1.犬の気管虚脱とは
1-1.症状
1-2.原因
1-3.気管虚脱のグレード
2.気管虚脱になりやすいのは小型犬?
2-1.なぜ小型犬がなりやすいのか
2-2.具体的な犬種
3.気管虚脱の治療法
3-1.内科的治療
3-2.外科的治療
3-3.つぶれた気管は治るのか
4.気管虚脱の予防法
4-1.ハーネスを使用する
4-2.肥満に注意する
4-3.あまり吠えさせない
4-4.タバコや汚れた空気にも注意する
4-5.「待て」「おすわり」を教える
4-6.早期発見、治療が大切
犬の気管虚脱とは
犬の気管虚脱とは、何らかの原因で気管がつぶれた状態になることです。
気道の主な働きは肺に酸素を運ぶ、ほこりなどの吸入防止、加湿、発生です。
気管は肺に酸素を含む空気を運ぶ役割をしているため、つぶれた状態になることで呼吸が苦しくなってしまいます。
◆症状
気管虚脱では、空気を肺に送る働きをする気道が圧迫されるため、以下のような症状が現れます。
-
・乾いた咳
・ガーガーとガチョウの鳴き声のような音が混じる
・呼吸の際にゼーゼーと音が鳴る
・酸素不足により粘膜が青くなる(チアノーゼ)
・呼吸困難
・失神、窒息(重症な場合)
呼吸器系の症状は、気管虚脱のほかにも肺炎や心臓病、気管支炎などでもみられるため、上記の症状があるからといって必ず気管虚脱とは限りません。
◆原因
気管虚脱になる原因は、遺伝的要因以外には明確に解明されていません。
肥満や吠えすぎ、リードを強く引っ張ることで起こるという指摘もあります。
何らかの原因で、気道に強い圧がかかることが要因であると言われています。
◆気管虚脱のグレード
気管虚脱には気道の状態によって、重症度を4段階に分類することができます。
それぞれのグレードによる症状は、以下の通りです。
・グレード1:最も軽症で、気道直径の減少率は25%程度です。
・グレード2:気管直径の減少率は50%程度です。
・グレード3:気管直径の減少率は75%で、気管は重度に平坦化します。
・グレード4:最も重傷で、気道直径の減少率は90%を超え、気管の上下が接触するほど虚脱します。
気管虚脱になりやすいのは小型犬?
気管虚脱は小型犬に多く見られるといわれていますが、どうして小型犬なのでしょう。
また、小型犬の中でもかかりやすい犬種はどの種類なのでしょうか。
ここでは、小型犬が気管虚脱になりやすい理由と、特にかかりやすい犬種を紹介します。
◆なぜ小型犬がなりやすいのか
気管虚脱は中年齢以上の小型犬に多く見られます。
しかし、なぜ小型犬に多いのか、その原因は明確に解明されていません。
遺伝的要因が、小型犬に多く見られるという考えもあります。
また、中型犬や大型犬、若い小型犬であっても発症する場合があります。
◆具体的な犬種
小型犬の中でも気管虚脱にかかりやすい犬種は、「トイ種」です。
トイ種とは、愛玩犬用に小型化された犬種のことで、以下の種類が該当します。
-
・チワワ
・ヨークシャーテリア
・トイプードル
・ポメラニアン
・パグ
・マルチーズ
など
これらの犬種を飼っている場合、年齢が若くても気管虚脱にかかる可能性があるため、注意が必要です。
気管虚脱の治療法
愛犬が気管虚脱と診断された場合、治療にはどのような方法があるのでしょう。
ここでは、具体的な治療法を紹介します。
◆内科的治療
軽度の場合や手術を望まない場合には、内科的治療を行います。
しかし、内科的治療は症状の進行を緩やかにするもので、根本的に治すことは不可能です。
一時的な症状の緩和にも使用されます。
内科的治療には投薬がメインで、鎮咳剤や気管支拡張剤、去痰剤などを使用します。
◆外科的治療
外科的手術を行うことで、根本的な改善に繋がるケースも報告されています。
手術には全身麻酔を要するため、重症の場合や高齢の場合はリスクが高まります。
手術にはいくつか方法がありますが、気管内に補強材をいれたり気管外に補強材を巻き付け気管と縫い合わせるといった内容があります。
近年、日本ではPLLS法が開発されたことで、長期的治療が実現されつつあります。
◆つぶれた気管は治るのか
一度つぶれてしまった気管は、治療をすることで元の形に戻るのか気になる方も多いでしょう。
残念ながら、一度つぶれてしまった気管は、元の形に戻ることはないといわれています。
外科的手術で気管の形を維持することは可能ですが、場合によっては再発の可能性もあります。
気管虚脱の予防法
気管虚脱は明確な原因が不明なため、これといった予防法がないことも現実です。
しかし、気管に負担をかけることが気管虚脱のリスクを高めるとされるため、気管に負担のかかることを極力回避することが予防への糸口です。
