1.犬ぞりとは?
1-1.犬ぞりの歴史
1-2.犬ぞりの役割
2.犬ぞりで活躍する犬種
2-1.アラスカンハスキー
2-2.アラスカンマラミュート
2-3.シベリアンハスキー
2-4.サモエド
2-5.カナディアンエスキモードッグ
2-6.グリーンランドドッグ
【掲載:2018.01.01 更新:2023.11.14】
犬ぞりとは?
犬にそりを引かせて移動や運搬をする手段、またその構造全体のことを「犬ぞり」といいます。
かつては高緯度地域や積雪地帯において、そり犬達の活躍が人間の生活を支えることで発展していきました。
近代以降は世界各地で犬ぞりレースや犬ぞり体験など、イベントの一環として犬ぞりが用いられる機会が増えています。
◆犬ぞりの歴史
犬ぞりはモンゴルが発祥地と考えられており、3万~3万5千年前には存在していたという、とても古い歴史を持っています。
紀元前1,000年頃に居住地域が北極圏に近くなったことで、犬ぞりの役割はどんどん大きくなっていき、単なる移動手段に限らず、荷物の運搬や探検にも用いられるようになりました。
1911年10月20日に、人類初の南極点到達を果たしたロアール・アムンセンも、犬ぞりを使用することでこれに成功しています。また、その他にも犬ぞりが歴史の中で残した功績として、1925年に血清を1,085㎞輸送したソリ犬バルトの話はとても有名です。
◆犬ぞりの役割
始めはモンゴルの住人の交通手段として使用されていた犬ぞりですが、住人が居住範囲を広げていくことで、探検の際にも用いられるようになります。
ソリ犬は、耐寒・持久力・従順性に優れている上に、粗食に耐えられる性質を持っていました。馬などが生きていけない過酷な環境にも耐えることができ、当時大きな活躍をみせていたといいます。
また、北極地方の場合、走行場所となる氷の下が海であることが多いのですが、ソリ犬は海への落下を防ぐ為に、自身で氷の割れ目を避けるなどの判断をすることができます。
これらの性質から、犬ぞりは安全な交通手段といわれ、北極地方の探検にも用いられるようになりました。
犬ぞりで活躍する犬種
歴史からも分かるように、そり犬には寒さに強いことや、力があること、そして高い協調性が求められます。
世界中でそり犬として活躍している犬種を一部紹介します。
◆アラスカンハスキー
そり犬として最も多くみられる犬種です。ケネルクラブ公認の純血犬種ではありませんが、生まれながらにそり犬としての素質を備えている優秀な犬種として有名です。
体重は約18~34kgで、様々な犬種やオオカミなどが交じり合っています。そりを引くのが好きで、それは本能としても刻み込まれているそうです。
◆アラスカンマラミュート
犬ぞりレースでの記録保持者は、多くがこの犬種を採用していることが多いそうです。
体重は約36~54kgで、厚い被毛、理想的な骨格や四肢が特徴的です。持久力・牽引力・耐寒性に優れているので、長距離の犬ぞりレースや移動・運搬において大きな活躍をみせます。
◆シベリアンハスキー
ペットして飼われている家庭も多く、知名度の高い犬種です。
体重は約18~27kgで、従順な上に親しみやすい性格をしています。人に懐きやすく集団生活に向いていますが、闘争心は他の犬より強くありません。しかし適度な警戒心を持っているので、そり犬としても世界中で活躍しています。
◆サモエド
前述した探検家アムンセンが、南極初遠征でそり犬に採用したのがこの犬種です。
体重は約16~30kgで、温和で献身的な性格をしていることから、こちらも家庭犬として人気のある犬種といえます。口角を上げた表情が「サモエドスマイル」と呼ばれていて有名ですが、この可愛らしい表情を持ちながらも、過酷な条件下で自身の体重の約2倍近い荷物を引ける程の力持ちです。
◆カナディアンエスキモードッグ
カナダ北部のイヌイットが、アザラシや熊猟などに用いていた犬種です。「エスキモーハスキー」や「キミック」という呼称もあります。
体重約30~40kgで、高い身体能力を持つ上に、耐寒性も高く、重労働にも耐えることができます。この犬種は、1匹で45~80kgの重量を引きながら、24~110km程移動することができるといわれています。
◆グリーンランドドッグ
世界で最も古い犬種の一つと考えられており、古代から狩猟・犬ぞりなどに用いられていた歴史があります。
体重約30~32kgで、粗食に耐えることができ、耐久力・忍耐力にも優れた、まさにソリ犬として適格な特徴を持っています。原産国グリーンランドでは、現在でもスノーモービルを抑えて、冬場の主要な移動手段として活躍しているそり犬です。
犬ぞりレースとは?
