【獣医師監修】犬の低血糖に要注意!死に至る可能性も。低血糖の原因や治療法は?

2023.02.20

【獣医師監修】犬の低血糖に要注意!死に至る可能性も。低血糖の原因や治療法は?

人間にも起こりうる低血糖。一般的にも聞き馴染みのある言葉だと思います。犬にも実はこの低血糖の症状が起こるのです。今回は、そんな低血糖に焦点を当てて、その症状や原因、治療方法を紹介していきます。愛犬の低血糖に注意するように言われたことのある飼い主さん、これから初めて犬を飼うという方、前もって知識を得ておけば万が一の際に役立てることができるかもしれません。愛犬との健やかな生活のため、勉強しておきましょう!

【掲載:2019.12.07  更新:2023.02.20】

犬の低血糖とは

犬 低血糖

◆血糖値の低下で起こる低血糖症

低血糖とは、血液中の糖分(グルコース)が低下することで、細胞への栄養補給が不完全となった状態を指します。この血液中の糖分濃度である「血糖値」の低下により起こる症状のことを、「低血糖症」と呼びます。

通常血糖値は、体内の複数の器官によって一定に保たれています。複数の器官というのは、血糖値のモニターである「脳の視床下部」、グルカゴンの分泌機能をもつ「膵臓」、糖新生によってグルコースを生成する「肝臓」、アドレナリンの分泌を行う「副腎」などです。

この内、致命的な欠陥がどれか一つに生じると、濃度調整がうまく機能しなくなり、低血糖を招くこととなります。

また、血糖値のコントロール能力が正常であっても、食事量が少なくグルコースが十分でない、運動量が多すぎてグルコースの消費量が高い、などの理由から低血糖症に陥るケースもあります。

犬の場合、生後3か月頃までの子犬の時期に多く発症するといわれています。しかし、成犬でも発症するケースがあり、他の病気の二次的な症状として引き起こされることが多いようです。

◆低血糖の症状とは?

脳のエネルギー源となるのは、血液中の糖分です。このため、血糖値の低下が著しく起こると、その影響を受けてしまい様々な症状が引き起こされます。

犬の低血糖症でみられる主な症状は以下の通りです。

  • ・ぐったりして元気がない
  • ・痙攣を起こす
  • ・下半身が動作しなくなる
  • ・意識を失う
  • ・数日から恒久的な失明

いずれの症状も、愛犬に突然起こると飼い主さんは気が気でなくなるものばかりです。パニックとなる方も中にはいるかもしれません。

これらの症状が現れた場合には、まずは落ち着いて、できるだけ早めに動物病院を受診し、獣医師に相談しましょう。


犬の低血糖の原因

犬の低血糖症の原因の中には、予防できる可能性のあるものもあります。飼い主さんが前もって原因を知っておくことで、その危険を取り除くこともできるのです。

年齢期ごとに考えられる、主な原因をみていきましょう。

◆子犬期に考えられる主な低血糖の原因

生後3か月までの場合、身体の冷えや空腹、内臓障害によって、栄養吸収力が悪化することで低血糖に陥ることが考えられます。神経質な性格をもつ犬がかかりやすいともいわれていますし、先天的な肝疾患が原因となるケースもあります。

生後間もない子犬は、肝臓での足りないグルコースを補う糖新生機能が弱いです。このため、6~12時間程度の絶食によっても、容易に低血糖を起こしてしまう可能性があります。

成犬の場合は、数日間食事を摂らなくとも、ある程度の血糖値を維持することができます。しかし、子犬は血糖値の維持をほとんど食事からの糖分吸収に頼っているのです。

子犬期の食事に関しては、十分注意が必要です。

◆成犬期に考えられる主な低血糖の原因

5歳以上の成犬は、空腹や興奮、過度の運動が原因で、低血糖症に陥いることが多いといわれています。

犬種によっても差があり、アイリッシュセッター・ゴールデンレトリバー・ボクサー・スタンダードプードル・ジャーマンシェパードなどの大型犬が発症しやすい傾向にあります。

また、インスリンの過剰分泌(膵臓の腫瘍)や副腎皮質機能低下症など、病気が原因で低血糖となるケースも考えられます。

更に分娩前後の母犬の場合は、ストレスや大量授乳によっても発症する場合があるでしょう。

そして小型犬であるヨークシャテリアも、低血糖症を起こしやすい犬種として挙げられています。5歳以上であれば、ホルモンバランスや膵臓の異常、敗血症が原因で低血糖となることが多いようです。

