うさぎには肉球がない?肉球の役割とうさぎに多いソアホックについて

2021.01.05

うさぎには肉球がない?肉球の役割とうさぎに多いソアホックについて

動物の足の裏にあるキュートな肉球。見た目のかわいらしさやぷにぷにした触り心地に癒され「肉球フェチ」を自称する飼い主さんも少なくありません。実はうさぎにはその肉球がないのです。たまにうさぎの足に肉球が描かれたイラストも見かけますが、これも間違いです。うさぎは理由があって肉球が発達していません。この記事では動物の肉球、肉球がないために起こるうさぎのトラブルとその対処法について解説していきます。

そもそも肉球とは?

肉球

肉球は、動物の足の裏にある丸くて弾力のある組織です。肉球という呼び方は俗名で、正式な名称は蹠球(しょきゅう)といいます。

◆肉球の構造

肉球は、主に脂肪や弾性繊維を含む結合組織で作られていて弾力性があります。そして表面は角質層で覆われ、表面が硬くなっています。

掌球、指球、足底球など複数の肉球があり、硬さ、形、色などは動物によって異なります。たとえば犬は表面がざらざらして、猫は柔らかくぷにぷにしているのが特徴です。

◆肉球の役割

肉球には主に次の役割があります

  • クッション機能
  • 足音を消す効果
  • 滑り止め

肉球の大きな役割はクッション機能です。弾力を持つ肉球が、着地した時にかかる強い衝撃をやわらげ、筋肉や関節に負担がかかるのを防ぎます。また地面から足の裏を保護する靴底のような役割もあります。

また肉球が柔らかいので歩く時には音が立たず、狩りをする時獲物に見つからずに近づける効果があります。

そして肉球の角質層は表面が細かい突起で覆われ、滑り止めの役割も果たしています。

これにより、木から滑り落ちることがなく、地面を力いっぱい走ることができるようになります。前足で器用に食べ物がつかめるのも肉球のおかげです。そのほか、触覚器、犬は発汗して体温調節する役割もあります

◆肉球を持つ動物

肉球があるのは、食肉目(ネコ目)に分類されるイヌ科、ネコ科、クマ科、イタチ科、アライグマ科などの動物です。食肉目の動物には捕食者という特徴があり、肉球は獲物を取るために発達しています。また、げっ歯目のネズミやリスにも肉球があります。


うさぎには肉球がない!

うさぎには肉球がない

うさぎの足の裏はふわふわした厚い毛で覆われ、肉球はありません。多くの動物が肉球を持っているのに、うさぎにはなぜ肉球がないのでしょうか。

◆うさぎに肉球がない理由

うさぎに肉球がないのは、草食動物のウサギ目に属し捕食する習性がないからです。肉食動物のように、足音を消して獲物に近づいたり全力で追いかけたりする必要がありません。そのため肉球が発達しなかったのです。

また、うさぎはもともと森林や草原に生息し、柔らかい土や草むらの上で暮らしているので、肉球がなくても滑ることなくスムーズに走れます。

うさぎは声帯がなく鳴かない代わり、後ろ足で地面を叩く「スタンピング」をし、群れで暮らすうさぎとコミュニケーションを取り合う習性があります。

スタンピングをする際、うさぎは力いっぱい後ろ足を地面に叩きつけて大きな音を出すのですが、肉球があると音を鳴らすことができません。スタンピングで仲間に危険を知らせるためにも、音を消す肉球は邪魔な存在になっているのでしょう。

◆肉球がないために起こる弊害

森林や草原に暮らすうさぎは、肉球がなくても困ることがありません。しかしペットのウサギさんは少し違います。土や草むらの上ではなく、フローリングやプラスチックなどの上で過ごすことが多いので、トラブルが起こりやすくなっているのです。

飼育されているうさぎは、ケージに敷いたすのこ、フローリングやコンクリートなど硬い床の上で過ごすことが多くなります。そのため、足の裏、筋肉や関節に衝撃がかかりやすくなっているのです。

たとえば、うさぎは骨が細いので高い所から飛び降りた時、力いっぱいスタンピングした時には骨折しやすくなります。また、つるつるした床の上では足の裏に踏ん張りがきかないので、滑って転倒しやすくなります。

また、足の裏を保護する肉球がなく足の裏の毛は直に床とこすれるため、摩擦によって「ソアホック」という病気が起こりやすいので注意が必要です。


うさぎは「ソアホック」に要注意

足の裏の毛が抜け、露出した皮膚に炎症が起こる状態を「ソアホック」といいます。

ソア(sore)はヒリヒリ痛むこと、ホックは飛節(後ろ脚にある関節)を指し、ソアホックのほか「足底皮膚炎」「足底潰瘍」「飛節びらん」などとも呼ばれます。

飛節とは人間のかかとにあたる部分で、名前の通り、ソアホックはうさぎのかかとに多発するのが特徴です。

◆ソアホックとはどんな病気?(症状)

