1.抗がん剤とはどのような治療か
2.犬に抗がん剤を投与するメリットとデメリット
2-1.メリット
2-2.デメリット
3.犬に抗がん剤を使用する病気
3-1.白血病
3-2.リンパ節や肺への転移
3-3.手術後に転移を起こす可能性がある
抗がん剤とはどのような治療か
実情として「がん治療のために用いられる」くらいしか抗がん剤の知識がない人がほとんどではないでしょうか。
抗がん剤は確かにがん治療に用いられる治療方法ですが、それだけでは全く十分ではありません。
愛犬が病気になってしまった時、治療法を決めることができるのは飼い主さんだけです。
後悔のない決断をするためにも、抗がん剤について詳しく知っておきましょう。
まず、がんの治療法としては「3大療法」と呼ばれる外科手術、放射線治療、化学療法という選択肢があります。
外科手術や放射線治療はがんになった部分を局部的に治療する方法です。
がんに直接働きかけることができるので高い効果が見込める反面、がんになってしまった部位の位置が悪いとなかなか力が発揮できないこともあります。
そうした場合に使用されるのが化学療法であり、抗がん剤もこれにあたります。
抗がん剤治療は注射や内服によって、がんに効果のある薬を全身に投与する治療法です。
全身の腫瘍細胞に対して効果が期待できるため、がんのある場所が体のどこであっても問題ありません。
一方で、「全身に投与される」ことで体に不調が起きることがあります。
これが、抗がん剤治療にはつきものとされる「副作用」です。
そもそもがんとは、腫瘍の中でも「悪性腫瘍」のみを指します。
腫瘍とは、もともと体に存在していた細胞が様々な要因で分裂し、増殖してしまった状態のことです。
分裂と増殖のスピードがゆっくりで、元いた場所に留まり続けるのが良性腫瘍、すばやく分裂と増殖を繰り返しながら身体中を動き回るのが悪性腫瘍といわれています。
抗がん剤はがんである悪性腫瘍の増殖を抑えるために作られました。
しかし、実際には悪性腫瘍だけでなく正常な分裂をしている他の細胞まで壊してしまうことがあります。
その結果、副作用が起きてしまうのです。
犬に抗がん剤を投与するメリットとデメリット
それではここからは、より具体的に犬と抗がん剤についてみていきましょう。
実際に犬に抗がん剤を投与する際のメリットとデメリットをご紹介します。
◆メリット
犬に抗がん剤を投与するメリットは以下の2点です。
①犬のQOLを維持できる
実は、犬に抗がん剤を用いる理由のほとんどが、犬のQOL(生活の質)を維持するためというものです。
人に対する抗がん剤治療では、副反応が出るのを前提として高用量の投与が実施されるケースも多いですが、犬の抗がん剤治療は全く異なります。
なぜなら、そもそも犬の場合は「完治を目的としていない」からです。
犬に抗がん剤を用いる目的は、悪性腫瘍を小さくしたり、これ以上転移などの進行がないように抑制したりすることです。
そのため、副作用がでるほどの高用量を犬に投与することは滅多にありません。
抗がん剤治療をしている犬の多くが、見た目にはわからなくらい元気だといわれています。
②犬の体力を奪わない
一般的に、抗がん剤治療を検討するほどの病気をする犬は高齢です。
外科手術などをすると、かえって体力を奪い衰弱させてしまう可能性もあります。
その点、抗がん剤治療はそれぞれの犬に合わせた用量で治療を進めることができます。
また、抗がん剤の用量は一定ではなく、犬の状態や様子に合わせてあとから調節も可能です。
「がんの進行が思ったよりも早いから、少し用量をあげてみよう」
「少しだるそうだから、この2週間は容量を下げてみよう」
というように、動物病院の先生と相談しながら治療を進めていくことができます。
◆デメリット
デメリットも同様に2点が挙げられます。
①病気が完治しない
抗がん剤治療だけで病気を完治させるのは人間の場合でも難しいことです。
抗がん剤の投与で病気の症状が落ち着いても、またいつ悪化するかはわかりません。
