1.セラピー犬とは
1-1.仕事内容
1-2.セラピー犬と一般家庭の愛犬の違い
1-3.向いている犬種
2.セラピー犬による効果
2-1.生理的効果
2-2.心理的効果
2-3.社会的効果
3.セラピー犬の効果の実例
3-1.身体・心の改善
3-2.認知症の緩和と心の改善
セラピー犬とは
触れ合うことで不安な気持ちが軽減されたり、癒しを与えることができるように訓練を積んだ犬をセラピー犬と言います。
家で飼う愛犬と違い、初めて会う人達の心も癒せるよう約半年から2年程トレーニングを積んでやっとセラピー犬として活躍ができます。
では、セラピー犬の仕事内容、向いている犬種について見ていきましょう。
◆仕事内容
セラピー犬には、3つの種類があります。
・AAA(動物介在活動)
・AAT(動物介在療法)
・AAE(動物介在教育)
AAA(動物介在活動)は、治療はせず、犬との触れ合いのレクリエーションをします。
セラピー犬を撫でたり、寄り添ってくれることで心や体が癒され不安や寂しさを取りはらってくれます。
主に、高齢者施設で集団での活動をする場合が多いです。
AAT(動物介在療法)は、病院などでセラピー犬を使う専門的な医療のことをいいます。
塞ぎこむ心をセラピー犬との触れ合いで、徐々に心が癒され前向きな気持ちにさせることが目的です。
前向きになることで、「治療に専念しよう」という気持ちにさせ今までなかなか動けなかった患者さんが動けるようになることがあります。
治療が目的なので、2年以上の訓練を積んだセラピー犬とハンドラー以外に、医者や作業療法士や理学療法士などとプログラムを組んで行います。
先ほどのAAAとは違い、患者さん1人に対して個人対面をする場合がほとんどです。
また1回だけではなく20回、30回セラピー犬と患者さんは対面し触れ合っていくことで絆を深めていきます。
この治療はどんな患者でも対象になるわけではなく、犬が好きでないとなかなか難しい療法です。
最後にAAE(動物介在教育)は、小学校の生活の授業の中に取り入れたり、保育園や幼稚園で子供を対象に訪問活動をします。
セラピー犬と触れ合う事で命の尊さを学んだり、動物とどう接していけばいいのかを学ぶことができます。
◆セラピー犬と一般家庭の愛犬の違い
セラピー犬は、初めて会う大勢の人間の中でも、怖がらず吠えることもありません。
初めて会う人間に抱っこされても、幸せそうにリラックスをしています。
犬を飼っている方だと想像しやすいかもしれませんが、初めての場所・初めて会う大勢の人達の中でリラックスをすることは、とても難しいことです。
このように活動ができるのは、セラピー犬協会のスタッフの方々との密な信頼があるからこそ訪問活動ができています。
セラピー犬に触れ合う事で、硬かった表情が柔らかくなり、笑顔にかわります。
◆向いている犬種
では、セラピー犬はどんな犬がなれるのでしょうか?
