1.犬の問題行動とは何か
1-1.正常行動、異常行動、問題行動の違い
1-2.異常行動について
2.問題行動の分類
2-1.分離不安
2-2.攻撃行動
2-3.恐怖症
2-4.咆哮行動
2-5.常同障害
3.犬の問題行動の原因
3-1.ストレス
3-2.生得的因子
3-3.習得的因子
4.犬のしつけのポイント
4-1.直接的な罰は与えない(体罰)
4-2.中途半端な注意はしない
4-3.主従関係をはっきりさせる(優位性理論)
犬の問題行動とは何か
◆正常行動、異常行動、問題行動の違い
犬の問題行動とは、「人と生活する上で(人間社会で)問題とされる行動」であり、犬にとっては習性や生き物としての観点から正常行動であっても人間社会にとって好ましくない行動であれば問題行動と識別されます。
このように、正常行動は「人間社会で正常な行動」であるのに対し、問題行動は「犬社会で正常行動であっても人間社会で問題となる行動」という見解がなされます。
また、異常行動については問題行動のうちの一つで、人で考える「正常な行動」範囲を超えたものを指します。
◆異常行動について
異常行動には犬の心理的問題だけでなく、身体的問題が併発していることもあります。
問題行動の一つである異常行動には、さらに3つの分類がなされます。
①生得的行動(生物学的(先天的)に初めから備わっている当たり前の行動)が過剰に起こる・または起こらない
②本来、生得的行動として備わっていない行動が犬にみられる
③一般的に成長に伴ってみられる、発達における変化やしつけなどの学習によって得られる習得的行動変化がみられない
いずれにせよ、病気や老衰など身体的問題が原因となっている異常行動の場合は、まずは獣医師に相談する必要性がでてきますが、最近では人で考える精神科・心療内科のように、犬の心理面の問題(病気)の治療を得意とする専門家医(獣医師)も多くなってきました。
犬の精神的な病気に関しては、分離不安や常同障害が有名ですが、このような重度の心理的問題が原因で異常行動(問題行動)を起こす場合は、行動療法だけでなく薬の処方が必要になることがあるので、獣医師免許を保有した専門知識を持った専門医に相談するのが安心です。
問題行動の分類
犬の問題行動は様々ですが、重度の場合は病気としてとらえることができ、いずれの分類の場合も早めに治療することが大切です。
◆分離不安
分離不安とは、犬が執着している何か(飼い主である場合が多い)と離れたことによって極度の不安が引き起こされ、問題行動を起こす病気です。
飼い主の留守中に症状が引き起こされることが多く、無駄吠え(咆哮行動)や破壊行為、阻喪など、生じる問題行動に関しては犬によって様々ですが、重度の不安や寂しさが原因で嘔吐してしまう犬もいます。
◆攻撃行動
攻撃行動については、犬が攻撃する原因によって様々な種類があり、問題行動を改善するためにはまず犬が攻撃行動を起こす根本的理由を追及しなければいけません。
攻撃行動の一例としては、縄張りを守るための攻撃や犬社会での上下関係構築のための優位性攻撃、飼い主を中心に家族を守るための保護性攻撃などがあり、その他にも恐怖心など何かしらの心理的原因によって攻撃行動が引き起こされることがあります。
◆恐怖症
恐怖症とは、音や何かある特定のものなどに対して過剰な恐怖心を犬が感じてしまう病気で、深刻さや恐怖となる対象物は犬によって様々です。
重度の場合は悲鳴をあげるように鳴いたり、身体に震えが生じることもあります。
多くの場合、犬の恐怖心を煽る対象物は、雷や花火などの騒音、犬が見たことがないもの(新奇恐怖)、犬が訪れたことのない場所ですが、何かのきっかけで、見慣れたものや音が恐怖症の対象になる場合もあります。
◆咆哮行動
咆哮行動とは異常に吠えるような行動で、一般的に犬の問題行動でいう無駄吠えに該当します。
咆哮行動に関しても種類は様々で、犬が飼い主などに対して何かしらを要求するために吠える要求咆哮行動や、不安や寂しさが原因の不安咆哮などが代表的です。
その他、威嚇や警戒などを理由に咆哮の問題行動が起こる場合もあります。
◆常同障害
常同障害とは、同じ行動を反復するような行動が引き起こされるのが特徴で、犬が自分のしっぽを追う、光を追ったり見つめたりする、足先を過剰に舐めたり歩き回ったりする症状が確認されることがあります。
ストレス性のものが多く、極端に生活や要求を制限されたり、体罰的な叱るしつけをするなど様々な原因が考えられ、そのような行動を繰り返すことでストレス(エネルギー)を発散(転位活動)しているとも考えられていました。
