1.斜頸とは
1-1.斜頸とはどんな感じ?
2.斜頸の原因
2-1.パスツレラ感染症
2-2.中耳炎・内耳炎
2-3.エンセファリトゾーン症
2-4.脳神経の障害
3.斜頸の治療法
3-1.治療の基本は投薬
3-2.治らない場合もある
4.斜頸を防ぐ方法はある?
4-1.飼育環境を清潔に保つ
4-2.免疫力低下に注意する
4-3.病気になったうさぎとの接触を避ける
4-4.症状に気付いたらすぐ受診する
5.斜頸になったうさぎの過ごし方について
5-1.ぶつかった時のケガを防止する
5-2.食事をサポートする
5-3.マッサージをする
斜頸とは
斜頸(しゃけい)とは、頭が傾く神経症状のことです。平衡感覚を司る「前庭系」になんらかの障害が起きるために発症します。
この平衡感覚というのは、重力や空間を察知して正しい方向を把握するための感覚で、私たちヒトをはじめ動物に備わっている機能です。
脳、耳の奥にある内耳の前庭・三半規管を前庭系といい、普段は前庭系が機能しているおかげで、頭や目の位置を正しく保つことができています。
ところが前庭系のどこかに炎症が起きると、頭を真っすぐに保つ感覚がわからなくなるため、首が傾いた状態になってしまうのです。
斜頸になったうさぎが命を落とすこともあるため「斜頸は怖い病気」と思われることもあるようですね。実は、斜頸そのものは命に関係ありません。危険なのは、命に関わる病気が原因で斜頸を起こしているケースです。治ることもあれば後遺症が残って回復しないこともあり、ケースバイケースなのです。
斜頸はほかの動物にも起こりますが、うさぎに比較的多くみられます。ですから、うさぎを飼っている人は斜頸についてよく知っておくと、万が一の時に安心です。
◆斜頸とはどんな感じ?
斜頸はある日突然に始まり、炎症を起こしている側に首が傾くという特徴があります。
うさぎの意思に反して首が強制的に傾き、ずっと傾いた状態が続くため、飼い主さんも異変にすぐ気付くでしょう。
斜頸は平衡感覚の乱れで起こっているため、ふらつき、眼振(目が勝手にくるくる動く現象)が起こったり、気分の悪さから吐き気や食欲不振を伴ったりすることも少なくありません。
初期は少し首をかしげているだけのことも多いのですが、進行すると頭が90度近く横に傾くこともあり、体のバランスを取るのが難しくなります。また、頭が傾いた側のほうに体が旋回してしまう「ローリング」がみられることもあります。
そのほか、斜頸の原因となる病気によってさまざまな症状を併発します。
斜頸の原因
斜頸の原因は大きく分けて「末梢性」と「中枢性」があります。
末梢性の斜頸は脳以外の場所で起きているもの、うさぎの場合は耳の病気で起こります。「パスツレラ感染症」による斜頸が多いですが、中耳炎や内耳炎が原因になることもあります。
また、中枢性の斜頸は脳の中枢神経に原因があって起こるもの、うさぎの場合は「エンセファリトゾーン症」が多いです。そのほか、症例は少ないですが脳腫瘍、外傷による障害で斜頸が起こることもあります。
うさぎの斜頸の多くは、パスツレラ感染症かエンセファリトゾーン症によるものです。
◆パスツレラ感染症
パスツレラ感染症は、パスツレラ菌が原因で起こるうさぎがかかりやすい病気です。
パスツレラ菌自体は、多くのうさぎ、犬、猫が保菌しているありふれた菌です。うさぎの場合、免疫力が低下した時に鼻腔でパスツレラ菌が繁殖しパスツレラ感染症を発症します。
初期症状には「スナッフル」と呼ばれる鼻水やくしゃみがみられ、この時点では斜頸が始まっていないことも多いです。
その後、副鼻腔炎、中耳炎や内耳炎に進行してしまうと、内耳の前庭・三半規管の炎症によって平衡感覚が乱れるため、斜頸がみられるようになります。鼻水で顔や前足のケガゴワゴワになる、耳を振ったりかゆがったりすることもあるでしょう。
さらに炎症が肺へひろがると肺炎を起こし、重症化した場合は敗血症から死に至る可能性も出てきてしまいます。
うさぎがパスツレラ菌を保菌していても、不顕性感染(無症状)で元気に過ごしていれば問題はありません。ただし、発症した場合は重症化すると命に関わるので注意が必要なのです。
◆中耳炎・内耳炎
犬や猫よりは症例が少ないのですが、外傷、ミミヒゼンダニなどが原因で外耳炎や中耳炎にかかり、内耳炎まで進行すると斜頸を起こすこともあります。
◆エンセファリトゾーン症
エンセファリトゾーン症は、エンセファリトゾーンという原虫がうさぎの脳に寄生し前庭障害を起こす病気です。
パスツレラ感染症と同様に不顕性感染が多く、免疫力が低下した時に発症します。
エンセファリトゾーンは、感染したうさぎの尿などを経由してほかのうさぎに感染し、血液と一緒に循環して脳にたどり着くと、脳に寄生してその部分に炎症を起こします。
症状は脳のどこに炎症を受けたかによって変わってきますが、脳炎による斜頸、眼振、麻痺、けいれんなどの神経症状が中心です。
また、エンセファリトゾーンは腎臓や目も攻撃するため、尿失禁、腎不全、白内障、ブドウ膜症など多様な症状が併発されることもあります。
脳は全身の機能を総括する司令塔なのですが、その脳が侵されていく病気のため、治療が遅れると重症化や死は免れられません。ですから、一刻も早い治療開始がのぞまれます。
◆脳神経の障害
まれなケースといわれますが、脳腫瘍、頸部の外傷などが原因で前庭機能が障害を受けていることもあります。
斜頸の治療法
