イギリスは原産国犬の数が世界一!
世界には、非公認のものを含めて700~800の犬種があると言われていますが、その中の355犬種が国際畜犬連盟(FCI)により公認されています。
一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)には、全部で206犬種が登録されていますが、実はこのうちの約1/3に当たる約60犬種はイギリス原産の犬なのです。(2022年4月現在)
◆犬と人との関わりが深かったイギリス
イギリスでは古くから犬と人との関わりが深く、数多くの犬種を作出し、品種改良を重ねてきた歴史があります。人々の生活を牧羊犬や牧畜犬、猟犬や鳥猟犬といった使役犬が支えてきただけではなく、愛玩犬や闘犬といった人間に癒しや娯楽を与える犬たちとともにイギリスの人々は暮らしてきたのです。
このように人と犬が密接な関りを持ってきたことから、イギリスの社会全体が、犬と人がより良く暮らすための努力に取り組んできた結果、現在のイギリスはトップクラスのペット先進国となりました。
◆大英帝国と犬
映画や電話、さまざまな社会制度やスポーツなど、そしてペットの飼育も、その源流は20世紀に求められます。これらの文化は、19世紀後半のイギリス、つまり大英帝国で誕生し発展してきました。
当時、大英帝国は、ヴィクトリア女王の治世のもと、インドやアメリカ、アフリカをはじめとして世界中に植民地を持ち、世界一の繁栄を謳歌していました。これらの植民地からは、特産品、農産物、財宝、美術品、発掘品、さらには生き物も、イギリスに持ち帰られて首都ロンドンに集められたのです。
その中には、もちろん世界中の「地犬」もいました。イギリスに持ち帰られた地犬を繁殖させたり、新たな品種の誕生を目指した交配を行ったりしたことによって、多くの「イギリス原産の犬種」が確立していったのです。
イギリスが原産の犬7選
イギリス原産としてすぐに浮かぶのは、イングリッシュ・コッカー・スパニエルなど、名前に「イングリッシュ」(English)を含む犬種かもしれません。しかし、それ以外にもたくさんのイギリス原産の犬がいますので、今回は「イングリッシュ」と付いていないがイギリス原産である犬を7種、ご紹介します。
◆ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
2022年に亡くなったエリザベス女王の愛犬として有名ですね。エリザベス女王は、生涯30頭を超えるウェルシュ・コーギー・ペンブロークを飼育したそうです。
ウェルシュ・コーギーにはペンブロークとカーディガンがありますが、歴史が古いのはカーディガンと言われています。しかし、ペンブロークも、1107年まで遡ることができます。
「ウェルシュ」(Welsh)とは、「ウェールズの」という意味で、イギリスのウェールズ地方に源流を持つことを意味します。ペンブロークは、主にウェールズ地方のペンブロークシャー地方で飼育されていました。
JKCの登録では、「1G:牧羊犬・牧畜犬」グループに属する牧羊犬です。1Gは、家畜の群れを誘導・保護する犬のグループです。
牛のかかとを噛みながら牛を追い立てることで活躍してきた、「ヒーラー」と呼ばれる中の1種です。愛らしい胴長短足の容姿は、牛のかかとを噛むことに非常に適しています。通常、尻尾がないか、非常に短いですが、これは牛を追い立てるときに踏まれてケガをしないよう、慣習的に断尾が行われたためです。現在は、動物愛護の観点から断尾を禁止する国も増えています。
性格は、人にも動物にも友好的で、飼い主に対しては愛情豊かで明朗活発です。牧羊犬として活躍してきたため、状況判断を的確にできる賢さもあり、意外とマイペースで独立心が強い傾向にあります。
◆シェットランド・シープドッグ
「シェルティー」という愛称で知られる牧羊犬です。イギリスの最北端にあるシェットランド諸島原産で、JKCの登録ではコーギーと同じく1Gに属します。
