【獣医師監修】犬が足を引きずり痛がる!ナックリングの原因と症状。

2022.11.22

【獣医師監修】犬が足を引きずり痛がる!ナックリングの原因と症状。

犬が足を引きずっている、痛がっている状態とはどのようなものかわかりますか?四つ足のうち1本をあまり地面に着けないようにしている、肉球を下にせず変な方向に向いている、こういった症状はナックリングかもしれません。ナックリングがあるということは歩行困難になる病気があるということです。


【掲載:2021.11.20  更新:2022.11.22】

犬のナックリングとは

ダックスフンド

足を引きずって歩いている、又は足首や足の指を曲げて甲で歩いているような症状のことをナックリングと言います。甲で歩いているとそのうち皮膚も爪も傷ついて血だらけになってしまいます。神経伝達に異常が起こっているので犬は痛みを感じておらず、怪我をしても平気で歩こうとします。
前足でも後ろ足でも起こる可能性があり、初期の頃は飼い主さんも気づかないかもしれません。犬が歳をとって筋肉が落ちている、散歩から帰るとやけに足の甲が汚れている、そんな異変を感じたら足を痛がっていないか観察してみてください。


ナックリングの症状

ナックリングの症状が見られる犬は神経の病気を起こしていることが多いです。神経は脳と四肢を繋げていて、信号を送ることで体を動かすことができます。犬の足は人間と違って簡単に内側に曲げることができるので、甲を下にするのが苦痛ではありません。神経が麻痺してしまうと肉球を地面に着けて立ってという信号が送れなくなります。足裏が地面に着いているのかいないのかわからないのでナックリングが起きてしまうのです。
ナックリング自体は病気というより症状のひとつとして扱われます。ナックリングが起きているときはすでにグレードが上がっている状態です。

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ナックリングの原因

◆ナックリングの原因①老化によるもの・シニア犬

シニア犬になるとどうしても筋肉が落ち、神経も衰えてきます。人間と同じで転倒しただけでも大ケガになり、関節や神経を痛めて感覚が麻痺してしまうことがあります。
動物は外敵に弱っているところを見せないため、犬も体調不良を隠そうとします。そのため犬が立てなかったりふらついたりするときは、かなり状態が悪いときです。シニア犬であると足以外に心臓や消化器が悪くなっている可能性もあるので、すぐに動物病院を受診しましょう。

◆ナックリングの原因②腕神経叢裂離(わんしんけいそうれつり)

人間で言うと腕、つまり前足の神経は首周りの頸椎と繋がっています。腕に向かって無数の神経が集まっている部位を腕神経叢と言い、この神経がねじ曲げられたりちぎれたりするとナックリングや痛覚麻痺の症状が現れます。これを腕神経叢裂離と言います。神経がちぎれてしまったらもう元には戻りません。
高所からの落下や転倒、交通事故といった外部からの損傷を受けて発症することがあります。前足に大きな負荷がかかる場合と首に負荷がかかる場合があります。治療は安静にすることです。神経が回復できないくらい損傷してしまうと、前足を切断することもあります。
 

◆ナックリングの原因③環軸椎不安定症

頸椎とは脊椎の首の辺りのことで、首に衝撃が加わって靭帯の損傷や骨折が起こる病気です。初期の症状は頭の上げ下げを嫌がる、動きたがらないくらいです。悪化するとふらつき、足の麻痺、呼吸不全を起こすこともあります。
はっきりとしていませんが、首輪を使っていると負担がかかり発症の原因になると言われています。チワワ、トイプードルなどの小型犬や首が細い犬は、首輪よりハーネスの方が向いています。
治療は首を固定する、安静にする、投薬で痛みを和らげるなどです。脊髄や神経の損傷が少ないほど改善される可能性はあります。

◆ナックリングの原因④椎間板ヘルニア

椎間板とは背骨と背骨の間にある組織で、これが飛び出してしまう状態をヘルニアと呼びます。組織が神経を圧迫し、神経に繋がっている手足にまで影響してしびれや麻痺が起こります。手術では圧迫している組織を取り除く処置をしますが、完治するとは限りません。
ナックリングの原因が椎間板ヘルニアである場合は、かなり症状が進行しているときです。首の神経を圧迫していたら前足に麻痺、腰の神経を圧迫していたら後ろ足に麻痺が起こります。麻痺していたら足を触っても痛がりませんが、首や背中などの患部を触ると痛がります。排泄が上手くできなくなり、足を引きずって擦りむくようになると、皮膚炎や膀胱炎など他の病気を起こすこともあります。

