犬の食物アレルギーとは
◆人間だけじゃない!?ペットにも起こるアレルギー反応
人間に限らず、動物の体には「免疫」という機能があります。この免疫には、ウイルス・細菌等、病原体の侵入から体を守る働きがあるのです。
本来無害である、食べ物・花粉などにまで免疫システムが過敏に反応し、自身を傷つけてしまうことがあります。これをアレルギーといいます。
ちなみに免疫反応を引き起こす原因となる物質を「抗原」といい、アレルギー反応を引き起こす抗原が「アレルゲン」と呼ばれます。
人間には様々なアレルギーがありますが、それは犬にとっても同様であることが判明しています。
◆犬に見られる食物アレルギー
今回着目する食物アレルギーとは、その名の通り「食べ物が原因で起こるアレルギー症状」ということになります。
アレルゲンとして報告例の多い食材には、牛肉・乳製品・小麦・ラム肉・鶏卵・鶏肉・大豆・トウモロコシなどがあります。
アレルギー反応による症状は、軽度なものから重度のものまで様々です。時に命に係わる場合もある、ということは皆さんご承知でしょう。
愛犬に食物アレルギーが出てしまった場合は、ドッグフードを変えるなどして対処する必要があります。
おやつに関してもアレルギーへの配慮が必要になってきます。
ラムやチキンなどで食物アレルギーが出てしまっても、比較的アレルギーが出にくいといわれているカンガルー肉を使用したおやつや、単一タンパク源のみで作られたジャーキーがあるのでそれらを選んであげましょう。
犬の食物アレルギーの症状
犬の場合、実際にどのような食物アレルギーの症状が起こるのか、チェックしておきましょう。
◆食物アレルギーの主な症状
食物アレルギーが原因で起こる主な症状には、強い痒み・皮膚炎・腸炎などがあります。
犬にとっては比較的起こりやすい病状なので、食物アレルギーではなく他の病気によるものかな?と勘違いしてしまう可能性もあるでしょう。
既に愛犬のアレルゲンを特定できていれば、その原因物質をフードや食事で与えてしまった、盗み食いをされてしまった、といったことからすぐに食物アレルギーによる反応であることを決定づけることはできます。
愛犬のアレルギー体質に気付けていない場合に、症状を見てすぐに気付くことは中々難しいかもしれませんね。
他の病気によるものか、食物アレルギーによるものかを、しっかり見極めることが重要です。
食物アレルギーによる症状であれば、まず季節に関係なく起こるということが一つのポイントです。
◆食物アレルギー症状の出やすい部位
皮膚炎の症状が出やすい部位として、以下の場所があげられます。
・目・口・耳周辺・外耳などの顔部分
・足先・尻尾・陰部周辺・肛門周囲などの先端部
・わき・内股・肘・膝の裏側・指や肉球の間などの皮膚が重なる部分
身体を脚でしきりに掻く、皮膚を噛んだり舐めたりする、床に口を擦りつけるなど、皮膚炎を発症した場合にはこれらの行動がみられることが多いです。
掻いたり擦ったりすることで傷が出来てしまった場合には、二次的に細菌感染・真菌感染を起こして、痒み・臭いが強くなるでしょう。
慢性的な嘔吐・軟便・下痢などが、腸への刺激によって起こるケースも多いです。
これらの症状を確認した場合は、一度動物病院で検査を受けてみてください。
原因特定のためにも、症状が出る前の愛犬の行動をしっかり獣医さんに伝えることが大切です。普段から愛犬の様子に目を配り、変わったことがなかったか、どんなものを口にしているかを、しっかり把握しておきましょう。
犬の食物アレルギーの対処法
◆犬の食物アレルギーの対処法①アレルゲンの特定
愛犬をアレルギーによる症状から守るためには、原因となっているアレルゲンの特定が重要となります。アレルギー疾患にとって最も有効なのは、そのアレルゲンとの接触を避けることだからです。
愛犬にアレルギー疾患の疑いがある場合は、まず動物病院に相談し、アレルギー検査を行うことをお勧めします。
アレルゲンを特定するために行う検査には、皮内反応試験・アレルゲン特異的IgE検査・リンパ球反応試験・除去食試験という種類があります。
食物アレルギーの可能性が高い場合は、主に除去食試験が行われるでしょう。
除去食試験とは、本当に食物アレルギーによって症状が起こっているかを確認すると共に、原因となっている食物を特定するための検査です。
まず、日常的に与えていたドッグフード・おやつなどをストップし、除去食のみを一定期間与えます。
除去食とは、アレルギーの原因となっている可能性のある成分・食材を一切含まない食事のことです。これを通常であれば一か月半から二か月程度継続します。
獣医師の指導のもとで、特別な療法食・家庭調理食などを除去食として使用し、検査期間内にそれ以外のものは一切与えてはいけません。除去食として、加水分解したタンパク質を用いたものや、新奇タンパクフードという、摂取したこのないタンパク質が利用されたものなどが使われることもあります。
除去食を一定期間与えた後に症状が改善された場合、除去食以前に与えていた食物が、アレルギーの原因であった可能性がみえてきます。
そこでアレルゲン特定のために、除去食を与えつつ、アレルギー原因の可能性のある食物を一週間、一種類ずつ与えていくのです。そしてアレルギー症状が起これば、アレルゲンとなる食物が特定できるというわけです。
食物アレルギーに関する動物病院での費用は、症状はもちろん病院によっても変わってきます。
