1.犬の尿路結石症とは?
1.結石とは?
1.犬によく見られる結石の種類
1.こんな状態なら要注意
2.犬の結石の原因
2-1.おしっこの回数が少ない
2-2.食事の内容
2-3.細菌感染
4.犬の結石の治療法
4-1.ストルバイト結石
4-2.シュウ酸カルシウム結石
6.犬の結石を防ぐ方法
6-1.普段からたっぷりお水を飲ませること
6-2.フードやおやつの成分に気を付けること
6-3.愛犬のおしっこの量や回数を把握しておくこと
犬の尿路結石症とは?
犬や猫を飼っていると、一度は【結石】というワードを耳にしたことがあるのではないでしょうか。5年弱勤めた動物病院でも、尿路結石の患者さんを何頭診たか数え切れないほど、結石ができてしまう犬猫が多いです。
◆結石とは?
はじめに、結石についてご説明します。
結石ができる場所によって呼び名が変わります。腎臓であれば腎結石、膀胱であれば膀胱結石となります。尿管、膀胱、尿道に結石がある状態をまとめて「尿路結石症(尿石症)」といいます。
結石は、まさに石のように硬く、コロコロ転がって粘膜を傷付けます。愛犬が動いたり、おしっこするたびに結石が動くので、そのたびに粘膜が傷付き剥がれ落ちる…想像するだけでかなり痛いですよね。
◆犬によく見られる結石の種類
この結石にはいくつか種類があり、ワンちゃんによく見られるのが、「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)」と「シュウ酸カルシウム」の2種類です。
ストルバイトは、おしっこのphがアルカリ性に傾くことにより生成されますが、治療することで溶かすことが可能です。それに比べ、シュウ酸カルシウムは一度できると溶けることはありません。
phは酸性・中性・アルカリ性とありますが、これはどのphでも関係なく生成されます。
◆こんな状態なら要注意
丸1日おしっこが出ていない、もしくはいつもに比べておしっこの量がかなり少ないときは、必ず病院に連れていきましょう。
「少しは出ているから大丈夫だろう」では、手遅れになるかもしれません。詰まりかけている可能性があるので、そのような場合にも必ず診察を受けましょう。
もしおしっこが詰まっていれば、閉塞解除をしなければ命に関わることもあります。とくに男の子は尿道が細くて長く、女の子よりも詰まりやすいので注意が必要です。
犬の結石の原因
では、どうして結石ができてしまうのでしょうか。それには、いくつかの原因があります。
◆おしっこの回数が少ない
↓
トイレに行く回数が減る
↓
膀胱にたまったおしっこがどんどん濃くなる
↓
尿中の成分が飽和状態になり、結晶化(※)する
↓
膀胱に結石ができやすい環境になる
このように、飲水量が減ることで、膀胱内は結石ができやすい環境になります。
※結晶とは、結石になる一歩手前の状態です。エコー検査で膀胱を覗いてみると、サラサラした砂のように動き、キラキラして見えるのが特徴です。
◆食事の内容
先ほどお伝えしましたが、ストルバイトはおしっこのphがアルカリ性に傾くことで生成されます。
カルシウム、マグネシウム、リンなどのミネラルを多く含むフードやおやつを定期的に与えていると、おしっこはアルカリ性に傾きます。
◆細菌感染
ストルバイトは、膀胱炎に伴って見られることが多いです。
おしっこをするということは、尿道に存在する細菌を流すということ。その大事な役割を担っているおしっこが排出されないと、尿道から細菌が侵入して膀胱炎を引き起こします。
そうすると、侵入した細菌が出す物質によって、おしっこはアルカリ化されてしまいます。
そのため、細菌感染が原因の場合、結石の治療と平行して膀胱炎の治療もおこなわなくてはならないのです。
こんな仕草を見せたら結石ができているかも
・ トイレ以外でおしっこをするようになった
・ おしっこの回数が増えた
・ しきりに陰部を舐めている
・ 背中を丸めてじっとしている
・ そわそわして落ち着きがない
・ おなかや腰の辺りを触ると嫌がる
・ おしっこをするときに「キャン!」と鳴いて痛がる
・ 元気食欲がない
・ 嘔吐する
愛犬の様子がいつもと違い、上記のような症状が見られる場合は、結石の疑いがあります。
膀胱炎を併発している場合やおしっこが詰まりかけている場合は、ほんの少量のおしっこを何度もするようになるので、そわそわして落ち着きがなくなったり、いろんな場所でおしっこをしてしまいます。
また、動いたりおしっこをすると結石が動くので、そのたびに痛みが生じます。そのため、丸まってあまり動かなくなったり、元気や食欲がなくなる犬が多く見られます。
愛犬が女の子の場合、飼い主さんは生理と勘違いしてしまい、尿路疾患に気付くのが遅れてしまうことがあります。
生理でも元気食欲がなくなったり、陰部をしきりに舐める様子が見られますが、愛犬の様子をよく観察し、おしっこの量をチェックすると分かりやすいと思います。大体一日に何回、どれくらいの量のおしっこをするか把握しておくと、異変にすぐに気付くことができます。
もし愛犬がおしっこをしなくなり嘔吐しているときは、どこかで結石が詰まっていたり、おしっこが出せずに腎不全を引き起こしている可能性があります。その場合は緊急を要するので、大至急診察を受けてください。
犬の結石の治療法