いずれにせよ、人でいう自虐行為のようにしっぽを噛んだりして体を傷つけてしまうことも多く、犬の精神的・肉体的健康に被害を及ぼしQOL低下の原因になるため、早めに精神医学に詳しい獣医師に相談することが大切です。
犬の問題行動の原因
犬が問題行動を起こすのには、必ず原因があります。
先天的なことや生活環境(ストレスなど)によるものなど様々ですので、原因の見極めをしっかりと行いましょう。
◆ストレス
犬に問題行動が現れる原因としてストレスが考えられ、具体的には飼い主との関係性が適切でなかったり、狭すぎる環境での飼育、著しい環境の変化や運動不足(または過剰な運動)、適切でない温度管理などが犬のストレス要因になりやすいと考えられています。
◆生得的因子
心理学などで「生得的」という用語を使用することがありますが、これは犬に本来先天的に備わっているものであり、犬であれば当たり前だと考えられる行動において、過剰に起こりすぎたり全く起こらなかったりすることが原因とされる問題行動です。
遺伝や好ましくないブリーディングによってこのような問題行動が生じることがありますが、特に純犬種に関しては親近繁殖や犬の外見への拘りが原因だったり、先天的に人と生活する上では好ましくない気質が現れることが原因になったりと、生得的要因によって問題行動が生じることがあります。
◆習得的因子
習得的因子に関しては社会化期の社会化不足が代表的な原因ですが、成長するにつれ学習すべき内容やしつけによって習得すべき内容が習得できずに問題行動が現れます。
習得的因子では、社会化期の社会化不足だけでなく上下関係を中心に飼い主との関係性が不適切であったり、トラウマのような心の傷が原因で引き起こされやすいのが特徴です。
犬のしつけのポイント
犬が問題行動を起こす前にしつけを徹底することが大切ですが、犬に重度の精神的問題がある場合(普段と違う行動が目立つ場合)は、精神的・肉体的な病気の可能性を考え、まずは獣医師に相談しましょう。
ここでは、問題行動を引き起こさないためのしつけのポイントをご紹介致します。
◆直接的な罰は与えない(体罰)
しつけの基本は、体罰を与えないということです。
殴る、蹴るなどの体罰は、その場で犬が言うことを聞いたとしても、根本的問題解決にはなりません。
それ以上に飼い主と犬の関係性悪化の原因になり、いざというときに指示に従わないことも多々あります。
しつけという理由であっても虐待とみなされ、動物虐待の罰則も年々強化されています。
法的側面を考えなくとも、犬との好ましい関係を築けない場合は、長期的見解から犬のしつけを根本的に行うことができなくなるため絶対に体罰で叱るようなことは行わないようにしましょう。
◆中途半端な注意はしない
中途半場に注意しないよう気をつけましょう。
犬は言葉を話す生き物でないため、ダラダラ長く注意するような叱り方をすると理解できません。
低い音域の短いことばで、しっかりと叱ることが大切です。
しつけだけでなく、理想的な人と犬の関係性を配慮した上では飼い主が犬に敬愛されている状態であることが大切です。
しっかりと指示に従うことができたら十分褒めてあげましょう。
◆信頼関係をはっきりさせる(優位性理論)
犬の問題行動の防止、または簡易的問題行動の修復のためには、信頼関係をしっかりと築くことが大切です。
歴史的に群れをつくって生活してきた犬にとっては、信用できるリーダー的存在がいることは問題行動防止だけでなく、生活する上での精神的安定にも必要不可欠なことです。
脚側行進訓練はもちろん、オスワリやフセ、マテ、オイデなどの基本のしつけはしっかりと褒め伸ばしで行うようにしましょう。
犬の社会性は大切である
犬の社会化期については、成長ステージによって個体差があるものの、生後1ヶ月程度~4ヶ月程度だと考えられており、この時期は他人や他犬、他動物や様々な環境に慣らすのに理想的な時期です。
生後1年~1年半程度で成犬になり、できるだけ早い段階で社会化をしっかりと行わせることが犬の精神面やストレスに対する耐性に良い影響を与える近道です。
社会性をしっかりと身に着けることで、人間社会や犬社会(ドッグランなど)など様々な環境に適応できるようにすることが問題行動防止にも大切です。
まとめ
犬の問題行動について問題行動の分類や原因、特徴など幅広く紹介させていただきましたが、家族として犬が幸せな暮らしを得るためには、人間である家族も幸せでなければいけません。
お互いにとって生活しやすい環境になるよう、犬を迎え入れたらしつけや社会化をしっかりと行い、問題行動や何かしらの好ましくない変化が犬にみられた場合は獣医療の検討を中心に早めに対策を練るよう心がけましょう。
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