【獣医師監修】犬が口をパクパクしている原因は?ハエ噛み行動には注意!

2023.04.22

【獣医師監修】犬が口をパクパクしている原因は?ハエ噛み行動には注意!

愛犬が食後や寝ているとき、または何気ない瞬間などに口をパクパクしていることはありませんか?実は犬が口をパクパクさせることにはシグナルや疾患が隠れている可能性があります。よって今回は、犬が口をパクパクする場合に考えられることや注意点などについて詳しく解説していきます。

犬が口をパクパクさせる理由

犬の口

犬が口をパクパクさせているときに考えられる理由は様々なものがあるため、飼い主さんはどれがあてはまるか注意深く愛犬を観察する必要があります。
ここでは、まず考えられる理由について一つ一つご説明していこうと思います。

◆興奮を抑えるため

犬のコミュニケーションの手段の一つとしてカーミングシグナルというものがあり、「calming(落ち着かせる)」と「signal(シグナル)」を組み合わせた言葉となります。
主に飼い主さんなどに自分の気持ちを伝えるための行動であり、現在判明しているだけで約30個の種類があるといわれています。
 
このカーミングシグナルの一つとして、犬は興奮したときや自分を落ち着かせるために口をパクパクさせることがあります。よって遊んでいる時や何かに対して驚いているときなどに口をパクパクしていたら、愛犬は「落ち着きたい」と考えている可能性があるため、飼い主さんも愛犬がリラックスできるように優しく声をかけたりなでたりしてあげましょう。

◆敵意がないと伝えるため

犬がカーミングシグナルの一つとして口をパクパクさせているときに考えられるもう一つの気持ちには、「仲良くしようよ」と相手に敵意がないことを伝えている場合もあります。
例えばお散歩中に他の犬に会った際や家に訪ねてきたお客さんなどに向けて口をパクパクしていたら愛犬は「仲良くなりたいな」と考えていることがあるため、害意がないことを飼い主さんは愛犬の代わりに相手に伝えてあげるのも良いですね。

◆食後にフードが口内にある

食後やおやつを与えた後などに口をパクパクさせていたら、食べ物の残りが口の中に挟まっていたりする可能性があります。
基本的に、フードや犬用のおやつならば時間が経てば自然に取れる可能性が高いですが、あまりにも長時間続いていたりする場合は飼い主さんが取ってあげることを試してみたり動物病院に相談してみることをおすすめします。

◆誤飲や誤嚥をしている

犬が口をパクパクさせること以外にも、よだれが多かったり、前足で口周りを触ったりなどのいつもとは違う様子が見られた時は異物を誤飲・誤嚥している可能性があります。
特に紐や糸などは口の中で絡まってしまい、犬が取りたくても取れない状況になる危険性が高いため、異物の摂取が疑われる時は可能な限り早急に動物病院を受診するようにしましょう。
  

◆歯の生え変わり時期

もし、生後4ヶ月半頃~8ヶ月頃の子犬が口をパクパクしていたら、それは乳歯から永久歯の生え変わりの時期のため、乳歯が抜けきっていなくて口に違和感がある、かゆさを感じているなどの可能性があります。基本的に歯の生え変わりは飼い主さんが気づかないほど自然に完了することが多いですが、たまに「乳歯遺残(いざん)」といって乳歯が抜けきらない状態で永久歯が生えてきてしまう場合があります。
乳歯が残っていると歯垢や歯石がつきやすく、歯周病になるリスクが高まるため可能ならば問題なく生え変わっているか確認したほうが安心です。

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犬が口をパクパクさせる病気

 
犬が口をパクパクさせているときに気をつけなくてはいけないことの一つに何かしらの疾患によって引き起こされている可能性がある、ということがあります。
よって、ここからは症状の一つとして口をパクパクさせるという現象が見られる病気について解説していきます。

◆口腔内の病気

まず、考えられる病気として口腔内の病気が挙げられます。

例えば犬が口をパクパクさせること以外に口臭がきつい、歯肉が赤い、食欲はありそうなのに食べようとしないまたは片側の歯のみで噛むようにして食べる、よだれに血が混じる、口の周りや顔全体が腫れているなどの症状が見られたら歯周病の中でも「口内炎」や重症度の高い「歯周炎」となっている可能性があります。

