【獣医師監修】犬の膀胱炎を甘く見てはいけない!症状、原因から治療法や予防法まで

2021.06.28

【獣医師監修】犬の膀胱炎を甘く見てはいけない!症状、原因から治療法や予防法まで

犬にとっても、膀胱炎は辛い病気です。経験したことがある方は、その辛さをご存じでしょう。膀胱炎は、尿を溜める袋である膀胱に炎症が起きる病気です。原因としては、主に細菌感染、尿結石、腫瘍、外傷などが挙げられます。再発しやすい病気でもあり、慢性化すると他の病気を引き起こすこともあるので、甘く見ないようにしましょう。今回は、犬の膀胱炎について、症状や原因、治療法や予防法をまとめて解説します。

犬の膀胱炎とは

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膀胱は、尿を一時的に溜める袋状の器官です。左右の腎臓から尿管を通して尿を受け取り、尿道を通して体外に排出します。
膀胱炎とは、その名の通り、膀胱に炎症が起きた状態です。

発症の仕方によって、急性と慢性があります。急性症状を放置して慢性化すると、腎盂腎炎や結石症などの合併症を引き起こすこともあります。
膀胱炎は、犬の泌尿器系疾患の中でもかかりやすい病気で、一度完治しても再発を繰り返すことも多いです。自然治癒はしないので、症状が出たら重症化する前に、早めに獣医師さんに相談してください。

◆なりやすい犬の特徴

オスよりメスのほうが、膀胱炎になりやすい傾向があります。
これは、後述の細菌性の場合で、尿道が太く短いうえ、肛門と尿道口が近く、また腰を落とす排尿姿勢から地面と接触しやすいため、細菌が膀胱まで到達しやすいからです。

また、マナーベルトをしている子や、オムツを着けているシニア犬も、細菌性の膀胱炎になりやすいです。

◆かかりやすい犬種

尿路結石ができやすい犬種は、膀胱炎にかかりやすい傾向があります。

結石の多くはストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)で、ミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリア、プードル、コッカースパニエル、ビションフリーゼが好発犬種です。
シュウ酸カルシウム結石の場合、ストルバイト結石の好発犬種のほか、シーズーなどで発症が多いようです。

割合は少ないですが、尿酸アンモニウム結石やシスチン結石、ケイ酸結石もあります。
尿酸アンモニウム結石の場合は、遺伝的になりやすいといわれるダルメシアンのほか、ヨークシャーテリア、ミニチュアシュナウザー、ペキニーズが好発犬種とされます。

シスチン結石はダックスフント、ヨークシャーテリアに、ケイ酸結石はジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーといった犬種および中年齢(4~9歳)のオスに多いです。

一方、細菌性の場合、全ての犬種に発症の可能性がありますが、統計的に、他の犬種と比べて、シベリアンハスキー、ダックスフント、トイプードル、ラブラドールレトリバーで発症リスクが高いと言われています。

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「結石症」という尿路疾患をご存知でしょうか。寒い季節になると、愛犬の結石症に悩まされる飼い主さんが増えてきます。気付かずに放っておくと、大切な愛犬の命を奪ってしまうこともある、とても恐ろしい病気です。また、一度発症してしまうと再発しやすいので、治療・予防をしっかりおこなわなければなりません。 結石症にならないためには、どのようなことに気を付けていけばいいのでしょうか。こちらでは、愛犬の結石症の予防方法についてお伝えしていきます。

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◆なりやすい季節

秋から冬にかけての寒い時期は、膀胱炎で動物病院を受診する犬が増える傾向があるそうです。
飲水量が減り、トイレの回数が減ることで、細菌が十分に排出できないほか、尿が濃縮されやすく、結石ができやすくなるためです。


犬の膀胱炎の症状

下記のような症状がある場合、膀胱炎の可能性があるので、なるべく早く動物病院を受診しましょう。

軽度の場合の症状は排尿に関するものですが、重篤化すると食欲不振などの症状が現れます。
ただし、細菌性の場合、80%程度は症状が現れません。

◆頻尿

おしっこの回数は増えますが、1回あたりの尿量は少なくなります。

◆おしっこが全く出ない

排尿の姿勢を取るのにおしっこが全く出ていない場合は、結石が尿道を塞いでいる恐れがあります。
かなり危険な状態なので、すぐに病院に連れていきましょう。

◆残尿感

おしっこがまだあるような残尿感から、トイレに座ったまま動かなくなります。

◆血尿

炎症が進んだり、粘膜に傷がついたりしている場合、血が混じり、ピンク色や赤色の尿になることがあります。初期は、色が濃くなったように感じたり、オレンジや赤っぽく見えたりする程度で、気づきにくいです。
また、膿が混じって濁った尿が出る場合もあります。