セラピー犬は人懐っこく、性格が穏やかでなければなりません。
温厚で忍耐力が強い犬種が、セラピー犬に向いていると言われています。
-
・ゴールデンレトリーバー
・トイプードル
・ラブラドールレトリーバー
・ボーダーコリー
・ジャーマンシェパードドッグ
・キャバリアキングチャールズスパニエル
基本的に洋犬の大型犬がセラピー犬に向いていると言われています。
和犬は、飼い主には忠実ですが、頑固な性格の犬が多い為です。
向いている犬種はありますが産まれながらの性格もあるので一概には何とも言えません。
犬種に関わらず保健所で殺処分をされそうになっていた雑種や保護された犬がセラピー犬になることもあります。
また、ご自宅で飼っている愛犬もセラピー犬になれることもあります。
セラピー犬による効果
アニマルセラピーの効果は今までは、「癒されているなぁ」と感じるなど感覚的なものでした。
しかし、近年赤ちゃんに母乳をあげるときに出されるオキシトシンというホルモンが、犬と触れ合う事で分泌されちることが分かりました。
このホルモンは別名【愛情ホルモン】と呼ばれていて、幸せを感じると出てくるホルモンといわれています。
また、男性でも子供でもオキシトシンが分泌され、尚且つ触れ合っている犬もオキシトシンが分泌されていました。
この研究から、セラピー犬は人に癒しを与える効果があると実証されたのです。
そして、大きく分けるとセラピー犬には人間に3つの効果をもたらしてくれます。
◆生理的効果
生理的効果とは、脳の活性化や副交感神経が活発なるという効果があります。
例えば、セラピー犬を撫でたり抱っこや名前を呼ぶことで、感情のコントロールや、物事を整理や処理をする前頭葉の機能が活発になります。
また、副交感神経が活発になることで、精神が安定し、呼吸や脈がおちついたり血圧が下がる効果もあります。
リハビリ中の場合、セラピー犬と遊んだり触れ合いたいという気持ちから、リハビリを頑張ろうと言う意欲をたかめる効果もあります。
◆心理的効果
セラピー犬が無条件で心を開いてくれる事で、精神的に心の中のストレスを軽減する効果があります。
例えば、セラピー犬を抱っこすることで、不安や悩みを周囲に打ち明けることができるようになる患者さんもいます。
認知症の患者さんなどは、セラピー犬のことが大好きになり、何かをしてあげたいという自発性をうみます。
他には、セラピー犬が静かに寄り添ってくれる事で自分を必要としてくれていると感じ、心が豊かになる効果があります。
◆社会的効果
社会的効果とは、孤立や疎外感を感じていた方が自ら社会にでられるようになり人とのコミュニケーションを取ろうとする効果の事です。
実際にアニマルセラピーを導入している介護施設では、セラピー犬が間に入る事で周りとなかなか会話ができなかった方が積極的に話せる様になることがあります。
また、引きこもりや外出が苦手な場合セラピー犬にあうという動機付けをすることで社会参加を後押しすることもできます。
セラピー犬の効果の実例
実際にセラピー犬との触れ合いで効果があらわれた実例を2つ紹介します。
◆身体・心の改善
病院に入院している高齢者がいました。
この患者さんはベッドからひとりで起き上がることもできず、介助が必要でした。
普段この方は認知症ということもあり、あまり表情が変わらず会話を投げかけても返事がかえってこないことがほとんどでした。
しかし、セラピー犬と触れ合うことで今まで見たことのない笑顔になり「こっちにおいで」「抱っこがしたい」と自発的に会話をするように変わっていきます。
そして、何十回も同じセラピー犬と関わっていくことで特別な関係が築き上げていきます。
セラピー犬と30回ほど対面した頃に、ベッドから自分で起き上がれるようになります。
また苦手だったリハビリも、一緒にセラピー犬と行うことで積極的に頑張るようになりました。
◆認知症の緩和と心の改善
アルツハイマー型認知症にかかった女性の方は、自分が何も覚えられない事に自暴自棄になっていました。
会話をしようとしても、ほとんど喋らず喋っても「自分は阿呆だから会話はできない」と机に顔を塞ぎこんでしまうほどです。
セラピー犬を治療の一環として取り入れていき、次第に笑顔があふれるようになっていきます。
アルツハイマー型認知症の場合、直近の出来事を忘れてしまいがちですがセラピー犬とあった部屋を覚えていたり、セラピー犬とあったことを覚えれるように徐々にかわっていきました。
このように、心だけではなく体も変えることができるセラピー犬は近年医療現場でも重要視されています。
