【獣医師監修】犬の脱水症状の予防法!飼い主さんが知っておくべきこと

2022.07.14

【獣医師監修】犬の脱水症状の予防法!飼い主さんが知っておくべきこと

犬が脱水症状を引き起こしてしまうあらゆる病気や適正な水分摂取量、脱水時の症状、対処法、予防法を解説します。脱水は犬のあらゆる臓器に悪影響を及ぼしてしまいます。決して自己判断、経過観察はせずに獣医さんに診てもらいましょう。飼い主さんがこれらを知っているか知らないかで愛犬の命を守ることができます。

犬の脱水症状とは

脱水症状の犬"

犬の脱水症状とは体内の水分が奪われていき、体からあらゆる不調が出てくる状態を言います。特に気温や湿度が高い環境下で発症する確率が高く、ハァハァと舌を出しパンティングをする状態が長く続くことによって脱水症状が引き起こされます。季節だけではなく、病気、環境、年齢によっても犬の体内から過剰に水分が奪われ、脱水症状が現れてしまいます。

◆原因

犬が脱水症状になる原因としては、熱中症、下痢・嘔吐、慢性腎臓症、糖尿病、副腎皮質機能低下症、胃腸炎、急性膵炎、腎臓病、異物摂取などあらゆる病気が潜んでいて脱水症状が引き起こされている可能性があります。

◆犬の水分摂取量

犬は体重の約70%が水分で構成されていると言われています。子犬の場合はもっと多く約80%が水分で構成されています。水分の10%が失われると脱水症状を引き起こし、それ以上失うと臓器に悪影響を及ぼしショック状態で死に至る危険性があります。
犬が一日に必要とする水分量の目安として簡単な計算式があります。

【犬が1日に必要とする水分量=体重(kg)×0.75乗×132(ml)】

例えばですが5キロの犬を飼っているとすれば上記の式に当てはめて大体500mlの水分量が必要ということが分かります。体重の10%前後の量が適量だと考えられています。しかし、筋肉質のワンちゃんはより多くの水分摂取を必要とするため多めの水分摂取が必要となり、反対に老犬や肥満犬などは水分摂取量が少なくなる傾向があります。また、子犬は多めに水分を摂取する傾向があります。
基本的には水飲みボウルやペットボトルを取り付けられるウォーターノズルで水分摂取します。
ペットボトルを取り付けられるウォーターノズルを使用すれば、一日にどれくらいの水を飲めているのか目視で確認することもできるのでとても便利でおすすめです。

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直接水を飲む以外にもフードからも水分を補っています。ウェットフードやスープタイプのフード、ミルク、野菜や肉にも水分が含まれているので、フードからも水分を補うことができます。

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犬の脱水時の症状

  • いつもより元気がなく、ぐったりしている。
  • いつも与えているフードの食いつきが悪かったり残したりし、食欲が落ちている。
  • 下痢をしている。
  • 嘔吐している。
  • ハァハァと舌を出し息が荒くなっている。
  • おしっこが濃くなっていて量が少ない。
  • 皮膚に弾力がない。
  • よだれが大量に出る。
  • 目がうつろになる。

上記の症状が見られたら脱水症状を引き起こしている可能性があり、注意が必要です。


犬の脱水症状による病気

◆糖尿病

糖尿病は、インスリンが足りない、もしくは正常に働かないことにより血液中の糖が増えてしまう病気です。膵臓で作られるインスリンは血液中の糖を細胞内に取り込みエネルギー源となります。このインスリンがうまく作用しないと血液中の糖が利用できず様々の症状が引き起こされてしまいます。
糖尿病初期としては飲水量や尿量が増え食欲があるのに体重が減ってしまうなどの症状が現れます。症状が進行してしまうと食欲や元気の低下、嘔吐や下痢などの症状が起こり脱水症状を引き起こしてしまいます。また、糖尿病は初期の発見が難しく病気の進行とともに白内障や腎疾患、肝疾患、細菌感染による皮膚疾患など多くの合併症が引き起こされてしまいます。

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◆慢性腎臓病

慢性腎臓病は、腎臓の機能が長期間にわたって低下していく病気です。シニア犬に多く見られますが若い犬でも発症することがあります。腎臓に障害を起こす様々な疾患が原因となりますが多くは加齢と関係が深い病気です。症状としては体重が少しずつ減少する、徐々に毛艶が悪くなる、水をたくさん飲み色の薄い尿をたくさん出す、吐き気がある、元気でなくなってくるなどの症状が現れます。初期段階ではほとんど気付かず、腎臓機能が50%以上失われて初めて目に見える症状が現れてきます。慢性腎臓病は残念ながら腎臓の機能を回復させることができないので、吐き気が出ていれば吐き気止め、尿で排出できない毒素を便で排出させる活性炭入りの薬、脱水症状を引き起こしていれば点滴などの処置を獣医さんが施してくれます。

