犬の外での放し飼いは違法?敷地内であっても注意点とは

2023.08.19

犬の外での放し飼いは違法?敷地内であっても注意点とは

「うちの犬は小さいから大丈夫」とか「きちんと訓練されていて賢いから大丈夫」などといって、リードをせずに散歩させている人を見かけることがあります。 その結果、万が一人や物に危害を加えてしまった場合、責任を問われることになるのは当然飼い主です。 愛犬といつまでも幸せに過ごすためには、ルールは正しく守るべき。 ここでは、犬を放し飼いにすることの問題点や注意点について解説していきましょう。

犬の外での放し飼いは規制されている

放し飼いの犬

犬の外での放し飼いは「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」で規制されています。

また、独自の条例を設けて犬の放し飼いを禁止している自治体も多く、飼育の仕方によっては、動物愛護管理法の努力義務違反または条例違反にあたる可能性があるため、注意が必要です。
動物愛護管理法では、「動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない」(7条1項)とされており、犬の放し飼いについては「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」で示された飼養・保管が可能な場合を除いて、原則禁止されています。
とはいえ、動物愛護法は、あくまでも動物の所有者および占有者の努力義務のため、違反しても罰則はありません。
それに対し、自治体で定める条例については、違反すると刑事罰の対象となる可能性があります。
実際に、犬を道路などに放し飼いにしたため「係留義務違反」で逮捕されたケースもあります。
なお、たとえ飼い主が近くにいた場合でも、犬をノーリードで散歩させることは「放し飼い」に該当するため、お散歩の際は必ずリードでつなぐようにしましょう。


もしも犬が危害を加えてしまった場合

「犬を放し飼いにする」という行為だけでも、法律や条例に抵触する場合があります。
さらに、万が一、放し飼いによって犬が人や物に危害や損害を加えた場合には、飼い主が刑事責任や損害賠償責任を負うことになります。
ここでは、刑事責任や賠償責任を負う可能性のある要件や罰則について見ていきましょう。

◆損害賠償を負う可能性がある

損害賠償とは、損害を与えた者が被害者に対してその損害を填補し、損害がなかった場合と同じ状態にすることをいいます。
なお、民法では「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う」とされており、犬が人や物に損害を与えた場合は、飼い主がその責任を負うことになります。
この場合、損害として考えられるのは、治療費や通院交通費、逸失利益、慰謝料などです。
ただし、飼い主が「動物の種類や性質に従い、相当の注意を払って管理していた」ことが認められた場合には免責されることがあります。

◆過失致傷罪や器物破損罪となる

放し飼いによって、愛犬が何らかの危害を加えてしまうようなことは、決してあってはならないことです。
万が一、放し飼いにしている犬が人や物に損害を与えた場合、飼い主は損害賠償責任だけでなく、「過失致傷罪」や「器物損壊罪」といった刑事責任を問われる可能性がある、ということを忘れてはいけません。
たとえば、放し飼いにしている犬が逃げ出した、リードをせずに散歩していたなどの結果、犬が人を噛んでしまったという場合は、「過失致傷罪」により30万円以下の罰金もしくは科料が科せられたり、「重過失傷害罪」で「5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」が科せられたりする可能性があります。
また、愛犬が他人の家のものを壊してしまったり、他人のペットや人にケガを負わせててしまったりした場合は「器物損壊罪」として「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」が科せられる可能性もあります。


犬を庭で放し飼いにするのはいいの?

動物愛護法で規制されているのは、庭など飼い主が管理している土地以外での放し飼い行為です。そのため、犬を庭で放し飼いにすること自体は問題ありません。
しかしながら、柵などを設けて犬が外に出てしまうことがないように対策を取ることが必要条件です。
犬を庭で放し飼いにすることは、自由に走り回れるというメリットがある反面、注意しなければいけない点も知っておく必要があります。
ここでは、犬を庭で放し飼いにするメリットとともに、注意点についてお話ししていきましょう。

◆空き巣などの防犯対策になる

犬には、不審な者が近づくと「吠えて仲間に知らせる」という習性があります。
その習性を活かし、昔は防犯を目的に、「番犬」として犬の多くが玄関口や庭などで飼育されていました。
さらに、犬を庭に放し飼いにすることで「吠えて知らせる」だけでなく、「侵入しにくくする」という効果が期待できるため、防犯対策としてはとても有効な方法といえるでしょう。
ただし、吠え声で近隣に迷惑をかけてしまったり、誤って外に飛び出してしまったりすることのないよう十分に注意し、対策を取っておく必要があります。
また、人懐っこい犬の場合、連れて行かれてしまう可能性もあるため、庭での放し飼いは、周囲の環境や犬の性質を十分に見極めながら検討しましょう。

◆脱走や気温の変化に注意する必要がある

犬を庭で放し飼いにする際には、脱走してしまうことのないよう柵を設置したり、出入り口を施錠したりするなど、十分な対策が必要です。
万が一、犬が脱走してしまうと、周囲の人を怖がらせてしまいトラブルになったり、人や物を傷つけてしまったりする恐れがあります。
また、脱走したことにより、交通事故や犬同士のけんかなどで怪我をしたり、命を落とす可能性もあったりするなど、愛犬にとっても危険であるということを忘れないようにしましょう。
さらに、犬を庭で放し飼いにする際、もう一つ気を付けなくてはいけないのが、熱中症や寒さへの対策です。
犬は、体温調節が得意ではありません。そのため、必要なときは、涼しい場所や暖かい場所に移動して体温調節を行います。
特に、庭など外で過ごす時間の多い犬にとって、直射日光を遮ったり、寒さをしのげたりする場所は必須です。
犬を庭で放し飼いにする際は、犬小屋を設置するなど、暑さや寒さをしのげる場所を必ず用意してあげて下さい。

