1.犬に寄生するノミダニとは
1-1.ノミダニの予防をしなかった場合どうなるのか
1-2.室内犬でも必要なの?
1-3.動物病院での検査
4.犬のノミダニ予防薬の種類(内服薬)
4-1.メリット
4-2.デメリット
4-3.代表的な薬
5.犬のノミダニ予防薬の種類(外用薬)
5-1.メリット
5-2.デメリット
5-3.代表的な薬
犬に寄生するノミダニとは
◆ノミダニの予防をしなかった場合どうなるのか
ノミやダニは、犬の血を吸う寄生虫です。
ノミに吸血されると、犬はかゆみを感じるだけではなく、皮膚炎や貧血を起こします。
また、ノミは、人も刺し、皮膚炎を起こすことがあります。
さらに、「猫ひっかき病」の原因となるバルトネラ・ヘンセレという菌を媒介するのもノミです。
犬に寄生するダニは、マダニです。
マダニに咬みつかれても、犬は痛みやかゆみを感じません。
マダニは、多くの病原体を媒介するため、皮膚炎や貧血だけではなく、命にかかわる病気に罹る危険性があります。
また、マダニは、人の命にかかわることがある病気SFTSを媒介することが報告されています。
◆室内犬でも必要なの?
マダニは、主に藪や草むらに生息していて、近づいてきた動物に寄生する機会をうかがっています。
マダニは人にも寄生するため、飼い主さんが気づかずに家の中に持ち込む可能性があり、室内犬でも予防が必要です。
ノミは驚異的なジャンプ力を持ち、地面や植物などから動物の体に飛びついて寄生します。
ノミは、直射日光の当たらない、暗くてじめじめした場所に生息しており、また暖かい場所を好むため、屋外よりも屋内で盛んに繁殖します。
さらに、人にくっついて室内に入ることもあるので、室内犬でも予防が必要です。
◆動物病院での検査
動物病院での検査は特にありませんが、フィラリア予防も一緒に行う場合には、血液検査を行います。
ノミダニがついているかどうかは、獣医師さんに全身をチェックしてもらいましょう。
犬のノミダニの特徴と症状
◆ノミ
ノミは、世界には2000種以上いると言われていますが、犬や猫、人に寄生するのは、ほとんどがネコノミとされています。
ノミは、動物に寄生すると、動物の体表から離れることはほとんどなく、吸血と産卵を繰り返します。
成虫は、1日に20~50個の卵を産み、最長で120日ほど生存することが可能です。
動物の体に寄生するのは成虫で、卵からサナギまでは動物の休息場所などで生息しています。
【症状】
ノミに咬まれると、かゆみを引き起こすほか、様々な病気を引き起こす危険性があります。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液によるアレルギーで、咬まれた場所以外の皮膚にもかゆみや炎症が生じます。
背中から腰にかけて強いかゆみや炎症、脱毛などが生じ、かゆみから掻きむしることで傷口に細菌が入り込み、二次感染を引き起こすこともあります。
また、人にも激しい痒みや炎症を引き起こします。
瓜実条虫
毛づくろいをした時などにノミが口から入り込んで、瓜実条虫が小腸に寄生します。
犬では、下痢や嘔吐、肛門周辺のかゆみなどの症状が出ます。
人にも寄生し、子供の場合、まれに下痢や嘔吐などの症状が現れることがあります。
ノミ刺咬症
ノミに咬まれた刺激と唾液の成分に対するアレルギー反応で、強いかゆみを生じます。
皮膚が赤くなったり(紅斑)、膨らんだり(丘疹)し、中心には咬まれたことによる出血斑が見られます。
掻き壊してしまうことで傷口から細菌が入りこんで、二次感染を引き起こすこともあります。
犬ではかゆみや丘疹が、人ではかゆみや水ぶくれが生じます。
◆ダニ
犬に寄生するマダニは、一般に聞くことが多いダニとは異なり、肉眼でも分かるほどの大型のダニです。
一般的に言われるダニは「微小ダニ」と言われ、畳や布団などに寄生してアレルギーの原因となりますが、マダニは野外に生息していて、動物の血を吸います。
マダニは、血を吸っていない状態で3~8㎜、血を吸うと10倍ほどに膨れ上がり1cm程度になるため、肉眼でも見つけることができます。
頭部を皮膚に食い込ませて咬みつくため、皮膚から取り除くことが困難です。
十分に血を吸ったマダニのメスは地上に落ちて産卵し、地上で生まれたマダニは動物の血を吸って、脱皮を繰り返しながら成長します。
【症状】
マダニによって引き起こされる病気のほか、マダニが媒介する病気がいくつもあり、人の命にかかわる場合もあります。
ダニ麻痺症
ダニが血を吸うときに入った唾液によって、筋肉が麻痺します。
ふらふら歩いたり、後ろ脚が脱力したりするほか、顔面の筋肉の弛緩、呼吸筋の麻痺、発声障害、瞳孔散大などが見られます。
神経毒を出すダニの多くは、アメリカやオーストラリアに生息しています。
犬バベシア症
マダニによって媒介される病気で、バベシア原虫が赤血球を破壊して貧血などを引き起こします。
食欲の低下、発熱、血尿(血色素尿)、黄疸などの症状が見られます。
重症化すると、重度の貧血や黄疸、多臓器不全が起こり、死に至ることがあります。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSウイルスを持つマダニに血を吸われることで、感染します。
2013年には、日本で初の人の死亡例が報告されています。
犬は一般的には無症状ですが、まれに発熱や食欲の消失、白血球減少症、血小板の減少などが見られます。
人では、発熱や倦怠感、食欲の低下が生じ、消化器症状やリンパ節の腫れ、出血(血小板減少)などが見られ、死亡に至る危険性があります。
現在、SFTSには、ワクチンや治療法がありません。
ライム病
マダニに媒介されるボレリア菌を病原とする病気で、日本では北海道や長野で感染例が報告されています。