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◆ナックリングの原因⑤変性性脊髄症

脊髄にはたくさんの神経が集まって全身に繋がっています。この神経細胞が変性して起こる病気で、後ろ足から麻痺の症状が出始めます。進行すると排泄が困難になり、腰を引きずって歩くようになります。更に悪化すると前足も麻痺して歩けなくなります。
原因ははっきりしていませんが、小型犬で太りやすいコーギーに多いです。ですが大型犬のシェパードやバーニーズ・マウンテン・ドッグにも見られます。これといった治療法はないので、動けるうちにリハビリをする、サプリメントを飲むなどの処置が施されます。


ナックリングの対処法

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◆ナックリングの対処法①マッサージ

足先をマッサージすると血行が良くなり、神経麻痺が緩和することがあります。衰えた神経の機能を回復するには、自ら動かそうとする意志が必要になります。マッサージをして刺激を与えると何か触られているという意志を持たせることができます。
症状がない犬でも、シニアであれば散歩前にウォーミングアップをすると足の負担を減らせます。関節を曲げ伸ばししたり、家の中を少し歩いたりしてから元気に散歩に行きましょう。帰ってきて足全体をストレッチ、指を上下に動かす、開くといったマッサージをしてあげると血行が良くなり回復も早まります。マッサージの仕方は病院やリハビリ施設で専門家の指導のもと行ってください。

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◆ナックリングの対処法②ブーツやハーネスの使用

足を正しい方向に曲げて歩くために、犬用ブーツを履くのがおすすめです。靴底が付いているので足先をおかしな方向に曲げることがなく、危険なものを踏む心配も減ります。ですが実際には靴を履くのが苦手な犬がいたり、ちょうどいいサイズが見つからなかったりします。人間のように靴の種類が豊富でないので、サイズがないというのがよくある問題と思われます。伸び縮みするサポーターや靴下、テーピングでも良いです。犬用のものがありますが、履かせる部位によって形も変わってきます。なければ人間用のサポーターを小さく切ってちょうどいいサイズのものを手作りしてみてください。
散歩に首輪を使う人が多いですが、高齢になるとハーネスがおすすめです。ハーネスで背中を持ち上げてあげると犬の負担が減り、歩きやすくなります。排泄の際におしりを地面に浮かせているのは力が要るので、介護用の取って付きハーネスで支えてあげると楽にできます。

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◆ナックリングの対処法③動物病院へ行く

神経の病気は一度発症すると完治は難しく、症状を和らげる、これ以上悪化しないようにするのが目的の治療になります。治療はサプリメントや薬の投与、安静、マッサージ、サポーター等をすることです。病院によっては鍼やレーザーの治療も行っています。
サプリメントではグルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンが含まれているものが適しています。軟骨や靭帯の形成を助ける働きがあり、病院で勧められることが多いです。錠剤だけなく、液体や粉末、味付きのものなど犬が食べやすいように工夫されています。
安静療法とは散歩や運動は全て中止にし、トイレ以外はケージで静かに過ごす治療です。運動できないので体重を増やさないように食事も制限することになり、当然犬はストレスが溜まります。
病院での様子だけではわからないことがあるので、普段遊んでいるときや異変を感じたときの様子を動画に残して獣医師に見せると役立ちます。

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ナックリングの予防法

遺伝的に神経や脊髄の病気が多い犬種は胴長短足、体重が重いといった特徴があります。ダックスフント、フレンチブルドッグ、コーギーなどです。普段の生活では太らせない、抱っこをするときに腰を浮かせない、前足だけを持って抱っこしないという注意が必要です。他には床が滑りやすい素材であればマットを敷く、ソファやベッドの横には踏み台を置いて上らせるという安全な部屋づくりも欠かせません。
飼い主が帰ってきたときにピョンピョン飛び跳ねる、急な階段を上り下りするのも足を痛める原因になります。犬の性格が関係していますが、無理な動きをさせないようにしましょう。
また犬が元気がないときに外に出ないのは良くありません。日光を浴びることでビタミンDが合成され、骨や歯が丈夫になります。免疫力アップも期待できるので、運動しなくてもひなたぼっこはさせてあげてください。


まとめ

 人間の場合体に対して足が大きいですが、犬は小さいです。お手をしてみるとわかるように、人間の手よりも小さな肉球で体を支えて歩いているのです。いくら四つ足でもその分筋肉や神経に負担がかかります。野生下ではあまり長生きしないですが、近年はペットの寿命が延び、体も長く使うようになりました。歳をとってから筋力アップは難しいですが、適度な運動はさせましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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●執筆者情報
ライター情報
Akatsuki

物心つく前から犬と育ち、わんこ歴は20年以上です。ビーグル、ゴールデン・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグと過ごし、現在は4代目の元保護犬と暮らしています。愛玩動物飼養管理士1級の資格も取得しています。犬について日々勉強し役立つ情報を発信していきます。



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