◆誤飲や衛生面に気を配る

庭には、犬にとって害になるものや危険なものがあるのをご存じですか?
犬を庭に放し飼いにする際には、「犬にとって害があるものや危険なものとは何か?」を知っておくことも重要です。
たとえば、庭に植えてあったり、置いてあったりする植物にも犬にとって有害なものがあります。
庭で育てている方の多いアサガオやアジサイ、チューリップ。また、庭木としてよく見かけるツツジやジンチョウゲなどは、誤って食べてしまうと嘔吐や下痢などの中毒症状が引き起こす恐れがあるため、植えない、または、犬を近づけないようにしなければいけません。
併せて、植物のための栄養剤、除草剤や殺虫剤なども犬にとっては害になるため、食べたり飲んだりしてしまうことのないよう使用しないか、近づけないようにする必要があります。
さらに、庭にできる水たまりにも要注意。
水たまりをそのままにしておくと、ボウフラがわき、蚊が大量に発生して「フィラリア症」などの原因となったり、水たまりの不衛生な水を飲んでお腹を壊してしまったりすることもあります。
このように、犬を庭で放し飼いにする際は、誤飲させないように気を配ったり、衛生面で注意が必要だったりすることがあります。
まずは、犬が安心して過ごせる環境を整えてあげて下さい。

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愛犬を室内で放し飼いにする際の注意点

室内の犬

犬を室内で放し飼いにすること自体が、法律や条例に抵触することはありません。
しかしながら、たとえ室内であっても、犬が安全に過ごせる環境を整えたり、周囲に迷惑をかけないように配慮したりする必要があり、それは飼い主さんの義務なのです。
ここでは、愛犬を室内で放し飼いにする際に注意すべき点について解説します。
室内で放し飼いにする場合にも、愛犬が安心して過ごせる環境かどうか、改めて確認してみましょう。

◆留守中のいたずらやケガ

犬を室内で放し飼いにする際、特に気を付けなければいけないのが、「いたずら」やそれに伴う事故です。
特に、留守番中の犬は寂しさからいたずらしてしまうことが多く、誤って物を割りケガをしてしまったり、コンセントなどに触れて感電してしまったり、危険なものを誤飲してしまったりするなどの事故につながる恐れがあります。
室内には物が多く、犬がいたずらをしたり、ケガをしたりするリスクは屋外より高まります。
そのため、まずは犬を放し飼いにする場所に危険なものが置かれていないかどうか、改めてチェックしてください。
そして、犬が出入りする部屋、また、犬の届く位置には物や観葉植物を置かないようにするなどの工夫が必要です。

◆足音や鳴き声の近隣への配慮

犬を放し飼いにする際は、愛犬の出す「音」が近隣への迷惑にならないようにしなければいけません。
たとえば、ジャンプした時や伸びた爪が床に当たる時の足音、来客時や遊んでいる時などに興奮して吠えてしまう子の鳴き声など、犬は飼い主さんが思っている以上に音を出しています。
特に集合住宅の場合は、お隣だけでなく、上下にお住まいの方に対する配慮が必要です。
そのため、フローリングにマットを敷いたり、無駄吠えをなくすトレーニングをしたりするなどの対策を施してください。
さらに、近隣の方々には「うるさくして申し訳ない」といった声掛けをしておくと良いでしょう。

◆トイレや体臭のニオイと汚れ

犬にトイレトレーニングを行う際、外でしかしないように躾けることもできます。
しかしながら、真夏の非常に暑い日や雨が続くような時期、さらに、災害が発生した時などを考えると、本来はうんちもおしっこも室内でできるようにしておくことが理想。
とはいえ、室内で犬を放し飼いにする場合、きちんとトイレトレーニングができていないとあちこちに排泄してしまい、室内が汚れてしまったり、ニオイが付いてしまったりすることになるため、トイレトレーニングは必須です。
また、こまめにシャンプーやブラッシングをするなど、排泄だけでなく、犬のニオイや毛に対する対策も必要になります。
万が一、ニオイや汚れへの対策が不十分な場合、飼い主さんの健康状態に影響を及ぼす恐れも。
そのため、犬を室内で放し飼いにする際は、「トイレトレーニングが完了していること」「シャンプーやブラッシングができるようになっていること」がポイントです。
もしも、まだ不安だという場合は、人がいる時に放し飼いにし、留守中はケージに入れるようにすると良いでしょう。


まとめ

今回は、屋外・庭・屋内の3つのポイントで「犬を放し飼いにする」ことについての問題点や注意点をお話ししてきました。
犬にとっては、自由に行動できる環境下で飼育されることが最も望ましいといえます。
しかしながら、世の中には、犬が苦手な人や怖いと感じる人もいます。
また、自由に行動できるということは、思わぬ事故に繋がったり、周囲に迷惑をかけたりする恐れがあるということです。
そして、愛犬が何らかの問題を起こしてしまった場合、その責任は「飼い主」にある、ということを忘れてはいけません。
ご近所の方々や家族、そして愛犬が辛い思いをすることのないよう、「外に出るときはリードを付ける」「庭などで放し飼いにする時は外に飛び出していかないよう対策をする」「室内で放し飼いにする時は音やニオイで迷惑をかけないようにする」などの注意点を守りましょう。



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