怒りをコントロールすれば「無駄に怒る」ことを防げます
先日、疲れてソファでうたた寝してしまった私が起きたときに発見したのが、このメガネでした。
愛犬・アニィ(オーストラリアン・ラブラドゥードル)は素知らぬ顔をしていましたが、リビングのテーブルに置いたメガネに手が届くのはアニィのみ。
「この間遠近両用レンズで作ったばかりのメガネなのに……」
「遠近両用レンズはできあがりまでに時間がかかるのに……」
「普通のレンズよりも遠近両用レンズのほうが高いのに……」
と様々な思いが頭を駆け巡り、思わずカッとなりました。
しかし、「アンガーマネジメント」を学んでいた私は、
「部品をアニィが飲み込まなくてよかった」
「レンズが割れてアニィが怪我をしなくてよかった」
「犬は現行犯で叱らないと理解できない、今怒ってもまったく意味がない」
と考えることができ、怒りをぐっとこらえてその場をやり過ごすことができたのです。
以前はカッとなって怒りに任せて怒鳴ることが多かった私が感情をコントロールできたのは、「アンガーマネジメント入門」(安藤俊介著・朝日文庫)を読んだおかげです。今回は、この本に書かれているメソッドについて、一部分ですがご紹介いたします。
「叱らない」ではなく「怒りをコントロールする」のがアンガーマネジメント
「アンガーマネジメント」とは、”Anger”(怒りの感情)を”Management”(うまく付き合ってコントロール)することで、怒りのエネルギーを建設的な方向に使っていくプログラムです。
怒りを否定するのではなく、怒りをその場で爆発させず、仕事などへの原動力にしていく考え方といえるでしょう。
私は6歳の息子を感情的に叱ってしまうことが多く、これではよくないと反省していたときに「アンガーマネジメント」を知りました。「アンガーマネジメント入門」を拝読したところ、このメソッドは子どもにも、ワンちゃんとの付き合いにも非常に有意義だと思いました。
「アンガーマネジメント」は一時期流行した「叱らないしつけ」ではありません。「怒り」に任せた「叱り」の無意味さを訴えつつ、むしろ、怒りをコントロールしながら効果的に、冷静に叱るにはどうしたらいいかについて考えさせてくれるメソッドといえるでしょう。
「怒り」は3つのプロセスで発生する
アンガーマネジメントは、
- 頭を怒りにくい仕組みにする「認識の修正」
- 怒りのままに行動しない「行動の修正」
の2つから構成されます。そして、「認識の修正」の基本は、「自分は何かによって怒らされているのではなく、怒るという感情をわざわざ選んでいる」と気付くことです。その上で、怒りの発生を
- 出来事に遭遇する
- 出来事に意味づけをする
- 怒りが発生する
という3つのプロセスに分けます。先ほどの私のメガネを例に取ると
- うたた寝から目覚めたらアニィがメガネを壊していた、という出来事への遭遇
- もうこのメガネは二度とかけられない、メガネをまた作らなければいけない、お金がもったいないという意味づけ
- 「どうしてこんなイタズラをするの!」という怒りが発生する
というプロセスに分けるのです。
怒りを抱くときにとても重要なのが、第二段階の「出来事の意味づけ」です。発生した出来事を、自分が価値観(コアビリーフ)でどのように意味づけするかで、怒るか怒らないかが決まるのです。
犬を自分の思うとおりにしたいというコアビリーフを捨てる
自分の「コアビリーフ」がどこにあるのかを気付く上で重要なのが、怒りの記録「アンガーログ」です。私も、犬のイタズラになぜ怒りを覚えるのかを紙に書き出してみました。
- 片付けが面倒(ペットシーツをびりびりに破くなどのイタズラ)
- 買い換えなければならずお金がかかる(物を破壊するなどのイタズラ)
- 近所迷惑になる(帰宅時に嬉しくなるあまり吠えてしまうとき)
これらはすべて、人間の都合です。書き出すうちに、私には「犬は人の命令に従うべき」というコアビリーフがあり、アニィを私の思う通りのお利口なワンちゃんに育てたいという願望があることに気付きました。
もちろん、人間社会で犬が暮らしていく上では人が犬をコントロールすることが重要ですが、理想の押しつけはペットオーナー様にもワンちゃんにもストレスになってしまいます。
書くことによって、私は「アニィを自分の思うように育てたい」から「近所迷惑にならない程度に育ってくれればいい」とコアビリーフを改めていくことができました。
怒りのままに行動することを防ぐ「呪文」を考える
怒ることより問題なのが、「怒って冷静さを欠いたまま行動すること」です。正しく怒るためには、「この怒りは損か、得か」すなわち「ここで怒ったところで、何か現実がいい方に変わるのか」という視点が最も重要です。
怒りのままに行動しないために、「アンガーマネジメント」では「ストップシンキング」(100数えるなどして、怒りの原因になった状況について一切考えないようにする)、「コーピングマントラ」(自分だけの魔法の呪文を心の中で唱える)などの方法を提唱しています。
犬は過去にさかのぼって反省することができない動物ですから、過去のイタズラを怒っても、なぜ自分が怒られているのかを理解できません。そこで私は、愛犬のイタズラを発見したときには
「犬は現行犯で叱らないと意味がない、意味がない、意味がない、意味がない」
と唱えて、心を落ち着かせるようにしました。
不思議なことに、こう唱えることで
「大事なものは絶対にアニィが届かないところに置こう」
「リビングを離れるときにはアニィを必ずクレートに入れよう」
といった対処方法も、冷静に考えられるようになりました。その結果、感情的に怒ることが少なくなり、心なしかアニィや息子が穏やかになっていっているような気がします。
いかがでしたでしょうか。アンガーマネジメントは、ワンちゃんとの付き合いはもちろん、育児や仕事をする上でもとても役立つメソッドです。日本アンガーマネジメント協会(https://www.angermanagement.co.jp/)ではセミナーなども開催していますので、興味を覚えられたらぜひ本やセミナーなどで学んでみてください。
参考文献:「アンガーマネジメント入門」(安藤俊介著・朝日文庫)
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