1.ウサギの歯の特徴
1-1.ウサギの歯の構成
1-2.げっ歯目のネズミとの違い
1-3.ウサギの歯の構造
2.ウサギに多い歯の病気「不正咬合」について
2-1.不正咬合とは
2-2.不正咬合の症状
2-3.不正咬合の原因
2-4.不正咬合の合併症
2-5.不正咬合の治療法
3.ウサギの歯のケア方法
3-1.牧草や繊維質の豊富なペレットを与える
3-2.かじり木を与える
3-3.金網をかじらないようにする
3-4.歯の伸びすぎを防止するおやつを与える
ウサギの歯の特徴
うさぎは完全な草食動物です。歯と消化器にはほかの動物にない特徴があり、おかげで栄養に乏しい草を食べても生きていけるようになっています。
うさぎは草を食べ、栄養にならないはずの繊維質を消化器の盲腸でエネルギーに変えているのです。繊維質は硬いすじで噛み切りにくいものですが、うさぎの歯はその繊維質すら楽にすり潰してしまいます。
うさぎの歯は何本あるのか、特徴や構造はどうなっているのか見ていきましょう。
◆ウサギの歯の構成
うさぎの歯は、上顎に切歯4本と臼歯12本、下顎に切歯2本と臼歯10本の計28本が生えています。
切歯(門歯)とは物を噛み切るための歯、いわゆる前歯のことです。臼歯は切歯の隣に並んでいる歯、いわゆる奥歯と呼ばれる歯で、食べ物をすり潰す役割があります。
犬や猫、ヒトなどは切歯と臼歯の間に犬歯も生えていますが、うさぎは犬歯を持ちません。
生後40日ごろまでには乳歯が永久歯に生え変わるので、ペットとしてお迎えする月齢の子うさぎは離乳していて、牧草やペレットを食べることができます。
◆げっ歯目のネズミとの違い
ウサギとネズミは前歯が似ていますが、生物上の分類は別です。
ネズミのように2本の切歯を持ち犬歯がない動物は「げっ歯目(ネズミ目)」に分類され、その仲間にリス、デグー、カピバラなどがいます。
うさぎは計6本の切歯があるので、げっ歯目ではありません。
見た目は上顎に2本、下顎に2本の切歯があるように見えますが、実は上顎の切歯の裏に2枚の「小切歯(釘歯)」という歯があるため、うさぎの上顎にある切歯の数は計4本と数えられます。
うさぎもかつてはげっ歯目に分類されていましたが、小切歯があるため現在は、げっ歯目ではなくウサギ目に分類されています。
小切歯は、普段見る機会のない歯ですが、レントゲン写真で見ると、上の前歯は切歯と小切歯が重なっていることがわかるのです。
◆ウサギの歯の構造
うさぎ歯の切歯と臼歯は「常生歯」と呼ばれ、一生伸び続けるのが特徴です。
物をかじる時に上下をこすり合わせ少しずつ摩耗させているので、歯の長さは常に同じに保たれています。
しかし、歯の伸びるスピードは年間に10~12cmと非常に早いため、うさぎは日常的に歯をすり減らさなければなりません。
間に合わないと歯が伸びて、物が食べられなくなります。そのため、うさぎは繊維質が多くて硬い牧草や木をかじり、歯をこすり合わせているのです。
うさぎの切歯は前面が厚いエナメル質で覆われ、断面は切れ味の良い状態になっています。うさぎの切歯は触れてみても彫刻刀の平刀のように鋭く、かじるのが上手なことが納得できます。
ウサギに多い歯の病気「不正咬合」について
うさぎの歯は常に成長しているため、必要以上に伸びてしまう、歯が動きやすく曲がりやすい、という弱点もあります。
そのような事情から、うさぎは歯の病気「不正咬合(ふせいこうごう)」になりやすく、飼い主さんは注意が必要です。
◆不正咬合とは
不正咬合は、歯の噛み合わせが悪くなることです。
いずれかの歯に問題が起こると噛み合わせがずれ、物を噛む時に上下の歯をすり合わせることができないので、歯の摩耗が間に合わなくなります。
歯が伸びてさらに噛み合わせが悪くなると、物が食べられなくなる、二次的な症状を引き起こすなどの支障をきたします。
◆不正咬合の症状
切歯や臼歯に、伸び過ぎる、曲がる、ねじれるなどの症状がみられます。
上顎の切歯は内側に向かって、下顎の切歯は外側に向かって伸びる性質があり、伸び過ぎると上下の歯が噛み合わず、物がかじれなくなります。また、前歯が邪魔になりグルーミングもできなくなってしまいます。