非常に歴史が古く、一説には、ボーダー・コリーの先祖でスコットランドにおいて小型の家畜の番犬をしていたものと、クジラ漁のために北海へ来た漁師が連れていたスピッツタイプとの交配から生まれた犬に、さらにラフ・コリーが交配されて作出されたと伝えられています。
小型で長毛の優美な外見を持ち、粗雑さや荒々しさはありません。飼い主に対して愛情深く、見知らぬ人に対しては打ち解けにくいですが、神経質ではありません。また、最も賢い犬種の1つと言われ、学習を好み、知性も高く、訓練競技会などで好成績を出す傾向にあります。
家畜などを守るように改良されてきた歴史から、現在も、日常生活において子どもたちの番をしようとするなど、家族の一員として適しています。
◆ウィペット
JKCの登録では「10G:視覚ハウンド」に属し、臭跡あるいは視覚による狩猟に用いられてきました。走る姿勢が馬を鞭打って駆けるように見えるため、鞭を意味する「whip」から「Whippet(ウィペット)」と名付けられたと言われています。
19世紀後半、小型のグレーハウンドに、マンチェスター・テリアなどのテリア種を交配して作出されました。
ウサギやネズミを噛む力が強いことから、最初は「スナップ・ドッグ」と呼ばれていたようです。英国のダーハムやニューカッスルなどの鉱山地帯で、ドッグ・レースにも使われていました。
筋肉の力強さと、機能的な美しさと優美なアウトラインのバランスが取れていて、スピードと働くために作られたような体つきをしています。
家庭でも、スポーツをする環境でも大変適応しやすい、優しく、愛情豊かな性質です。反面、神経質なところもあるので、怒鳴ったり叩いたりすると信頼関係に大きく影響します。
◆ジャック・ラッセル・テリア
イギリス原産で、オーストラリアで改良されました。JKCの登録では、「3G:テリア」に属します。作業犬に適していて、穴に入り込む能力を持ち、家庭犬としても優れています。テリア種としては小型で、4kgにも満たない小さな個体も存在します。
1800年代、イングランドのジョン・ラッセル牧師の尽力で作出されました。牧師は、キツネなどの獲物を追うフォックス・ハウンドとともに走り、巣穴に潜り込んで追い立てるのに見合った犬を作出するため、フォックス・テリアの血統を改良しました。ここから2つの系統に発展し、このうち体高が低く、わずかに体長が長いものが、ジャック・ラッセル・テリアとして知られています。
活動的で、常に動いていることを好み、好奇心旺盛で遊びが大好きです。室内だけではストレスが溜まりがちになるので、定期的に外でのびのびと運動をさせてあげましょう。日々の長時間のお散歩も必要です。
賢い一方、飽きっぽい性格でもあるため、訓練に時間がかかると言われています。
◆ビーグル
スヌーピーのモデルとして有名なビーグル。JKCの登録では、「6G:嗅覚ハウンド」に属します。嗅覚ハウンドは、大きな吠え声と優れた嗅覚で獲物を追う獣猟犬です。
ハウンドの中で最も小さく、きわめて古い歴史を持ちます。紀元前からギリシアでウサギ狩りに用いられていたハウンドの後裔と考えられています。エリザベス1世時代には大小2種のハウンドがおり、小さい方をフランス語で「小さい」という意味の「ビーグル」と呼び、野ウサギ狩りに使用していました。
ベルギー原産の大型犬で、嗅覚がとても優れている「ブラッドハウンド」という犬種の血を加えたため、ビーグルは鋭敏な嗅覚を持つと言われています。
そんなビーグルは快活な性格で大胆、優れた活動能力、スタミナ、決断力を持っています。利口で穏やかな性格で、攻撃性や臆病さはありません。
食いしん坊なことで知られ、散歩などでは拾い食いをさせないように注意する必要があります。
非常に活発な犬種ですので、毎日の散歩はもちろんのこと、おうちでもおもちゃなどを使って遊んであげましょう。
◆ゴールデンレトリーバー
JKCの登録では「8G:7グループ以外の鳥猟犬」に属します。猟の時に、獲物を回収する役割を担ってきた「ガン・ドッグ」です。
