ペンギンの生態
◆生息域
ペンギンは生物学的に、鳥綱ペンギン目ペンギン科にあたり、主に南半球に広く生息する「海鳥」です。飛ぶことはできません。
ペンギンと聞いて、南極大陸で身を寄せ合っている姿を思い浮かべる方も多いと思います。しかし、実際に南極大陸で繁殖し、生息しているペンギンは18種類のペンギンの中でも2種類しかいないのです。南極などの寒冷地に生息するペンギンもいれば、ニュージーランドや南アフリカなど温暖な地域に生息するペンギンも多く存在します。
ペンギンの種類
世界には18種類のペンギンが存在しており、外見的・遺伝的特徴により、6属に分けられています。
アデリーペンギン属…ジェンツーペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギン
マカロニペンギン属…ミナミイワトビペンギン、キタイワトビペンギン、フィヨルドランドペンギン、スネアーズペンギン、シュレーターペンギン、マカロニペンギン
キガシラペンギン属…キガシラペンギン
コガタペンギン属…コガタペンギン
フンボルトペンギン属…ケープペンギン、フンボルトペンギン、マゼランペンギン、ガラパゴスペンギン
この中で南極大陸に生息する2種はコウテイペンギンとアデリーペンギンです。
◆ペンギン大国日本
日本は世界的に見てもペンギン大国です。国内のおよそ100カ所に11種類、約4,000羽が飼育されています。
長崎にある「長崎ペンギン水族館」は飼育数世界一を誇り、18種類中9種類を飼育しています。
日本全体の水族館や動物園だと12種類なので、日本で見ることができるペンギンの種類のほとんどをこの水族館で見ることができます。
日本で見ることができるペンギンは
コウテイペンギン、キングペンギン、アデリーペンギン、ジェンツーペンギン、ミナミジェンツーペンギン、ヒゲペンギン、マカロニペンギン、キタイワトビペンギン、ミナミイワトビペンギン、フンボルトペンギン、ケープペンギン、マゼランペンギン、コガタペンギンです。
◆ペットとして飼えるペンギン
個人でペンギンを飼育する際は上記の12種類から選ぶことになりますが、中には、特別な施設や厳重な温度管理が必要なペンギンもいます。
その為、日本の気候等も考え、一般的に飼育できるペンギンの種類としては、フンボルトペンギン、ケープペンギン、キングペンギン、コガタペンギンでしょう。
その中でもフンボルトペンギンは日本で飼育されているペンギンの約50%(2000羽)を占めており、日本の気候に合っているので飼育がしやすいです。同属のケープペンギンも同様に比較的飼育しやすい種類となります。
しかし、この2種類に関しては注意点があります。
日本の水族館でよく見られるフンボルトペンギンやケープペンギンですが、世界的には絶滅危惧種に指定されており、ワシントン条約で保護されています。
そんなペンギンが2000羽も飼育されている日本ってすごいですよね!世界中で飼育されるフンボルトペンギンの4分1は日本で飼育されています。
このように、フンボルトペンギン、ケープペンギンは条約で保護されていますので、「商取引」「輸入」が禁止されており、生息地から日本に持ち込むことはできません。
では、どうすれば飼うことができるのかですが、ワシントン条約で規制されているのは、あくまでも国際間での輸入などになります。
その為、日本で繁殖された個体に関しては入手することが許可されています。したがって、飼育するとなれば、日本で繁殖された個体をブリーダーや水族館などから購入する流れになるでしょう。とはいえ、ペンギンを譲ってくれる水族館なんてないでしょうが、、、。
またフンボルトペンギンやケープペンギン以外にも、個体数の減少から絶滅の危険性を示す「レッドリスト」に登録されている場合があります。飼育を検討される際には、しっかり確認しましょう。
飼育する前に知っておきたい事
1.鳴き声(意外とうるさいペンギン)
ペンギンの鳴き声と聞いてパッと思い浮かぶ方は少ないのではないでしょうか?
