【獣医師監修】マラセチアってどんな病気?症状や原因、予防法は??

2022.05.27

【獣医師監修】マラセチアってどんな病気?症状や原因、予防法は??

犬のマラセチアという病気をご存知でしょうか?犬の皮膚炎の一つとして知られており、皮膚に様々な症状をもたらす病気です。今回はこのマラセチアについて、どのような病気なのか、何が原因なのか、またその症状などについて注目していきましょう。治療法や予防方法、かかりやすい犬種などにも触れていきますので、是非参考にしてみてください。

マラセチアってどんな病気?

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マラセチア皮膚炎(脂漏性皮膚炎)という、犬の皮膚に起こる病気があります。これは、皮膚の上でマラセチアが過剰に増殖することで、べたつき・臭い・赤みなどの様々な皮膚症状を起こすものです。
特に高温多湿の季節に悪化する傾向があり、さらにアトピー・食事アレルギー・内分泌障害・角化異常・代謝異常などの基礎疾患がある場合などに、マラセチアの過剰な増殖が起こるといわれています。
マラセチアは宿主特異性が高い菌です。そのため犬同士でマラセチア皮膚炎が感染することはなく、ヒトにも知られるマラセチア症ですが、常在するマラセチアの種類が異なるために、犬からヒトへ感染することもないようです。
ではそもそもマラセチアというのがどういった存在なのか、詳しく紹介していきましょう。

◆マラセチアって何?

マラセチアとは、健康な犬の皮膚・外耳道などに常在しているカビの仲間で、顕微鏡で見るとピーナッツ型をした直径3~5umの非常に小さな酵母様真菌の一種です。
現在までに14種の菌が報告されていますが、その中で犬猫の皮膚病として問題になるのは、「マラセチア パチデルマティス(Malassezia pachydermatis)」という種類です。この菌種は宿主域が広いので、陸上哺乳類に限らず海洋生物など幅広い動物からも分離されているそうですよ。
常在菌ではありますが前述したように、これが皮膚の上で過剰に増殖することで様々な症状が現れる皮膚病を発症してしまいます。
マラセチアは皮膚から分泌される皮脂を餌にして生活しており、通常の量であれば皮膚・耳にトラブルを引き起こすことはありません。しかし、皮膚のコンディションが悪くなる、皮脂の分泌量が増えるなどの状態がきっかけとなり増殖してしまうのです。この際、皮脂の増加に伴って体臭が強くなる場合があります。
そして、マラセチアが分泌する脂肪分解酵素や、皮脂の分解によって生じた脂肪酸が皮膚に浸透して炎症を起こすために、マラセチアが増えた部分は皮膚が赤くなって痒みが出てきます。
それでは次に、マラセチアによって現れる症状についてもう少し詳しく紹介していきましょう。


マラセチアの症状

マラセチア皮膚炎の初期症状は、皮膚の赤み・べたつきがメインとなります。この時点では、身体の臭いをそこまで感じることはないでしょう。症状が慢性化してくると、以下の症状が見られるようになります。

◎色素沈着…皮膚が黒くなってくる状態
◎苔癬化…マラセチアからの刺激を少なくするため皮膚が分厚くなりゴワゴワしてくる状態

こうなると皮膚のべたつきが強くなり、フケが増え、脂漏臭と呼ばれる酸っぱく油っぽい臭いが出てきます。
またマラセチア外耳炎では、茶色から黒っぽい耳垢・独特の異臭・外耳道の肥厚などの症状が見られるでしょう。強い痒みが発生するため、愛犬が患部を掻き続けてしまいます。その結果、皮膚を傷付けて二次的に細菌感染を起こすなど、様々な症状を併発する可能性が考えられるのです。

◆好発部位はある?

マラセチアは皮脂を好むので、皮脂が溜まりやすいところに皮膚炎が起きやすいといわれています。
マラセチア性皮膚炎の好発部位としては、耳介の内側・口唇・首・脇(脇の下)・指の間・爪の周り・腹部・太腿の内側(内股)・陰部周辺などが挙げられます。
顔にヒダの多い犬種(フレンチブルドッグやパグなど)の場合、ヒダの間の擦れる部分にもマラセチア性皮膚炎が好発するようです。該当犬種の飼い主さんは、特にこの部分にも注意することが重要ですね。


マラセチアになる原因は?