完治しないのに、いつまで抗がん剤投与を続けるのかといった問題に直面することもあるでしょう。
きちんと完治させて安心するためには、他の治療法を試すことをおすすめします。
②副作用がでる
先にも述べたように、犬に抗がん剤を投与する場合に副作用が出るのは非常に稀です。
しかし可能性はゼロではありません。
副作用が出るリスクがあることは、デメリットとして必ず念頭に置いておきましょう。
犬に抗がん剤を使用する病気
これまで抗がん剤を使用する病気として抽象的に「がん」を挙げていました。
他にどんな病気や状態があるのか、ここでは具体的にご紹介します。
◆白血病
白血病は血液のがんの一種です。
血液は赤血球、白血球、血小板で構成されていますが、白血病は骨髄で白血球ががんとなり増殖してしまう病気です。
白血球をさらに細かく分解すると、リンパ球、単球、顆粒球に分けられます。
犬の白血病の場合は、リンパ球ががん化してしまうリンパ性白血病が多いようです。
◆リンパ節や肺への転移
動物病院で診断を受けた時点ですでにリンパ節や肺にまで転移してしまっている場合は、抗がん剤治療しか選択肢がないと言っても過言ではないでしょう。
リンパ節や肺は、外科手術をしても成功の確率が低い、あるいは手術自体ができないところです。
抗がん剤治療でがんの進行を遅らせるのが一般的な治療法になります。
◆手術後に転移を起こす可能性がある
がんがとても活発な場合、外科手術をしてもすぐに他の場所への転移が見つかることがあります。
何度も手術をしていると、かえって体が衰弱してしまいます。
体力を奪わないように、手術後に転移を起こす可能性のあるがんには抗がん剤治療から始めることが多いでしょう。
抗がん剤による副作用
前述したように、犬に抗がん剤を投与した場合の副作用はほとんどない場合が多いです。
しかし万が一、副作用の症状がでるとしたら以下の3種類に分けられます。
◆消化器毒性
消化器毒性は、抗がん剤によって消化管の粘膜の細胞が壊れることで起きる副作用です。
具体的な症状としては、食欲低下や吐き気、下痢などが挙げられます。
抗がん剤を投与した当日から2日後にかけてみられる場合があるようです。
◆骨髄抑制
骨髄抑制は、抗がん剤によって骨髄の細胞が壊れることで起きる副作用です。
赤血球、白血球、血小板が減って貧血気味になり、元気がなくなってしまいます。
特に、白血球の構成成分である好中球の減には注意が必要です。
好中球は別名「免疫細胞」と呼ばれており、体を細菌などから守っています。
この好中球が少ない状態で体に最近が入り込むと、血液が細菌に侵される敗血症という病気を引き起こす可能性が高まります。
骨髄抑制の症状は、抗がん剤投与後5日前後でみられる場合があるようです。
◆脱毛
人間に対する抗がん剤治療の副作用としてよく知られている脱毛ですが、犬の場合はほとんどみられません。
脱毛が全く起こっていないとは言えませんが、犬はもともと毛が抜ける種類も多くいるので、気づかれないようです。
代表的な副作用を3種類ご紹介しましたが、犬の体質などによって他にも症状が出る可能性は十分にあります。
犬に副作用は出にくいとはいえ、抗がん剤治療を決めるときには起こりうる副作用について獣医師とよく相談するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事では、犬の抗がん剤治療について解説しました。
大切な愛犬の治療方法を決めるのは、とても責任重大で悩ましい問題です。
愛犬が言葉を話せたら一緒に治療方針を決められるのに…と考える飼い主さんもいるかもしれません。
しかしそんな時こそ愛犬の様子や病気の進行具合、治療費等の懸念点を冷静に分析し、担当の獣医師と納得のいくまで話し合いましょう。
ぜひ、この記事を参考にして、愛犬の抗がん剤治療を検討してみてくださいね!
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