1.犬のしこりの原因は何か
1-1.腫瘍
1-2.炎症
3.犬にしこりができる病気
3-1.イボ
3-2.乳腺腫瘍
3-3.脂肪腫
3-4.表皮嚢胞
3-5.組織球腫
3-6.悪性リンパ腫
3-7.肥満細胞腫
犬のしこりの原因は何か
決して珍しい症状ではない犬のしこり。このしこりとは「かたまり」のことで、皮膚表面にできたものをイボやできものと呼ぶこともありますよね。
厳密にいうと病気以外で犬の皮膚にしこりができることはありません。良性・悪性に関わらず、しこりの原因には必ず病名があるからです。
珍しい症状ではないといっても、何もせずに放置することは危険です。それは、悪性腫瘍などといった命に関わるケースの病気である可能性を秘めているためです。
◆腫瘍
しこりに注意しなければならない最大の理由は、腫瘍である場合があるからです。腫瘍には良性と悪性がありますよね。悪性腫瘍は「がん」と呼ばれ、人間に発症する病気としても知名度の高い疾患です。
皮膚表面にしこりができた場合は、表面の赤みや脱毛などから、その存在は発見しやすいでしょう。
皮膚の下にできたしこりは、ある程度の大きさになることで皮膚が盛り上がってきます。それ以外の皮膚の変化は起こらないこともあり、触ると皮膚下でそのしこりが少し動くのが分かります
◆炎症
しこりも種類によって、その柔らかさや硬さに違いがあります。一般的にしこり自体に痛みはないのですが、周囲で炎症が起きてしまうと痛みを感じることとなるでしょう。
しこりが大きくなると違和感を覚えるため、犬が引っ掻いたりして気にする様子がみられるかもしれません。これを放置すると、引っ掻いた部分に傷がつくなどして、炎症が悪化する可能性もあるので注意が必要です。
犬にしこりができやすい場所
原因となる病気によって、しこりの発生部位は異なってきます。
例えば組織球種であれば、好発部位は頭部や耳たぶ・四肢とされますし、脂肪種であれば背中や太腿などの、柔らかい部位にできることが多いとされています。
悪性リンパ腫の場合は、リンパ節の腫れが見られます。詳しくは後述しますので、是非チェックしてみてください。ちなみにリンパ腫は、肝臓・腸・皮膚・腎臓・胸の中などにもできる場合がありますよ。
少しの異変に気付くためにも、毎日身体に触れて異常がないかを確認することがすすめられます。愛犬とのスキンシップを図りながら、背中からお腹、頭や首、手足やお尻など全身を撫でてあげましょう。
シニア犬になると発症しやすくなるイボのタイプのしこりであれば、日常的に身体を触ることで比較的簡単に早期発見することが可能でしょう。
長毛種の場合は毛玉をしこりと勘違いしてしまうケースもありますので、注意して確認してくださいね。
犬にしこりができる病気
身体にしこりなどのできものを伴う犬の病気には、さまざまな種類があります。
代表的な病気を紹介していきますので、しっかりチェックしておきましょう。
◆イボ
しこりの中でも頻繁にみられるのが「乳頭種」で、一般的に「イボ」と呼ばれています。
シニア期の愛犬を飼っている飼い主さんであれば、見たことのある方が多いかもしれません。高齢犬の体表面にできることが多く、基本的に痛みはありません。
◆乳腺腫瘍
乳腺にできるしこりのこと「乳腺腫瘍」といい、良性と悪性の比率が犬の場合は50%ずつといわれています。
始めの内は、小豆くらいの硬いしこりとして発見されることが多く、あまり大きくならない場合は良性である可能性が高いと考えられます。しかし、完全に良性とは言い切れないので、獣医師に一度は相談してみましょう。
良性であれば転移しませんが、悪性の場合は血管やリンパ管を通して転移する場合があります。転移箇所は肺が多い、とされています。
避妊手術をしていないメス犬の4頭に1頭の確率で見られますが、若いうちに避妊手術をすることで予防することが可能です。