マラセチア皮膚炎の原因はマラセチアの増殖が原因だと解説してきましたが、その増殖が起こる理由は先天的なものと後天的なものに分けられます。
まず先天的な要因として挙げられるのは、本態性脂漏症です。
生まれつき皮脂分泌の多い状態のワンちゃんがなりやすく、若齢から発症します。また加齢に伴って悪化する傾向にあるのも特徴の一つだといえるでしょう。
若齢では外耳炎として始まることが多く、これは皮膚よりも再発を繰り返すといわれています。そしてその後、身体の各部位に症状が拡大していく場合が多いようです。
次に後天的な要因ですが、主に挙げられるのは以下の症状です。

◎アレルギー性皮膚炎(犬アトピー性皮膚炎・食物アレルギーなど)
◎内分泌疾患(甲状腺機能低下症・副腎皮質機能亢進症など)
◎後天性の角化異常症など

これらの要因の中でも、犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの症状は、皮膚の痒みを起こす疾患なので、皮膚の病変が出る分布が非常に似ています。しっかりと検査をして、鑑別する必要があるでしょう。
マラセチア皮膚炎の管理ができておらず、アトピー性皮膚炎と診断されてステロイド・アポキルなどを処方されても痒みが収まらない!という症例もよくあるようです。
また、内分泌疾患・後天性角化異常症では、マラセチア皮膚炎の管理をすることで痒みの軽減が期待できるのですが、改善後の維持管理としては、原因である疾患の治療を並行して実施する必要があります。

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マラセチアにかかりやすい犬種

基本的にマラセチア皮膚炎は、どの犬種に対しても発症する可能性がある病気です。
ただし、健康な皮膚環境の元では特に問題を起こさない常在菌とはいっても、体質や病気などの背景となる疾患に併発することが多くみられるのです。このことから、体質や持病によって好発すると考えられる犬種が絞られてきます。
マラセチア皮膚炎を好発しやすい犬種としてまず挙げられるのは、身体が皮脂でベタベタしやすい脂漏症を持っているワンちゃんです。さらにこれらの犬種には、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーがみられる場合も多いので、皮膚炎の悪化を助長する原因ともなります。
病気との関連でいうと、甲状腺機能低下症・クッシング症候群などの内分泌疾患を持っているワンちゃんが挙げられます。これらの病気によって免疫機能や代謝が衰えるため、マラセチアの増殖を増長させることに繋がってしまうわけです。基礎となる病気が良化することで皮膚炎も落ち着きますが、脂漏症・難治性のアトピー体質に至っては、皮膚に対して長期に渡るケアが必要となることも少なくないでしょう。
また、外耳炎は特に垂れ耳の犬に多い傾向にあるともいわれており、これは立ち耳の犬種よりも垂れ耳の犬種の方が耳垢の分泌量が多いことが一因しています。
それでは、実際にマラセチア皮膚炎の好発犬種として挙げられる犬種例を挙げていきます。愛犬が該当犬種に当たるかどうか確認してみてくださいね。

◆マラセチア皮膚炎の好発犬種とされる種類

本態性脂漏症をもつ犬種が、マラセチア皮膚炎を発症しやすいと説明してきましたが、実際にその可能性の高い犬種例をチェックしていきましょう。

●アメリカン・コッカー・スパニエル
●ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア
●ダックスフンド
●バセットハウンド
●ビーグル
●シーズー
●イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
●ラブラドール・レトリーバー  …など。

さらに近年の日本においては、以下の犬種も好発犬種として挙げられるようになりました。

●トイ・プードル
●チワワ
●マルチーズ
●柴犬
●シェットランド・シープドッグ
●フレンチ・ブルドッグ
●パグ
●ジャーマン・シェパード・ドッグ
●キャバリア・キングチャールズ・スパニエル  …など。


マラセチアの治療法・予防方法

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愛犬の健康面・身体に異常を感じたら、できるだけ早く動物病院を来院することがすすめられます。皮膚の疾患は犬にとって起きやすいものです。その中の一つとして、マラセチア皮膚炎があるということを頭に入れておいてください。診断を受けたら、その病気に適した診療が始まります。
まずはマラセチア皮膚炎のための検査・診断方法の一例から、そして治療・予防法までを紹介していきましょう。