セラピー犬になるには
セラピー犬になるためには、セラピー犬の認定試験に合格することが条件です。
この試験に合格すれば晴れてセラピー犬として活動することができます。
このセラピー犬認定試験に合格すれば、どんな犬でもセラピー活動をすることが可能になります。
◆流れ
セラピー犬になるための流れは以下のとおりです。
1.もともとの性格がセラピー犬に向いているか適性を確認
2.一般的な家庭犬としてのしつけをする
3.セラピー犬になるためのトレーニングを半年以上積む
4.セラピー犬認定試験を受験
また、受験するためには下の内容をクリアしていなければなりません。
1.生後8ヶ月以上の犬
2.ワクチンや狂犬病の注射が済んでいること
3.トイレのしつけがしっかりできていること
セラピー犬になるために繁殖をしているNPO法人も中にはあります。
その場合、産まれた子が全てセラピー犬に向いているわけではありません。
セラピー犬に向いていないと判断された犬は、一般家庭に譲渡しています。
◆試験内容
試験内容は犬だけではなく一緒にこれから仕事をするハンドラーもテストの対象です。
家庭犬で学ぶような簡単な物から訓練で鍛える必要があるものまで様々です。
また協会によっても、試験内容は変わるので注意が必要です。
一般的な試験内容は、お座りや待て、ふせ、おいでなどの一般的な指示に従うかどうかというのはどの協会でも試験内容に入っています。
その他には車いすに乗っている方に驚かないで抱っこなどをされても大丈夫かをチェックします。
また傘の音やスーツケースの通る音・掃除機の音などに怖がらないかを見る場合もあります。
セラピー犬の訪問先は学校や病院・介護などの施設のため、初めて会う他人に怖がらないか他の犬とも仲良くできるかも重要なポイントになります。
どんな人や犬に対しても友好的で、吠えたり飛びつかずお手や待てなどの一般的な指示をしっかりできれば合格することができます。
◆トレーニング
セラピー犬になるためのトレーニングとして、一番最初は優良家庭犬認定試験に合格するレベルが最低条件といわれています。
この試験は、一般的な家庭犬としてのしつけがしっかりできているかを犬と飼い主が一緒に受けます。
もし、飼っている愛犬をセラピー犬にしたいということであれば、まずこの試験を受けてみるのも良いでしょう。
それ以外にセラピー犬特有の訓練が3つあります。
1つ目は、ベッドに寝ている患者さんの所に訪問に行く場合もあるため、ベッドでのマナーもおぼえなければなりません。
ベッドに上っても動き回らずじっとできるようにトレーニングしていきます。
2つ目は普段の生活ではなかなか目にしない車いすに対しても過剰に反応などはせず、一緒に横について歩いたり、車いすに座っている人に撫でられたり、抱っこされても落ち着いていられるように慣れさせていきます。
杖や、点滴の機械などを持った人ともリラックスして対応できるように慣れさせていきます。
3つ目はどんな速度の方とも同じ速度で歩けようにトレーニングします。
障がいがある方やリハビリ中の方、高齢者など人によって歩く速度は様々です。
どんな人が傍にいても対応できるように人に合わせて行動する力を身につけさせます。
このように、普段の生活では慣れることができない事に対しても、トレーニングが必要不可欠です。
引退後のセラピー犬はどうするのか
協会で飼育されているセラピー犬は、大体10年で引退します。
それ以降セラピー犬は里親の募集をかけ一般家庭にひきとられたり、引退犬ボランティアのもとで暮らす場合もあります。
場合によっては、長年連れ添ったハンドラーさんと最期の時まで一緒にいる場合もあります。
どちらにしろ、セラピー犬は不幸にならず引退後も犬生を幸せに過ごしています。
まとめ
セラピー犬は、幼い子供から高齢者まで初めて会う人にも心から寄り添っています。
このように活躍するためには、もともとの生まれ持った性格はもちろんのこと、厳しいトレーニングを積んできた証だということを忘れてはいけません。
セラピー必要としている人は沢山います。
人はセラピー犬と関わる事で、病気で変わった性格がもとの性格に戻ったり、やる気や希望を持てる様になるためのきっかけを作ってくれています。
日本では海外に比べてまだまだポピュラーではありません。
これから先セラピー犬が、もっと日本で当たり前の存在になる日は近いかもしれません。
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