【獣医師監修】愛犬のお腹が赤い!!考えられる原因と注意点を解説

2024.05.26

【獣医師監修】愛犬のお腹が赤い!!考えられる原因と注意点を解説

犬は全身が毛で覆われていますが、お腹は毛が薄い子が多く、皮膚の様子が見えやすい場所です。犬の皮膚は、実は人間よりも薄く、皮膚トラブルが起こることが多いです。 そんな犬のお腹は様々な原因で赤くなることがあります。お腹が赤くなると同時にかゆみを訴えることも多く、見ている方も辛くなりますよね。今回の記事では、犬のお腹が赤くなる原因を解説します。

犬のお腹が赤い原因

犬のお腹

犬のお腹は色々な原因で赤くなることがあります。その多くが、皮膚の炎症によるものです。
お腹の皮膚が赤く炎症を起こしてしまう原因には、寄生虫感染やアレルギー反応や換毛期に伴うものなどがあります。
以下では犬のお腹が赤くなる原因について代表的なものを挙げます。

◆毛包虫や疥癬などの寄生虫

犬のお腹の皮膚は、毛包虫や疥癬やノミなど寄生虫が原因となって炎症を起こすことが多いです。毛包虫のように皮膚に常在しているダニが問題となるケースや、疥癬やノミのようにお散歩の時に外で寄生してしまうものもあります。
こうした寄生虫の感染により、お腹の皮膚が炎症を起こします。また、強いかゆみが出ることも多く、犬が自身の身体を掻くことで皮膚がさらに赤く炎症を起こしてしまいます。特に毛の薄いお腹は、毛に覆われた他の部位に比べて皮膚が炎症を起こしやすく、皮膚が赤いのも目立ちやすいです。

◆アレルギー反応

犬も人と同様に様々なものに対するアレルギー反応を起こすことが知られています。アトピー体質の犬がハウスダストや花粉や草木などに反応して皮膚炎を起こす犬アトピー性皮膚炎や、食物に反応してアレルギー反応を示す食物アレルギーが代表的です。
こうしたアレルギー反応も犬のお腹など全身の皮膚が赤くなる原因となります。寄生虫の場合と同様に、アレルギー反応自体でお腹の皮膚が炎症を起こして赤くなる他、かゆみによって犬自身が掻くという行為でお腹の皮膚が赤くなります。

◆細胞バランスの崩れ

犬のお腹が赤い原因として、アレルギー反応を挙げました。体内で免疫を担当するヘルパーT細胞にはTh1型とTh2型がありますが、アレルギーを起こしやすい犬はこのTh1型とTh2型のバランスが崩れていることがあります。
こうした免疫に関与する細胞バランスの崩れも、犬のお腹が赤い場合の原因となっているケースがあります。

◆換毛期によるもの

換毛期に大量に抜けた毛が、毛玉となり皮膚を覆うことで皮膚が群れて細菌の増殖を起こしやすくなります。その結果、膿皮症などの皮膚病を起こしてしまいます。
また、抜けた毛が犬自身への刺激となって、体をこすったり、掻いたりしてお腹などの皮膚が赤くなってしまうことがあります。


犬のお腹が赤くなる病気

続いて犬のお腹が赤くなる病気として代表的なものを解説します。

◆ノミアレルギー性皮膚炎

散歩中に寄生しやすいのがノミです。ノミが寄生すると、ノミアレルギー性皮膚炎が起こります。皮膚のかゆみと炎症によって腰やお腹の皮膚が赤くなります。ノミに刺された際に、犬の身体にノミの唾液が入ってしまいます。このノミの唾液に犬がアレルギー反応を起こすことで、ノミアレルギー性皮膚炎が生じます。
アレルギー反応によって起こる皮膚炎なので、刺された犬がすべて発生するわけではありませんが、アレルギーを示す犬は1匹でもノミに刺されると発症します。
ノミは暖かい時期に活動的になりますが、野良猫などの身体には冬でもノミが多く寄生しているので、散歩に出る犬は年中予防しておくことをおすすめします。
ノミ予防薬には背中に液体を滴下するスポットタイプのものや、おやつ状の経口薬があり、近年ではフィラリア、マダニと同時に予防できるものも多いので、愛犬に合ったものを使用しましょう。

◆疥癬

疥癬は、イヌセンコウヒゼンダニが寄生することで、強烈な痒みを起こす病気です。イヌセンコウヒゼンダニは犬の皮膚にトンネルを掘って寄生します。このダニやその排泄物、卵などに対して犬の皮膚がアレルギー反応を起こし、強いかゆみを生じます。
このダニへの感染は主に、すでにイヌセンコウヒゼンダニに感染した動物との直接接触で起こります。野生の動物ではタヌキから感染することが多いです。その他にも、ドッグランなどで他の犬から感染するケースもあります。
症状が出やすい場所は、耳や脇、肘、お腹など毛が薄いところです。
強烈なかゆみを生じるため、犬自身が身体を掻きむしって、さらに皮膚が赤く炎症を起こし、カサブタやうろこ状になっていきます。犬によっては夜も眠れないほど強いかゆみに悩まされ、ストレスのため、食欲や元気までなくなってしまう場合があります。
治療自体は多くの場合、適切な駆虫薬やかゆみ止めの薬を使用すれば難しいものではないので、犬が強いかゆみを訴えている場合は早めに動物病院を受診しましょう。

