【獣医師監修】インフルエンザは犬もかかる?!感染経路や症状は?

2024.09.22

【獣医師監修】インフルエンザは犬もかかる?!感染経路や症状は?

人間社会では、季節によって大流行するインフルエンザ。重い症状に悩まされたことのある飼い主さんも多いのではないでしょうか。愛犬のいる家庭だと特に、犬もインフルエンザにかかるのかどうかは気になる問題ですよね。今回はそんな犬のインフルエンザについて、感染経路や症状・治療法などを紹介していきましょう。

犬もインフルエンザにかかる?

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日本国内では、現在までに犬インフルエンザの発症報告はありません。しかし、だからといって犬がインフルエンザにかからないというわけではなく、海外では多数の報告が挙がっているのです。他の動物から犬への感染、また変異を繰り返して感染が拡大していることが認められています。
目には見えないウイルスは、人間にも犬にも脅威となるでしょう。万が一に備えて、症状や予防対策をしっておくことが重要ですね。
まずは犬のインフルエンザがどんなものか解説していきましょう。

◆犬インフルエンザとは

人間のインフルエンザは、病原体であるインフルエンザウイルスの構造の違いにより、いくつか型がありますよね。これと同様にいぬのインフルエンザにも型があり、多岐に渡って分類されています。
その中でも、犬インフルエンザウイルス発症報告のある型から、代表的な4つを紹介していきましょう。

◎H3N8型

馬インフルエンザが犬へ感染し、犬での流行が起こったのがこのH3N8型です。犬でのインフルエンザ感染が最初に認められた型でもあります。
2004年にアメリカ(フロリダ州)のドッグレースに参加していたグレイハウンドに、高熱・咳などの呼吸疾患がみられ、レース会場付近で飼育されていた馬から、ほとんど同じ型のウイルスが見つかったのです。この馬からみつかったウイルスが、変異して犬へ感染したと考えられています。
その後、全米各地で犬へ感染したことで、犬インフルエンザとして定着し、流行を繰り返したそうです。日本での感染報告はありませんが、近国である中国での報告はあります。

◎H3N2型

鳥インフルエンザが犬へ感染した後、犬での流行がみられたH3N2型。
2007年に韓国で鳥から犬へと感染し、中国南部やタイなどで犬への感染報告が挙がっています。
2015年にはアメリカ(シカゴ)にある犬の保護施設で、アジアからきた犬を介在し、1000頭超の集団感染が発生してしまいました。
尚、アメリカでは20州以上で感染拡大した、との報告もあるようです。

◎H1N1pdm型

元々は豚のインフルエンザで、2009年に新型インフルエンザとして人に流行したH1N1pdm型。過去にスペイン風邪として世界的に人に流行したインフルエンザも、この型だといわれているようです。
犬では2009年に、アメリカ・中国で人からペットの犬へ感染したと報告されています。日本国内の犬の調査においては、人の型のインフルエンザウイルスに対する特異抗体が検出されて感染歴が示唆されたのですが、発症の記録はないとのことです。

◎高病原性H5N1型

これは高病原性鳥インフルエンザが犬へ感染した型ですが、犬での流行はみられていません。ただし、原因細菌が病原性の高い鳥インフルエンザウイルスであり、死亡率の高い型だといわれています。
2004年、タイでこの型のインフルエンザウイルスを保有していたアヒルの死骸を食べた犬に、高熱と呼吸器症状が確認され、その犬は死亡してしまったようです。その後も、この型のインフルエンザが発生した地域において、犬・猫・他の哺乳動物が、鳥インフルエンザに感染した鳥を食べて発症し、死亡する事例が起こっています。

◆犬インフルエンザの感染経路

犬がインフルエンザに感染する経路には、接触感染と飛沫感染の2種類があります。

◎接触感染

インフルエンザウイルスに感染した犬の鼻汁・唾液には、多くのウイルスが存在しています。感染した犬と一緒に遊ぶなど、直接的な接触によって感染することを接触感染というのです。
他にも、感染した犬が使用した食器・おもちゃ・給水ボトル・ケージ・飼い主さんの衣服など、間接的な接触によっても感染するので要注意です。

◎飛沫感染

ウイルスに感染した犬がくしゃみ・咳をした際に、ウイルスを含んだ飛沫がとびます。それを他の犬が吸い込むことで感染することを飛沫感染といいます。


犬のインフルエンザの症状

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愛犬がインフルエンザに罹った場合、以下のような症状がみられます。
感染しても症状がみられないケースもありますが、万が一に備えて、どのような症状が起こるのか覚えておきましょう。

◆初期症状

犬インフルエンザの主な症状は、くしゃみ・鼻水・咳・発熱・食欲不振などです。また、倦怠感から動きが緩慢になる傾向もあります。そのため、愛犬に元気がないな…と感じることもあるでしょう。
2~4日の潜伏期間を経て、発症後3週間程で自然治癒することが多く、感染した犬のほとんどは軽傷で死亡率も10%程度だといわれています。
ちなみに、ケンネルコフ(犬伝染性気管支炎)という日本国内でもよく見られる病気があるのですが、この症状は犬インフルエンザと似ており迅速な鑑別が難しいといわれています。
愛犬になんらかの症状がみられた場合は、時間を要する確定診断ではなく、まずは合併症対策や呼吸器感染症の治療などを優先することが重要なポイントだといえるでしょう。