うさぎの傾いた首を正常な状態に戻すためには、斜頸を起こす病気そのものの治療が前提です。前庭障害が自然に回復することはないので、動物病院での専門治療が必要となります。
◆治療の基本は投薬
斜頸の原因は、細菌検査やレントゲン撮影などによって診断されます。
感染症が判明した場合は、投薬による治療をおこないます。パスツレラ感染症には抗生剤を、エンセファリトゾーン症には駆虫薬や脳の炎症を抑えるためのステロイド剤をしばらく投与します。
また、この2つの病気は判別が難しいことから、経過を見ながら抗生剤と駆虫薬を投与することもあります。
斜頸に伴って食欲不振も起こしやすく、うっ滞や全身の衰弱が心配されます。そのため、必要に応じて胃腸の動きを促進する薬の投与、強制給餌もおこないます。
ちなみに、パスツレラ感染症やエンセファリトゾーン症はすぐ治るような病気ではありません。細菌や原虫をしっかり除去するためにも、数週間から数か月間の治療が必要になります。
初めはうさぎも飼い主さんもパニックになるかもしれません。ですが、適切な治療を続けることで次第に効果が表れていきます。根気よく病気に向き合うことが大切なのです。
◆治らない場合もある
末梢性の病気は完治すれば斜頸もおさまります。ですが、エンセファリトゾーン症や脳腫瘍などで脳がダメージを受けてしまった場合は、脳障害として斜頸、開帳肢などの後遺症が残る可能性があります。
どの病気も早期発見が大切ですが、特にエンセファリトゾーン症は少しでも早く治療を始め、脳が受けるダメージを最小限に抑えることが肝心です。
斜頸を防ぐ方法はある?
斜頸を防ぐためには、日頃からうさぎの健康管理を徹底し、病気にならないよう注意することが第一です。パスツレラ菌、エンセファリトゾーンは保有しているうさぎも多いため油断は禁物です。
◆飼育環境を清潔に保つ
細菌感染を防ぐため、ケージやトイレはこまめに清掃し、常に清潔に保ちます。
じめじめしていると細菌などが繁殖しやすいので、多湿を避け風通しをよくすることが大切です。
◆免疫力低下に注意する
免疫力が低下した時、体内の細菌や原虫が暴れ出して発症します。温度の急激な変化、ストレスを避け、免疫力の低下を防ぎましょう。
◆病気になったうさぎとの接触を避ける
もし多頭飼いしているお宅で、うさぎがパスツレラ感染症やエンセファリトゾーン症を発症したら、ほかのうさぎも発症する可能性が高まります。お互いの接触を避け、感染拡大を防ぎましょう。
◆症状に気付いたらすぐ受診する
パスツレラ感染症やエンセファリトゾーン症は進行して重症化する病気なので、斜頸に気付いたら一刻も早く受診しましょう。初期症状のうちに治療をすれば、早く回復し完治する可能性が高くなります。
日頃からうさぎの健康状態を観察し、細かい異変も見逃さないことが大切です。はっきり斜頸とわからなくても、次のような症状があった場合も動物病院に相談しましょう。
- 鼻水、くしゃみが出る
- 首をかしげているように見える
- 目が揺れている
- 片側の耳だけ下がっている
- 食欲がない・糞が小さい
- 目やに・涙が出ている
また、元気になっても再発する可能性があるので、かかったことのあるうさぎは特に注意が必要です。
斜頸になったうさぎの過ごし方について
斜頸になったうさぎは体のバランスが取れなくなり、思い通りに動けなくなります。闘病中はトラブルに気をつけつつ、うさぎがなるべく快適に過ごせる工夫をこらしましょう。
◆ぶつかった時のケガを防止する
斜頸が進行すると、まっすぐ走れなくなったり勝手に体が回ったりしますが、ケージ内で体をぶつけてケガをすると危険です。
うさぎがよろける、自立できないという場合は、ぶつかってもケガをしないよう衝撃をやわらげる工夫をします。ケージ内は床や角などを柔らかいマットやクッションで保護すると、ローリングをするうさぎも安心です。
◆食事をサポートする
斜頸になると食餌がしにくくなります。
症状が軽いうちは、首が傾いても食べやすいように食器やエサを工夫すれば自分で食餌をすることできます。また、自力で食事できない場合は流動食による強制給餌も必要です。
◆マッサージをする
斜頸になる体の片側に負担がかかり、筋肉が凝りやすくなります。斜頸で傾いた首や周辺の筋肉は特に硬くなりやすいので、やさしくマッサージをして凝りをほぐしてあげるとよいでしょう。
うさぎの体は小さくてデリケートなので、あくまでも軽い力でマッサージします。傾いている側のちぢこまった筋肉を伸ばすイメージで、うさぎが気持ちよさそうにしているのを確認しながらほぐしてやります。
マッサージは病気そのものを治す行為ではありませんが、筋肉が伸びることで、斜頸の回復を促進する効果も期待できます。
※自己判断によるマッサージ開始は症状の悪化を招く可能性があるので、獣医師に相談してから始めることをおすすめします。
まとめ
うさぎに多い斜頸について説明いたしました。斜頸は完治することもあれば後遺症が残ることもあり、うさぎにとっては怖い病気といえます。
ただ、斜頸の原因となる病気は予防で防ぐことが可能なものもあります。斜頸が残っても元気に過ごすうさぎさんも数多くいます。飼い主の皆さんは、斜頸や病気に関する知識や心構えを持ち、うさぎさんをしっかり守ってくださいね。
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