ちなみに幼犬の場合は、他の疾患によって長時間食事ができなくなることが原因となります。

もちろん、他の犬種にもいえることなので、愛犬の状態を日頃からよく観察しておくことが重要となるでしょう。

◆老犬期に考えられる主な低血糖の原因

7歳以降の老犬の場合、膵臓の腫瘍が原因である可能性があります。

膵臓はインスリンを生成する大切な器官です。インスリンの過剰生成が起こると、血糖を必要以上に細胞内に取り込んでしまいます。糖尿病とは逆の状態ですね。

また、血中にグルコースを放出する機能(糖新生)を担っている肝臓の障害においても、発症する可能性があります。

◆糖尿病を抱えた犬が低血糖症になった場合

糖尿病とは、インスリンの不足や正常に働かないことが原因で、血液中の糖が増えてしまう病気です。

通常、血液中の糖はインスリンによって細胞内に取り込まれ、各臓器を動かすエネルギーとなります。糖尿病になると、これが機能しないことで糖の取り込みができなくなり、血液中の糖濃度が増え、反対に細胞内の糖が枯渇してしまうのです。

糖尿病を抱える犬の多くは、インスリン療法を施します。これは、欠乏しているインスリンを補うため、インスリン注射を使用することです。

このインスリン療法を行っている犬が低血糖症に陥った場合、注射量の間違いが原因として考えられます。
インスリンは、血液中の糖分を細胞内に誘導します。しかし、その量が多すぎてしまうと、血糖が不足し、低血糖症を発症するのです。

インスリン注射は基本的に生涯必要となり、飼い主さんが自宅でうつこととなるでしょう。しっかりと獣医師の指示に従い、行うよう注意してください

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犬の低血糖の治療方法

犬の低血糖の治療方法

愛犬に低血糖症が疑われる場合、その症状から焦ってしまう飼い主さんもいるでしょう。しかし、予め原因となる可能性をしっておけば、すぐに行動することができます。

低血糖症に陥った場合の主な治療法を併せて覚えておきましょう。

◆糖分補給をする

意識がしっかりしている場合は、ブドウ糖の経口投与を行います。子犬であればブドウ糖溶液を、成犬であれば消化吸収されやすい食事を与えて、血糖値を正常に戻すのです。

糖分と考えるとチョコレートが連想されるかもしれませんが、これは犬にとってはNGです。絶対に与えないでくださいね。

意識を失っている場合は、取り急ぎガムシロップや砂糖水などを頬の内側に塗り付けましょう。舐めさせることができれば、症状の進行を抑え、回復する場合もあります。

そしてすぐに獣医さんに相談してください。誤飲の危険があるので、大量に一気に流し込まないように注意しましょう。

動物病院では、意識がなく口からの投与が不可能の場合、ブドウ糖の静脈内注射が行われます。また、血糖値を上げる作用のあるステロイド剤を注射するケースもあるでしょう。

食事がとれるまで回復したら、炭水化物の食事、ブドウ糖などを一日数回に分けて口から与えて、再発防止に努めます。

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◆基礎疾患を治療する

膵臓腫瘍や肝臓の障害など、他の疾病が原因で低血糖を発症している場合は、まずそれらの基礎疾患を治療することとなります。

ただし、膵臓の腫瘍は一般的に発見が難しいとされているようです。

◆再発防止や予防に取り組む

愛犬が低血糖症を発症したり、発症する可能性があるという場合には、飼い主さんが日頃から、低血糖症を発症しやすい状況を作らないように努める必要があります。

子犬の場合は、室温や体温に注意して常に暖かい状態を保つよう留意したり、授乳回数を増やすなどの対策がとれます。
ドッグフードを食べている場合は、1回に与える量を減らして、食事回数を増やす方法も有効です。このように、食事の時間や回数に注意することも大切です。

成犬の場合は、空腹時に運動をさせないよう配慮をすることが必要でしょう。

犬にもそれぞれ個体差があるので、愛犬の状態や体調を把握しておくことが重要となりますね。定期的な健診を受けることでも、他の病気の早期発見を促し、低血糖症の予防につながることとなるでしょう。

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犬の低血糖に関するまとめ

人間同様、犬にとっても低血糖症には十分注意が必要だということが理解できたと思います。先天的な病気によって発症するケースももちろんありますが、日頃から予防に取り組むことで回避できる場合もあるということが分かりましたね。

発症の原因や症状の出方にはもちろん個体差がありますが、低血糖によって入退院を繰り返す事例も実際にあるようです。特に子犬やリスクを抱える犬種には、十分注意が必要ですね。

ペット保険によっては、このように低血糖が原因での通院や入院にも対応している商品もあります。ペット保険の特集や、ネットによる情報収集をすることで探してみるとよいでしょう。愛犬にぴったりだと思える保険があれば、後々助けとなるかもしれませんね。

愛犬と健やかな生活を末永く続けるためには、様々な病気に対する知識が必要です。前以て情報を得ておけば、迅速な対応ができたり、日常的にリスクを回避することも可能な場合があります。

愛犬のためにも、飼い主さんがしてあげられることに、積極的に取り組んでいきましょう!

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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