また口腔内に腫瘍ができていることにより違和感があるため、口をパクパクさせている可能性もあります。犬の口腔内は悪性、良性問わずに腫瘍が非常によく発生する部位であり、特に悪性においては「メラノーマ(悪性黒色腫)」が最も発生率が高いといわれています。口腔内腫瘍の症状として、飼い主さんが歯磨きなどの際に腫瘤を発見すること以外に口臭や口からの出血、よだれが増えるなどが見られるため気になることがあったらすぐに動物病院に相談することをおすすめします。

さらに、硬いおやつやおもちゃなどによって口内を怪我したときにも口をパクパクさせることがあるため、注意が必要です。犬の口内には多くの細菌が常在しているため、怪我を放置していると化膿してしまう危険性もあります。
日頃から硬いおやつは割ったり砕いたりしてあげる、おもちゃで遊んでいる時は目を離さないなどの対策を行うようにしましょう。
 

◆てんかん

脳に異常な電気信号の伝達が起き、それにより痙攣(けいれん)発作が不定期に繰り返して起こる脳の慢性的な病気のことを「てんかん」といいます。てんかんといえば全身に痙攣や硬直などが起こることのみを想像する飼い主さんも多いと思いますが、これは「全般発作」とよばれるものであり脳の全体が異常に興奮することによって引き起こされる、てんかんの症状の中の一つとなります。反対に脳の全体ではなく、一部のみが異常に興奮しているときに起きる発作を「部分発作(焦点性発作)」といいますが、この部分発作の時に口をパクパクさせる様子が見られることがあります。

愛犬が口をパクパクしている様子がてんかんによるものかどうかを飼い主さんが判断することは難しいため、不安になった場合は可能な限り、気になる症状を録画した動画を持参の上で動物病院を受診するようにしましょう。

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◆気管支炎

口をパクパクさせると同時に、ゼーゼーと苦しそうな咳やカッカッという吐き出すような咳などが見られたら気管支炎の可能性が高いと考えられます。気管支炎は初期のうちならば内服薬を服用することのみで完治することが多いですが、放置してしまうと肺炎となり入院治療や命の危険にもつながるため、早めの受診が必要となります。


犬のハエ噛み行動は注意が必要

犬 口 パクパク

犬が口をパクパクさせる行動に似ているものの中に「ハエ噛み行動(フライバイト)」と呼ばれるものがあります。
空中には何もなく、また何も飛んでいないにも関わらずに犬が空中を見つめ、ハエなどの小さな虫を噛むような様子や追いかけるような様子が見られることがハエ噛み行動の特徴となりますが、このような行動が見られたら注意が必要となります。

というのも、犬が強いストレスを継続的に感じた時などに「常同行動」または「強迫性障害」といって同じ動きを何度も繰り返すという行動障害が見られることがありますが、ハエ噛み行動もこの行動障害の際に見られる行為の1つとなるからです。

また、てんかんなど脳の異常でもハエ噛み行動が見られることもあるため様子を見るのではなくハエ噛み行動の様子を録画した動画を持参の上で、可能ならば行動障害にも対応が可能な動物病院を受診することを検討しましょう。


犬が口をパクパクする危険な症状とは

緊急な対応が必要となる状態の際に口をパクパクさせることもあります。

例えば何かしらの異物や薬品などを誤って摂取してしまい中毒症状が起きているときには口をパクパクさせると共に意識低下、よだれが止まらない、痙攣、嘔吐などの症状が見られることがあります。

また、元気がない、食欲不振などの症状も見られたら前述したように異物を誤飲してしまい吐き出そうとして口をパクパクしている可能性もあります。

このように、明らかに異常な状態が継続して見られた場合は夜間でも対応してくれる救急病院などへ受診したほうが安心です。


まとめ

犬が口をパクパクさせる理由には、カーミングシグナルのように愛犬からのメッセージの場合もあれば病気の症状であるなど様々なことが考えられます。
カーミングシグナルの場合は、愛犬が何を伝えたくて口をパクパクしているのか状況などから判断してあげて適切な行動をとってあげましょう。
病気の可能性が少しでもあるならば、まずは動物病院に相談することをおすすめします。その時は必要に応じて様子を撮影した動画などを持参してくださいね。

犬は言葉を話すことができないため、飼い主さんがよく様子を観察してあげる必要があります。
可能な限り、愛犬との時間を長くとるようにしましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に16医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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