◆熱中症

犬の熱中症は体温調節機能が働かなくなり高体温や脱水になることで生じる全身の疾患です。特に犬は人間とは違い汗をかけず体温調整をすることができません。ですので、舌を出しハァハァとパンティングすることによって水分を蒸発させて体温を下げようとします。しかし、気温や湿度が高く、気道に問題がある場合などうまく蒸発できず体温が下げられない状態が続くと様々な臓器の機能に障害が出始めます。そして脱水することにより、水分や塩分が体の臓器に行き届かなくなると多臓器不全に陥ってしまうので最悪の場合、死に至ることがあります。

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◆副腎皮質機能低下症

副腎は、左右の腎臓の近くにある副腎皮質ホルモンを分泌する内分泌器官です。この副腎皮質ホルモンの分泌が低下することにより、多飲、多尿、食欲不振、嘔吐、下痢、体重減少、高カリウム血症、低ナトリウム、軽度の尿素窒素上昇などの症状を引き起こします。症状が急性の場合は高カリウム血症から心臓の機能不全を起こし重度の場合は死に至ることもある怖い病気です。
副腎皮質低下症の発症原因は2つあります。1つ目は副腎自体に萎縮や破壊が起こり副腎皮質から分泌されるホルモンが低下することによって起こります。腫瘍や免疫介在性疾患、血栓などさまざまな原因で引き起こされます。2つ目は副腎皮質ホルモンの分泌を促進する下垂体ホルモンの分泌が低下するために起こります。下垂体そのものに異常がある場合や長期ステロイド剤の投与を急に止めた場合などに起こります。


犬が脱水症状になった際の対処法

応急処置としては愛犬が自分で水を飲める状態のときは、容器から水を与えてあげましょう。元気があるのに水を飲まない場合は食事に水分を混ぜてウェットフードにする、ペット用の経口補水液を飲ませるなど水の与え方に工夫しましょう。

ぐったりとして元気がない場合はスポイトなどで口に少しずつ与えるようにしましょう。また、下痢や嘔吐をしている場合、無理に水分を与えてしまうと症状が悪化してしまう場合があります。その場合は無理に水を与えず、すぐに動物病院へ連れて行き獣医さんに見てもらいましょう。脱水症状を引き起こしている場合、口からの水分だけでは水分摂取が不十分ですので、経過観察はせずにすぐに点滴などの処置をしてもらいます。

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犬にポカリを飲ませてもいいのか

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人間用のポカリスウェットは人間が飲みやすいように大量の糖分や塩分、化学成分、添加物、香料が含まれています。ですので、人間用のポカリスウェットを継続的に与えてしまうと健康を害す危険性もあります。また、人間用のポカリスウェットはナトリウムをはじめとする電解質が人間の体液に近いバランスで含まれているので汗をかいた後の水分補給に適しています。しかし、犬は汗をかく生き物ではありません。基本的には水を飲ませ、水だけでは心配な飼い主さんはペット用の経口補水液が売っているのでそちらで対処してあげましょう。


犬の脱水症状の予防法

愛犬の脱水症状を予防するためにはいつでも水が飲めるように給水器に常に水が入っている状態にしましょう。そして外出する際には携帯用の給水器を持ち歩くようにしましょう。

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夏場のお散歩は日中の暑い時間は避け、早朝や夕方から夜に連れて行きましょう。
犬が快適に過ごせる気温は22度~25度、湿度は50%~60%ですのでこれを維持できるように冷房や暖房を付けてあげることも大切です。暑かったらアイスマットを使用し、震えやパンティングなどの症状がないか愛犬の様子を見ながら気温の調整をしてあげましょう。
冬場であっても油断は禁物です。空気が乾燥して暖房で室温が高い場合も脱水する危険性があるのでいつでも水が飲める状態にしておきましょう。
水分摂取は食事からでもできますので、ふやかしたウェットフードやスープフード、子犬にはミルクを与えるなど食事にも工夫しましょう。


まとめ

犬の脱水症状は一歩間違えれば命にかかわるので、自己判断せずに応急処置をして必ず獣医さんに診てもらうことをおすすめします。
飼い主さんが脱水時の症状や対処法の知識を持っているのかいないのかで大きく違います。特に犬は人間とは違い喋ることができません。「痛い、暑い、寒い」など言えず症状を見逃してしまいがちです。愛犬の健康をよく観察してあげましょう。そして大事な愛犬の命を預かっていることを忘れずに健康管理には注意して犬と楽しい生活を過ごしていきましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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