【掲載:2021.03.15 更新:2023.06.08/2024.09.14】
モクズガニとは
「飼育しようと思って川でモクズガニを捕まえたけど、どんなカニなのかな」など、そもそもモクズガニ自体の生態についてよく知らない人も少なくないでしょう。
そこでモクズガニの原産国や特徴、性格、寿命、他のカニと違う点について見ていきましょう。
◆見た目
モクズガニはカニ下目、イワガニ科に分類されるカニです。
実は見た目が中国高級食材で有名な、上海ガニとそっくりだと知っていますか?モクズガニは上海ガニと近縁種で、基本的には見た目もほとんど同じです。
違う点は前側縁の突起の数がモクズガニが3つなのに対して、上海ガニは4つになっている事です。
モクズガニも上海ガニも食用として知られていますが、味も基本的には変わりません。
◆原産国・生息地
生息地は幅広く、日本では小笠原諸島を除く全国にいます。
呼び名は地方で異なり、主に関東地方ではモクズガニですが、西日本ではズガニやツガニなどとも言われています。
また、モクズガニは北海道にも生息していますが、サワガニは北海道にはいません。
環境適応能力が高く、いろいろな環境で生きていけるカニと言えるでしょう。
樺太やロシアの沿海州、朝鮮半島や済州島、台湾、香港周辺まで幅広い地域や国に分布しています。
産まれて間もないモクズガニの稚ガニは、塩分の濃度が高い海でしか生息できません。
やがて成長するにつれて海から河川に上がっていきますが、海と川の間を移動回遊する通し回遊と言われる習性を持っています。
活動範囲が広いカニという事が言えるでしょう。街中に流れる川や水田などにもモクズガニを確認できます。
また、繁殖の時期には河口域付近まで下っていき産卵します。
◆特徴・性格
日本に住む淡水のカニの中では、大型の種類になります。
甲羅のサイズは8㎝程度にもなり、体重が180gぐらいに達します。
特徴的なのが、はさみにビッシリと生えている毛です。藻クズのように見える事から、モクズガニという名前になったと言われています。
カニは多くの場合、警戒心が強く臆病な一面を持っていますが、モクズガニも同じです。川で捕まえようとしても、気配を感じるとすぐに石の間に隠れたりします。
私自身もモクズガニを捕獲しようと頑張りましたが、警戒心が強くすぐに隠れ家に引っ込むので、捕まえるのに苦労した経験があります。
反面では非常に攻撃的で縄張り意識が強い性格も持っています。自身の縄張りを侵されそうになると、戦いを仕掛ける獰猛な一面もあるカニと言えるでしょう。
◆寿命
寿命は多くの場合で3年から5年程度になります。
◆他のカニとの違いについて
モクズガニが大きく他のカニと違う点は、海水などの塩分濃度の高い環境でも淡水でも生きる事ができる点です。
多くのカニは海で生きるか川で生活するかどちらか一方になります。しかしモクズガニは稚ガニの時には海で生きています。
また、成長して川で住むようになっても繁殖の時期には再び海に戻ります。
海水でも淡水でも生きていける秘訣は、体液の浸透圧を調整できる能力にあります。
淡水と海水が混じり合う汽水域で生きている生き物は、3%程度の塩分濃度から、さらに薄い濃度の中で生活できると言われます。
しかし、モクズガニは海水濃度が3%以上でも生息可能です。
濃度が高い場所は浸透圧が高くなりますが、浸透圧調節物質のオスモライトを体に溜めこんでおく事で、細胞内の浸透圧を調整して、細胞容積を保つのです。
浸透圧を調整できる機能により、塩分濃度が高い場所でも生息できるわけです。
水質の変化に柔軟に対応できるカニという事が言えるでしょう。
モクズガニの値段
モクズガニは川や海、河口域で獲る事もできますが、「見つけるのもは大変そうだから購入できたらいいな」と考える人もいますね。
実は生体を購入する事もできます。サイズによって値段が変動しますが、500円から購入することが出来ると思います。
モクズガニの飼育環境
「モクズガニ買いたいけど飼育するには何を買い揃えないといけないんだろう」と、初めての人は悩みますよね。
ここでは、飼養する上で必要な基本のグッズや飼育温度、育てる上での注意点について見ていきましょう。
◆必要な基本のグッズ一覧
・ガラス水槽
飼育するにはガラス水槽が適しています。
昆虫を飼う用のプラケースや衣装ケースでも飼育する事はできます。
しかしプラケースだと水槽の表面に傷が付きやすい事から、鑑賞には向いていません。
また、衣装ケースの場合は表面のコーティング剤が、モクズガニの健康に害を与える事があります。
水槽の大きさは最低でも45cmは用意しましょう。
水深は15cmほどにしておきます。
モクズガニは水中で脱皮する事から、浅くなり過ぎないようにして、脱皮しやすい状況を作るようにします。