◆進行した場合の症状

インフルエンザによる症状が重症化した場合は、40~41℃程度の高熱を発します。そして、正常時に比べて呼吸数が著しく増加し、呼吸促拍や努力呼吸(肩で息をするような荒い呼吸様式)などが現れるでしょう。
弱っている状態で細菌感染すると、ウイルスの増殖・二次感染などによって肺炎を発症し、致命的な状態に陥る可能性もあるので注意が必要です。
症状が長引くようであれば、早めに動物病院で診察を受けるようにしてください。


犬のインフルエンザの治療法

愛犬がインフルエンザにかかってしまった場合、どんな治療法が必要となるのでしょうか。
症状のレベルや状態によって、それは変わってきます。

◆薬物治療

鼻汁が濃厚な緑色の場合、細菌による二次感染の可能性が高いです。こういった状態が愛犬に見られる場合、動物病院で診察を受けましょう。必要があれば、抗生剤を投与することになります。
また、高熱などで重症の場合は、体力を回復させるために点滴で水分・栄養を補給します。このとき、栄養剤と一緒に薬剤も投与するとより効果的だそうです。
ただし、点滴は時間がかかるので、大きなストレスを与えてしまう可能性も考えられます。皮下注射や皮下補液で薬剤・栄養剤を投与する方法もあるので、心配な場合は獣医師に相談してみましょう。

◆ホームケア

前述した通り、軽傷の場合は安静にしていれば自然治癒するケースが多いです。こういったケースでの治療の基本は、対処療法と栄養管理となります。
栄養バランスの良い食事を与えること、脱水症状を起こさないように水分補給をしっかり行うことを徹底しましょう。加湿や室温調整も大切ですよ。
なお、ワクチン接種をしていない犬・子犬・老犬は重症化しやすいので、軽症でも動物病院に連れて行くようにしてください。
また、愛犬に感染症が疑われる場合は、他の犬との接触を避けるため、事前に病院へ電話しましょう。


犬のインフルエンザの予防法

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愛犬の健康を守るためにも、インフルエンザの罹患は避けたいものです。
いくつか予防法を紹介しますので、参考にしてください。

◆ワクチン接種

風邪に似た症状が特徴的なケンネルコフの原因の一つに、犬パラインフルエンザウイルスがあります。
これは、重度の気管支炎を引き起こすことのある恐ろしいウイルスですが、混合ワクチンの接種で予防対策が可能です。
また、犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス2型も、同じくケンネルコフの原因となり、感染するとくしゃみ・咳などの症状がみられます。
これらのウイルスも混合ワクチンで予防できますので、定期的に混合ワクチンの予防接種を受けることが強くすすめられます。

◆衛生管理

犬インフルエンザウイルスは、消毒液(4級アンモニウム塩・塩素系消毒液)で簡単に殺菌することができます。ケージやフード容器などを消毒すると、予防対策として効果的でしょう。
獣医師に相談し、適切な消毒液を準備しておくことをおすすめします。そして、掃除のついでに消毒をする習慣をつけるようにしましょう。

◆健康管理

インフルエンザに限らず愛犬を病気から守るためには、日頃から健康管理を怠らないことが大切です。
毎日の食事量や質、水分補給量、排泄の状態などに、しっかり目を配りましょう。常に観察する癖をつけておくと、愛犬の些細な異変にも気付きやすくなります。
免疫力を高める効果のあるフードやサプリメントなどを利用するのもおすすめです。プロおすすめのドッグフードやアイテムを紹介している監修記事もありますので、チェックして参考にしてみるのもよいでしょう。


犬のインフルエンザは人間にうつる?

前述したように、犬がインフルエンザにかかる場合、犬以外の他の動物からも感染することがあります。
それでは、犬から人へは感染するのでしょうか。これも日々の生活を共にする上では気になる問題ですよね。
次に、感染リスクについて解説していきましょう。

◆人間への感染リスク

人間から犬へ、また犬から人間へインフルエンザウイルスが感染するには、大幅な突然変異が必要となります。このため、現状では、その可能性は非常に低いと考えられています。
これは、ウイルスと結合する細胞分子の受容体が、人間と犬では異なるためだそうです。
しかし、ウイルスの突然変異によって種を超えて感染が広がった過去の事例を考えると、もちろん可能性はゼロではないといえるでしょう。
予防対策をするに越したことはありません。

◆他のペットへの感染リスク

愛犬の他にペットがいたり、多頭飼いをしている家庭では、他のペットへの感染リスクも気になるところです。
インフルエンザウイルスの潜伏期間内では無症状であるケースがほとんどですが、この間も唾液等からは病原体であるウイルスが排出されています。
多頭飼育の場合、既に他の犬に感染している可能性も考えられるでしょう。
インフルエンザ感染が疑われる子がいる時は、愛犬同士が接触しないよう、それぞれ別の部屋へ速やかに隔離することがすすめられます。また、愛犬が使用するアイテムは必ず消毒してくださいね。
ちなみに、症状が出ていない愛犬に対しては、毎日の体温測定を行い、数週間観察するようにしましょう。


まとめ

日本での発症例はなくとも、いつ流行するか分からない犬インフルエンザ。
大切な愛犬の健康を守るためには、正しい知識や情報収集をしておくことが重要です。
インフルエンザ以外にも、様々なウイルス・細菌によって感染症は引き起こされます。予防対策を常にしておき、手洗いや消毒をする習慣をつけて継続していきましょう。
もし愛犬に気になる症状が見受けられる場合は、かかりつけの獣医師または専門医に相談してみてください。
インフルエンザや他の病気を発症していることが分かったら、しっかり治療を受けましょう。動物病院によって、導入している治療法が違う場合もあります。不安に思うことがあれば、遠慮なく質問するようにしましょう。
愛犬との人生が少しでも長く続くように、健康に配慮した毎日を送るよう心掛けていきましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に16医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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