1.犬の水頭症とはどんな病気
2.犬の水頭症の原因
2-1.先天性水頭症を発症しやすい犬種
3.犬の水頭症の症状
3-1.元気がなくなる
3-2.ふらつき・旋回運動
3-3.斜視・視力障害
3-4.痙攣発作
3-5.攻撃的になる
3-6.行動異常
犬の水頭症とはどんな病気
水頭症とは脳の病気で、脳が圧迫されることでさまざまな症状が引き起こされる犬の病気の一つです。
脳脊髄液の循環障害によって、脳が頭蓋骨側に圧迫されることで脳障害を発症します。
ちなみに脳脊髄液とは、脳脊髄膜(脳と脊髄を包んでいるもの)の中を循環している体液の一種です。脳の水分含量の調整・形状を保つなどといった役割を担っています。
非常にデリケートな脳は、固い頭蓋骨に守られていますよね。その頭蓋内部の脳脊髄液に浮かんでいるように存在し、ある程度の衝撃を吸収する構造をしています。外部からの衝撃を受けないように守られているのです。
この脳脊髄液は、脳の中心部の空間(脳室)で作られており、クモ膜下腔(脳と頭蓋骨の隙間)を埋めて脊髄へと流れています。一定量が作られ続けて排出されていくことで脳圧を一定にし、クッション性を保っているのです。加えて、栄養・老廃物の運搬を行う役割を果たしていると考えられています。
しかし、何らかの原因によって脳脊髄液の流れに異常が起きることがあります。すると、脳室内に脳脊髄液が過剰に溜まり、脳を頭蓋骨側の方向に圧迫してしまうため水頭症になるのです。
脳関髄液が増える理由としては、産生過剰・循環不全・吸収障害の三つが主に挙げられます。
犬の場合、中脳水道と呼ばれる部分で液体の流れがブロックされるパターンが、最も頻度が高いといわれているようです。流れを絶たれた脳脊髄液は、隣接する脳室を内側から押し広げて、脳にさまざまな障害を引き起こすようになります。行き場を失った脳脊髄液が、水風船を膨らませるように脳室を押し広げるイメージを持つと分かりやすいかもしれませんね。
軽度であれば緊急性のある病気だとはいえませんが、十分な治療・介護を長期的に根気よくすることが必要となるケースの多い病気です。
犬の水頭症の原因
水頭症の原因には、先天性のものと、後天性のものがあります。
先天性のものは先天的な脳室系の奇形によるものが多いのですが、後天性のものは、脳の損傷・脳内出血・脳炎・脳腫瘍・などによる二次的発生で発症する場合があります。
また水頭症は、内水頭症と外水頭症に分類されていますが、犬の場合は内水頭症が多くみられます。
これは、脳脊髄液が脳室に必要以上に溜まることで脳に圧力がかかり、脳圧が上昇するためにさまざまな症状を引き起こすものです。
そして外水頭症とは、脳組織の外側のクモ膜下腔に液体が貯留する状態をいい、犬に関しての発症は稀で、内水頭症に比べて症例は少ないといわれています。
◆先天性水頭症を発症しやすい犬種
水頭症の原因が遺伝による場合、以下の犬種に多発して発症するといわれています。
-
◎チワワ
◎トイプードル
◎ラサアプソ
◎パグ
◎ポメラニアン
◎ペキニーズ
◎マルチーズ
◎シーズー
◎ブルドッグ
◎ボストンテリア
◎ヨークシャーテリア
◎マンチェスターテリア
◎ケアーンテリア
…など。
このように、アップルドームが理想とされるチワワを代表格とし、小型で短吻系の犬種に多く発症するといわれています。生後3ヶ月~半年の間に、さまざまな神経症状を示すようになるようです。
中でも、チワワの水頭症発症率は高いといわれています。他の犬種が約1.9%の発症率に対し、チワワの場合は3.3%で、比較するとその発症率の高さは一目瞭然です。
水頭症になると、以前と比べて面長に見えたり、一見して頭部が球体のような形になるので、異変を感じた場合は早急に病院で診てもらいましょう。
犬の水頭症の症状
先天性水頭症の場合、頭頂部の頭蓋骨が触れない(泉門開存)・頭部がドームで大きい・外斜視・発育不良など、外観的な異常がみられることが多いようです。
その他の症状としては、感覚が鈍くなり反応が遅い・目が見えない・旋回や徘徊をする・てんかん発作を起こして倒れる・性格が変化する・四肢にふらつきがみられる、などの脳の異常に伴う症状が挙げられます。
ただ、水頭症を疑う所見が脳の構造にはあっても、無症状な状態のワンちゃんも多くいるようです。
水頭症の症状として主となるものを、それぞれみていきましょう。意識障害・神経障害・運動障害・視力障害といった、多くの範囲に渡っての症状をもたらす病気なので、しっかり覚えておきましょう。
◆元気がなくなる
愛犬の元気がなくなってきたり、疲れやすくなります。
◆ふらつき・旋回運動
四肢のふらつきがみられてバランスが取れないような様子や、同じ場所をくるくるとまわるような旋回運動がみられます。
◆斜視・視力障害
