1.犬が匂いを嗅ぐのはなぜ
1-1.匂いを嗅ぐのが好きな理由
1-2.匂いを嗅ぐのをやめさせるのは犬にとってストレス
2.犬が散歩中に匂いを嗅ぐ理由
2-1.情報を集めるため
2-2.ストレス発散をするため
犬が匂いを嗅ぐのはなぜ
◆匂いを嗅ぐのが好きな理由
犬が匂いを嗅ぐのが好きなのは、匂いから多くの情報を取り入れることができるからです。
犬の五感の中で最も発達しているのは嗅覚と言われています。その精度の高さは、人間の嗅覚の数千から1億倍という説まであるのです。
鼻が利くと聞くと、「人間が臭いと感じる匂いを犬が嗅いだら人間よりももっと臭く感じるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
人間が感じる匂いを何倍も強く感じる、遠くの匂いも感じ取ることができるというよりも、人間が感知できないレベルのわずかな匂いも感知できる、あらゆる種類の匂いを嗅ぎ分けることができるという表現が正しいとされています。
その能力の高さは「ダムの中に1滴垂らした匂いをも嗅ぎ分けることができる」と例えられるほどです。
逆に視覚は私たち人間ほどは発達しておらず、広い視野を持つものの、視力はそこまで良くありません。ものを立体的に捉えたり色を識別することは苦手といわれています。犬が対象物をじっくり観察しようろするとき、目で追うよりもまず匂いを嗅ぐのはこのためです。
つまり犬は、外界の情報を得るための手段として、多くの割合を嗅覚に頼っていることになるのです。
警察犬や災害救助犬などが匂いを辿って目的物を追跡するイメージがあるのも納得ですよね。
もちろん、この嗅覚の鋭さは探知以外にもあらゆる場面で役立っており、好奇心や警戒心をもったとき、相手が何者なのかを探るためのコミュニケーションツールとして非常に重要な役割を担っているのです。
犬が匂いを嗅ぐということは、そこに含まれたあらゆる情報を分析するという高度な能力を発揮しているということなのです。
◆匂いを嗅ぐのをやめさせるのは犬にとってストレス
前述したとおり、犬にとって匂いを嗅ぐことは、私たち人間が目でものを見ることと同等の意味を持っています。
嗅覚によって相手を知ったり、好き嫌いを判別したり、安全を確認したり、何かを探したり、あるいは匂いそのものを楽しんだり…。視覚がそれほど発達していない犬にとって、匂いを嗅ぐことを禁止されるのは私たち人間が目隠しをされるのと同じことで、ストレスを感じさせる行為です。
嗅ぎまわることで「臭いのかしら…」と心配になってしまう飼い主さんもいるかと思いますが、犬自身が安心するために匂いを確かめるという心理でもあるので、できる限り思う存分嗅がせてあげるようにするのが理想です。
犬が散歩中に匂いを嗅ぐ理由
◆情報を集めるため
匂いを嗅ぐのは情報収集の目的でもあります。犬がほかの犬のお尻の匂いを嗅いだり、散歩中にほかの犬がしたおしっこの匂いを嗅いだりする姿をよく見かけますよね。犬は匂いでマーキングする動物なので、周囲に「ここは僕の縄張りだぞ!」とアピールすることができるのです。そのため、散歩中に匂いを嗅ぐのは、生活圏内にいる犬の存在を確かめる目的があります。
もちろん、ほかの犬の匂い以外にも、空気中の匂いを嗅いだり見慣れないものの匂いを嗅いだりと、情報を集めて周囲の環境を把握し、安全を確かめている場合もあります。
いつもの散歩コースで匂いを嗅ぐのは、パトロール的な意味合いがあるといえるでしょう。
◆ストレス発散をするため
嗅覚から得た情報を分析するとき、犬は脳みそをフル回転させており、いわゆる「脳トレ」のような効果があるのです。
私たち人間が映画を観たり本を読んだりするのと同様に、犬も匂いに対してじっくり集中して思考しています。単純な情報収集だけでなく、頭を使って匂いの分析を楽しむことは、犬にとって大切なストレス発散になっているのです。
シニア犬になって視覚や聴覚が衰えても、最後まで残るのは嗅覚と言われています。体が不自由になってしまい運動ができなくても、嗅覚を使ってストレス発散させてあげられるのはうれしいことですよね。
