【獣医師監修】犬が水を繰り返し吐く原因と対処法について解説

2024.07.04

【獣医師監修】犬が水を繰り返し吐く原因と対処法について解説

犬が水や食物を吐くという現象は、一過性のものであれば多くの犬に見られる自然現象だ考えることができます。しかしながら、嘔吐を症状として引き起こす病気も数多くあるので、繰り返し吐く場合や他の症状が伴う場合は注意が必要です。今回は、犬が水を吐く時の原因や対処法を中心にご紹介致します。

【掲載:2020.09.16  更新:2024.07.04】

犬が水を吐く原因

犬が水を吐く原因は、水のがぶ飲みや病気、車酔いや空腹時間が長すぎるなど様々です。
病気が原因で水を吐く場合は、必ず動物病院で検査を行ってもらい、病気の根本的な治療を行うことが大切です。

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◆がぶ飲みをした

散歩などの運動後に犬が水をがぶ飲みして、むせるように吐くことがあります。

通常胃に水が到達する前に水が吐き戻されることから、胃液が混ざらず比較的飲んだ時の水の形状(色)に近いものがそのまま出てくることが多いと考えれらます。

いずれにせよ、水のがぶ飲みは気管を中心とした体に負担をかけるだけでなく、胃捻転のリスクを高めるため注意が必要です。

◆急性胃炎

急性胃炎を発症していて犬が水を吐くこともあります。
急性胃炎の原因は、(犬にとっての)有害物質を摂取したときや、ウイルス性の病気を発症したとき、重度のストレス下におかれた場合など様々で、このような理由によって胃粘膜に急性の炎症が引き起こされることで、水や食物などを繰り返し吐くことがあります。

◆胃捻転

胃捻転とは、何かしらのきっかけで胃が捻じれることで胃の中に気体や液体が充満して、さらに捻じれが生じる病気です。
明確な理由は未だ分かっていないものの、運動前後の食事や水のがぶ飲み、早食いなどが原因になりやすいと考えられており、吐きそうで吐けない仕草や落ち着きがない、腹部が異様に膨れるなどの症状が確認された場合は注意が必要です。
稀に水を吐く症状を伴ったり、ヨダレが大量に出たことから飼い主さんが水を吐いたと思い込んでいる場合もありますが、いずれにせよ胃捻転になると短時間で(循環血液減少性)ショック死してしまう危険性が非常に高いため、早急な治療が必要となります。

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◆食道炎

食道炎とは、犬の食堂壁部分に炎症が起こっている状態を指し、原因は刺激物の摂取や異物との接触、他の病気を発症している場合はその病気が原因で食道炎が併発することもあります。
食道炎になると、水や食物など何かしらのものを口から摂取した後すぐに吐き出すような症状が確認され、過剰なよだれが目立つようになることもあります。

◆巨大食道症

巨大食道症(食道拡張症)とは、先天的、または後天的原因によって食道部分の拡張や機能低下がみられる病気です。
先天的、後天的のいずれの場合も明確な原因が分からないことが多いのが特徴で、水や食物を摂取した後、早ければ数分、遅くても数時間程度で水や食べ物を吐き出します。

◆胃酸過多

朝方など特定の時間に吐く犬がいますが、食事時間の間隔が長くて空腹時に胃酸過多によって吐くこともあります。
その他、ストレスや犬にとっての刺激物の摂取など胃酸過多になる原因は様々ですが、水のような白い液体を吐くことが多いのが特徴です。

◆車酔いをした

犬も人間同様に車酔いをすることがあり、個々の犬の体質によっても車酔いをするかしないか、また度合いも異なります。
普段車酔いをしない犬であっても、病気や老衰などにより体調が悪かったり、食後や空腹によって車酔いをして水などを吐くことがあります。

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老犬は水を吐きやすいのか

老犬だからといって水を吐きやすいというわけではありませんが、口や喉、気管などの消化器官が弱っている場合は水を吐きやすくなります。
また、病気に関して考えると、老犬は成犬と比較して免疫力が低下しやすく様々な病気の発症リスクが高まるので、何かしらの病気が原因で水や食物を吐く症状が引き起こされるリスクが高まると考えられます。
その他、老衰によって体の様々な機能が低下傾向にあるため、水を吐くときに体に負担が大きくかかりやすいので注意が必要です。
繰り返し水を吐いたり他の症状が確認される場合は、早めに獣医師に相談しましょう。


