【獣医師監修】犬の目元が赤くなる結膜炎って何?代表的な症状から治療法&予防法まで

2021.06.26

【獣医師監修】犬の目元が赤くなる結膜炎って何?代表的な症状から治療法&予防法まで

犬の目の病気で最も多いのが「結膜炎」と言われています。 「目元がかゆくなるやつでしょ?」 と思われる方も多いかもしれませんが、実は放っておくと目が開かなくなったり失明したりする病気なんです。 そこでこの記事では、犬の結膜炎の原因や症状から、具体的な治療法、いまからできる予防法までを、動物研究者の観点から解説します。 もしかしたら愛犬の病状のサインを見つけられるかもしれませんよ! ぜひご一読ください!

犬の結膜炎とは

犬の結膜炎

結膜炎とは、「結膜」と呼ばれるまぶたの裏と眼球の白目の部分を覆っている粘膜が炎症を起こしている状態のことです。

一言で言ってしまえばシンプルですが、実はさまざまな病気のサインになっていることもあります。
進行すると眼球にダメージが及び、緑内障など、最悪失明につながる病気を併発する可能性があります。

◆かかりやすい犬種

結膜炎の原因によりさまざまですが、

・柴犬
・ウェストハイランドホワイトテリア(ウェスティ)
・フレンチブルドッグ
・シーズー
・まだ予防接種を受けたことのない子犬
・海外からの輸入犬

がかかりやすいと言われています。
結膜炎の原因については後ほど解説します。

これらに当てはまる飼い主の方には特に注意してください。

◆人に移るのか

人でもよく聞く「結膜炎」。

「それじゃ、犬の結膜炎は人にも移るのか・・・?」

と、ご心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
国内で発生する犬の結膜炎は、基本的に人には移りません。

ただし、海外で発生している結膜炎の中には人に移るタイプもあります。
それについても後ほど、詳しく解説します。


犬の結膜炎の症状

犬の結膜炎

犬の結膜炎の主な症状として、

・目が充血する
・目が腫れる
・目やにが増える
・目をかゆがる

が知られています。

具体的にどんな症状があるか、順に解説していきます。

◆目が充血する

犬の結膜炎の初期症状として、水腫性変化という炎症を起こした組織が水分を含んで膨れる症状を示します。
そのため、結膜炎を発症した犬の白眼の部分を覆っている結膜は赤くなり、充血して見えます。

◆目が腫れる

これも水腫性変化による、犬の結膜炎によく起きる症状です。
水腫性変化が進むと外から見てもわかるほど目が腫れ上がってきます。

腫れがひどくなると、犬はまぶたを動かしづらくなり、

・細かい瞬きを痙攣のように繰り返す
・目が開かなくなる

という症状へ悪化してしまいます。

また、まぶたが腫れてくることで眼球が圧迫されてしまい、眼球内の圧力が高まることで、緑内障など他の病気につながる恐れもあります。

◆目やにが増える

・黄色い膿っぽい目やに
・ねばついた粘液っぽい目やに
・黄色みがかった体液のような目やに

もしこのような目やにが愛犬に増えたら、それは結膜炎かもしれません。
犬の結膜炎にはさまざまな種類がありますが、共通して目やにが増えることが知られています。

◆目をかゆがる

これまで解説した症状が起きると、犬はどうしても目元を痒がります。
すると

    目が痒いから引っ掻く
        ↓
    まぶたが傷つく
        ↓
    病原体が入りさらに結膜炎が悪化する
        ↓
    さらに目が痒くなる