一度出来てしまった結石は、どのようにして治療していけばいいのでしょうか。
犬に多く見られる、ストルバイトとシュウ酸カルシウムについてご説明していきます。
◆ストルバイト結石
ストルバイト結石は、愛犬の食生活の改善で溶かすことが可能です。フードは専用の療法食に変更し、お水をたっぷり飲ませます。
完治するまでは、療法食以外のフードやおやつを断ちましょう。食い付きが良くないからと、いつも食べていたフードを療法食に混ぜたり、通常通りおやつを与えたりする飼い主さんがいますが、それはNGです。せっかく療法食に変更しても、他のものを与えてしまうと意味がありませんので、そこはグッと堪えましょう。
そして、お水はいつでもたっぷり飲めるように用意してあげましょう。嫌がらないようであれば、フードにお水をかけてあげるのも効果的です。
また、同時に膀胱炎の治療もおこなうので、抗生剤の投与が必要です。
おしっこがしっかり出ていて症状が軽い場合は、このような方法で治していきます。しかし、尿道カテーテルを用いても開通できない、繰り返しすぐ詰まってしまう、元気食欲がない、などというような症状が重度の場合は手術が必要です。
◆シュウ酸カルシウム結石
ストルバイトと違い、シュウ酸カルシウムは溶けることがないので、一度できてしまったら手術をして取り除かなくてはなりません。
体質によっては、何度も繰り返しできてしまう犬もいるので、飼い主さんは愛犬のおしっこの様子を注意して見ていきましょう。
結石になりやすい犬
犬種によっては、結石ができやすい場合があるのをご存知でしょうか。
とっても賢くて黒ブチ模様が可愛らしいダルメシアン。この犬種は、もともと尿酸の代謝が悪いため、ほとんどの犬に結石ができてしまいます。
他には、シーズー、ミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリア、ビションフリーゼ、プードル、ラサアプソなどです。
また、尿道が細長い男の子は、流れてきた結石が詰まりやすい傾向にあります。
逆に女の子の場合は、尿道が太く短いため、結石はおしっこと一緒に流れやすいです。ただし、尿道と肛門が近いため尿路感染症にかかりやすいので、細菌感染により結石が出来やすいのです。
他には、肥満体型の犬やシニア犬など、運動量が少ない犬は飲水量が減っておしっこが濃くなるので、結石が出来やすくなります。
元々あまり水を飲まない犬もいるので、そういった場合も注意が必要です。
犬の結石を防ぐ方法
なかなか治りにくいうえに、完治したと思っても何度も繰り返しやすい下部尿路疾患。尿道カテーテルを用いて完治するまでの間、こまめに膀胱内洗浄をおこなったり、毎日の服薬、場合によっては手術が必要だったりと、愛犬への負担がかなりかかります。
最悪の場合、腎臓が機能しなくなって死亡する可能性もある恐ろしい病気です。その恐怖から愛犬を守るために、私たち飼い主ができることとはなんでしょうか。
◆普段からたっぷりお水を飲ませること
運動量が減ると水を飲む量も減ります。冬になると結石の患者さんが増えるのは、これが大きな原因といえます。
また、肥満体型の犬に結石症が割と多く見られるのも、運動量が少ないからです。お散歩やおもちゃで遊ぶ時間を増やして運動させたり、大好きなフードやおやつにお水をかけるのも効果的です。
氷が好きな犬の場合、ウェットフードや液体状のおやつを水に溶いて、製氷皿で凍らせた氷のおやつもいいでしょう。お水を少しでも多く飲めるような工夫をしましょう。
◆フードやおやつの成分に気を付けること
結石症になりやすい犬種がいることをお伝えしました。予防するためには、毎日愛犬が口にするフードやおやつの成分に気を付けなければなりません。
リンやマグネシウムなどのミネラル成分を多く摂取すると、結石が出来やすくなります。
また、頻繁に手作り食を与えていると、バランスが偏ってしまう危険性があります。「バランスのとれた食事=良質なドッグフード」を与えることで病気の予防に繋がります。
食事内容について不安なときは、獣医師に相談しましょう。
◆愛犬のおしっこの量や回数を把握しておくこと
愛犬のちょっとした異変に気付くためには、普段のおしっこの量、回数、色、ニオイをしっかり把握しておくことはとても大切です。少しでもいつもと違うことに気が付いたら、以後しばらくはよく観察しましょう。
以前、「いつもより少しだけおしっこの色が濃いような気がする」と、来院された飼い主さんがいらっしゃいましたが、膀胱内をエコーで見てみると、結石の一歩手前の結晶がたくさん見つかりました。
このように、早期発見に繋がるので、普段のおしっこの状態を家族全員で把握しておきましょう。
犬の結石に関するまとめ
愛犬の変化に気付くのが遅れたり放っておくと、命を落とす危険性もある結石症。普段の食生活を見直し、気を付けてあげることで、その恐怖から愛犬を守ることができます。
ほんのちょっとの異変にも気付けるように、日頃から元気食欲の有無や、おしっこうんちの状態チェックは欠かさずおこないましょう。
症状が悪化する前に、早期発見することが重要になってきます。再発しやすく治りにくい厄介な病気です。これからの寒い季節は、飲水量が減ってしまうので十分注意しましょう。
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