【獣医師監修】犬の鼻の色が変わった? 鼻の色が変わったり薄くなったりしたときの原因と注意点

2023.06.10

【獣医師監修】犬の鼻の色が変わった? 鼻の色が変わったり薄くなったりしたときの原因と注意点

愛犬の昔の写真と現在の姿とを見比べてみたり、愛犬の顔のお手入れを行ったりしたさいに「鼻の色が昔と変わった?」や「何だか鼻の色が薄くなった?」と不安に思われた経験のある飼い主さんは多いのではないでしょうか。 今回は犬の鼻の色に変化が起きたときの原因と注意点について解説していきたいと思います

犬の鼻の色は変わるのか?

犬の鼻

まず、結論から言ってしまうと犬の鼻の色が変わったり、薄くなったりすることはあります。
特にトイ・プードルやミニチュア・ダックスフンド、チワワなどの超小型犬、小型犬の飼い主さんが気にされることが多いようです。

ただ、鼻の色が変わる理由は生理的なものから病気の症状であるものまで様々なことが該当するため、よく愛犬の様子を観察して気になることがあればすぐに動物病院に相談することをおすすめします。

◆犬の鼻の色の種類

そもそも犬の鼻とは鼻先から目元にかけての「口吻部(こうふんぶ)」、いわゆる「マズル」と呼ばれる部分を示します。犬の鼻は犬種や同じ犬種でも個体差によって長さや形、色などの見た目に大きく違いがみられる部分でもあり、犬の種類の分け方の一つに「長頭種(ちょうとうしゅ)」、「中頭種(ちゅうとうしゅ)」、「短頭種(たんとうしゅ)」とありますが、これは鼻の長さを基準にしています。

鼻が長い長頭種にはコリーやダックスフンド、ジャーマン・シェパードドッグなどが挙げられる一方、鼻が短い短頭種にはフレンチブルドッグ、ペキニーズ、シーズーなどがそれぞれ主な犬種として挙げられます。長頭種と短頭種の間に位置しているのが中頭種となり、柴犬やトイ・プードル、ラブラドール・レトリバーなどが該当します。

犬の嗅覚は私たち人間と比べて数千倍から一億倍も優れており長頭種のほうが中頭種や短頭種よりも鼻が長い分、嗅覚も強い傾向にあります。

犬の鼻の色も長さと同じように犬種や個体によって黒色、こげ茶色、薄茶色、ピンク色、ピンクに黒いまだら模様など様々な色がありますが嗅覚に差はありません。


犬の鼻の色が変わる理由

では、犬の鼻の色が変わる理由として、どのようなことが考えられるでしょうか?一つひとつ詳しくご説明していこうと思います。

◆加齢による退色

私たち人間も年齢を重ねることで髪に白髪が増えることがありますが、これは主に黒色~褐色の元であるメラニン色素を生産する色素細胞のメラノサイトの働きが加齢などによって低下することで起こるといわれています。

犬も同じように加齢によってメラニン色素を作り出すメラノサイトの働きが低下することでメラニン色素が供給されずに鼻の色が退色していくことがあります。この場合は鼻の色が薄くなっていったりピンクになったりすることが多いようです。

◆遺伝的に色素が薄い

生まれたばかりの子犬のときには色が濃くても、成長するに伴って鼻の色が少しずつ薄くなっていくという現象が見られるならば、それは多くの場合もともと遺伝的に色素が薄かったことによるものと考えられます。

子犬が成犬へと育っていくことによって本来の鼻の色が明らかになってくるため、成長の証と捉えても良いでしょう。
 

◆栄養が偏っている

犬が摂る必要のある栄養素の中に「銅」というミネラルが存在しますが、銅はメラニン色素を作り出すために欠かせない成分の一つでもあります。よって何かしらの原因で体の中の銅が不足してしまうと、作られるメラニン色素が減少してしまい、その結果として鼻や毛の色などが薄くなっていくことがあります。

日頃から「総合栄養食」と記載されたドックフードを主食として与えている場合、起こる可能性は低いですが、愛犬におやつをメインに与えている、独自のレシピで手作り食を与えているなどの飼い主さんは、必要な栄養素が摂れていない可能性があるため注意が必要かもしれません。ただ、注意すべき点は銅が不足しているからといって逆に摂りすぎてしまうと肝臓の病気になってしまう可能性があるということです。

よって、もし鼻の色が薄くなる原因として栄養バランスの乱れが思い当たったとしても飼い主さんだけで判断することはせずに動物病院へ相談するようにしましょう。

◆鼻を怪我した

もし、愛犬の鼻全体ではなく一部分だけ色が薄くなっていたり、色素が抜けていたりするようならばそれは怪我によるもののせいかもしれません。

ケージの中で暴れたり無理に出ようとしたりして鼻をケージの柵でこすったり、何か尖ったもの臭いをかごうとして鼻を傷つけたりすると、その部分が治ってもそこだけ色素が抜けてしまうことがあります。