臼歯に不正咬合が起こると、臼歯の高さがそろわないために物がしっかりすり潰せず、消化不良が起こりやすくなります。
また、臼歯は曲がったり、歯根(歯の根元)が骨に向かって伸びたりするため、臼歯で舌や粘膜を傷つけたり、伸び過ぎた歯根が骨や鼻涙管、目の下を圧迫することもあります。
このような症状が起こると、うさぎは物が食べにくく口の中に痛みが出るため、食欲不振、下痢、体重減少、うっ滞などのさまざまな症状を伴って衰弱しやすくなるのです。
うさぎの口の中は見えにくいので、目視で歯の異常を見つけるのは難しいです。不正咬合があるとうさぎの様子がいつもと違ってくるので、観察すれば異変に気づくことはできます。
たとえば、このような兆候があれば不正咬合が原因になっているかもしれません。
- 食べにくそうにしている
- 食べる量が減っている
- 歯ぎしりをする
- よだれを流す、口の回りが濡れている
- 涙、目やにが出る
- 顔を触られるのを嫌がる
- 毛づやが悪い
症状が軽いうちは表面に出にくいのですが、そのまま放置していると進行してしまうので、早く発見することが重要です。
◆不正咬合の原因
不正咬合の原因には、後天的なものと先天的なものがあり、うさぎさんによって発症のきっかけは異なります。
・後天的な原因
普段の食事が原因で不正咬合になることが多いです。噛みごたえの少ないペレットや野菜を好む、牧草をあまり食べないうさぎさんは歯が伸びやすいです。
また、落下や衝突などによって歯を破損した、金属製のケージをかじって歯が曲がったり折れたりした、などのケガが原因になることもあります。
・先天的な原因
ダッチ系・ロップイヤー種は遺伝的な不正咬合が起こりやすい品種です。また、丸顔で顎の短い小型のうさぎも不正咬合になりやすいといわれます。
◆不正咬合の合併症
不正咬合は、歯が伸びて物が食べにくくなる、という問題にとどまらず、さまざまな合併症を引き起こすので注意が必要です。
・うっ滞
食欲不振で食べる量が減ると胃腸の動きが停滞し、うっ滞を起こすことがあります。
・鼻涙管障害
上野臼歯の歯根が奥に向かって伸びると、鼻涙管が圧迫されやすくなります。鼻涙管に炎症が起こると涙が流れるようになります。
・湿生皮膚炎
よだれや涙で濡れて皮膚炎を起こすことがあります。
・口腔内の潰瘍
伸びた臼歯が粘膜に当たって傷つけることがあります。
上の臼歯は「棘状縁」と呼ばれるとがった臼歯ができやすく、頬内側の粘膜に当たって炎症が起こりやすくなります。また、下の臼歯が伸びると舌を傷つけることがあります。
患部が潰瘍になると痛みが強くなり、うさぎは物を食べるのを嫌がるようになります。
・膿瘍
膿瘍(のうよう)は、皮下などにうみのたまった袋ができる病気です。不正咬合で歯根が伸びると、突出した歯根が上顎または下顎の骨を突き破り、細菌に感染して膿瘍ができやすくなります。
病巣は、顎の骨を溶かしながら周辺に広がります。歯の根元が歯根膿瘍になると歯が抜け落ち、眼球のくぼみに眼窩膿瘍を併発すると、頬や顎が腫れる、圧迫された眼球が飛び出る、などの症状を伴います。
◆不正咬合の治療法
不正咬合は自然に治らないので、動物病院の治療が必要となります。異変に気づいたらすぐ受診するほか、日頃から定期的に検査を受け、獣医師に歯をチェックしてもらうことがのぞましいです。
不正咬合は、獣医師が口の中を見たりレントゲンを撮ったりすれば、容易に判断できます。
根本的な治療は歯の研磨、カットです。
切歯は、専用のカッターで適切な長さにカットします。臼歯は抜歯や歯を削る処置が必要です。切歯の処置は麻酔なしでできますが、臼歯の処置には全身麻酔が必要になることが多いでしょう。
また合併症が起きている場合は、症状に応じた治療も必要になります。
不正咬合は治っても再発しやすいので、普段から予防対策を心がけましょう。
ウサギの歯のケア方法
不正咬合を防いでうさぎの歯を健康に保つためには、歯の伸び過ぎや歯が折れるようなケガを防ぐことが大切です。
◆牧草や繊維質の豊富なペレットを与える
先天的に不正咬合になりやすいうさぎさんもいますが、日頃から歯をしっかり使って摩耗させておけば、正しい歯の噛み合わせは維持できます。