犬が水を吐いた時の対処法

犬が水を吐いた時はしばらく水や食べ物を与えずに体を休ませることが大切ですが、病気が原因で水を吐く場合は、何より動物病院で早めに検査を行うことが大切です。

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◆病院を受診する必要がある場合

犬が繰り返し水を吐いたり、吐く頻度が多い場合、水を吐く以外にも何かしらの症状が確認された場合は必ず動物病院で検査をしてもらいましょう。
病気の根本的原因治療を行わないと、水を吐く症状やその他の症状は重症化する危険性が高まり、病気によっては命を奪うものもあります。

◆食事の間隔が長い場合

食事の間隔が長く、普段吐かないのに朝方など特定の時間にのみ犬が水のようなものを吐くような場合は、食事間隔を狭めて様子を見るのも良いでしょう。
1日の食事量を変更せずに、1回の食事量を減らして食事回数を増やすことで解決することもあります。
ただし、症状がすぐに改善しない場合や水のような液体を吐く以外にも症状が併発している場合は、必ず獣医師に相談しましょう。

◆車酔いの場合

車酔いをする犬の場合は、長時間車に乗せないよう配慮して、どうしても乗せる場合は温度管理や換気をしっかりと行い、休憩をさせてあげることが大切です。
また、食後や空腹時間が長い場合は車酔いしやすくなるので、車に乗せるタイミングに関しても配慮が必要です。

◆がぶ飲みが原因の場合

がぶ飲みが原因で水を吐くことが明らかな場合は、がぶ飲みしないよう対策を練りましょう。
大量の水を一度に準備するのではなく、少なめの水を頻繁に与えることをおすすめしますが、脱水症状が引き起こされることがないよう十分注意が必要です。


犬が水を吐いた後の観察ポイント

一言で水といっても嘔吐物の内容や吐く頻度などは様々ですので、吐いた量や内容物、吐いた時間などを細かく観察することが大切です。

◆吐いた後の犬の状態

犬が水を吐いた後、食欲と元気があって一過性の吐き気であれば様子を見るのも良いでしょう。
ただし、繰り返し吐いたり食欲低下など他に何かしらの症状がある場合は早めに動物病院で検査をしましょう。

◆犬が吐く時間帯

犬が吐く時間帯も注意深く観察する必要があります。
一般的に朝方など空腹時の決まった時間に吐く場合は空腹による吐き気とも考えることができますが、食前や食後などに吐く場合は、胃や食道に何かしらの異常があることも考えられます。
また、食後数時間が経過してから吐く場合は腸に何かしらの異常があります。

◆吐いた水の状態

水に血のようなものが混ざっている場合は、消化器系の病気を疑うことができ、黄色っぽいような水を吐いた場合は胃酸過多が原因の可能性があります。
また、吐いた水から過剰な異臭がするような場合は腸閉塞を起こしている可能性があるなど、推測でしかありませんが検査前の判断目安にもなるので、吐いた水の状態は獣医師にしっかりと説明できるよう記録しておきましょう。


犬に水を飲ませる際に注意すること

ここでは、犬に水を飲ませる際に注意したいことについて説明させていただきます。
重度の脱水症状は、命を落とす原因にもなりえるので十分注意が必要です。

◆がぶ飲みさせない

水のがぶのみは、犬の体の状態や年齢によっては身体に負担が多きくかかることがあります。
胸の深い大型犬の胃捻転リスク予防はもちろん、犬種問わずむせる原因にもなるためがぶ飲みをさせないよう工夫しましょう。

◆脱水にならないようにする

健康体の犬の体の約60%程度が体液(水)で構成されており、この体液には水分、たんぱく質、電解質、酸、塩基などが含まれています。
水分の摂取量が急激に(または慢性的に)減ってしまうと、病気や老衰によって免疫力が低下している犬や子犬、老犬などを中心に犬の健康被害の原因になります。
最悪の場合は犬が命をおとすことさえありますので、日々愛犬の水分摂取量を確認して健康管理を行いましょう。

◆胃捻転の対策をする

胃捻転に関しては先述でご紹介致しましたが、水のがぶ飲みが引き金となり胃捻転を発症することがあるため、日ごろから対策を練ることが大切です。

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まとめ

今回は、犬が水を吐く時の原因や対処法についてご紹介致しましたが、このような症状が一過性のものでない場合や他の症状が併発している場合は、早めに動物病院で検査して早期段階で治療することが大切です。
動物病院に行くときは、嘔吐物の内容や状態、吐いた時間などを細かく記録して獣医師に相談しましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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動物看護士(日本能力開発推進協会/日本キャリア教育技能検定協会)、老犬介護士(日本キャリア教育技能検定協会)、犬の管理栄養士(全日本動物専門教育協会)、ドッグトレーニングアドバイザー(日本ペット技能検定協会)等、動物関連資格を多数保有。大型犬2頭、中型犬1頭、小型犬(保護犬)1頭、猫3頭と暮らしながら、役立つペット関連情報を提供しております。

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