傷の深さや怪我をした後の対応などにもよりますが、時間が経つとともにゆっくりと鼻の色が元に戻ることもあれば、ずっとその状態のままの場合もあります。

◆ウインターノーズのため

冬になると鼻の色が薄くなるようならば、それは「ウインターノーズ」または「スノーノーズ」と呼ばれる現象によるものである可能性があります。

メラノサイトは紫外線からの刺激によってメラニンを生成していますが、冬は紫外線の量が減る時期となるため犬の体内で生産されるメラニンの量が減ることによって鼻の色が薄くなるのではと考えられています。
ただ、あくまで推測であり、はっきりした原因はわかっていません。犬によっては春になるとまた鼻の色が回復してくることもありますが、なかには退色したまま、春になっても色が元に戻らないケースもあります。

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犬の鼻の色が変わる注意する病気

鼻の色が変わる病気

 
ここまで犬の鼻の色が変わる原因として「加齢」や「遺伝」などをご紹介してきましたが、場合によっては病気の症状の一つであるかもしれません。

では、鼻の色が変わる症状が見られる病気には、どのようなものがあるのでしょうか?

◆ブドウ膜皮膚症候群

犬のブドウ膜皮膚症候群は特に秋田犬での報告が多いことから、秋田犬が高頻度に保有する遺伝子と関連しているのではないかと考えられています。ただ、シベリアン・ハスキーやサモエドなどの他の犬種でも見られることがあるため、注意は必要です。

本来ならば細菌やウイルスなどの異物から体を守ってくれる働きである免疫システムが、何かしらの異常によりメラノサイトを攻撃してしまう自己免疫疾患であり、主に眼に存在する「ブドウ膜」というメラニン色素を豊富に含む組織に炎症が起こります。

そのため症状としては両目、まれに片目にブドウ膜炎が見られ、症状が進行すると緑内障や白内障になり、最悪の場合は視力を失ってしまうという危険性があります。

また、眼の異常が起こってから皮膚にも症状が発現することが多く、眼の周囲や口唇、鼻の周りなどの色素が無くなってしまい色が薄くなる、白毛になるなどの症状が見られます。

治療方法としてはステロイドの点眼や、ステロイド剤、免疫抑制剤の内服投与などを行いますが、完治は難しいと考えられており、生涯にわたって治療管理が必要となります。

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◆円板状エリテマトーデス

エリテマトーデスとは紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)とも呼ばれ、免疫の異常によって全身または皮膚に炎症が起こる自己免疫疾患を意味します。皮膚のみに症状が見られるものを皮膚エリテマトーデスといいますが、さらに細かく円板状(えんばんじょう)エリテマトーデス、水疱性(すいほうせい)エリテマトーデス、剥脱性(はくだつせい)エリテマトーデスの三つに分類することができます。

円板状エリテマトーデスは最もよくみられる皮膚エリテマトーデスであり、主にジャーマン・シェパード・ドッグやコリー、シェットランド・シープドッグでの報告が多いといわれています。

主に鼻先や鼻筋に色素が抜ける、かさぶた、潰瘍(かいよう)などの症状が見られますが、場合によっては目の周囲や肉球に症状が現れることもあります。

治療方法としては免疫抑制剤の外用薬を患部に塗布することや内服薬の投与などの治療に加えて、日光が病気を悪化させる恐れがあるため、可能な限り日光を避けることが推奨されます。

◆天疱瘡

何かしらの異常により免疫が皮膚の細胞と細胞をつなぎとめているタンパク質を攻撃することにより、細胞同士が離れてしまい皮膚に異常が見られる自己免疫疾患を天疱瘡(てんぽうそう)といいます。

夏に発症が多く、また症状が悪化する傾向が見られることから紫外線の関与が、他にも遺伝的要因やアレルギー、細菌、ウイルス感染なども原因として疑われていますが、はっきりとしたことは解明されていません。

天疱瘡は病変が見られる部位や症状などによって、主に四種類に分けることができますが、その中でも落葉性天疱瘡(らくようせいてんぽうそう)において、まぶたや鼻筋などに炎症やそれに伴うかさぶた、脱毛などが認められます。また、鼻の色がピンクに変わることもあるため注意が必要です。

基本的にはステロイドや免疫抑制剤の使用によって治療を行いますが、天疱瘡は一旦発症してしまうと完治が難しい病気のため、長期間もしくは生涯の治療が必要となります。


まとめ

犬の鼻の色が薄くなったり、ピンクになったりする原因としては心配のない「遺伝」、「加齢」の場合もあれば飼い主さんが注意することによって防ぐことのできる「栄養不足」や「鼻の怪我」などがあります。

また、病気の症状の一つである可能性もあるため、気になることがあれば動物病院に相談してくださいね。

※こちらの記事は、獣医師監修のもと掲載しております※
●記事監修
drogura__large  コジマ動物病院 獣医師

ペットの専門店コジマに併設する動物病院。全国に15医院を展開。内科、外科、整形外科、外科手術、アニマルドッグ(健康診断)など、幅広くペットの診療を行っている。

動物病院事業本部長である小椋功獣医師は、麻布大学獣医学部獣医学科卒で、現在は株式会社コジマ常務取締役も務める。小児内科、外科に関しては30年以上の経歴を持ち、幼齢動物の予防医療や店舗内での管理も自らの経験で手掛けている。
https://pets-kojima.com/hospital/

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