という負のループに陥ってしまい、結膜炎がさらに悪化してしまいます。

結膜炎の悪化が進むと、犬はかゆみだけでなく痛みを感じるようになり、ひどくなると痛みで目が開けられなくなってしまいます。

以上が犬の結膜炎としてよく知られる症状です。
結膜炎はただ目元がかゆくなるだけではなく、目が開けられなくなるほどの痛み、そして失明に至りうる病気なのです。


犬の結膜炎の原因

犬の結膜炎

犬の結膜炎の原因は多岐にわたりますが、ここでは大きく

・感染性
・アレルギー
・ドライアイ
・物理的刺激
・薬剤性

の5つに分類して解説します。

◆感染性

犬の結膜炎は細菌やウイルス、原虫が犬の結膜へ感染することで起きることがあります。

感染経路はさまざまですが、目の周りに傷を負うとそこから細菌やウイルスが感染し、結膜炎を引き起こす可能性があります。

また、特定の病原体は直接結膜に感染しなくても結膜炎を引き起こすことがあります。
ここでは2つ、具体例をご紹介します。

犬ジステンパーウイルス

犬ジステンパーウイルスは、犬ジステンパーという病気の病原体で、肺から感染し、発熱や咳、下痢などを引き起こします。病状が進行すると、痙攣発作や脳炎などの症状を示します。
このウイルスが結膜へ侵入すると炎症が起こり、結膜炎になってしまいます。

ちなみに、このウイルスはイヌ科の動物に感染するため、人には感染しません。

リーシュマニア原虫

リーシュマニア原虫はサシチョウバエというハエを媒介し犬や人に感染する寄生虫です。
日本では滅多に発生しませんが、1997年にヨーロッパからの輸入犬が現地で感染した状態で輸入され、国内で発症したケースがあります(高橋ら、1997)。
全身性の皮膚炎を起こすことで知られ、結膜炎を併発することがあります。

◆アレルギー

犬の結膜炎は身の回りの物質にアレルギー反応を起こして発症することがあります。
いわゆる犬アトピー性皮膚炎と呼ばれる症状で、両目にほぼ同時に結膜炎を発症します。

身の回りのどんな物質がアレルゲンになるかというと、

・ハウスダストマイト(屋内に生息するダニ)
・花粉
・カビ

などの物質が知られています。
人の花粉症も、実は結膜炎の一種で、犬でも同様のことが起きる可能性があります。
また、ハウスダストマイトという屋内に生息するダニに対してアレルギー反応を示すケースが多いです。

アレルギー反応が起こりやすいかどうかは体質によるので、遺伝が関与します。そのため、アレルギーを原因とした結膜炎が起こりやすい犬種があります。特に、

・柴犬
・ウェストハイランドホワイトテリア
・フレンチブルドッグ
・シーズー

などの犬種で多くアレルギーが原因の結膜炎がみられています。

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◆ドライアイ

結膜炎は、うまく涙で目を潤せない状態、つまりドライアイが原因で起きることがあります。
この状態の犬の結膜炎は乾性角結膜炎と呼ばれています。

ドライアイが起きてしまう原因は

・生まれつきまぶたがうまく形成されなかった
・涙を分泌する外分泌腺がうまく機能しない
・糖尿病などの慢性疾患

などさまざまです。
特に外分泌腺の異常を持つ犬は口の中も乾燥している傾向が強く、結膜炎と同時に口内炎も発症していることがあります。

◆物理的刺激

結膜炎は結膜に物理的なダメージが加わることが原因で発症することもあります。
例えば、

・目に異物が入った
・まつ毛が乱れたり異常なところから生えたりして、目の中に入り込んでしまった

ことが犬の結膜炎の原因になることが知られています。

◆薬剤性

物理的なダメージではなく、薬品などにより結膜がダメージをうけ、結膜炎になることもあります。

具体的には、

・家の中で遊んでいるときに犬がこぼしてしまった化粧品や薬品
・犬の散歩中に入った畑や草むらに使われていた農薬や除草剤
・犬の体質に合わない目薬

などが目に入ってしまうと、結膜炎を発症する原因になる可能性があります。


犬の結膜炎の治療法

犬の結膜炎はその原因が多岐にわたるため、その原因に沿った治療法が取られます。

◆感染性

原因となる病原体に効果的な抗生物質や治療薬を服用して治療します。
感染した原因菌によりますが、数週間から2ヶ月程度の服用が一般的です。

◆アレルギー

薬を使った治療だと、抗アレルギー薬とステロイド薬を服用して治療します。
しかし感染性の結膜炎と異なり、アレルギー性の結膜炎は犬の体質が原因ですので、服薬することで症状は抑えられても再発を防ぐことはできません。