◆毛包虫症

毛包虫症は、毛包虫(ニキビダニ)が原因となって起こる皮膚病です。毛包虫は毛根を包んでいる毛包に住んでいるダニで、健康な皮膚にも常在しています。健康な犬では悪さをすることがない虫ですが、免疫力の低い仔犬や老犬、病気の犬では異常に増殖して皮膚炎を起こします。
駆虫薬を使用することで、毛包虫を減らし、症状を改善することができます。仔犬は成長とともに免疫力が上がり、再発を起こさず生活できることが多いですが、老犬で発症した場合は、免疫力を下げる基礎疾患が潜んでいることが多いので、動物病院で健康チェックをおすすめします。

◆マラセチア皮膚炎

マラセチア皮膚炎でもお腹の皮膚が赤くなることがあります。
マラセチアは犬の皮膚に常在している酵母様真菌で、皮膚の脂質を栄養源としています。健康な皮膚では問題になることはありませんが、皮脂が多い体質の犬やアトピー性皮膚炎の犬では、マラセチアが増殖しやすくなり、マラセチア性皮膚炎が起こってしまいます。
指の間や脇の下、内股、お腹などがベタベタして赤い場合はマラセチア皮膚炎のことが多いです。その他にも耳や口周りなどもマラセチア皮膚炎を起こすことがあります。

◆表在性膿皮症

犬の皮膚にもともと住んでいる細菌が、表皮や毛包内で増殖し、感染を起こしたものを表在性膿皮症といいます。原因になることが多い主な最近は黄色ブドウ球菌です。
高温多湿な環境や、犬の皮膚の状態、体質など様々な原因で起こります。犬アトピー性皮膚炎に続発して起こることも多いです。身体の色々な場所で起こることが多い皮膚炎ですが、毛が薄く、外界と接しやすいお腹や内股でもよく起こります。
抗菌薬のシャンプーや塗り薬、飲み薬などを使用して治療することが多いですが、犬アトピー性皮膚炎などが原因となっている場合は、そちらのコントロールが重要となります。

◆皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症とは、真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌が皮膚に感染することで起こる皮膚病です。
糸状菌に感染した犬や猫、または糸状菌により汚染された土壌から感染を起こします。脱毛班が見られ、皮膚がカサカサとして、フケが多く出ます。お腹に限らず、全身で起こる可能性があります。
犬や猫だけでなく、飼い主さんにも感染するため、治療が完了するまで、注意が必要です。
治療は抗真菌薬の内服による全身療法と、塗り薬や抗真菌シャンプーによる局所療法が行われます。
また、糸状菌は感染した被毛で長期間生存するため、環境面での対策も必要です。

◆アトピー性皮膚炎

犬アトピー性皮膚炎も犬のお腹が赤い原因として多いものです。
犬アトピー性皮膚炎は、アトピー体質の犬がハウスダストや草木など環境中の抗原に対してアレルギー反応を起こして発生するため、毛が薄く、皮膚が外部と直接接触しやすいお腹や足先、顔などで症状が出やすいとされています。アトピー性皮膚炎は、犬自身の体質が関与しているため、適切に管理するためには、かゆみや炎症を止める治療に加えて保湿などのケアも重要となります。

◆食物アレルギー

犬も人間同様に様々な食物に対してアレルギーを起こすことがわかっています。何にアレルギー反応を起こすかは、それぞれの個体によって異なります。食物アレルギーでも皮膚はかゆみを起こし、赤く炎症を起こします。目周りや口周り、背中やお腹など様々な場所でかゆみや炎症が起こることがあります。かゆみ止めでかゆみを軽減することが可能ですが、アレルゲンを避けないかぎりはコントロールが難しいため、フードを変更する必要があります。


注意が必要な犬の皮膚の赤み

犬

私たち人間と同じで、犬も虫に刺されるなどの理由で一時的にお腹の皮膚が赤くなることはよく起こります。しかし、上記の病気のように動物病院でしっかりと治療を行う必要があるものもあります。
特に以下のような様子が見られる場合は注意が必要です。

◆お腹以外にも症状がある

お腹などの皮膚が一か所赤いだけでなく、複数の箇所の皮膚が赤い場合は注意が必要です。また、症状が広がりをみせている場合も早めの診察をおすすめします。

◆なめたりこすったりする

お腹などの皮膚が赤い場合に、犬自身がかゆがったり、痛がったりして、なめたりこすったりしている場合も早めに対処してあげましょう。かゆみは人間だけでなく、犬にとっても辛いものです。また、皮膚のかゆみや炎症は、掻くという行為による刺激でさらに悪化してしまうため、重症化を避けるためにも早急に治療を受けた方が良いです。

◆1週間以上症状が続く

症状が長引く場合も要注意です。
たまたま、爪が当たった場合や虫に刺されたなどの場合は数日でお腹の赤い部分は治まるはずです。1週間以上もお腹の赤い部分が治らない場合は何かしらの異常が起こっていることが多いので動物病院を受診しましょう。


犬の皮膚が赤い場合の対処法

犬のお腹などの皮膚が赤い場合、上記で挙げたように、寄生虫などの感染やアレルギー反応が原因となっていることが多いです。できれば早めに動物病院を受診しましょう。また、症状に気づいた時はスマートフォンなどを使用して写真を撮っておくと良いです。動物病院での説明がスムーズ行え、その後に症状が改善しているのか、悪化しているのか比較がしやすいためです。毛に覆われて発見が難しい場所の皮膚が赤い場合も、記録を取っておくと、次に探す手間が省けるので便利です。


まとめ

今回は犬のお腹が赤い場合に考えられる原因と注意点について解説しました。寄生虫、細菌、真菌などが感染している場合やアレルギーなど長期に管理が必要になるものが原因となることが多いです。そのまま放置しておくと思わぬ重症化を起こすことがあるので、早めに動物病院で診察を受けることをおすすめします。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に16医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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