◆検査と診断方法

マラセチア皮膚炎が疑われる場合の検査方法には、スタンプ検査とテープストリッピングというものがあります。
スタンプ検査とはスライドグラスを直接皮膚に押し当てる押捺塗抹検査のことで、テープストリッピングとはセロハンテープで皮膚表面の細胞を採取するテープ貼り付け試験のことです。
いずれの検査においても、マラセチア皮膚炎の症状と合致する部分からマラセチアが一つでも検出された場合には、マラセチア皮膚炎を疑っての治療が進められます。

◆治療法

マラセチア皮膚炎の治療には、マラセチアの数を減らすことが最も重要だとされており、治療法は全身療法と外用療法の二つに大きく分けられます。
全身療法では主に抗真菌剤の内服で治療を行いますが、マラセチアに対する抗真菌剤は、長時間使用すると肝臓の数値が上昇する場合があるため、使用前・使用期間中に血液検査などで肝臓の数値をモニタリングする必要があるそうです。
外用療法には、抗真菌薬のシャンプーを使用した薬浴治療と塗り薬を使用する2種類があり、2%クロルヘキシジン・ミコナゾールが配合されたシャンプーで週2回3週間の洗浄を行うことにより、皮膚炎の改善が認められたと報告されています。塗り薬の場合は、マラセチアが増殖している部分に局所的に適用するのが非常に効果的です。
尚、マラセチア外耳炎の場合には、耳洗浄や、抗真菌薬(点耳薬・内服薬)の投与を行うでしょう。痒みが強ければ、抗炎症剤を使うケースも珍しくありません。
アトピー・アレルギーなどの基礎疾患があるワンちゃんには、それらに対する適切な治療が併せて必要となります。治療期間は病状・基礎疾患によって様々なので、数週間で症状の改善がみられることもあれば、治療後に何度も再発したり、改善が見られにくいこともあるでしょう。

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◆予防方法

シャンプー・内服治療などでマラセチアが一旦減少して皮膚炎が治ったあとは、再発しないように対策をとることがとても重要です。
治療時のシャンプー頻度を週1回程度に減らし、皮膚のコンディションを維持していくことを心掛けましょう。
シャンプーだけでは、フケ・べたつき・油っぽい臭いなどが出てきてしまう場合には、ローションなどを使用して日々のスキンケアを合わせて行うのがおすすめです。
マラセチアの栄養源が皮脂であること、高温多湿の環境で増えやすいことをしっかり覚えておき、定期的なシャンプーなどで皮膚・被毛を衛生的に保ちましょう。
また、マラセチアが何の原因もなく突然増殖して悪さをすることは少なく、ほとんどの場合に基礎となる原因が存在します。それが体質による脂性であれば皮脂のコントロールが必要であり、ホルモンバランスの乱れであれば薬などを利用してそれを整える必要があります。
愛犬の状態に合わせた予防法をとることが大切なのです。

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まとめ

マラセチア皮膚炎は放置すると、日常生活にも支障をきたすほど犬にとっては辛い症状をもたらす可能性のある病気の一つです。痒みによって掻きむしってしまえば、脱毛に繋がる場合もありますし、様々な二次的症状を併発する恐れもあります。
気になる状況がみられた場合は、すぐに獣医師に相談してみてください。かかりつけ先の診療時間などは常に頭に入れておきましょう。
また、類似した症状をもたらす皮膚病との誤診もあり得るため、愛犬が元々肌への刺激に弱く皮膚疾患を持っているようであれば、皮膚科的に強い獣医師を探しておくとよいでしょう。
実際にマラセチアに悩まされた飼い主さんの体験記事も、とても参考になります。MENUや目次などをみると実践した予防法の感想なども簡単にみつけることができるかもしれませんね。
マラセチア皮膚炎は、治療・再発予防が非常に重要な皮膚病です。
愛犬の健康を守るためにも、毎日コンディションを確認し体調管理に努めること、適切なお手入れを怠らないことを徹底しましょう。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
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壱子

壱子

子供の頃から犬が大好きです。現在はキャバリア4匹と賑やかな生活をしています。愛犬家の皆さんに役立つ情報を紹介しつつ、私自身も更に知識を深めていけたら思っています。よろしくお願いいたします!

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