◆尿の臭い

尿には、もともとアンモニウム臭がありますが、膀胱炎になると、いつもと違う臭いがします。
特に、ツンとした鼻につくような臭いがする場合は、要注意です。

◆排尿痛

排尿時の痛みから、「キャン!」と鳴いたり、震えたりすることがあります。排尿に時間がかかる場合も、痛くてなかなかおしっこを出せないのかもしれません。
また、痛みや痒み、臭いがある場所を舐める犬の習性から、外陰部を執拗に舐める場合もあります。

◆尿漏れ

おしっこを終えた後も、尿が垂れていることがあります。

◆食欲不振

症状が重篤化すると、食欲不振になったり元気が無くなったりします。


犬の膀胱炎の原因

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膀胱炎の原因は主に以下の通りですが、これらが複合的に起こる場合もあるので、注意が必要です。

◆細菌性

膀胱の中は基本的に無菌状態で、いくつかの方法によって細菌感染を防いでいます。

膀胱粘膜の表面には、細菌の付着を防止する働きのある「グリコサミノグリカン」というたんぱく質があります。
尿そのものが体液より濃く、浸透圧が高いため、細菌の増殖を抑制しています。

さらに、尿を勢いよく排出することで、尿道や膀胱内の細菌を洗い出します。

これらの細菌感染を防ぐ機能が低下すると、尿道から侵入した細菌が増殖して、膀胱炎を引き起こします。
原因となる細菌は、腸内細菌である大腸菌やブドウ球菌などが多いです。

約10頭に1頭の犬が、細菌性の膀胱炎を生涯に一度は発症するといわれています。

水分不足

摂取する水分量が少ないと尿の量が少なくなり、尿の量が少ないと膀胱に溜めている時間が長くなるため、細菌が増殖する時間が生じます。

排せつを我慢する

散歩中にしか排泄しない犬の場合、散歩回数が減少すると排尿回数が減少し、膀胱に尿を溜めている時間が長くなり、細菌が増殖しやすくなります。

◆結石

膀胱結石ができていると、膀胱が収縮して尿を排出する際に壁となり、全ての尿を排出しきれなくなることがあり、膀胱内に残った尿に細菌が増殖します。

また、結石が膀胱の粘膜を傷つけることで、炎症を起こしたり、細菌が付着しやすくなることから感染しやすくなったりします。

◆他の病気によるもの

膀胱炎の原因となる病気としては、腫瘍やオスの前立腺炎、糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などが挙げられます。

これらの潜在的な疾患がある場合、尿が細菌感染を起こしやすくなり、膀胱炎につながります。
糖尿病では免疫力の低下や尿糖のため、慢性腎臓病やクッシング症候群では、免疫力が低下して尿が薄くなることで細菌が増殖しやすくなります。

膀胱腫瘍の場合、物理的に排尿障害が起こり、膀胱炎になる場合もあります。

◆外傷

お腹を強く蹴られた、交通事故に遭ったなど、外部からの衝撃で直接膀胱が傷ついたことが原因で、膀胱が炎症を起こすこともあります。

このような強い衝撃を受けてしまった場合には、外傷がなくても、膀胱破裂やその他の臓器の破裂など、内傷がある可能性があります。
血尿などの症状が出る前に、動物病院で診察を受けましょう。

◆ストレス

ストレスによって免疫力が低下し、細菌に感染しやすくなって、膀胱炎を発症することがあります。

繊細な子の場合、トイレの位置が変わったなどの些細な環境の変化により、それまでできていた排せつがうまくいかなくなることがあります。

また、お留守番が長かったり、運動が十分でなかったりすることで、ストレスが溜まる場合もあります。
内臓疾患のストレスが、膀胱炎につながることも少なくありません。

◆先天性の異常

膀胱の構造の異常や、尿道が短い、外陰部が皮膚で覆われていて尿が付着して炎症を起こす場合など、生まれつきの異常が原因となる場合もあります。


犬の膀胱炎の治療法

◆投薬

細菌性の場合、原因となっている細菌に効く抗生剤と、炎症を鎮めるための消炎剤を投与することが一般的です。

投薬期間は2~3週間ほどで、定期的に検査を行って、細菌が完全にいなくなるまで続けます。

症状が出なくなったからと、飼い主さんの自己判断で薬をやめたり、診察を受けなかったりすると、再発する可能性があります。
再発を繰り返すと、膀胱がんの発症率を高めてしまうこともあるので、必ず、獣医師さんの指示通りの期間投薬を続け、定期的に診察・検査を受けてください。

