【獣医師監修】夏場は食中毒とカビの発生にご用心!予防法を実践しよう

2017.06.19

【獣医師監修】夏場は食中毒とカビの発生にご用心!予防法を実践しよう

人間社会でも夏の暑い時期は特に、食中毒について注意喚起がされていますよね。梅雨から夏場は食中毒菌が増殖しやすい時期となるのです。主な食中毒菌は犬にも人にも感染する恐ろしいものです。今回は、そんな食中毒がもたらす症状や予防法と、夏場に増殖するというカビによる病気も併せて紹介していきます。予防法を覚えて実践できれば、愛犬を食中毒から守ることができますよ!

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食中毒の特徴

画像①

ネギ類やチョコレート等が、犬に中毒症状を起こすことは有名な話ですよね。愛犬家であれば犬が食べてはいけないとされる食品に関しては、十分注意を払っていると思います。
しかし、普段食べてさせているドッグフード等のカビから食中毒が発生する場合もあるのです。
食中毒の発生時期としては年中といえますが、梅雨の時期から夏の暑い季節には更なる注意が必要です。これは、高温多湿の状況下が続くと、カビや病原菌が活発となり増殖しやすくなる為です。
ドッグフードやオヤツ、手作り食の場合はその食材の管理方法や、普段使用している餌・水用の食器等の衛生管理には十分注意しなくてはなりません。
また食中毒が犬から人へ、人から犬へと感染する可能性も考えられます。
人間が食中毒を発症する原因となる細菌類のほとんどが、「人獣共通感染症」とされています。もし愛犬が細菌に感染していて症状が出なくとも、大便・嘔吐物の処理の際に、飼い主さんが感染して発症する場合もあるのです。


■食中毒の症状

犬が食中毒となった場合、主に下痢や嘔吐がみられます。発熱や脱水症状を伴う場合もあるので、食中毒と思われる症状がみられた場合は獣医さんに相談してください。正しく対処する為には原因を探ることが重要です。犬にとって毒物となる食材を与えていなければ、愛犬に与えた物に細菌が潜んでいた可能性を疑いましょう。

人獣感染症の内の一つに「サルモネラ菌」があります。人間社会でも聞き馴染みのある細菌名ですよね。
犬のこの菌による症状の発生率は人間と比べると無症状であることが多いですが、犬の糞便中から検出される割合は3~21.5%といわれています。若齢犬・妊娠中の犬・免疫力が低下した犬に症状がみられることが多いので、予備知識として押さえておきましょう。
サルモネラ菌には、食中毒性サルモネラ菌とチフス性サルモネラ菌があります。
食中毒性サルモネラ菌による症状は、主に腹痛・嘔吐・下痢・粘血便です。血液中に細菌が拡散する「菌血症」を起こして重症化したり、細菌が産み出す「エンドトキシン」という毒素によるショック症状を起こし、死亡という最悪のケースを招く場合もあります。ちなみにチフス性サルモネラ菌は人に対して感染しますが、犬や他の動物には感染しないといわれています。


カビによる犬の病気

犬 食中毒

梅雨時期、夏場等で高温多湿な状況が続いた時には、食品以外にも室内等のカビの発生に気を付けてください。
室内でカビが繁殖した場合、壁や床などを舐めてしまう可能性の高い犬は、人間よりもカビによる病気を発症しやすいといえます。カビによる主な病気の一例を紹介します。

●マラセチア

元々皮膚や耳に存在しているカビの一種で、繁殖することで皮膚に炎症を起こします。健康時には問題を起こしませんが、免疫力・体力の低下時に発症するといわれています。発症すると耳垢が増えたり、痒みが発生します。

●白癬症(皮膚糸状菌)

白癬菌というカビの一種が、皮膚に感染することで発症する病気です。顔や耳等、身体の柔らかい部分に円形の脱毛を起こします。人間の水虫の原因となる菌の仲間であり、人間にも感染する可能性が高いです。犬の皮膚糸状菌が人に感染した場合は、赤みがでて水ぶくれができてしまう場合があります。

●クリプトコッカス症

空気中や土中など、様々な場所に存在するクリプトコッカスというカビの一種がもたらす病気です。このカビを鼻・口から吸い込むことで感染してしまいます。健康時には感染しませんが、免疫力が低下している状態であれば発症しやすくなります。
くしゃみ・鼻水などの症状の他に、鼻に腫瘍ができてしまうケースもあります。悪化すると肺炎を起こし、呼吸困難に陥る危険性も潜んでいます。眼・中枢神経へ感染した場合、失明・痙攣・麻痺・運動障害をもたらす可能性もあります。


食中毒の原因

犬 食中毒

食中毒は主にカビや病原菌・細菌類が体内に摂りいれられることで発症します。食中毒菌には前述したサルモネラ菌やカンピロバクター菌等があり、いずれも代表的な人獣共通感染症です。予防する為にも、食中毒となり得る原因を頭に入れておきましょう。