ここでは、愛犬の気道に負担をかけやすい項目と、解消法を紹介します。
◆ハーネスを使用する
首輪を使用している場合、強く引っ張ることで喉を圧迫し、気管を潰してしまう恐れがあります。
強く引っ張る子の場合は、首輪ではなくハーネスを着用することで、喉にかかる圧を分散させることができます。
小型犬は体重が軽いため、軽い力で引っ張るだけで首をしめてしまいがちです。
リードと首輪(ハーネス)の間には常に余裕を持たせ、愛犬を引っ張る体制にならない様工夫をすることが大切です。
また、ハーネスはサイズが合っていないと抜けてしまうことがあるため、愛犬に合ったサイズを選びましょう。
◆肥満に注意する
気管虚脱の一因とされるのが肥満です。
太ることで首周りに脂肪がつき、気管を圧迫します。
気管虚脱のほかにも、喉に脂肪がつくと少しの運動でも息切れをします。
愛犬がいびきをかいて寝ているようなら、喉に脂肪がつきすぎている可能性があります。
肥満は愛犬の健康に百害あって一利なしです。
太っていた方が可愛いというのは、飼い主の偏見であって結果的に苦しむのは愛犬です。
適度な運動することや、適切な内容や量のフードを与えるなど、体重管理を怠らないようにしましょう。
◆あまり吠えさせない
吠えることは、少なからず気管に負担がかかります。
吠え癖がある犬の場合、その負担は大きくなり、結果気管虚脱の原因になると考えられます。
無駄吠え防止のトレーニングなどを行い、吠える頻度を最低限に留めることが大切です。
◆タバコや汚れた空気にも注意する
愛犬が生活する生活環境の中にも、気管虚脱を促進させることがあります。
部屋が高温多湿の場合や、タバコなどを吸う環境にある場合です。
タバコなどの煙は愛犬の気道を刺激し、気管虚脱のリスクが高まるとされています。
部屋はこまめに換気を行うことや、空調を整える、空気清浄機を設置するなどして衛生的に保ちましょう。
また、タバコ以外でも臭いの強いものは、犬にとって刺激になることがあります。
愛犬家は、普段から臭いの強いものを愛犬の前で使用しない事が大切です。
◆「待て」「おすわり」を教える
「待て」や「おすわり」は、興奮した愛犬のクールダウンに役立ちます。
興奮して吠える、散歩時に引っ張る、おもちゃに夢中になりすぎるなど、気管虚脱のリスクを高める行動から愛犬を守ることができます。
このようなトレーニングは、飼い主さんとの主従関係を確立することや、問題行動を軽減させるためにもおすすめです。
◆早期発見、治療が大切
気管虚脱では、つぶれた気管を元に戻すことは難しく、手術自体も体に負担がかかります。
投薬治療だけで症状を緩和させるためにも、気管虚脱になった場合には早期発見が大切です。
早期発見、治療ができれば、投薬治療だけで症状を緩和することも可能です。
愛犬の咳や呼吸に異常があった際には、動物病院を受診するようにしましょう。
もしも愛犬が気管虚脱になったら
愛犬が気管虚脱になった際は、動物病院で適切な治療を行います。
すぐに治るものではないため、長期的なケアが必要になります。
家庭でできるケアとしては、体重管理や運動管理です。
肥満にさせないことや、ハーネスを利用して散歩をすることなどが大切です。
また、散歩や運動を行う際は、愛犬の呼吸に気を付け、息切れを起こすようであればクールダウンをさせましょう。
室内を高温多湿にしないことや、タバコなどの煙を排除できる空気清浄機を設置する方法もおすすめです。
また、動物病院から処方された薬は、飲み忘れのないようにしっかりと服用をしてください。
素人判断で服薬を中止せず、中止したい場合には獣医さんと相談してから行うようにしましょう。
まとめ
犬の気管虚脱とは、何らかの原因で気管がつぶれてしまう状態です。
遺伝的要因が原因とされていますが、明確には解明されていません。
症状は乾いた咳やガーガーという音が鳴る、チアノーゼや呼吸困難などが見られます。
気管虚脱は小型犬に多く見られ、投薬などの内科的治療と、手術を行う外科的治療に分けられます。
根本的に治療をするには、外科的手術が必要ですが、リスクもないとは言えません。
そのため、まずはご家庭で予防に努めるとよいでしょう。
気管虚脱を予防するには、肥満にさせない、首輪をハーネスにする、空調を管理するなどの方法が有効だとされています。
小型犬の飼い主さんは、気管虚脱という病気があることを把握し、日頃から予防をすることや、異常が見られた際には早期治療を行うことが大切です。
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