初回発情期に手術すれば、発生率は0.5%(200頭に1頭)まで下げることができ、その後は発情が来るたびに予防効果が弱くなるそうです。
◆脂肪腫
皮下組織に発生する脂肪組織の良性腫瘍が「脂肪腫」です。通常は、柔らかいしこりとして発見され、脂肪の多い箇所(背中や太腿など)にできることが多いといわれています。
同様に脂肪組織を由来とする脂肪肉腫という病気は悪性ですが、この脂肪肉腫と脂肪腫は見た目で区別することができません。
やわらかければ脂肪腫だから大丈夫、と安易に考えて判断するのはとても危険です。愛犬の身体にしこりをみつけた場合は、その状態に関わらず一度動物病院を受診しましょう。
◆表皮嚢胞
皮下に嚢胞という袋ができ、そこに角質・皮脂のかたまりがたまる良性の腫瘍を「表皮嚢胞」といいます。
皮膚表面に赤みと盛り上がりが発生し、しこりをつまむと灰色の老廃物が中から出てきます。
表皮嚢胞を多発する犬には傾向があり、同時に何個も見つかることも珍しくありません。
良性腫瘍なのでそれ自体に痛みは出ませんが、大きくなることで愛犬が違和感を覚える場合があります。嚢胞が破裂してしまうと周囲に激しい炎症が起こり痛みを感じるので、愛犬がしきりにしこりを気にするようであれば、獣医師に相談してください。
違和感から掻きむしって傷がついてしまうケースも多いので、日常的に愛犬の様子をしっかり観察しておきましょう。
◆組織球腫
皮膚組織球腫は、良性の腫瘍です。3歳未満の若齢期での発生が多いとされていますが、老齢期に見られる場合もあります。
皮膚に円形やボタン状、ドーム状の赤いしこりができて、それが急速に大きくなります。ほとんどの場合その大きさは、2.5cm以下で止まるそうです。
好発部位は頭部や四肢で、頭部では特に耳たぶに発症しやすいといわれています。痛みはないので、愛犬が気にすることもほとんどないでしょう。
大体数週間から数カ月で自然になくなりますが、そのまま残るケースもあるようです
◆悪性リンパ腫
悪性リンパ腫にはいくつかタイプがあり、中でもしこりができるのは「多中心型」というタイプに分類されます。
体表にあるリンパ節が腫れてくることで発症が確認されます。犬のリンパ節は、顎の下・首の付け根・脇の下・内股の付け根・膝の裏にあるので覚えておきましょう。通常は触れない程非常に小さいものなのですが、発症するとしこりとして触れるようになるのです。
痛みはありませんが悪性腫瘍のため、発見の遅れは病気のステージ進行を招き、命に関わる重大なものとなります。
発症部位によって症状が異なりますが、一度発症すれば完治は難しく、高い致死率を持つ悪性腫瘍の一つなのです。
◆肥満細胞腫
肥満細胞が腫瘍化して増殖する悪性腫瘍を「肥満細胞腫」といいます。犬の皮膚にできる悪性腫瘍の中で、最も多い腫瘍だといわれています。
皮膚にしこりができる場合と、皮膚炎のような症状が出る場合があります。しこりの硬さはさまざまなので、見た目では診断できません。
発症するとリンパ節・肝臓・脾臓などの他の臓器に転移したり、皮膚以外の口内・筋肉の間・内臓に原発する肥満細胞腫もあるそうです。
犬にしこりを見つけた時の対処法
しこりの発生部位や硬さなどで、良性か悪性かの判断はできません。小さく柔らかいものであっても、悪性度はゼロではないのです。
大きさに変化がない場合は悪性の可能性が低いとはいえますが、他の症状での動物病院受診時にでもよいので、一度は獣医師に確認してもらってくださいね。
ただし個人的には、愛犬の状態に関わらず早めに相談することをおすすめします。万が一悪性のがんであれば、一刻を争う可能性があります。早期発見のためにもしこりを見つけたら、必ず一度は獣医師に診てもらいましょう。
犬のしこりの診断・検査の方法
悪性腫瘍が疑われる場合、まずは身体に針をさしてしこりの中にある細胞を採取する生検が行われるでしょう。それを顕微鏡で観察するのです。
