【獣医師監修】犬のアレルギー性皮膚炎とは?

2021.09.18

【獣医師監修】犬のアレルギー性皮膚炎とは?

愛犬がやけに体を痒がっている、掻いたり舐めたりをやめない…もしかしたらアレルギー性皮膚炎かもしれません。犬は人間と違って汚いのが平気なんだから大丈夫!と思いがちですが、アレルギーを発症することがあります。皮膚炎ができて「ここはかいちゃダメ」と言っても我慢なんてしてくれません。痒みがひどくなると眠れない犬もいます。自然に治るものではないので治療が必要です。

アレルギー性皮膚炎とは?

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◆原因

動物の体には異物が侵入したときに防御する免疫という機能が備わっています。アレルギー反応とはこの免疫が過剰に反応し、自分の体までも傷つけてしまう働きのことです。異物から体を守ろうとして皮膚が炎症を起こしてしまう症状をアレルギー性皮膚炎と言います。
アレルギーの原因となる物質をアレルゲンと言います。アレルゲンが侵入したときに体を守る抗体のひとつにIgE抗体があり、犬のアレルギーに大きく関わってきます。
アレルゲンは食物、花粉、ハウスダスト、ノミなどがありますが、遺伝的な要因もあります。

◆症状

まず痒みが現れ、犬は痒い部位を掻いたり舐めたりすることで皮膚が炎症を起こします。炎症部位は脱毛し、赤くなったり発疹ができたりします。悪化すると元々皮膚に常在している細菌が増え、更に別の疾患を引き起こすことにもなります。


アレルギー性皮膚炎にはさまざまな種類がある

◆アトピー性皮膚炎

花粉、ハウスダスト、ノミ、カビなどに対してアレルギー反応を引き起こし、皮膚の炎症が繰り返し起こる症状です。環境がアレルゲンになることが多く、症状の程度には季節性があります。最初の発症は生後半年~3歳頃に見られ、生涯付き合っていかなければいけません。
 

◆食物アレルギー

顔に症状が現れることが多く、目・口周り、足先、肛門周囲などに赤みや痒みが出ます。外耳炎になる場合もあり、皮膚以外に下痢や嘔吐といった消化器症状も見られます。食物が原因なので季節を問わず症状は現れます。人間と違って命に関わることはありませんが、皮膚や消化器に負担がかかるのでアレルゲンがわかったら与えるのをやめさせてください。
肉類や乳製品などのタンパク質が原因となることが多いです。肉類の中でも何の肉に反応するかは犬によって違い、小麦や大豆などの穀類も原因になることがあります。

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◆ノミアレルギー性皮膚炎

ノミやダニなどの寄生虫に刺され、このときの唾液でアレルギー症状を起こします。全身に痒みが見られ、背中、腰部、尾などに脱毛やブツブツといった症状が出ます。寄生虫が生息しやすいのは春から夏ですが、温暖な地域では一年中注意が必要です。
散歩に行くと犬は草むらに入りたがりますが、ノミやダニに刺される可能性があるので入らせないようにしましょう。他にも予防薬を使う、ブラッシングをこまめにするといったケアは大切です。

◆接触性アレルギー

食器、カーペット、シャンプーなどに反応して起こるアレルギーです。接触した部位に症状が現れ、食器やおもちゃが原因ならば口周り、顎、鼻に炎症が起こります。シャンプーが原因ならば全身に現れることもあります。
犬が麦系に食物アレルギーがある場合、シャンプーに含まれていると発症してしまうことがあるので、注意しなくてはいけません。


関連する病気

◆マラセチア性皮膚炎

皮膚炎が悪化すると更に別の病気を引き起こしてしまうことがあります。皮膚には常在菌が存在し、通常ならトラブルは起こらないのですが、炎症を起こすと菌が異常繁殖して状態を悪くします。マラセチア性皮膚炎は代表的な病気の一つです。
マラセチア菌は湿度が高いと増殖するので梅雨~夏に注意が必要です。皮脂の溜まりやすい脇、指の間、外耳などで症状が見られます。他の犬にうつることはありません。アレルギー性皮膚炎以外に甲状腺機能低下症、クッシング症候群などを発症していることもあります。
治療には抗真菌作用のある外用薬や内服薬、薬用シャンプーを使用します。同時に基礎疾患の治療も行います。
シワに皮脂が溜まりやすいブルドッグ系、テリア系などで多く見られます。

◆膿皮症

膿皮症はブドウ球菌が増殖して起こる病気です。これも普段から皮膚に常在する菌ですが、皮膚が炎症を起こしていると増殖して悪さをします。初期症状は痒み、フケ、赤みなど他の疾患と変わりませんが、進行すると全身に症状が出ているのに顔にあまり出ないのが特徴です。他の犬にうつることはありません。
治療には抗菌作用のある外用薬や内服薬、薬用シャンプーを使用し、基礎疾患の治療も行います。再発しやすいので定期的なシャンプー、食事やノミダニ対策に気をつけて生活することになります。
どの犬種でもかかる病気ですが、シワが多いブルドッグ系が多いとされています。

