1.犬のシミとは
2.犬のシミの原因
2-1.生まれつき
2-2.物理的な刺激
2-3.加齢
2-4.皮膚炎
2-5.腫瘍性疾患
2-6.内分泌疾患
3.危険な犬のシミとは
3-1.シミを舐めたり噛んだりしている
3-2.シミが急速に大きくなる
3-3.シミから出血している
犬のシミとは
シミとは、肌に黒色メラニンが過剰に蓄積することで、周りの皮膚よりも茶色や黒色に変色する状態です。
表皮にあるメラノサイトという、メラニンを産生する細胞の働きが活発になって黒色メラニンが蓄積しやすくなります。
人間では主に紫外線や老化によって増えてきます。全身が毛で覆われている犬も、様々な理由でシミができます。
生まれつきシミを持っている犬もいれば、加齢とともにシミができる犬や、病気が原因でシミができる犬もいます。以下で犬のシミの原因について解説します。
犬のシミの原因
◆生まれつき
生まれつきシミがある犬は決して珍しくありません。元々、犬の皮膚の一部に黒色メラニンが多く蓄積していて生まれた時から皮膚が一部黒ずんでいる状態です。また、生まれついての体質で成長とともにシミが増えやすい犬もいます。これらは基本的に病気であることは少なく、犬自身の体質の問題なので特に治療の必要もありません。
◆物理的な刺激
外部からの物理的な刺激もシミができる原因となります。メラノサイトが刺激を受けることでメラニンの産生が活発になり、シミができやすくなるからです。
犬の皮膚に異常がなくても、精神的なストレスや癖などで、犬が同じ場所をずっと舐めたり噛んだりすると、その場所だけ皮膚が黒く変色することがよくあります。
また、大型犬では、大きな体を支えるために、肘の皮膚が硬くなり、皮膚が黒ずんでしまうこともよく見られます。こういったシミも基本的に危険なものではありませんが、腫れや出血などが見られる場合は動物病院で診てもらいましょう。
◆加齢
通常、メラニンは産生されるたびに皮膚のターンオーバーにより排出されています。しかし、人間の場合、加齢に伴い、皮膚のターンオーバーが遅くなることがわかっています。この結果、メラニンが皮膚に蓄積しやすくなり、シミができやすくなると考えられています。
犬において、加齢に伴うシミの増加は詳しく研究されていませんが、人間と同様のことが起こると考えられます。実際に、健康な犬でも加齢とともにシミが出てくることは多いです。加齢に伴うシミは人間の場合と同様、健康面において問題になることはありません。
◆皮膚炎
皮膚が炎症を起こすと、メラノサイトが刺激を受け、メラニンが多く産生されてしまいます。このように、炎症の後にもシミができやすくなります。
犬で起こる主な皮膚炎には以下のようなものがあります。
犬アトピー性皮膚炎
食物アレルギー
ノミアレルギー性皮膚炎
膿皮症
疥癬症
毛包虫症
皮膚糸状菌症
マラセチア性皮膚炎
皮膚炎の原因が何であれ、炎症が起こることで、皮膚に色素沈着が起こりやすくなります。また、かゆみによって犬自身が皮膚を掻いたり噛んだりすることで、皮膚に物理的な刺激が加わり、シミができやすくなります。
皮膚炎を起こしていた場所が色素沈着を起こして黒く変色することは非常によく起こりますので、特に心配はいりませんが、犬自身が気にしていたり、赤く腫れたり盛り上がったりしている場合は、炎症がまだ落ち着いていないので、治療を受けましょう。
◆腫瘍性疾患
愛犬にシミができた場合に飼い主さんの多くが心配されるのが「悪い腫瘍なのではないか」ということでしょう。
犬にできるシミは基本的に問題ない場合が多いですが、中には腫瘍性疾患が原因のものもあります。
犬の腫瘍性疾患でシミの原因となるものは主に以下の2つになります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
良性黒色腫(メラノサイトーマ)
いずれの病気もメラニンを産生するメラノサイトが腫瘍となったものです。
メラノーマは名前の通り悪性度の高い腫瘍で、急速に大きくなる上に、リンパ節や肺へ転移することが多く、早めの診断・切除が必要となります。中高齢の犬に発生しやすいですが、若齢犬での報告もあります。
犬のシミが盛り上がっていて「しこり」になっている場合や、そのしこりが急速に大きくなっている場合、出血が見られる場合などは要注意です。
このような場合は、メラノーマに限らず、悪性の腫瘍であることが多いので、早めに動物病院を受診してください。
◆内分泌疾患
ホルモン異常を起こす内分泌疾患も犬のシミの原因となることが多いです。
代表的なものは以下になります。
甲状腺機能低下症
副腎皮質機能亢進症
副腎皮質機能低下症
性ホルモン失調症
こうした内分泌疾患は、シミ以外に体幹部の脱毛を伴ったり、飲水量が増えたり、元気・食欲が無くなったりといった全身の変化を伴うことが多いです。
愛犬の様子がいつもと異なる場合は、シミの相談も兼ねて動物病院を受診しておくと安心でしょう。
以上のように、犬にシミができる原因は実に様々です。
では、病気を心配した方が良い危険なシミと、生まれつきや加齢など様子を見ていいシミはどこが違うのでしょう?
