1.犬の歯並びについて
1-1.犬の歯の本数
1-2.犬の歯の種類
2.犬の歯並びが悪い原因
2-1.成犬(永久歯)の歯並びが悪い場合
2-2.子犬(乳歯)の歯並びが悪い場合
3.犬の不正咬合4種類
3-1.クロスバイト
3-2.ライバイト
3-3.オーバーバイト
3-4.アンダーバイト
3-5.正常な噛み合わせ「シザーバイト」
4.治療が必要な犬の歯並び
4-1.咀嚼がうまくできない
4-2.歯が口内を傷つける心配がある
4-3.他の歯に影響を与える場合
5.犬の歯並びを治す方法
5-1.犬の歯並びを治す方法①歯科矯正
5-2.犬の歯並びを治す方法②抜歯
5-3.犬の歯並びを治す方法③歯を切断する
犬の歯並びについて
現代では犬は雑食動物として分類されていますが、元々は肉食として生きてきた動物です。そのため犬の歯は、主に肉を切り裂いたり噛み砕いたりすることに適応しています。
雑食動物・草食動物の臼歯は、文字通り臼(うす)の様な形状であり、上下の臼がすり合わさることで食べ物を細かくすりつぶすのですが、対して犬の臼歯は、上下の歯が微妙にずれて噛みあうことで、ハサミで紙を切るように食べ物などを切り裂く働きをしているのです。
特に上顎第四前臼歯と下顎第一後臼歯は大きくできており、肉を切り裂くのに適した裂肉歯として、役割を果たしています。
この働きに支障をきたさない歯並びであれば一般的には問題ないのですが、人間同様、犬の歯並びも個々にそれぞれであり、正常に機能しない場合は何らかの対処や注意が必要となってくるわけですね。
愛犬が健康被害を被らないためにも、犬の歯並びや噛み合わせについて知識を得ておき、万が一に正しく対応・予防できるように備えておくことがおすすめです。
まずは、犬の歯の本数や、種類について知ることから始めていきましょう。
◆犬の歯の本数
犬の乳歯は生後約2ヶ月で生えそろい、通常、上14本、下14本の計28本あります。
その後4,5ヶ月齢~7,8ヶ月齢までに乳歯が抜け落ち永久歯に生え変わるのですが、この時期を歯牙脱換期といいます。
この頃の子犬は、口の中がむずむずするため、硬いものをかじりたがります。子犬用のおもちゃやガムなどを与えるとよいでしょう。
ちなみに、乳歯は28本ですが、永久歯は42本から構成されます。前歯12本・犬歯4本・前臼歯16本・後臼歯10本が内訳で、計42本となります。
◆犬の歯の種類
犬の歯は、門歯・犬歯・前臼歯・後臼歯の4つに種類が分けられます。
一般的に前歯といわれる門の部分には、「門歯」が上下各6本ずつ生えており、食べ物などを噛み切る働きをしています。ちなみこの門歯は、「切歯」とも呼ばれるものです。
そしてその両脇には、「犬歯」という尖った大きな歯が上下各2本ずつあり、対象をしっかりと咥えて抑える役割を担っています。
さらに奥には、食べ物を引き裂く「前臼歯」が上下各8本ずつ、その奥に食べ物を細かくすりつぶす働きをする「後臼歯」が上4本+下6本生えています。
犬の歯並びが悪い原因
犬の歯並びが悪くなる原因として以下の理由が考えられます。
その状態ごとに理由や原因を、成犬と子犬に分けて紹介していきましょう。
◆成犬(永久歯)の歯並びが悪い場合
◆子犬(乳歯)の歯並びが悪い場合
乳歯も、永久歯の場合と歯並びが悪くなる原因はほとんど同じです。ただそれ以外にも原因があるケースも考えられますので、それらを紹介していきます。
犬の不正咬合4種類
不正咬合とは、上下の歯が正常な位置につかないために、噛み合わせが悪くなってしまった状態のことを指します。
前述した通り犬の歯は、乳歯で28本、永久歯で42本あるのですが、正常であれば上下の歯が上手くかみ合わさり、お互いを邪魔することはありません。
しかし、歯並びが悪くなる原因として上記に紹介した様々な理由から、不正咬合となってしまう場合があるのです。