まずは主食である牧草をしっかり食べさせましょう。ペレットはソフトタイプではなくハードタイプ、繊維質の多い物がおすすめです。
柔らかいおやつは避け、野菜や果物の与え過ぎに注意しましょう。
おすすめの牧草
豊富な繊維質・低タンパク質・低カルシウムな草食性小動物のメインフード。
チモシー牧草は、品質により、デイリーとホースに区別され、さらに細かくグレード付けがされています。
当製品は、牧草を長年取り扱う専門家が選別を行った最高級ホースグレードを使用しています。
食事に気を遣う競走馬(サラブレッド)にも、実際与えられているものです。
その中から、人の手で厳選されていますので、香りが良く、嗜好性に優れています。
低カロリーで繊維質が多いチモシーの1番刈り牧草。1番刈りは1回目に収穫した、硬くて噛みごたえのある牧草です。自然と咀嚼の回数が増えるので、歯の伸び過ぎが防げます。
おススメのペレット
・低カロリーで高繊維質なチモシー牧草が主原料なので肥満が気になるウサギの”プロポーション維持”にお役立てください。
・チモシー牧草の高繊維質で、お腹の健康維持と同時に飲み込んだ毛の排出に配慮。また、歯の研磨を助け、不正な咬合を抑制する働きをします。
・適切なカルシウム量に抑え健康体の維持に配慮。
・腸まで届く乳酸菌、高濃度殺菌菌体(EC-12株)配合。<総合栄養食>
バニーセレクション メンテナンスは、獣医師とうさぎ専門店によって開発された高品質な総合栄養フードです。チモシー牧草が主原料で繊維質が多く、歯の研磨を助けます。
◆かじり木を与える
おもちゃにかじり木を与えると、うさぎはかじって遊びながら歯を適度にすり減らすことができます。
硬すぎる物は歯を傷めることがあるので、小動物専用のかじり木を選ぶのがベターです。かじることはストレスの解消にもつながりますね。
おすすめのかじり木
うさぎ、チンチラ、デグー、モルモットなどの小動物用固定式かじり木。固定式だから手(前足)で物をつかめない生き物でも思いっきりガリガリ!
ドコからかじっても角がかじれる!!
カドっこかじり木は、コロコロ転がっても、かじりたくなる角面がかじりやすい角度で現れます。
角がかじりたくなる小動物の習性を利用したかじり木です。常に角があるので、飽きずにかじれます。
◆金網をかじらないようにする
ケージをかじるウサギさんは多いのですが、壁面の金網は硬いため、ひんぱんに噛むと歯が曲がったり欠けたりして良くありません。
うさぎが金網をかじる場合は、ガードを付けるなどの対策を取りましょう。
また、飼い主を催促する時に噛んでゆすったり、ストレスを感じた時にかじったりすることが多いので、ストレスの原因を取り除いてやることも大切です。
おすすめのアイテム
ケージ噛み行為から、生き物とケージを守る防護フェンス。思いきりかじれるので、ストレスも解消できます。
木製で、うさぎがかじっても大丈夫な防護フェンスです。固定具で扉の内側などに取り付けられます。
◆歯の伸びすぎを防止するおやつを与える
歯の伸びすぎ防止効果があるウサギさんのおやつもあります。
主食とのバランスを考えながら、ごほうびやコミュニケーションの手段として与えましょう。
おいしく、楽しく、デリケートなウサギのお腹の健康維持をサポートする「ウサギの乳酸菌おやつ」シリーズ。嗜好性が高いマメ科の牧草「アルファルファ」を使用したカリカリ食感のスナックに、お腹の中の抜け毛の排出を助ける「食物繊維」、消化酵素である「パパイン酵素」を配合しました。カリッと歯ごたえのあるハードタイプのスナックを噛むことで、歯の伸びすぎを防止します。
まとめ
うさぎの歯は生涯を通して伸び続ける、歯をすり減らすためにかじり続ければならない、そのため不正咬合になりやすい、などほかの動物にはない特徴があります。不正咬合はうさぎの健康を損ねる怖い歯科疾患です。うさぎさんのチャームポイントでもある歯を守るため、ぜひしっかりケアをしてあげてくださいね。
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