両目の視線が正しく見る目標に向かわない状態となる斜視や、意思とは関係なく眼球が動く眼球振とう、視力低下などの視力障害が起こります。
◆痙攣発作
てんかんのような痙攣発作を起こし、倒れてしまう場合があります。
◆攻撃的になる
突然攻撃的な面がみられるようになったり、怒りやパニックの状態、吠えだす、といったまるで性格が変わったような状態が見受けられるケースがあります。
◆行動異常
睡眠を続けて、強い刺激がなければ目覚めても反応しない状態となる嗜眠など、さまざまな行動異常がみられます。
犬の水頭症の治療法
基本的に治療には、内科的療法と外科的療法、二つの方法があります。治療法の選択は、愛犬の状態を踏まえた上で、獣医師としっかり相談して決めましょう。
◆内科療法
根治の難しい病気のため、疾患の原因を取り除く処置よりも、症状の軽減を目的とした治療が施されるでしょう。
脳圧を下げるために、ステロイド剤や利尿剤(利尿薬)の投与をして、脳脊髄液の産生量を抑えて吸収を促します。けいれん発作が起こっている場合は、抗てんかん薬が投与されるでしょう。
内科的治療によって症状が緩和されるケースはあるのですが、症状が重度であったり、内科的治療で症状の改善が見られない場合は、外科的治療を行うこともあるでしょう。
◆外科療法
脳室と腹腔にチューブを通して、脳脊髄液を腹腔に逃がすことで脳圧を下げる手術を行います。これをV_Pシャント術といいます。
ただし、脳神経が広範囲に渡って損傷を受けている場合、仮にシャントを設置しても、症状改善に繋がるとは限らないのです。また、シャントによって脳脊髄液が腹腔内に流れすぎてしまい、逆に脳にダメージを与えてしまう可能性もあります。シャントを設置すると、一生涯外すことはできません。飼い主さんにとっては、それなりの覚悟が必要になるといえるでしょう。
愛犬の症状・状態などによっては、手術適用時期や手術方法が異なってきます。外科的治療を行う場合は、麻酔のリスク・手術後の安静期間・ケア方法・費用などを、事前にしっかり獣医師に確認・相談をするようにしてください。
いずれの病気や怪我が原因であっても、手術となると麻酔が必要な場合が多く、犬にとって麻酔には大きなリスクが伴う場合がほとんどです。もちろん個体差もあるので、患っている病気とは別に、術後の炎症や臓器へのダメージ、お腹を壊すなど、様々な副作用に見舞われるケースもあります。
手術の場合は、獣医さんとよく話し合いましょう。不安な点については、なんでも聞いてみてください。かかりつけの動物病院が一番安心するかもしれませんが、手術において評価の高い病院を探すのも一つの手だといえます。

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犬の水頭症の予防法
水頭症は、予防が難しい病気です。決定的な予防法はない、といえるでしょう。そのため、早期発見・早期治療が、重要な鍵となるのです。
圧迫される部位によって症状が異なることから、症状から判断するのはとても難しいです。なので、外見に現れる特徴と合わせて水頭症の疑いを感じるようであれば、すぐに動物病院で検査してもらいましょう。
一般的に病院では、脳神経や脊髄の検査や、X線(レントゲン)や超音波を使った画像検査が行われます。同時に血液検査などをし、それ以外の病気の有無も確認するでしょう。
水頭症の疑いがあると診断されると、さらに専門の病院や二次診療施設などでの、CT・MRIといった精密検査によって、より正確な検査を行うこととなるでしょう。
まとめ
水頭症は感染拡大などの危険性がある病気ではありませんが、問題の改善や正常な状態に戻すことが困難な病気です。さらに予防することも難しいので、唯一できる早期発見が叶うよう、特に愛犬が好発犬種の場合は注意をしておきましょう。もちろん全ての犬種に発症の可能性はあるので、愛犬の様子には気を付けてくださいね。
最近愛犬の頭が大きくなってきてない?と感じたら危険信号です。病気の進行にできるだけ早く気付けるように、常日頃から愛犬の状態をしっかり観察しておき、異常を感じたらすぐに動物病院を受診しましょう。
愛犬が水頭症になってしまった場合は、治療・介護に真摯に向き合ってください。食事内容が変わったり、それまでの生活とは異なる部分も出てくると思います。辛いと感じる方も少なくないでしょう。しかし、少しでも愛犬が長生きできるように、寄り添って時間を共にしてくださいね。
ネット記事やブログなどで、水頭症の愛犬を抱える飼い主さんの体験談なども沢山あります。無塩のトマトジュースが水頭症に良い、という説もありました!さまざまな意見を参考にしつつ、愛犬と飼い主さんにとって一番よい方法を模索してみましょう。
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