それで診断がつかなければ、しこりの一部または全部を切除し、病理検査が実施されます。
更に、血液検査・レントゲン検査・超音波(エコー)検査などを行い、腫瘍が転移していないかを確認する流れとなるのが一般的でしょう。
多数の検査は愛犬にとってもストレスを感じるシーンともなります。しかし、確定診断のために検査は欠かせません。愛犬の状態に注意しながら、飼い主さんがしっかり寄り添ってあげてくださいね。
犬のしこりの治療法
しこりの原因となっている病気によって、治療法は異なります。紹介してきたように、しこりの中には良性だったり、自然治癒するものもあるのです。
しかし悪性腫瘍となれば、早期発見・早期治療が重要なカギとなります。獣医師にしっかりと診断内容や治療方針を確認し、飼い主さん自身も愛犬の病気と向き合うことが大切です。
治療が必要な場合に犬のしこりに対してどのような処置がなされるのか、一般的な処置内容を紹介していきましょう。
◆外科治療
愛犬が麻酔可能で、しこりが手術で切除できるものの場合、外科切除が第一選択の治療法となるでしょう。他の箇所に転移していなければ、その切除手術だけで治療が完了する可能性もあります。
◆化学療法
腫瘍の種類によっては、抗がん剤が投与されます。週に1回から数週間に1回程の頻度で、注射により投与することとなるでしょう。
ただし、抗がん剤の使用には副作用やリスクがあります。事前に獣医師にしっかり確認して、治療に伴う注意点を聞いておきましょう。また便や尿に抗がん剤が排泄されるので、自宅でのケアにも注意が必要です。
◆放射線治療
手術で腫瘍が取りきれなかった場合、またはさまざまな理由から手術ができない場合に、緩和的な治療として選択されるのが放射線治療です。基本的に、全身麻酔が必要となります。
ただし、放射線療法に対応可能な施設が限られているため、簡単には選択できない治療法だともいえるでしょう。
犬のしこりの予防策
しこりを伴う病気で予防が可能なものとして、前述したように「乳腺腫瘍」が挙げられます。愛犬がメス犬の場合は、避妊手術を受けることを積極的に考えてみてください。避妊手術を施すことで、発生率をかなり抑えることができるのです。
また他の病気に関しては、なんといっても早期発見が唯一できることだといっても過言ではないでしょう。
病気によっては初期段階で発見できないものもありますが、日常的に愛犬の身体を丁寧に触っていれば、しこりに気付ける場合もあるでしょう。
そして、発見したしこりがどんな状態であっても、早めに獣医さんに相談をしてください。
紹介してきた病気の他にも、しこりを伴う病気はあります。例えば繊維肉腫などもそうですが、見た目で良性・悪性の判断はつきませんし、確定診断には精密な検査が必要不可欠です。手遅れの状態になって後悔しないためにも、必ず一度は動物病院を受診しましょう。
まとめ
しこりにはさまざまな種類があり、またその病気の原因も多数存在します。
紹介してきた通り、見た目やしこりの状態だけでは、良性・悪性の判断はできません。たかがしこりと軽く考えるのは間違いだといえるでしょう。
悪性腫瘍の可能性が捨てきれない限り、早急に獣医師に相談することが最もすすめられます。
ペットの健康を守るのは飼い主さんの努めの一つです。悪性腫瘍にとっては早期発見が第一ですし、受診して問題なければ「良かった」と安心すればよいのです。
発見が遅れて後悔しないように、気軽に動物病院へ相談するようにしましょう。
– おすすめ記事 –
・【獣医師監修】愛犬が癌になってしまったら?適切な対処法の選び方 |
・【獣医師監修】犬のアトピー性皮膚炎とは?なりやすい犬種や症状、治療法など |
・【獣医師監修】愛犬の体にできもの発見!皮膚の病気と肌トラブルの対策方法 |
・【獣医師監修】犬は花粉症で皮膚炎になる?!花粉対策にはまず静電気対策から! |