犬ぞりレースとは、「マッシャー」と呼ばれるソリの操縦者が、そり犬達を率いてゴール地点までのタイムを競うもので、一部地域では冬のスポーツとして人気があります。
レースの距離はショート・ミドル・ロングの三種類に分けられ、ロングには1600キロ以上を数日かけて走るレースもあるそうです。ちなみに海外で有名な犬ぞりレースには、アラスカの長距離犬ぞりレース「アイディタロッド」や「ユコンクエスト」があります。
もちろん、本来犬ぞりが持っていた役割が消えてしまったわけではありません。アラスカやカナダ、グリーンランドなどの一部地域では、未だに現役で人間の為に働いているそり犬達もいます。
◆「マッシャー」について
マッシャーとはそりの操縦者のことで、ソリ犬に人・物などを運ばせる「マッシング」を行う人のことを指します。
そり犬をコントロールする際には、様々なコマンドを使用され、以下がその一例となります。
例)Mush⇒進め、Gee⇒右に曲がれ、Haw⇒左に曲がれ、Whao⇒止まれなど。
使用される指示語はマッシャーによって違うようですが、指示する内容は大体どこの国でも同じだそうです。
◆そり犬のつなぎ方
犬ぞりには、「タンデムタイプ」「ファンタイプ」という二通りの犬のつなぎ方があります。
タンデムタイプは、ソリ犬達を一直線につなぐタイプで、森の中や険しい地形などを走る際に用いられます。「ランタイプ」と呼ばれることもあります。
ファンタイプは、そり犬達を扇形につなぐタイプで、開けた地形を走る際に用いられます。カナダ北部のイヌイットに古くから伝わるつなぎ方だといわれています。
◆犬のポジションによる役割
ソリ犬達を一直線につなぐタンデムタイプの場合、つないだ場所によって役割が変わります。全ての犬が、大体同じ大きさ・ペースで走ることを要求されるのです。
①リードドッグ
先頭を走る犬のことで、賢く、勇敢で直観力に優れていることが求められるポジションです。マッシャーに対して忠実であることが重要となります。
20世紀中頃までは1頭であることがほとんどでしたが、近年では2頭が主流となっているようです。
②ポイントドッグ
リードドッグのすぐ後ろを走る犬のことで、「スイングドッグ」とも呼ばれています。チーム全体の方向付けをする役割を担っており、強壮で足が速いことや、チームを導く能力が求められるポジションです。
③ホイールドッグ
ソリに一番近いポジションを走る犬のことで、体力と、マッシャーや他の犬との高い協調性が求められます。
④チームドッグ
ポイントドッグとホイールドッグの間で走る犬のことです。全体の牽引力を高めるのが役割ですが、6頭引きの場合には割愛されることがあります。
日本でも犬ぞりは行っている?
犬ぞりは始めにご紹介した通り、本来高緯度の地域の人間や荷物を運ぶ目的をもって発展したものですが、近年では冬季のドッグスポーツとして親しまれています。
広大な自然と豊富な積雪量を誇る北海道では、本格的な犬ぞり体験や犬ぞりレースを見学できる場所が数々ありますし、中には群馬ような比較的低緯度の地域でも体験ができる施設があります。
日本ではスキーと同じ時期で1月から3月の間が犬ぞりのシーズンとなりますので、ご興味があれば是非調べてみて下さい。
このような大会・イベント他にも観光客向けに組まれたツアーでは、プロのマッシャーと一緒に「犬ぞり」に乗車できたり、中には体験・講習後にマッシャーとして自分1人で犬ぞりを体験出来るプランもあります。
人と犬とが互いに力を合わせ一体となることで成り立つ『犬ぞり』1度体験してみてはいかがでしょうか。
まとめ
寒冷地での移動や荷物の輸送の手段として生まれた犬ぞりは、現代ではドッグスポーツとしても親しまれています。
1頭から8頭まで様々な引き方がありますが、ソリに乗り犬たちを統率するマッシャーと犬たちとの『チーム』の絆がとても重要であるということは共通しています。
見ているだけでも大迫力な犬ぞりですが、実際に体験してみるとより感動が得られると思います。
犬ぞりの歴史や犬のポジションの意味を知るとより楽しめると思いますので、犬ぞりに興味のある方にこちらの記事を参考にしていただければ幸いです。
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