犬の不正咬合には、以下の4種類があります。愛犬の状態を把握するためにも、しっかりチェックしていきましょう。
◆クロスバイト
上下の顎の骨は正常なのに対して、一部の歯並びがおかしくなった状態のことをクロスバイトといい、以下のパターンがあります。
ちなみに犬歯クロスバイトにおいては、本来下顎犬歯の後ろにあるべき上顎犬歯が、なぜか前方に突き出した状態の場合に「槍状歯」と呼ばれ、シェットランドシープドックに好発するといわれています。
尚、生まれつき上下の顎の長さが違うものを骨格性不正咬合というのですが、これと乳歯の生え変わりが上手くいかないことで不正咬合は起きやすいようです。
骨格性不正咬合はクラスⅠ~Ⅲまでに分類されており、クロスバイトはクラスⅠに当たります。
◆ライバイト
左右の歯がアンバランスに成長した状態のことを、ライバイトといいます。右と左における咬合面の高さが違うために、顎が曲がってみえてしまうでしょう。
以前は骨格性不正咬合のクラスⅣとして分類されていたようですが、現在はクラスⅢまでが不正咬合とされているため、ライバイトは含まれていないそうです。
◆オーバーバイト
下顎に対して上顎が長過ぎる状態のことを、オーバーバイトといいます。人間でいうと「出っ歯」の状態に近い様子ですね。
上下の前歯に隙間ができており、下の歯が上顎の口蓋を傷付けてしまうこともあるので注意が必要でしょう。
ちなみにオーバーショットとも呼ばれており、クラスⅡに該当します。
◆アンダーバイト
上顎に対して下顎が長過ぎる状態のことを、アンダーバイトといいます。人間でいうと「しゃくれ」に近く、オーバーバイトと真逆の状態です。
アンダーショットとも呼ばれており、クラスⅢに該当します。
◆正常な噛み合わせ「シザーバイト」
鋏状咬合のことをシザーバイトといい、犬の正しい噛み合わせの見本とされる歯並びを指します。
上の切歯の裏面に、下の切歯の表面が接触している噛み合わせの状態です。また、下顎の犬歯は上顎の犬歯の前にすっぽりとはまりますので、これらのポイントを抑えながら愛犬の歯並びをチェックしてみてください。
治療が必要な犬の歯並び
歯並びが悪くなる原因は様々ですが、いずれの場合も、食事をしにくくしたり、歯で口腔内を傷付けたり、歯間に汚れが溜まりやすいことで歯周病を引き起こしたりと、いくつかの健康被害を招く可能性があることが否めません。
多くの場合、ある程度歯並びが悪くても放置されることがほとんどですが、以下のような問題がみられるケースでは、何らからの処置や対処が必要となるでしょう。
愛犬の様子と合わせてしっかりチェックし、気になる場合はかかりつけの動物病院を受診してみてください。
◆咀嚼がうまくできない
咀嚼困難によって食事がとりにくいように見えたり、将来的にそのような問題が起こることが予想される場合は、一度獣医師に相談してみましょう。
虫歯・歯周病などで犬の歯が弱ると、正常な咀嚼運動ができなくなってしまいます。食欲不振などの症状がみられる場合もありますので、飼い主さんによる定期的なオーラルケアも大切ですね。
◆歯が口内を傷つける心配がある
不正な歯が口の中を傷付けたり、愛犬が痛みを感じている様子がみられる、また歯肉に損傷が加わるような不正咬合である場合には、早めに対処が必要でしょう。
傷口から何かに感染する恐れもありますし、痛みからドッグフードなどのごはんを食べられなくなる可能性も考えられます。
動物病院を受診して治療法や、生活する上での注意点などを確認してみてください。
◆他の歯に影響を与える場合
不正に生えてきた歯が他の歯に影響を与えたり、機能的に問題が起こっている不正咬合の場合も、一度獣医師に相談した方がよいでしょう。
起こりうる問題のレベルにもよりますが、将来的に大変な状況に陥る可能性が懸念されるのであれば、早期に対処することが必要かもしれません。