ソアホックは足の裏の毛が抜けることで始まり、進行すると脱毛や炎症が重症化することもある、うさぎ特有の病気です。

主な症状は脱毛、発赤、びらん、痛みですが、進行につれさまざまな症状を伴うようになります。

最初は飼い主さんも気付かないような数ミリ程度の脱毛に発赤を伴う程度で、うさぎの自覚症状もありません。

しかし、脱毛が進行すると露出した皮膚がタコのように硬く赤くなって目立ちやすくなります。何かのはずみでかかとが見えた時、飼い主さんが初めて気付くケースも多いでしょう。

炎症が悪化するとただれ、びらんが起こり痛みを伴うので、うさぎにも患部を気にする、体重を前にかける、食欲不振になる、といった症状が見られるようになります。

もしも患部に細菌が感染すると潰瘍や膿瘍ができ、炎症が皮膚の深部まで進んで重症化する危険性もあります。また、ひどい場合は歩けなくなる、骨髄炎を併発するなど重篤化する可能性もあります。

◆ソアホックの原因

 
ソアホックの主な原因は以下が挙げられます。

  • 硬い床材の上で過ごしている
  • 頻繁にスタンピングをする
  • 肥満により足に体重がかかっている
  • 水や糞尿で湿った環境で飼育されている
  • 爪が長い
  • 加齢による筋力低下でかかとに負担がかかっている

足の裏に負担がかかりやすい状態のうさぎは足の裏が脱毛しやすく、足の裏の皮膚は薄いため、いったん皮膚が露出すると炎症が起こりやすくなってしまうのです。

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◆ソアホックの治療法

ソアホックは進行しやすく重症化すると治りにくいので、見つけたら早めに受診し、適切な治療で進行を食い止めなければなりません。

ソアホックの治療には、炎症を鎮めるための軟膏、抗炎症剤、抗生物質などがと用いられます。また、患部を保護するために包帯を巻くこともあります。

ごく軽症なら環境を替えるだけで改善することもあり、とにかく早期の発見と対処が重要です。

◆ソアホックの予防法

ソアホックは「胃腸うっ滞」に並んでうさぎに起こりやすい病気です。どのウサギさんも発症する可能性があります。そのため、どのご家庭でも普段からウサギさんはソアホックにならないよう、しっかり予防することが大切です。

  • ケージのすのこは足の裏にやさしいタイプに変える
  • ケージに緩衝材を敷く
  • ケージはこまめに清掃し清潔に保つ
  • フローリングには滑りにくく柔らかいマットを敷く
  • 肥満を防ぐ、定期的に爪を切る
  • こまめに足の裏をチェックする
  • スタンピングしないようストレスを取り除いてやる

ウサギさんの足の裏はおしっこやうんちなどで汚れてしまうことがあります。おしっこがついたままにしておくと湿ったままで不潔です。
雑菌が繁殖してしまう原因にもなりますので、トイレの近くに吸水マットを敷いてあげるといいでしょう。

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ケージやお部屋の中などウサギさんが普段過ごすスペースは、滑りにくく柔らかいマットなど敷いてあげましょう。
すのこは、金属製より木製のほうが足の裏に負担をかけません。ケージの中には緩衝材として牧草やマットを敷いてあげるのもおすすめです。

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またウサギさんがお部屋で遊ぶ場合はフローリングが硬くて滑りやすいので、コルクマットやペット用のタイルマットを敷くと、走っても足裏に負担がかかりません。(うさぎがかじらないよう注意してください。)

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そして、抱っこをした時や爪切りをした時などには足の裏の毛をかき分け、脱毛や炎症がないかこまめにチェックすることも大切です。

スタンピング癖のあるウサギさん、高齢でじっとしていることの多いウサギさんはソアホックになりやすいので、特に注意してあげてください。


肉球のないほかの動物、肉球のあるうさぎはいる?

うさぎ以外にも、肉球を持っていない動物がいます。アシカ、アザラシ、セイウチなどの海に生息する哺乳類は犬や猫と同じ食肉目ですが、陸の上を走ることがないので肉球がついていません。

また、うさぎの中でも、北海道の山岳地帯に生息する「エゾナキウサギ」は肉球を持っています。

エゾナキウサギは体重60~150gと体が小さく、丸くて短い耳を持っていて、ネズミのような風貌を持つ野性のうさぎです。甲高い声で鳴くことからその名がつけられています。エゾナキウサギは岩場に住んでいるので、滑り止めの肉球が発達しているのです。

また、それ以外のうさぎでも肉球のある品種もいるともいわれ、ミニレッキス、ホーランドロップもよく探すと小さな肉球が見つかるケースがあるそうです。飼っている方はチェックしてみてはいかがでしょう。

ただ、小さな肉球はソアホックと見た目がよく似ているので、見つかった時はソアホックではないことも確認することをおすすめします。


まとめ

今回はうさぎと肉球についてご紹介しました。肉球は主に肉食動物の足の裏にあり、草食動物のうさぎには特に必要ないので発達しなかったのですね。その肉球がないため、ペットのウサギさんはソアホックができやすく、飼い主さんは予防と早期発見を心がけることが大切です。足の裏は普段あまり見えにくい部位ですが、ぜひこまめにチェックしてあげてくださいね。



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うさ北

うさ北

2019年までうさぎを3代飼育、現在はブルーサファイアハムスター(ジャンガリアン)を飼育中。栄養学、人や動物のコミュニケーションを中心にライティングや企画などのお仕事をしています。


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