・カルキ抜き
水槽に入れる水は、カルキを抜いていれば水道水で問題ありません。
カルキ抜きはテトラコントラコロライン500mlなどがいいでしょう。
即効性があるので水の調整がスムーズに進みます。
・ろ過フィルター
また、ろ過フィルターも購入しておきましょう。
はさみで餌をちぎりながら食事をする事から、水が汚れやすいからです。
ろ過フィルターで水を循環させることで水が傷むのを和らげます。
・砂利
水槽内に砂利を敷いてあげるようにします。モクズガニは砂地を好む事から、過ごしやすくなります。
おすすめは大磯砂です。大磯砂は寿命が長く一度購入すると長く使い続ける事ができます。
小粒から大粒まで販売されています。
◆温度設定
飼育水温は20℃前後でかまいません。
ただし、特に夏などは水温が上がりやすいので注意しましょう
日光が当たる場所は避けるようにして、涼しい場所で飼育するようにします。
飼育の注意点
モクズガニを飼育する上では、気を付けないといけない点もあります。
◆水槽に蓋をする
まず水槽には蓋を用意しましょう。
理由としてモクズガニは脱走が上手く、水槽のレイアウトなどを使い器用に脱出する事が多いからです。
蓋をしっかりと閉めていれば、水槽の外に出る事はできません。
ただし、蓋を閉める際の注意点は、蓋に空気の穴を開けておく事です。完全に蓋で密閉してしまうと酸欠になってしまいます。
◆隠れ家を作る
また、複数を混泳させて飼育する場合は、必ず隠れ家を作ってあげましょう。
最低でも一匹に対して一つは必要ですが、できれば複数の家を用意してあげた方がいいです。
モクズガニは縄張り意識が強く、喧嘩を始めてしまい共食いをする事があります。
隠れ家を作ってあげる事でカニ同士が鉢合わせる機会が減りますし、喧嘩から逃れる事もできます。
隠れ家はパイプや植木鉢などでも作る事ができます。
また、水槽内に陸地部分も用意してあげましょう。
もしどうしても相性が悪いカニ同士の場合は、違う水槽に離して飼育するようにします。
◆素手で捕まえない
また、モクズガニを素手で捕まえるのは危ないのでやめましょう。
はさみの力が非常に強いので、手袋をして安全対策をしておくようにします。
モクズガニの飼い方
「モクズガニって餌は何食べるの」「モクズガニはドブ臭くないのかな」など。飼育をする上では気になる事もありますね。
ここでは、モクズガニのご飯、トイレや臭いなど飼育方法について見ていきましょう。
◆モクズガニのご飯
雑食でなんでも食べるカニですが、基本的に飼育は生エサを与えるといいです。
刺身の残りや貝類、魚の切り身などを好んで食べますし、ミミズや両生類、水生昆虫も餌になります。
石やコンクリートなどに付着している藻も食べています。
また、人口エサで育てる事もできます。
特に「いつも生エサだとお金がかかりそう」「またわざわざ捕まえに行くのも大変」と思う人もいますね。
人口エサはザリガニ用の物や、半生タイプの赤虫なども食べるので検討してみましょう。
◆トイレについて
排泄は水中でする事から汚れには、注意しないといけません。水替えは1週間に1度程度、水量の3分の1程度を替えるようにします。
ただし、明らかに汚れが酷い時には、気づいたらすぐに水を入れ替えるようにしましょう。
また、砂利なども定期的に洗います。汚れが溜まってしまうからです。
◆臭いについて
動物を飼育する上で臭いを気にする人も少なくありません。モクズガニの場合はどうでしょうか。
モクズガニは生息範囲が広い事から、家の周辺にも住んでいる可能性が高いです。
濁った用水路や工場排水がたくさん流れ込む川にも住んでいます。
もし、水が汚い環境で捕まえてきたカニを飼育する場合でも、基本的には泥抜きをすれば臭いは取れます。
ただし、個体によりなかなか臭いが取れない場合もある事から、専門の業者がしっかりと管理したモクズガニを購入する手もあります。
例えば高知県などは、四万十川などの清流で獲れたモクズガニを、業者がネットで販売していたりします。
業者が泥抜きをしてくれていますし、ドブ川のような所に住んでいるカニよりも臭いは少ないです。
まとめ
「モクズガニって身近にいる生き物だけどペットにしてみるのも楽しそうだな」「でも死なせたらどうしよう」など。
初めての生き物を飼う事は、ワクワクと不安も起こります。
でも、やはり毎日見るうちに愛着が湧きペットの存在自体が自分の心を満たしてくれたり、一緒に生きている実感が「家族なんだな」と思えたり、生活に張りをもたらしてくれます。
毎日観察するうちにカニのいろいろな事が分かって、愛おしくなるかもしれません。
モクズガニは飼育するにもそれほど、費用が必要になるわけでもありませんので、最後まで飼えそうならお家に迎え入れてあげましょう。