【獣医師監修】犬の胃腸炎、急性と慢性の違いは?それぞれの症状・原因と治療法

2022.10.15

【獣医師監修】犬の胃腸炎、急性と慢性の違いは?それぞれの症状・原因と治療法

季節の変わり目には、人と同じようにペットも体調を崩すことが少なくありません。犬の場合、特に気をつけたいのは胃腸炎です。消化器に関する病気は、犬が動物病院にかかる理由のトップに入ります。その中でも、胃腸炎は最もポピュラーな病気と言われています。今回は、犬の胃腸炎の症状や原因、治療についてご紹介します。愛犬の不調を早期発見するための参考にしてくださいね。

犬の胃腸炎とは?

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犬の胃腸炎とは、胃や腸の粘膜に何らかの原因で炎症が生じ、嘔吐や下痢といった症状が引き起こされる病気です。
「胃腸炎」と総称されますが、厳密には「胃炎」と「腸炎」に分けられます。嘔吐の場合は胃炎、下痢の場合は腸炎の可能性が高いです。
また、「急性胃腸炎」「慢性胃腸炎」の2種類があります。一般的に、一週間以内で症状が治まるものは急性、一週間以上続くものは慢性と分類されます。起きている症状から、急性か慢性かを見分けることもできます。
急性の場合、食後すぐ、または前兆がないまま、激しい症状が見られることがあり、慢性の場合、症状が1回だけにとどまらず続きます。
慢性胃腸炎は、多くの場合、急性胃腸炎の回復が進まず、1週間以上継続することで慢性化してしまう結果、引き起こされます。


胃腸炎の症状

ここでは、急性胃腸炎と慢性胃腸炎のそれぞれについて、症状をご紹介します。

◆急性胃腸炎

急性胃腸炎の主な症状は、突然起きる下痢と嘔吐です。
他には、下記のような症状が見られます。

●吐血
●血便
●脱水
●食欲がない
●元気消失
●お腹がキュルキュル鳴る
●腹痛

胃や腸の粘膜に炎症があるため、吐いたものや便に血が混じることがあります。
下痢や嘔吐に伴って体内の水分が失われ、脱水症状が見られることも多いです。
胃の不快感から、鼻をしきりに舐めたり、じっと動かなくなったりする場合もあります。腹痛を感じて、体を丸めて小刻みに震える仕草を見せることも。
これらの症状は、胃腸炎以外の他の腹部の病気によっても引き起こされることがあります。素人判断をせずに、すぐに動物病院で検査を受けましょう。
特に、中毒性のあるものを誤飲・誤食した場合には、激しい嘔吐や下痢のほか、よだれや震え、ふらつきや痙攣、まれに発熱などの症状が見られることがあります。命に関わる可能性もあるので、早急に獣医師さんに連絡して、指示を受けてください。

◆慢性胃腸炎

慢性胃腸炎の場合、急性の場合と比べると症状が分かりにくいのが特徴です。また、症状が何度も繰り返されるため、犬自身がそれらの痛みや不快感に慣れてしまって反応が鈍くなることも少なくありません。
慢性胃腸炎の症状としては、下記のようなものが見られます。

●元気がない
●食欲不振
●時々吐くことがある
●お腹を触ると痛がる
●頻繁に水を飲む
●ゲップが続く

急性胃腸炎と比べると症状が軽く見えるので、「またお腹が痛いのかな?」と安易に考えてしまう飼い主さんも少なくありません。しかし、体の小さな犬の胃腸には、大きな負担となっています。
上記のような症状が見られる場合には、早急に動物病院を受診しましょう。
また、目立つ症状がなくても、愛犬が物を食べない、水を飲まないなどの様子が見られた場合には、早めの受診をおすすめします。他の病気が隠れている可能性もあり、早期発見・早期治療で、愛犬の負担を軽くしてあげましょう。


胃腸炎の原因

犬の胃腸炎の原因には、多くのものが含まれます。犬のマイクロバイオーム(腸内微生物叢)を大きく変化させるものであれば、なんでも胃腸炎につながる可能性があるとも言えるのです。
以下、考えられる原因を具体的に挙げていきます。

◆傷んだ食べ物や脂肪が多いもの

腐敗した食べ物や脂肪が多い食べ物を食べると、人間も胃腸の具合が悪くなるように、犬も胃腸炎を起こします。
また、食べ過ぎ(過食)や食べなれないものを食べた場合にも、胃腸炎になる可能性があります。

◆異物誤飲・誤食

異物の誤飲や誤食は、犬の急性胃腸炎の原因として最も多いものの一つです。
本来食べてはいけないものを誤って飲み込んでしまうことで、胃や腸が刺激されたり、中毒症状が現れたりして引き起こされます。
誤飲や誤食で多いのは、おもちゃにも使われていることも多い、紐や綿状のもの、犬の生活圏内にも多い、ティッシュ、あるいはどこの家庭にもある洗剤などです。
また、散歩中などに毒性のある植物を食べてしまうことも、胃腸炎を引き起こす原因となります。

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◆細菌・ウイルス感染

細菌やウイルスによる感染症で、引き起こされることもあります。
細菌性胃腸炎の原因としては、カンピロバクター、クロストリジウム(芽胞菌)、サルモネラなどの細菌が挙げられます。
ウイルス性胃腸炎の原因としては、コロナウイルスや、パルボウイルス、ジステンパーウイルスが挙げられます。
パルボウイルスの場合は、主に経口感染し、潜伏期間はおよそ2~12日間です。ジステンパーウイルスの場合は、主に飛沫・空気感染し、潜伏期間はおよそ3~6日です。
コロナウイルスなどの場合は軽症のことが多いですが、パルボウイルスやジステンパーウイルスは進行が速いため、検査から治療に至るまでに緊急性を要することも少なくありません。特に、子犬では急変することも多く、注意が必要です。

