1.犬が唸る理由は?
1-1.犬の祖先のオオカミが吠える理由は「居場所を知らせるため」
1-2.犬はそもそも「吠える」動物
1-3.犬が唸る理由の多くは「恐怖や不安」から
4.【状況別】犬が唸るのをやめさせる方法
4-1.他人への警戒心から唸る場合
4-2.社会化不足から唸る場合
4-3.身体を触ろうとすると唸る場合
【掲載:2018.08.02 更新:2020.08.02】
犬が唸る理由は?
犬はどういう時に唸るのでしょうか?
まずは、犬が「唸る」理由の前に、犬が「吠える」理由について考えてみたいと思います。
◆犬の祖先のオオカミが吠える理由は「居場所を知らせるため」
犬の祖先と言われるオオカミと、私たちと共存する犬との違いのひとつに、「吠える意味の違い」があります。
野生のオオカミはよく遠吠えをするイメージがありますが、それは誤った認識です。オオカミが遠吠えをする目的は、遠く離れた所にいる仲間に自分達の居場所を知らせることだと言われていますが、何回も遠吠えをすると、敵である他の群れのオオカミにも自分達の居場所を教えてしまう事になってしまいます。
遠吠えをすると、縄張り争いのリスクが上がりますので、オオカミは必要に迫られた時にしか遠吠えをしないと言われています。また、遠吠えに限らず、オオカミが大きな声で吠えるようなことは滅多にありません。
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◆犬はそもそも「吠える」動物
それに対して、犬はもともと「吠える」という性質を持った動物です。
犬の「吠える」という性質に着目したのが古代の人たちです。狩猟のお供として、夜間に外敵の接近を知らせてくれる警備役として、よく吠える犬を家畜化して利用したと考えられています。人に飼われるようになった犬たちにとって、吠えることは重要な仕事だったのです。
厳しい自然界で生きているオオカミは、エネルギーの無駄遣いになるようなこと、無駄に吠えるようなことはしませんが、幼年期には様々なことを要求して吠えます。
犬は、この幼年期のオオカミにとても近く、人でいえば赤ちゃんのような性質です。赤ちゃんが泣いて何かを要求するように、犬も吠えたり唸ったりすることで人に何かを伝え、コミュニケーションを取ろうとしているのです。
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◆犬が唸る理由の多くは「恐怖や不安」から
犬が唸る理由としては、恐怖や不安を感じている時や、何かに対して警戒している時、痛みや嫌悪感を感じている時、遊びの最中などで興奮している時などが挙げられます。
遊んでいる時以外の場面で唸る理由は、「やめろ」「こっちへ来るな」「触るな」などの意思表示であることが多く、咬みつく行為の前段階だと認識するべきだと思われます。犬が唸ったことに対して無条件に叱るのではなく、何が理由で唸ったのかを把握することが重要です。
ひっぱりっこなどの遊びに夢中になって唸る場合は、無理にやめさせる必要はありません。ただ、おもちゃに執着しすぎる様になってしまうと、おもちゃを離さなくなってしまったり、取ろうとすると怒ったりするようになることがあります。
「離せ」や「アウト」、「ちょうだい」などのコマンドで飼い主におもちゃを渡すことを教え、遊びの最中に取り入れながら、犬が興奮しすぎるのを上手くコントロールできるようにしておきましょう。
唸りやすい犬種は?
人は、吠えるという性質を持った犬を様々な目的に合わせて改良し、現在見られるような多種多様な犬種を作り出しました。唸るという行為の頻度には、社会化やこれまでの経験、習得による個体差がありますが、犬種ごとの特性の差も少なからずあるでしょう。
不審なものを見ると吠えて知らせる番犬や、警護をする使役犬、家畜が群れから離れないように吠え声でまとめる牧羊犬、吠えることで獲物を追いこんだり、獲物の居場所を知らせる狩猟犬などは、他の犬種に比べると比較的唸りやすいかもしれません。
どんな犬種でも、身の危険や不安、緊張などを感じると唸ります。なかでも次の犬種は警戒心や執着心が強い個体が多いため、オヤツやおもちゃを取られそうになったり、嫌悪感、危険を感じるなどの理由で唸ることが多いようです。
その犬種の沿革や特性を正しく理解しておくと、唸るなどの好ましくない行動に対しても、より正しく対処できるでしょう。
犬が唸るのをしつけで止めさせることはできる?