歴史はほとんど不明ですが、セターやウェービーコーテッド・レトリバーなどの交配により生まれた犬が祖先であったと考えられます。トゥイードマウス卿が1865年に購入したウェービーコーテッド・レトリバーから生まれた黄色の子犬が始祖となったと言われ、1913年以降、イエロー・レトリーバーまたはゴールデンレトリーバーと呼ばれていました。
従順で、賢く、天賦の作業能力を備えています。性格は優しく、友好的で、自信に満ちています。大型ながら、非常に大人しく、温和で忍耐強いので、よほどのことがない限り攻撃的になることはありません。そのような点が評価され、現在では、盲導犬などの介助犬や麻薬探知犬といった使役犬として活躍しています。
◆ボーダー・コリー
イギリス原産の牧羊犬の中で最も作業能力が高いと言われ、全犬種の中で最も頭がいいと言われています。JKCの登録では、1Gに属します。
祖先は、8世紀後半から11世紀にかけて発生したバイキングが、イギリスに持ち込んだトナカイ用の牧畜犬だったと言われており、土着の牧羊犬やラフ・コリーの祖先と交雑して、19世紀ごろには現在のタイプになっていました。作業能力のみが重視されて牧場に残ったため、都市や国外に知られる機会が少なく、ショーでワーキング・トライアルや、オビディエンス(服従)・トライアルが実施されるようになって見直されるまで、公認犬種となりませんでした。FCIで公認されたのは、1987年です。
「ボーダー」(border)とは国境を意味する単語で、「コリー」(colie)はスコットランドの言葉で牧羊犬全体を指します。イングランドとスコットランドの国境付近出身の牧羊犬であることに由来する名前です。非常に優れた運動能力を持ち、ドッグスポーツであるアジリティで最も活躍している犬種です。
頭がよい分、適切なトレーニングを行わなければ飼い主として認めてもらえませんが、しっかりとした信頼関係を築くことで、素敵なドッグライフになります。
イギリスはドッグショー発祥の地でもある
◆ドッグショーとは
ドッグショーは、理想とされる犬種標準(スタンダード)を基に比較審査する「品評会」です。純粋犬種保護のために行われ、どの犬がスタンダードに最も近いかが審査されます。
◆ケネルクラブ
ドッグショーの起源は、イギリス人たちが愛犬とともに酒場で一杯やりながら、犬自慢に時を過ごしたことにあると考えられています。
一般に、初めて組織だって行われたショーは、1859年にイギリスのニューカッスルで開かれたものであるとされています。当時は、ルールが徹底されていなかったため、トラブルが続出しました。
このため、1873年に、ショーの管理、法的規制を含めたルール作りを目的とした機関として「ケネルクラブ」(The Kennel Club)が創立されました。
以来、輸送網の発達とともに、地域的なスケールから全国的スケールへと飛躍的に発展し、ケネルクラブの管理下で、20世紀には盛んにドッグショーが開催されるようになっていきました。
まとめ
古来、人と犬の関りが深く、牧畜や狩猟に犬を使役してきたイギリスでは、さまざまな交配により新たな犬を作出し、これを犬種として確立することが盛んに行われました。
また、19世紀後半には、大英帝国として世界各地に植民地を持ち、そこから美術品や特産物とともに生き物も持ち帰り、首都ロンドンに集めました。その中に、各地の「地犬」も含まれ、これらを基にした犬種も少なくありません。
このため、イギリスを原産国とする犬種の数は世界一多く、JKCに登録されているうち約1/3に当たる約60種がイギリス原産です。
原産国や、その成り立ちを知ることで、犬に対する理解がさらに深まると考えられます。愛犬のルーツを調べると、ワンちゃんへの愛情がさらに深まるかもしれません。
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