●食品による感染

カビ・細菌類に汚染された食品を食べることが原因となります。
充分に加熱されていない肉や生肉を食べさせるのは危険です。人間同様に、犬に食べさせる場合は十分に加熱すること、食用肉以外与えないことが大切です。
また、梅雨から夏場等の高温多湿な状況下では、ドライフードにさえカビが発生する場合があります。ドライフードの水分率は10%以下と低いのですが、室温が高くなると、ドライフードがその水分を吸ってしまいます。結果、水分率が10%を超えてカビが発生するのです。更に、愛犬が普段使用しているフード・水用の食器類にも、同様な状況下では細菌が増殖します。

●糞便による感染

食中毒菌を保有した動物の糞便と接することで感染します。野良犬や野良猫、野生動物などの糞便を何らかの形で摂食したり、その糞便に汚染された水を飲んでしまうと食中毒を発症する危険があります。特に、愛犬が食糞をする場合は注意が必要です。

●爬虫類からの感染

ヘビ・カメ・トカゲなどの爬虫類は、サルモネラ菌を高確率で保有しています。ペット用爬虫類の保有割合でも、家庭内飼育が32.2%、ペットショップが80.0%、輸入直後は56.0%と高い確率を示しています。爬虫類を触った手を犬が舐めるなどして、感染する可能性があるのです。愛犬と一緒に爬虫類のペットを飼っている方は、十分注意が必要です。


■食中毒の治療法、予防法

犬 食中毒

食中毒が原因の嘔吐や下痢は、毒素を体外へ排出する為の生理作用といえます。無理に止めない方が回復は早くなりますが、症状がみられた時点で原因を突き止め、病院を受診することが何より安心でしょう。
病院では、症状によって栄養剤の注射や、抗生物質・整腸剤が投与・処方されます。
下痢や嘔吐がみられる病気は多々あるので、愛犬の状態や想定される原因を正しく獣医さんに伝えましょう。

食中毒を発症した場合は迅速な対処が必要ですが、何より食中毒を予防することが大切です。具体的な予防法を覚えておきましょう。

①ドッグフードやオヤツ

ドライフードの場合、開封後は30日前後で食べきる容量を購入しましょう。袋の封をきちんと閉めるなどして、水分が入らないよう注意したり、可能な限り空気を抜いて封をすることで酸化が進みにくくなるようにしてください。冷蔵保存は、袋内部に結露が発生する可能性があります。カビの発生や腐敗を招くので、基本的には常温保存としましょう。但し、メーカーによって推奨する保存方法が違う場合もあります。パッケージの性能も異なりますので、与えているフードの保存方法を確認しておきましょう。
缶フードやレトルトフードの場合は、開封後冷蔵保存し、早めに食べきりましょう。
オヤツも商品によって様々ですが、メーカーの指示する保存方法に従ってください。
フード・オヤツのいずれに関しても、与えたものを愛犬が食べ残した場合はすぐに片付けることが大切です。放置することで細菌の繁殖を招き、傷んだり腐敗したものを食べてしまう可能性があります。特に水分の多いフードや手作り食の食べ残しには要注意です。

②肉の扱いや与え方

生肉に潜む主な食中毒菌は、大体75度以上で1分間以上加熱することで死滅します。十分に加熱していない肉や生肉は、食用肉であっても与えないことが何よりの予防法です。
生食用の食肉であっても、体力・免疫力が低下している場合は、食中毒を発症する可能性があるので注意してください。
また、生肉を調理した包丁やまな板から、別の食品に細菌が移ることもあります。人間社会でもよく耳にする食中毒予防法ですが、生肉を扱う場合には細心の注意を払いましょう。

③フード・水用食器の管理

フードボウルや水を入れる食器は、丁寧に洗い衛生を保ちましょう。ヌメリは細菌を増殖させる原因になります。
愛犬の口・舌が触れる食器類は、特に注意して衛生管理を行う必要があるのです。
使用している食器によって形状や材質は様々です。例えばケージ取り付け型のドリンカーは飲み口に細菌が増殖しやすい形をしています。自動給餌器や給水器も、形によっては汚れが取れにくい部分があります。隅々まで丁寧に洗い、細菌の繁殖を防いでください。
ウェットタイプのフードを自動給餌器で愛犬に与えている方は、夏場は特に注意してください。フードが傷んでしまう可能性があります。自動給餌器の使用が避けられない方は、普段からドライフードに慣れさせておき、梅雨から夏の時期だけでもドライフードに変更することが得策だといえます。

④排泄物の処理方法

犬から人間への感染経路として多いのが、口や大便からといわれています。使用済みペットシーツや、大便を処理する場合には、直接手で触れないよう注意したり、処理後には必ず手を洗う等の習慣をつけておきましょう。愛犬に口移しで物を与えないということも、常識的ですが大切な予防策となります。


まとめ文

食中毒

食中毒は、愛犬は勿論、飼い主さんにも発症する可能性のある恐ろしい症状です。
これから迎える夏の暑い時期に備えて、食品や食器類、室内の衛生管理を普段から心掛けておきましょう。
主な食中毒菌は人獣共通感染症です。飼い主さんが倒れてしまっては、愛犬に可哀想な想いをさせます。
食中毒予防法を実践し、愛犬と共に健康的な毎日を過ごしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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