現代では様々なペット保険がありますが、中にはアレルギーによる通院でも保険によって費用を補えるケースもあるようなので、保険に加入している飼い主さんは一度確認してみるとよいでしょう。
◆犬の食物アレルギーの対処法②食物アレルギー対応のドッグフード
愛犬のアレルゲンが特定できたら、与えるドッグフード・おやつの見直し、切り替えが重要となります。
アレルゲンを除いた材料でドッグフードを手作りするという方法もありますが、必要な栄養素や、年齢・運動量に応じたカロリー計算などは避けられないため、中々大変です。特に犬にとって塩分やたんぱく質など、必要な成分・栄養素は人間とは違います。毎日の食事をしっかりと計算して与えるのは、困難でしょう。
どちらかといえば、愛犬にとってのアレルゲンが含まれていないドッグフードを探す方が無難です。
近年市販されているドッグフードの種類は、どんどん増加してきています。
一般的なドッグフードは、鶏肉・小麦・トウモロコシ・大豆などを基本素材として作られているものが多いですが、食物アレルギーに対応したドッグフードも販売されているのです。
アレルゲンとなるたんぱく質が分解されているものや、アレルゲンになりくい魚・米・豚肉・ジャガイモなどの食材中心で作られているドッグフードなど、その内容は様々です。
愛犬のアレルゲンが特定できたら、まずは愛犬に合ったドッグフードがないか探してみてください。
ちなみに、魚を材料として製造しているドッグフードは数が少ないので、犬が免疫を獲ている可能性が低いことから、アレルギー症状の原因にならない可能性があるともいわれています。
ただし、食物アレルギーには、アレルゲンに近い組成の食品にも反応してしまう「交差反応」が起きる場合もあります。
魚でもこの可能性はあるので、与える場合は愛犬の様子をしっかりと観察し、症状が起こったら病院を受診してくださいね。
食物アレルギーの犬を飼うときは絶対に盗み食いをさせない
愛犬を食物アレルギーから守るためには、飼い主さんがしっかり与えるフード・おやつを管理することが重要です。アレルゲンの特定ができれば、あとはそのアレルゲンを避けて生活することで愛犬に症状がでるのを防ぐことができるでしょう。
食物アレルギーの症状は犬にとっても辛いものです。そこで必ず守るべきことは、「盗み食いをさせない」ということです。
アレルギー症状に関わらず、盗み食いや拾い食いをさせないことは愛犬の健康維持にも繋がります。人間にとっては問題のない食材でも、犬にとっては中毒となる食物もあるのです。
日頃から、飼い主さんや家族が与えたもの以外は食べないように、しつけを行うことが大切ですね。
家庭で愛犬に盗み食いをさせないために、以下の3つの項目を守りましょう。
◆犬の盗み食い対策①盗み食いをさせない環境づくり
食事が終わったら片付けなどを速やかに行い、食卓や愛犬が届く場所に食べ物を放置しないよう気を付けましょう。キッチンには愛犬が入れないようにゲートを設置するなどして、境界線を作るのも効果的です。
愛犬がテーブルに乗ってしまう場合は、それがいけないことだとしっかり教えなくてはなりません。テーブルに手をかけた瞬間に「ダメ」などと声をかけて、しっかりしつけを行いましょう。
◆犬の盗み食い対策②「まて」「だせ」を覚えさせる
基本的なしつけの一つである「まて」を覚えさせましょう。これは盗み食いの防止に関わらず、色々な場面で役に立つコマンドの一つでもあります。
愛犬が普段食べているドッグフードやおやつを使って、初めの内は数秒、少しずつ時間を延ばして「まて」をさせ、上手にできたら沢山褒めてあげてください。何度も繰り返すことで、「まて」ができるようになります。
そしてもう一つ「だせ」ができるようになると、盗み食いや誤飲などの際に役に立ちます。
盗み食いの瞬間を目撃すると、ついつい「あっ!」「だめ!!」と大声を出して騒いでしまいがちですよね。しかしそれでは、愛犬が遊んでもらっている、構ってくれている、と勘違いしてしまいます。
まずはおもちゃなどを投げて遊ぶ際に、持ってきたら口から出す、という動作を教えることから始めてみましょう。
◆犬の盗み食い対策③人間の食べ物を与えない
人間の食べ物を一度食べてしまうと、愛犬は学習し、もっと欲しい!美味しいものを食べたい!と思ってしまいます。日頃から人間の食べ物を与えないことで、「もらえない」ということを覚えさせなければなりません。
愛犬に混乱を招かないためいも、家族全員が協力してこのルールを徹底的に守る必要があります。
ドッグフード以外のものを与える場合は、食卓から離れた場所で与えたり、普段使用している犬用の食器以外では与えないよう、決定づけておきましょう。
犬の食物アレルギーのまとめ
愛犬が食物アレルギーを発症した場合、飼い主さんの徹底した食事管理が必要不可欠となります。疑わしい症状を確認したら、必ず一度獣医さんに相談してくださいね。
食物アレルギーのアレルゲン特定は、大変なことかもしれません。しかし、アレルゲンさえ特定できれば、その後の愛犬の体をアレルギー症状から守ることもできます。
適切なドッグフード選びや、家庭でのルールを徹底して盗み食いを防ぐこと。家族全員で協力して、愛犬の健康を維持していきましょう。
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