昨今多く出回るようになった「ノーズワーク」と呼ばれる知育玩具では、嗅覚と頭を使って愛犬の特性を活かして遊ぶこともできます。脳に刺激を与えることは認知症の予防にもなるので、積極的に取り入れることをおすすめします。
犬が人間の匂いを嗅ぐ理由
犬は人間の匂いからも情報を得ることができます。帰宅時にお出迎えしてくれた犬が飼い主さんの匂いを嗅ぎまくるというシチュエーションは、多くの人が体験したことがあるのではないでしょうか。
「ほかの動物を触ってきた」「おいしいものを食べてきた」「知らない人の家にいた」など、犬はいつもと違う飼い主さんの匂いを知覚し、分析しているのです。
知らない人の匂いを嗅ぐ場合には、「この人はどんな人なんだろう?」と読み取る意図があるといえるでしょう。
その上、人間と古くから共に生活してきた犬は人間の匂いを嗅ぎ分けることが得意です。人間の汗に含まれる酢酸、足の裏などに含まれる吉草酸が、特に得意な成分です。飼い主さんの匂いを強く感じる成分なので、靴や靴下を嗅ぎたがるのは好意の表れといって良いでしょう。
たくさん嗅がれると「臭いのかしら…」と心配になってしまう飼い主さんもいるかと思いますが、より多くの情報を得たいという犬の心理からくるものなのでご安心ください。
また、近年の研究では、犬は匂いから人間の感情を読み取ることができるとも発表されています。
生物が発する「ケモシグナル」と呼ばれる化学的信号には犬の得意な匂いも含まれており、その中でもフェロモンの匂いを嗅ぎ分けることで、喜怒哀楽の感情を察知しているといわれています。
犬が人間の匂いを嗅ぐのは、その人への理解を深めるためといえます。
犬同士が匂いを嗅ぐ理由
犬同士がお尻の匂い嗅ぎ合う場面はよく見られます。これは、犬の肛門嚢(こうもんのう)から出る肛門腺液という分泌物の匂いに理由があります。肛門腺液の匂いには、性別・年齢・体調にいたるまで、その犬にとっての名刺代わりになるほどの情報が含まれています。
そのため、犬にとって匂いを嗅ぎ合うことは挨拶や自己紹介のような意味合いがあります。
まずはお尻を嗅ぎ、相手を知ることで仲良くなれるのです。相手が発情期かどうかも判別できるので、恋をするきっかけになることもあるんです。
飼い主さんから見ればなんともユニークでかわいらしい光景ですが、犬にとってはとても重要なコミュニケーション手段の一つなのです。
犬の匂い嗅ぎをやめさせたい時
◆気をそらせる
犬にとって匂いを嗅ぐことは散歩中の最大の楽しみ。とはいえ、匂いを嗅ぐクン活に付き合い続けてしまうと散歩はなかなか進みません。草むらで虫に刺されたり拾い食いなど危険性もあります。
やめさせたいときは、軽くリードを引いて「先に進もう」と促したり、名前を呼んでアイコンタクトをするなど、注意をそらしてあげるようにしましょう。
匂いを嗅ぐことに夢中になってしまっている犬も、飼い主さんに合図されればハッと我に返ってくれるはずです。飼い主さんとペースを合わせて散歩するトレーニングにもなりますね。
◆いつものお散歩コースにする
知らない場所ではいつもより警戒心と好奇心を持つのは当然のこと。情報を集めるために匂いを嗅ぐことが多くなります。嗅ぎ慣れた匂い以外の匂いがすれば、納得するまで嗅いでしまうのが犬の習性なのです。
散歩中に嗅ぎまわることをやめさせたいのであれば、犬の慣れた匂いがするいつもの散歩コースを歩くのが最適といえるでしょう。
まとめ
今回は匂いを嗅ぎたがる犬についてご紹介しました。
私たち人間には無い素晴らしい特性を持っているということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
犬にとってにおいは、単純に「臭いにおい」「好きなにおい」というだけではなく、とても重要な要素を持っています。犬の嗅覚の素晴らしさを理解した上で熱心に飼い主さんの匂いを嗅ぐ姿を見たら、より一層愛おしくなってしまうかもしれませんね。
– おすすめ記事 –
・【獣医師監修】愛犬の耳がくさい!?耳垢やニオイが気になるときの正しい耳掃除の仕方 |
・犬用入浴剤を使ってみよう!効果や使用法、注意点は? |
・【獣医師監修】犬の呼吸が早いのはどうして?考えられる病気や対処法を詳しく解説 |
・犬に牛肉を与えても良い!メリットと注意点を解説 |