抗生物質を投与しても改善が見られない場合は、薬が合っていない場合があるので、獣医師さんに伝えて、よく相談しましょう。

何度も再発を繰り返して慢性化している場合には、結石や腫瘍、内臓疾患、皮膚炎などから発症している場合もあるため、原因となる基礎疾患の治療を同時に行います。

◆食事療法

ストルバイト結石の場合、療法食によって溶解させることができます。獣医師さんが、犬の状態や症状から選んでくれた療法食を与えましょう。

再発のリスクが高いため、療法食は生涯続けることになります。

◆手術

シュウ酸カルシウム結石は、療法食では溶解させることができないため、結石を摘出する手術が必要です。

また、腫瘍による場合は、悪性の移行上皮がんである可能性が高く、外科手術や抗がん剤投与が行われます。

術後は、獣医師の指示に従って、食事内容を整え、手術跡の処置もしてあげましょう。
手術が必要な膀胱炎は、再発の可能性が高いです。定期的に通院して、検診を受けることをおすすめします。

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犬の膀胱炎の予防法

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◆水分補給をさせる

十分に水分を摂取させて、排尿を促進することが不可欠です。

水皿を増やし、頻繁に新鮮な水に交換しましょう。ミネラルウォーターは、ミネラルの含有量が高く、結石を作る原因となるので、与えないようにしてください。
飲水量が増えない場合、ウェットフードを取り入れたり、ドライフードをふやかしたりして、水分摂取量を増やします。

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◆トイレを我慢させない

トイレを我慢させないことも大切です。おしっこを我慢する時間が長いと、膀胱内で細菌が繁殖しやすいからです。

犬は、きれい好きなので、トイレが汚れていると排せつを我慢することがあります。また、散歩でしか排泄をしない子の場合は、散歩の回数や時間を増やしましょう。
散歩をすると活動性が上がり、排尿回数が増えて、細菌の排出が促されます。

◆食事管理を行う

太っていると犬も動くのがおっくうになり、トイレに行きたがらなくなります。排せつを我慢すると、膀胱炎のリスクが高まるので、愛犬の肥満には十分気をつけましょう。

ゴハンは必要な量を正確に量って、朝夕2回与えます。
あらかじめ1日分の量を量り取っておくと、ゴハンのたびに量る手間を省くことができます。

早食いの子には早食い防止の食器を使ったり、すぐにゴハンを欲しがる子には、ゴハンの回数を増やして空腹の時間を短くしたりするなどの工夫をするとよいでしょう。

◆陰部を清潔に保つ

排尿・排便のたびに、陰部をきれいにして清潔に保ちましょう。消毒液を使用すると常在菌も死んでしまうので、水道水で濡らした清潔なタオルで拭いてあげるとよいでしょう。

被毛の長い子の場合、陰部の被毛の剃毛も有効です。


まとめ

犬の膀胱炎の多くは、細菌の感染によるものですが、結石や腫瘍、他の病気や外傷が原因となる場合もあります。
また、これらの原因が複合的に関わっていることもあります。

膀胱炎の予防には、水分摂取量を増やす、排せつを我慢させない、肥満にさせない、陰部を清潔に保つことが有効です。
排せつを我慢させないために、室内でも排せつできるようにしておくことも大切です。

メスの場合、体の構造や排せつの姿勢によって、細菌性の膀胱炎になりやすいので、特に注意してあげましょう。

犬の膀胱炎は、珍しい病気ではないので、日頃から愛犬の排尿の様子や尿の状態をチェックしておき、少しでも変わったことがあったら、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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SHINO

SHINO

保護犬1頭と保護猫3匹が「同居人」。一番の関心事は、犬猫のことという「わんにゃんバカ」。健康に長生きしてもらって、一緒に楽しく暮らしたいと思っています。

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