◆疥癬症

疥癬症とは疥癬虫(ヒゼンダニ)に寄生されることで皮膚炎を起こす病気です。症状は非常に強い痒み、脱毛、発疹などで、悪化すると衰弱や体重減少が起こることもあります。
他のペットや人間にもうつることがあるので、発症したら犬を隔離する必要があります。同居犬も一緒に治療し、飼い主も皮膚科での治療を受けることになるかもしれません。
治療にはダニを駆除する外用薬や内用薬を投与し、この期間に使ったタオルやブラシなどは消毒します。


どんな犬がアレルギー性皮膚炎にかかりやすい?

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◆アトピー性皮膚炎になりやすい犬種

柴犬、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、シー・ズーなどがなりやすいです。これらの犬種は食物アレルギーやノミアレルギーであることも多いと言われています。たれ耳の犬種は外耳炎にもなりやすいので耳のケアが必要です。
盲導犬にはゴールデン・レトリーバーよりもラブラドール・レトリーバーが多く、長毛種よりも短毛種の方が毛の管理がしやすいと思われますが、皮膚炎のかかりやすさはあまり変わらないようです。

◆食物アレルギーが出やすい犬種

アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・コッカースパニエル、ダルメシアンなどがなりやすいです。

◆皮膚病になりやすい犬種

どの犬種でも皮膚病になりやすいのですが、特にレトリーバー種、柴犬、パグ、フレンチ・ブルドッグなどが多いです。


治療方法

◆アレルギー検査

犬の血液を採取し、検査機関に出して行う検査です。費用は高額ですが、治療の一貫としてならペット保険が使える場合があります。
環境アレルゲンに対するIgEが検出された場合はアトピー性皮膚炎と診断されます。食物アレルギーと似ていますが、IgEとリンパ球の2つが関与するので、両方が陽性反応を示すと食物が原因と診断されます。

◆除去食試験

除去食試験とは食物アレルギーの場合に行われる治療です。今まで食べていたものを与えず、アレルゲンと疑われる食材を含まない食事に切り替える試験です。少量のおやつも我慢して指定されたフードと水だけで約2ヵ月過ごし、改善が見られたらアレルゲンが特定できます。
血液検査の費用が高いので、食べ物が原因ではないかと予想できる際にこちらが先に行われることがあります。

◆投薬治療

犬が患部を掻いてしまうことで症状が悪化してしまうので、皮膚炎治療には痒みを抑える薬が投与されます。内用薬にはステロイド、抗ヒスタミン剤、抗生剤などが使用されます。外用薬にはステロイドのスプレーや軟膏、消毒薬などが使用されます。しかし外用薬は犬が舐めて中毒を起こしたり、副作用を起こしたりすることがあります。

◆シャンプー療法

近年は様々な薬用シャンプーが販売されています。獣医師と相談しておすすめのシャンプー剤で長期間洗ってみると皮膚炎が治まることがあります。
症状によっては3日に1度シャンプーをし、1度に10分浸け置きしなければいけません。手間がかかりますが、抗菌薬等を繰り返し使用すると効かなくなる、副作用が起きるといったデメリットがあります。シャンプー療法はこれらの心配がないので勧められます。

◆減感作療法

減感作療法とはアレルゲンを特定し、少しずつ体内に注射して体に慣れさせる治療です。人間のアレルギー治療でも行われ、完治させることはできますが、治療は3~4年かかるため年齢が若いうちに勧められます。また費用も高額になります。

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予防方法

基本は家の中をこまめに清掃し、皮膚を清潔に保つことです。近年は室内飼いの犬が増えたため頻繁にシャンプーをする人がいますが、洗いすぎも良くありません。シャンプー剤で洗いすぎると皮膚のバリア機能が弱まり、皮膚病を起こしやすくなります。
バリア機能を高めるためにバランスの良い食事を摂ることも大切です。消化しやすいタンパク質、ビタミンB群、ビタミンA、オメガ3系不飽和脂肪酸、オメガ6系不飽和脂肪酸などを積極的に取り入れてください。愛犬が嫌がらなければサプリメントもおすすめです。


まとめ

皮膚病は犬の体質が関わってくるので予防は難しいですが、中には人間にうつってしまうものもあります。家族がアレルギーを発症してしまうと、犬を里親に出すことになるかもしれません。シャンプーは月1回程度でもブラッシングは毎日しましょう。お手入れの機会が多いと体調の変化にすぐに気づき、スキンシップも増えます。健康に暮らすために犬と住まいのお手入れは欠かさないようでください。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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