犬はもともとよく吠える動物ですが、人は自分たちの役に立つように、その吠えるという性質を強化していきました。よく吠えて仕事をする犬を褒め、信頼関係を築いていったのです。
しかし、現代では犬は本来の仕事を失い、犬の存在は使役から愛玩へと変わってきました。それに伴って、吠えたり唸ったりする性質は歓迎されなくなってしまいました。
とはいえ、一度強化された性質は簡単にはなくなりません。吠えたり唸ったりすれば飼い主は気づいてくれるので、犬にとってはこれ以上ないコミュニケーション手段なのです。
犬が唸ったら、まずは何に対して唸っているのか、そしてなぜ唸るのか、理由を確認しましょう。唸るという行為自体を叱ってはいけません。唸る理由を確認した上で、どうすれば止めさせることができるかを考えます。
どんな理由であれ、犬が唸ることを完全に止めさせることはできませんが、「オスワリ」や「静かに」などの指示でコントロールすることはできるでしょう。
【状況別】犬が唸るのをやめさせる方法
犬が唸る理由ごとにその対策を考えてみましょう。
◆他人への警戒心から唸る場合
玄関チャイムや電話、来客、道を通る人などが理由で唸るのは、唸ることで飼い主に注意を促そうとしているのだと考えられています。
こういった場合、犬には警戒心、不安、遊びたい気持ちなどが入り混じっています。不安感の強い犬の場合、叱ったり、物を投げて驚かせたりすると、問題が悪化してしまうことが多いです。
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最も効果的なのは、犬と一緒に相手の人や物を確認し、リードを付けてオスワリをさせてから来客に対応したり、次の行動に移ることです。
他にも、ハウスを命じて犬をハウスに入れてドアを閉じ、飼い主は玄関に出たり、見えないところに移動する方法があります。この場合、ハウスに入って「次もまた吠えて教えなくては」と思う犬もいれば、狭い場所に入ることで安心して静かになる犬もいます。
また、唸る前にオヤツなどで注意をひきつけてオスワリをさせ、静かにしていられたらご褒美を与える方法もあります。警戒する対象が表れるたびにオヤツがもらえることで、次第に警戒心が薄れ、吠えたり唸ったりしなくなる場合があります。
「オスワリ」は唸ることと関係なさそうに感じますが、犬自身を落ち着かせる効果もあるので、不安な気持ちや警戒心を軽減させるのに有効です。
◆社会化不足から唸る場合
散歩中に通り過ぎるバイクや車などが理由で唸る場合は、子犬の頃の社会化不足などにより、対象物に対して不安を感じていることが原因かもしれません。
この場合、犬を叱ってもほとんど意味はありません。散歩中はリードを短く持ち、犬が不安感を示す前に「オスワリ」の指示で座らせ、落ち着いたらよく褒めてあげましょう。また、対象物と犬の間に飼い主が立ち、犬を守るような態度を示すことも効果的です。
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対象物が近づいてきたらオヤツを与え、それを繰り返すことで徐々に慣らしていく方法もあります。
この方法では、最初は不安感が大きすぎるとおやつを食べてくれないかもしれませんが、遠くからであれば不安も小さく、食べることができるでしょう。対象物の音で褒められると、犬は次第に自信を持ち、不安から唸ることが減っていきます。
また、牧羊犬や狩猟犬の犬種では、本能的に追いかける衝動が強い犬や、退屈を紛らわせるために楽しんでいる犬もいるようです。
そういった場合には、普段の運動量を2~3倍に増やすことで、疲労感や満足感から改善することがあります。
◆身体を触ろうとすると唸る場合
身体を触られることを極端に嫌がり、唸ることで拒絶を示す犬もいます。
この場合、爪切りや耳掃除、ブラッシングなどのお手入れを嫌がって唸るような場合も同様で、少しずつ気長に慣らしていくことが大切です。短期間で解決しようとせず、オヤツなども使いながら、少しずつ時間をのばしたり、距離を縮めていきましょう。唸るポイントやタイミングを見つけ、唸る前に止めることが重要です。
犬をしつける時の注意点
どんな場合でも決して無理はせず、唸る理由が分からなかったり、唸るのが改善されない、日常生活に支障がでるような場合には、早めに訓練士に相談するようにしましょう。適切なしつけ方をしないと、唸る行為がエスカレートしてしまうこともあります。
これから子犬を迎える場合には、幼犬期によく社会化をすることで将来唸りにくい犬に育ちます。生後3か月までに老若男女様々な人に会わせ、手からオヤツをもらうことで、見知らぬ人に対しての警戒心が薄れます。
生後半年ほどまでの仔犬のうちに、外の世界をよく見せ、車やバイク、自転車、人混みなどを経験させることで、成犬になったときに、不必要な恐怖や不安を感じることが無くなります。
なにより幼犬のうちから飼い主とよくコミュニケーションをとることで、深い信頼関係が結ばれ、犬は自信を持ち、様々な状況の中でも落ち着いて過ごすことができるようになります。
なぜ犬が唸るのか理解することが重要
犬が唸るなどの、人にとって好ましくない行動をした時、私たちはつい叱ったり矯正しようとしてしまいがちですが、理由もなく犬が唸ることはありません。犬がなぜ唸るのか、何を伝えようとしているのかを理解し、どうすれば改善できるかを考えてあげましょう。
犬が唸る理由は、単純な何かひとつではない場合が多く、犬のこれまでの様々な経験や感情が関係していると、非常に複雑になってしまうこともあります。飼い主さんや家族だけで抱え込まず、少しでも難しいと感じたら早めに訓練士に相談することをお勧めします。
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