そこで、アレルゲンとの接触を断つために、環境を改善することで再発を防ぎ治療するという方法があります。
例えばハウスダストマイトへのアレルギー反応が原因だった場合は、

・ダニ取りスプレーを使う
・カーペットからフローリングの飼育に変える
・空気洗浄機を設置する

などの対策が考えられます。
特にダニ取りスプレーはムラなくハウスダストマイトを駆除できる上に一定期間効果が持続するものもあるので、簡単かつ効果的に対策できるため、おすすめです。

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◆ドライアイ

犬の病状により、内科的治療と外科的治療の2パターンに分かれます。

内科的治療では、人工涙液やヒアルロン酸が配合された目薬をさし、涙液を補充することでドライアイを改善して治療します。また眼軟膏というまぶたに塗る軟膏を併用することもあります。
基本的に内科的治療は対症療法がメインのため完治は難しく、長期にわたり目薬の服用を続けるケースが多いです。

外科的治療では内科的治療だけでは不十分と判断された場合、例えば、

・目薬の服用だけでは涙の量が足りず、症状が抑えられない
・生まれつきまぶたの形成がうまくいっていない

といった犬の場合に外科的治療が検討されます。

前者の場合は涙点縫合術という手術が取られることが多いです。
みなさん、涙を流した時に鼻水が自然と出てきた経験はありませんか?
あれは、まぶたの目頭のところに涙点という穴があり、そこから涙が鼻の奥へ排出されることで鼻水となって出てくるのです。
涙点縫合術は、その涙点を手術で塞ぎ、涙が鼻へ流れないようにする手術です。これにより結膜を潤す涙が不足しないようにして、ドライアイの完治を目指します。

後者の場合は眼瞼形成術という、まぶたを整形するという手術がとられることが多いです。

◆物理的刺激

怪我を負っている場合はまず負傷箇所の手当てをします。傷を負っているときは感染性の結膜炎を発症していることも多いため、そちらの治療も並行して行うことになります。

異物がまぶたの中に入り込んでいる場合は取り除き、経過を観察します。

また、まつ毛が目元に入り込んでいたり異常な箇所から生えていたりした場合は、抜いてしまうのが基本です。
しかし、まつ毛はまた同じ箇所から生えてくることが多いので、定期的に抜去してもらうことになります。

◆薬剤性

化粧品や農薬、除草剤などの薬品が目に入って結膜炎が発症した場合は、まず念入りに洗浄することが基本です。

また、犬の体質にあっていない目薬を使って結膜炎を発症した場合は、体質に合う薬剤成分でできた別の目薬に変更することもあります。

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犬の結膜炎の予防法

さて、ここまで犬の結膜炎について症状、原因、治療法をご説明して参りましたが、結膜炎は一度発症してしまうと治療に時間がかかる炎症です。
つまり、いかに結膜炎を予防するかが重要になります。

具体的な予防法として、まず飼い主さんは普段から愛犬の目をよくチェックしてあげましょう。
犬の結膜炎にはさまざまな原因がありますが、全てにおいて早期発見が何より重要です。
目元が充血したり膨らんだりしていないか、何度も掻いていないか、などを常に観察してあげましょう。

また、犬ジステンパーウイルスなどは予防接種で防げるため、ワクチンを接種できるようになったらできるだけ早く接種させてあげましょう。

加えて、定期的に愛犬の周りを掃除して清潔さを保つと良いでしょう。
アレルギーの原因となるダニや花粉、カビを除去できるだけでなく、犬の結膜炎を起こしうる飼い主さんの化粧品や、最近何かと必要なアルコールスプレーなどの薬品を愛犬が触れないところへ整理することもできます。


まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は犬の結膜炎について、原因から治療法、予防法などを解説しました。

「結膜炎」とだけ聞くと目がかゆくなるだけと思われがちですが、一度発症すると原因によっては完治が難しくなる炎症であることに加え、他の目の病気にもつながる恐れもあります。
飼い主さんの細やかな予防意識が何より重要ですから、常に様子を観察し、何かあったらすぐにかかりつけの獣医さんに対応してもらえるようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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