可愛くて小さなペンギンですが、非常に大きく、変わった鳴き声をするのが特徴です。飼育される際は、防音設備がある部屋で飼う必要があるかもしれません。
2.におい(かなり臭いペンギン)
ペンギンのにおいはハッキリいうと臭いです。ちなみに老廃物(フン)も臭いです。
その理由はエサにあります。水族館で飼育員さんがペンギンにエサを与えているシーンを見たことがある人も多いかと思いますが、ペンギンは生魚を噛まずに丸のみします。人間でもそんなものばかり食べていたら体臭も、老廃物も臭くなりそうですよね?そんな理由からペンギンは体からもフンからも、においが出てしまう動物なのです。可愛いのに少しショックですよね、、、。悪いニュースはもう一つ、ペンギンは基本的にしつけができない動物と言われています。その為、フンをまき散らしてしまう可能性があります。衛生的にも良くないので、細めなお掃除が必要になり、手間がかかる動物といえます。
3.寿命(大事にされると長生きするペンギン)
ペンギンの寿命はおよそ20年と言われています。
種類によって差はありますが共通して言えるのは、人の手で飼育された方が寿命が長いという事です。
キングペンギンを例に出すと、キングペンギンは15~20年が寿命といわれていますが、先ほど紹介した「長崎ペンギン水族館」では世界最長飼育記録(39年9ヶ月)を残したキングペンギンもいたそうです。
4.値段(背は低いけど値段は高いペンギン)
ペンギンの値段は基本的に「時価」になります。
一般のペットと違い、ペットショップに流通していない為、売り手の言い値になることが多いと考えられます。
実際に、他のサイトなどに記載のある情報だと70~1000万円以上と、種類によって幅広いですが、ペットの中ではかなり高額と言えます。ケープペンギンは実際に70万円で取引された記録があり、キングペンギンは200~300万円ほどで取引があるようです。
飼う際の注意点
1.まずは温度管理のできる部屋を作ろう
ペンギンの種類ごとで、最適な気温が異なるため、飼育するペンギンにとって適切な気温を把握しましょう。
寒いところに住むペンギンの場合、大きな冷凍庫を用意して、冷えるところを作ってあげたり、温暖な地域に住むペンギンには、ヒーターやストーブで温まれる場所を作ってあげたりする必要があります。
フンボルトペンギンやケープペンギンであれば、ある程度自由でも問題ないと考えられますが、真夏や真冬には温度調節する必要があるでしょう。
2.海水プールを作ろう
ペンギンはよく泳ぐ動物です。ストレスがたまらないように自由に泳ぐことができるプールや池があれば理想です。小さなペンギンなら、子供用の簡易プールや浴槽でも対応可能だと考えられます。
ペンギン用プールを作るにあたり、海水の準備が必要になります。ペンギンは淡水で育てることも可能ですが、その場合、ペンギンの元気がどんどんなくなっていってしまう可能性があります。なぜなら、ペンギンはもともと海水やエサなどから得た余分な水分を目の上にある塩類腺とよばれる器官を使って体の外へ排出しているからです。ペンギンが時々、顔を左右にプルプルと振っている姿を見たことがある人もいると思いますが、それは、塩類腺から塩分を出している為です。淡水でペンギンを育て続けると、必要以上に塩分を排出してしまい、塩分不足になってしまいます。
とはいえ、池を用意するのも海水を用意するのも、相当な大富豪か海辺に住む人ではないと、不可能だと思います。その為、現実的に考えて、浴槽や小型プールに塩を溶かして海水に近づけたり、食事に塩を混ぜたりするなどの工夫が必要になります。
3.食事の確保をしよう
みなさんご存じの通り、ペンギンは海の生物をエサとして食べます。エサに関しては人が食べる用の魚や海の食べ物で問題ないでしょう。しかし、ペンギンがどのくらいの量を食べるのかご存じの方は少ないのではないでしょうか?
実は、ペンギンは大食いです。一日に自分の体重の10%程の食事をすると言われています。人間は自分の体重の2.5%と言われているので、かなり大食いだと分かります。例えば10kgのペンギンを飼ったとすると、1日の食事は1Kgになります。毎日イワシ1Kgをスーパーで購入し続けるのも大変なのでペンギンを飼育する際には、安定してエサを供給できる大きな冷凍庫と仕入れ先が必要になります。
★エサやり方法
水族館でペンギンが魚を丸飲みしているシーンはおなじみですが、あの方法でしかペンギンはエサを食べることができません。誤って食べやすいように魚を切ってしまうとペンギンは食べることが出来なくなってしまいます。
4.スキンシップを忘れずに
ペンギンは習性上、群れで行動する動物です。その為、寂しがりな性格をしています。飼育する際は飼い主の方がしっかりスキンシップをとる必要があります。
※ペンギンの攻撃に注意
ペンギンは意外にも危ない動物です。
お世話や掃除のために手を出すと、鋭いくちばしでつついて来たり、ただ歩いているだけでつつかれたりもします。
くちばしとフリッパー(手のひら部分)で威嚇してくるそうなので、怒りっぽい時には、特に警戒をする必要があります。攻撃を受けてしまうと、出血や骨折につながることもあるのだとか、、、。お気を付けください。
スキンシップはペンギンのご機嫌を伺いながらすることが重要になります。
5.多頭飼いも視野に入れよう
上記で、ペンギンとのスキンシップの重要性を説明しました。
しかし、飼い主さんが忙しい場合、多頭飼いも視野に入れる必要があります。
むしろ、毎日スキンシップをとれる人の方が少ないと思うので、その場合は、多頭飼いをすることで、ペンギンにストレスを溜めないようにしましょう。
6.ペンギンが病気になってしまったら
ペンギンを診療してくれる病院はほとんどありません。
犬や猫以外のエキゾチックアニマルを診療する動物病院であれば、診てもらえる可能性はあります。しかし、基本的には、飼い主が病気にかからないようにしっかりと勉強して、飼育する必要があります。
まとめ
●購入には100万円以上かかることが多い
●鳴き声やにおいの対策が必要
●ペンギン専用の飼育環境が必要
●多頭飼いを視野に入れる必要がある
●病気になった際は治療できる動物病院が少ない
いかがでしたか?
私はペンギンを日本で飼うには相当な条件が整っていて、ペンギンを愛する気持ちがないと飼い続けることは厳しい動物です。飼育する場合、維持費や環境整備費用などの資金力が必要になり、さらに飼育の手間が他のペットの比にならないほどかかります。軽い気持ちで飼わず、飼育後のことをしっかりと想定してから購入するようにしましょう。その際の責任と勉強はお忘れなく!
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