのため1頭だけを飼育している場合でも、犬はその家庭を群と認識し、その中で自分が担うべき役割というものを認識しています。
たった1頭で三桁の数の羊を管理する牧羊犬であれ、家の中でしか過ごしたことがないヨークシャーテリアであれ、それは同じです。犬種により多少の違いこそあれ、外の気配を察知して群(家族)に異変を伝えるために吠えたり、訪ねてきた人に反応して警戒したり、というのは当然です。そして本来運動好きな犬が室内飼育で運動を制限されてストレスを感じている場合、時に過剰な反応を示すことがあります。飼育者はこの点に配慮し、犬の過剰な反応を制限してコントロールするために、躾を施す必要があります。
躾と同様に十分に運動させることも大切です。可能であれば犬が運動できるように開放的な環境に連れ出し、1~2時間ほどまったく自由に過ごせるようにしましょう。早朝の海岸や林道などは好適で、他の人に迷惑がかかることもありません。特に大型犬であったり狩猟犬であればこの自由運動は必須です。
とはいえ毎日このような運動をさせられる人は限られています。しかし運動意欲や猟欲が強い個体を飼うのであれば、このレベルで運動の時間を確保してあげないとストレスを感じてしまうかもしれません。
次善の策としては、小型犬であれば毎日30分、中型犬であれば1時間、大型種や猟犬であれば朝夕1時間ずつ引き運動をさせることが望ましいです。運動量を増やすためには飼育者は時に自転車などで引き運動をするように工夫すべきです。
このような欲求が満たされない場合は、無駄吠えや噛みつき、脱走などを行なうようになり、家族だけではなく近隣の住民に迷惑を及ぼすことになりかねません。これを防止するためには、十分な栄養と睡眠を与えた上で、犬が心地よい疲労を感じるまでに運動させてストレスを溜め込まないようにしなければなりません。
外で運動させる2つの方法について
犬を運動させるには、前述の通り開放的な空間でのびのびと自由運動をさせるのが最適です。早朝に海岸や大河川の川原に連れて行き、そこで放してやるのが良い方法です。注意したいのは、怪我を起こすような危険なものが落ちていないかどうか、落ちているものを拾い食いして事故や病気にならないかどうか、他の人や犬と接触する危険性はないかどうか、野生動物に反応してそれを追いかけて帰ってこなくなってしまわないか、などを事前に確認しておくことです。山間部において林道などで自由運動させるのにも、同様の注意が必要です。
この運動を行なう上で最低限必要になるのは、呼び戻しができることです。夢中になって遊んでいても、名前を呼んだり「来い!」「戻れ!」と命令したら即座に飼い主の元に帰って来るように訓練しておかなければなりません。そのために必要なのは、飼い主が群れのリーダーになっていて、強力な指示命令系統が確立されていることが必要です。飼い主の命令を普段よく聞く犬であっても、それが餌を得るための代償行為であったりすることが往々にしてあります。こうしたことがないように、日常生活の中で飼い主が常にリーダーシップを振るい、すすんで従属させるように躾や訓練を行なう必要があります。
もう一つの運動は、引き運動です。きちんとリードをつけ、常に人と歩調を合わせて歩くようにさせます。ぐいぐいと人を引っぱっていこうとする犬を見かけますが、そのような犬は運動途中になにか興味が引かれるものを見つけると、一目散にそれに向かって駆け出すことがあります。リードのすり抜けなどによって戻ってこなくなってしまうことがありますので、訓練によって人の歩調に合わせて歩くようにさせる必要があります。また人の側でもできるだけ速く歩いて犬をリードするくらいでないといけません。相手が活発であれば、自転車に乗って引き運動をするのが有効ですが、その場合転倒による危険などが想定されますので、十分に訓練し不測の事態を回避できるようでなくてはなりません。
このように自由運動や引き運動を毎日行なうことによって犬の運動意欲や猟欲が満足されるようにし、家から脱走してしまうなどの問題行動を起こさせないようにする必要があります。運動を行なう重要性はともかく、それによって事故を起こして他に迷惑を及ぼすことのないようにしなければなりません。
脱走などの問題行動を起こさせないためには
度々脱走を試みるような個体であれば、それが許されない行為であることを躾によって教える必要があります。
またそのような欲求を抱かずにすむよう適切な方法で不満を解消するなど対策を講じなければなりません。脱走などの問題行為の原因は、運動不足・飼育環境が不適切・外部の環境がうるさい・近隣の犬が発情期になっている、などが考えられます。運動不足はこれまで述べてきたような方法で解決するはずですが、それ以外の問題は比較的厄介です。
飼育環境には、その個体が落ち着いて休める場所が必要です。少なくとも二方が閉ざされていて、壁になっている場所がよいでしょう。部屋の角に十分な広さを持つケージを備え付けるのも良い方法です。犬は時に仰向け担って身体を精一杯伸ばすような仕草をしますが、その時につかえないような広さが理想です。また設置場所は、家にいる家族がそこから見えて犬が安心できるような場所であれば尚良好です。そしてケージにはドアがあり、内部から自分で開けられないような工夫が施されていなければなりません。
ケージの中には清潔なタオルや毛布が敷かれ、リラックスして過ごせるように工夫します。また新鮮な水が常時飲めるように、ボトル型の給水器を用意します。餌は毎日時間と量を決めて、十分な栄養が摂取できるようにします。また普段の躾の場面でも、ケージにいる時には叱りつけないようにします。そうしないとケージが安心して過ごせる場所ではなくなってしまうからです。
外部の環境がうるさい、近隣の犬が発情期になっている、などの問題は厄介です。このような場合はケージの扉を閉めてロックしてしまい、物理的に外に出られないようにするほかはありません。その場合無駄吠えなどが多くなる場合がありますが、躾や訓練によってコントロールできる側面もありますので、まず最初に飼い主をはじめとする家族全員がその犬よりも上位にいるということを徹底して覚えさせましょう。
脱走を繰り返すような問題行動を起こす場合は、前述の問題を検討し、原因の特定と対策を講じるようにします。理由なく問題行動を起こすということは普通はあり得ませんから、無理矢理押さえつけるなどという方法は逆効果になる場合があります。言葉の通じない犬の問題意識を察し、なにが原因なのかを考えるのも飼い主の役目であり、飼育の醍醐味でもあります。
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