◆寄生虫

回虫、コクシジウム、ジアルジア、トリコモナスなどの寄生虫が原因となる場合もあります。
急性の下痢などを引き起こすだけではなく、寄生虫が胃の中に入り込んで増殖すると、自然に治癒することが難しく、慢性化しやすいです。

◆胃潰瘍などの病気

犬の慢性胃腸炎の原因として、胃潰瘍をはじめとする胃疾患が挙げられます。胃に生じた異変が引き金となることがあるのです。
その他、慢性の尿毒症や肝疾患、アジソン病などが原因となることもあります。

◆アレルギー

食物アレルギーがあることに気づかないまま、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を含む食事を続けると、アレルギー反応から慢性胃腸炎を起こす場合があります。


犬の胃腸炎の治療法・治療費

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◆急性胃腸炎の治療法

検査

嘔吐した場合には吐いたもの(吐しゃ物)を、下痢をしていたら便を採取して、動物病院に持参して検査してもらいます。水様便(水のようなうんち)など、採取が難しい場合には、スマホなどで撮影して持参すると、診断の助けになります。
吐しゃ物や便を採取するときには、素手で触らないようにしてください。原因が人獣共通感染症の場合、飼い主さんにうつる恐れがあります。
その他の検査としては、症状に応じて以下のようなものが行われます。

●触診
●血液検査
●ウイルス検査
●超音波検査
●Ⅹ線検査

治療

軽症であれば、脱水症状への対処として、輸液を行うだけで治る場合もあります。
感染など外部からの誘因がある場合には、それに対する薬が投与されます。
処方される薬は、下記のようなものです。

◎制酸剤:嘔吐が強い場合に胃酸の分泌を抑制する
◎制吐剤
◎消化管運動促進剤
◎消化管運動抑制剤
◎抗生剤:細菌感染の場合
◎ステロイド:炎症が強い場合
◎下痢止め
◎プロバイオティクス:乳酸菌など

◆慢性胃腸炎の治療法

犬の慢性胃腸炎には、原因別に対処することになります。
原因が他の疾患である場合には、原因となっている病気を治療することが、慢性胃腸炎の治療につながります。特に、基礎疾患を持つ子の場合、基礎疾患の治療が優先して行われます。
基礎疾患の治療が難しい場合や、慢性胃腸炎の症状がひどくて苦痛を伴っている場合には、対症療法が行われます。
対症療法では、主に嘔吐や下痢、腹痛の改善を目指し、内用薬の服用、普段の食事を見直す食餌療法などが行われます。
食餌療法は、胃に負担のかかりやすい脂質をできるだけ減らした低脂肪食にする、腸内環境を改善して免疫機能を高める作用のある食物繊維が多めの食生活を心がけるなどです。

◆治療費

犬の胃腸炎の治療費は、原因などによって増減します。
一例として、急性胃腸炎で、検便、血液検査、ウイルス検査を行い、輸液を行った場合についてご紹介します。動物病院によって異なるため、幅があります。

診察料(初診料):1,000~2,000円
検便(直接法):500~1,000円
血液検査(生化学検査):1,000~3,000円
ウイルス検査(パルボウイルス):2,000~5,000円
輸液(皮下):1,000~2,000円
合計:5,500~13,000円

(参考:日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査(平成27年度))

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犬の胃腸炎の予防方法

犬の胃腸炎の原因で多いのは、上述の通り、異物の誤飲・誤食、傷んだものや脂肪が多い食べ物などです。
このため、予防には、誤飲や誤食を防ぐことや、与える食事の内容などが大きく関わってきます。
愛犬が生活する場には誤飲・誤食しては困るものを置かない、ゴミ箱を蓋付きのものにするなど、誤飲・誤食や傷んだものを食べることを防ぎましょう。
また、散歩中に拾い食いをさせない、道端の草を食べさせないなど、飼い主さんが注意をしてあげることやしつけを行うことも大切です。
脂肪の多い食べ物や人の食べ物は愛犬に与えないようにして、ドッグフードを変更する際には少しずつ慣らしながら切り替えていきましょう。
パルボウイルスやジステンパーウイルスは混合ワクチンで予防できるので、ワクチンを打つことも予防法の一つです。


まとめ

季節の変わり目には、犬も体調を崩すことが少なくありません。犬の場合、特に気をつけたいのは胃腸炎です。
犬の胃腸炎には、慢性と急性の2種類があり、急性胃腸炎がなかなか回復しないまま、慢性化することも少なくありません。
犬の胃腸炎の原因はさまざまですが、多いのは異物の誤飲・誤食や、傷んだものや脂肪の多い食べ物を食べたことなどです。
これらは、飼い主さんが気をつけてあげることで、防ぐことができます。
愛犬に辛い思いをさせないよう、犬の届くところに誤飲・誤食してはいけないものはおかない、ゴミ箱は蓋つきのものにする、散歩中の拾い食いをさせないなどに気をつけてあげましょう。
また、下痢や嘔吐に限らず、元気がない、食欲がないなどの様子が見られたら、早めに動物病院を受診して、愛犬の負担を軽くしてあげてくださいね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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