危険な犬のシミとは
◆シミを舐めたり噛んだりしている
生まれついてのシミや加齢によるシミは、犬自身が気にすることはありません。
シミを犬が自分で舐めたり噛んだりして気にしている様子があれば病気のサインかもしれません。
皮膚病などで炎症が起こっていて、犬がかゆみや痛みから舐め続けてシミができている場合があります。
また、精神的なストレスにより、強迫行動として同じところを舐めてシミとなることもあります。
腫瘍ができていて、犬自身が気にしている場合もあるので、本人が気にして舐めたり噛んだりしている場合には一度動物病院で診察を受けて、皮膚病や腫瘍の心配が無いか調べてもらいましょう。
◆シミが急速に大きくなる
シミが急速に大きくなってきた場合も注意が必要です。
皮膚に限った話では無いですが、悪性の腫瘍の場合は大きくなるスピードが早いことが多いからです。
対処しないまま大きくなってしまうと、悪性腫瘍の場合は転移や浸潤が問題となります。また、切除する際にも大きく切る必要が出てくるので、シミが大きくなるスピードが早いようなら、早期に動物病院で診察を受けてください。
◆シミから出血している
シミから出血が見られる場合も要注意です。悪性腫瘍の可能性も考えられますし、悪い病気では無くても、出血場所から細菌感染などを起こす可能性があります。
出血が見られるようなら早急に獣医師に相談しましょう。
愛犬のシミを見つけた時の対処法
◆ノートや写真などに記録を残す
愛犬の身体にシミを見つけた場合、まず記録を取りましょう。特に以下の点に気をつけて記録すると良いです。
-
大きさ
場所
他の場所にもシミがないか
盛り上がってないか
犬自身が気にしているかどうか
急速に大きくなるシミは要注意ですので、シミを見つけた場合は後になって大きさを比較できるように記録しておきましょう。場所も記録しておくことで、次にチェックする時や動物病院を受診する時に探す手間が省けます。毛で隠れてしまうものだと、体の左右どちら側にあったのか、意外と忘れてしまうものですので、ノートに取る・写真を撮影するなどして記録に残しておきましょう。
また、他の場所にもシミができていないか、盛り上がっていないか、犬自身が気にしていないか、という点も気をつけて記録しておきましょう。
最近はスマートフォンの普及で、多くの方がキレイな写真を手軽に撮影できるので、画像として残しておくと良いです。その際、シミをできるだけ近くから撮影するとともに、体のどの位置にあるのかわかるように、少し離れた位置からも撮影しておくと良いでしょう。
◆他に変わった様子がないかチェックする
シミは健康でも体質や加齢に伴ってできますが、皮膚炎や内分泌異常などの病気が原因となる場合もあります。皮膚炎の場合は、皮膚をかゆがる場合が多いので、「体を搔いている様子がないか」「皮膚が赤くなっているところはないか」ということに注意しましょう。
内分泌疾患に関連してシミができている場合は、「食欲・元気がいつもと同じか」「飲水量が多くなっていないか」「呼吸が荒くないか」「毛が薄くないか」という点をチェックして、シミ以外に変わった様子がないかチェックすると良いです。
動物病院でシミの診察と一緒に健康診断を受けることもオススメです
まとめ
犬の皮膚にもシミができることが多く、原因として様々なことが考えられます。
生まれつきや加齢に伴うものなど、健康上特に問題とならない場合がとても多いです。また皮膚病などによる炎症の後にシミとして色素沈着が起こるケースも多いです。一方で、腫瘍、内分泌疾患など、皮膚に限らず全身の問題となり、場合によっては命に関わるケースもあります。
シミを見つけたら、他の場所にないかよく観察するとともに、写真を撮影するなどして、大きさや位置がわかるように記録を残しましょう。
シミが急速に大きくなったり、膨らんできたり、犬自身が気にして舐めたり噛んだりしている場合は、早めに動物病院で診察を受けてください。
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