犬では、まれに元気を失ったり食欲不振になったりするほか、跛行(はこう;かばうように歩いたり足を引きずって歩いたりすること)や発熱が見られることもあります。
人では、咬まれた部分を中心に徐々に紅斑が広がり(遊走性紅斑)、発熱、リンパ節の腫れ、関節痛、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎などが生じます。
日本紅斑熱
動物や人の細胞の中で増殖するリケッチアという細菌の一種である、紅斑熱群リケッチアによって引き起こされる病気です。
主に関東よりも西の地域に見られ、39~40℃の高熱や頭痛、寒気、倦怠感、発疹(紅斑)などを生じます。
犬のノミダニの予防期間
一般に、ノミダニの予防は春先から秋にかけて行われますが、気温が高いとノミもダニも冬でも生きのびることができるため、地域によって予防期間は異なります。
正確な予防期間は、かかりつけの動物病院で確認しましょう。
1年を通じての予防を推奨している動物病院もあります。
ノミは、卵からサナギまではペットの休息場所などで生息して、成虫になると動物の体に寄生します。
卵から幼虫、サナギへと至る発育期間は、気温・湿度の影響を受け、様々です。
ノミはどのステージでも冬を越すことができ、13℃あれば活動できるため、暖房の効いた室内では冬でも活動する恐れがあります。
マダニの成虫は春から夏にかけて活発に活動し、秋から冬には卵から孵化した幼いダニや若いダニの活動が活発になります。
マダニは、暖冬であれば活動し続け、秋や冬を含めて1年中活動するものもいると言われています。
犬のノミダニ予防薬の種類(内服薬)
内服薬には、錠剤、チュアブルタイプ、クッキータイプなどがあります。
チュアブルタイプには、ジャーキーのような風味がついています。
◆メリット
シャンプーをしても効果が落ちない点が、内服薬のメリットです。
また、チュアブルタイプやクッキータイプは犬が好きな味になっているので、比較的飲ませやすいというメリットもあります。
◆デメリット
錠剤タイプの場合、犬が吐き出してしまうことがあり、飲ませるのが難しい面があります。
ジャーキータイプは、大豆アレルギーの子には与えることができない場合があります。
◆代表的な薬
ネクスガード:ビーフ味のチュアブルタイプで、おやつ感覚で与えられる
コンフォティス:即効性、持続性とも非常に高いが、イベルメクチンとの併用は避けた方がよく、てんかんや食物アレルギーがある子は注意が必要
ブラベクト:1錠で3ヶ月効果が続く
犬のノミダニ予防薬の種類(外用薬)
液状の薬剤を犬の首の後ろ(肩甲骨の間)の皮膚に滴下するスポットオンタイプです。
◆メリット
犬が警戒して飲まなかったり吐き出したりということがないので、投与しやすい点がメリットです。
◆デメリット
犬が舐めたり、小さな子供が触ったりするリスクがあります。
多頭飼いや猫と一緒に飼っている場合や、小さな子供がいる場合には、注意が必要です。
滴下後、数日はシャンプーすることができません。
滴下する時に、薬剤が手につくこともあります。
◆代表的な薬
フロントラインプラス:獣医師から高い評価を得ており、世界で売れている定番
フィプロフォートプラス:フロントラインプラスのジェネリックで、コストパフォーマンスが非常に良い
レボリューション:フィラリアにも対応しているが、マダニには非対応なので室内犬向け
メロニルプラス:フロントラインプラスのジェネリックで安価だが、ノミ・ダニ・ハジラミのみに対応
予防薬の与え方と注意すること
◆与え方
決められた期間に、決められた回数投与します。
必ず、用法用量を守りましょう。
◆注意すること
もし、投与することを忘れた場合には、自己判断で与えず、獣医師さんの指示を仰ぎましょう。
内服薬の場合、投与後吐き出してしまうことがあるので、きちんと飲んだか確認します。
チュアブルタイプやクッキータイプは、犬が勝手に食べてしまうことがあるので、保管に気をつけましょう。
投与後に、下痢や嘔吐など体調不良を起こした場合には、すぐに動物病院を受診してください。
1つでよい、オールインワンタイプの薬
ノミダニ防除のほか、フィラリア症や腸内寄生虫などにも対応した「オールインワン」タイプの薬もあります。
特に、フィラリア症は、ノミダニ防除と同じく月1度、薬の投与が必要な場合が多いので、オールインワンタイプであれば手間を省くことができます。
犬も飼い主さんも負担を軽減できますが、ノミダニ防除だけの薬より高価になります。
代表的なオールインワンタイプの薬には、ネクスガードスペクトラ、アドボケート、コンフォティスプラスがあります。
まとめ
ノミダニは、犬にかゆみや皮膚炎、貧血を起こすだけではなく、犬バベシア症など命にかかわる病気の病原菌を媒介することがあります。
また、人にも寄生し、かゆみや発疹のほか、死に至るSFTSという病気を媒介することもあります。
ノミダニの予防は、一般的に、春先から秋にかけて行いますが、地域によって異なるので、かかりつけの動物病院で正確な予防期間を確認しましょう。
ノミダニの予防薬には、内服薬と外用薬があります。
チュアブルタイプやクッキータイプは、長毛の子や食べ物に警戒心を持たない子におすすめです。
外用薬は、短毛で食べ物に警戒心のある子におすすめです。
錠剤タイプは、飲ませるのが難しい面もありますが、食物アレルギーのある子にも与えられます。
愛犬のためにも飼い主さんの健康のためにも、決められた期間、決められた回数、用法用量を守って、ノミダニの予防を行いましょう。
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