犬の歯並びを治す方法
人間も歯並びを直すために様々な治療法が用いられますが、犬の場合もいくつかその方法はあります。
一般的に挙げられる方法を紹介していきますので、チェックしていきましょう。
◆犬の歯並びを治す方法①歯科矯正
永久歯が生えそろった後で不正咬合が発見された場合は、>歯列矯正が行われることが多いでしょう。
オーバーバイトの傾向がある、下顎犬歯が舌側に倒れ込み口蓋を傷付けているなど、歯並びの悪さが著しく苦痛を与えている状態において主に適用されます。
インクラインプレイン・咬翼装置・インクラインキャップなど様々な方法がありますが、噛む力を応用して、歯を適切な方向に押し戻すタイプのものが大半だそうです。
ただし専門性の高い分野であるため、全ての動物病院が対応しているわけではありません。審美的な理由による治療に関しては、倫理上の問題から断られるケースもあるでしょう。
ちなみにこれは、治療を施した個体がショードッグや繁殖犬として用いられた際に、不正咬合の遺伝素因を拡散する危険性があるためだといわれています。
◆犬の歯並びを治す方法②抜歯
上下の顎の長さを評価し、正しいバランスが保たれているかどうかの判断は、大体の乳歯が生えそろった生後8週月齢を目安として下されます。
そこでオーバーバイトの傾向が見られる場合は、下顎の歯が口蓋に刺さって痛みを引き起こすために、抜歯が適用されるケースがあるでしょう。
また、犬歯が舌側に傾いている場合にも、早めに抜いておかなければ永久歯が同じ方向に生える危険性があるために、抜歯した方がよいと考えられます。
ちなみに、乳歯から永久歯への生え変わりが始まる生後4,5ヶ月齢を目安として、乳歯遺残の有無が確認され、抜け落ちずに残っている乳歯があった場合は、早めに抜歯するケースがあります。
これは、永久歯の萌出の邪魔となる可能性があるためです。
◆犬の歯並びを治す方法③歯を切断する
不正な歯が口腔内を傷付けたりしている状態の場合には、問題の原因となる歯を切断したり、歯髄を保護する歯髄保護剤を充填して整形する方法などが用いられます。
また、歯が密着しすぎている場合には、微量のエナメル質を削り、スペースを作る方法が選択されることもあるでしょう。
歯の健康を守るためにもオーラルケアを!
先天的に歯並びが悪かったりと、どうしても防止できないケースは多いのですが、歯のグラつきや歯周病などが原因の場合には、それを予防するため、悪化させないために飼い主さんにできることはあります。
例えば、歯磨きをしっかり行うことで、歯垢・歯石の付着を防ぐことができますよね。
歯石があると歯周病に発展している可能性が高く、歯周病を放置することで様々な病気に影響する場合もあるのです。
定期的に愛犬の口内を確認していれば、異常が起こった場合にも早急に気付くことができます。上の前歯の内側や奥歯の裏側など見えにくい箇所も多いので、日頃から歯磨きが上手にできるように慣れさせておくことも大切です。
ちなみに、歯石取りは動物病院でも行えますが、麻酔を要するケースもあります。事前に獣医師と相談の上、リスクがあることについてもきちんと認識しておきましょう。
まとめ
犬にも人間同様、歯並びの悪さから様々な問題が起きてしまう可能性があります。健康上の影響が出てくる前に、まずは愛犬の歯並びを確認してみてください。
何らかの異常をみつけたり、不安を感じた場合は、一度、動物病院を受診してみましょう。治療が必要な場合は治療に専念したり、出来る限りのサポートをすることで、愛犬が抱える問題としっかり向き合ってくださいね。
そして愛犬の歯の健康を守るためにも、定期的な口内のチェックや歯磨きなどのオーラルケアを忘れずに行っていきましょう!
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