野生のハムスターはどこに住んでいる?分布域、生態、歴史について

2021.04.22

野生のハムスターはどこに住んでいる?分布域、生態、歴史について

日常生活で目にすることはありませんが、自然界には野生のハムスターも存在しています。野生種とペットのハムスターはどのような違いがあるのでしょうか。野生のハムスターの生態、ペットとして飼育されるようになるまでの歴史、またペットを自然に返してはいけない理由について説明いたします。


野生のハムスターがいる国は?どんな環境?

私たちがペットとして飼育しているハムスターのほか、世界中には野生種が生息しています。

野生種がみられるのは、ヨーロッパ、中東、中央アジア、東アジアなどの乾燥地帯。野生種は26種存在することが分かっていて、主な品種は以下の分布域に生息しています。

  • ゴールデンハムスター(シリアンハムスター):シリア、レバノン、イスラエル
  • ジャンガリアンハムスター:・カザフスタン、シベリア、中国北西部
  • ロボロフスキーハムスター:ロシア
  • キャンベルハムスター:ロシア、モンゴル、中国
  • チャイニーズハムスター:中国北西部、モンゴル

野生のハムスターの生態

野生種はどのような暮らしをしているのでしょうか。

◆巣穴

野生のハムスターは乾燥した岩場や砂地に生息し、地中に掘った巣穴の中で暮らしています。

地面の下に巣穴を作るのは、寒暖差の激しい気候や地上にいる敵から身を守るためです。

彼らが生息する地域は、日中と夜間の温度差が20℃以上もあり、生き物が暮らすには過酷な環境となっています。

巣穴は深さ2メートルあり、地下は外気温の影響を受けません。常に一定の温度が保たれるため、一年中快適に過ごすことができるのです。

巣穴は長いトンネルと複数の部屋で構成され、それぞれの部屋は寝床、食糧の貯蔵室、トイレなど役割がきちんと分かれています。とても機能的な設計になっているのですね。

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◆行動

ハムスターは夜行性または薄明薄暮の動物です。あまり群れはなさず、1日の大半は巣穴の中で過ごします。

昼間は巣穴で眠り、日が暮れる頃、夜間、日が明ける頃に巣穴から出て活動する生活リズムを繰り返します。暗い時間帯に行動するのは、襲われにくいという理由があるためです。

彼らは、地上で食べ物や床材の採集、なわばりのチェックをしますが、運動量が多く1日に20キロメートル以上走ることがあります。体が小さい割に、タフで運動神経が優れているのです。

◆食べ物

野生のハムスターは雑食性で、植物を中心に色々な物を食べます。主な食べ物は植物の葉や茎、果実、種子、昆虫などです。

巣穴の外へ出て食べ物を探し回り、見つけた食べ物を口の中の「頬袋」に詰めて巣穴に持ち帰ります。そして、安全な巣穴でゆっくりと食事します。

ちなみに、ハムスターは頬袋に色々な食べ物を詰め込むので、危険な物を頬袋に入れてしまわないよう嗅覚や味覚が発達しています。

ペットの子を観察していると食べ物を頬袋にどんどん詰め込んでいるように見えますが、きちんと判別しながら物を口にしているのですね。

なお、野生のハムスターは水を飲む習性がありません。これは、飲み水が乏しい乾燥地帯で生き延びられるよう、体内に水分を保持する機能が発達しているためです。野生のハムスターは、食べ物に含まれる水分だけで生きていくことができます。

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◆疑似冬眠をする仕組み

ハムスターは冬眠しない動物です。ただし、野生のゴールデンハムスターとジャンガリアンハムスターは冬眠に似た休眠状態に入ることがあります。

気温が一定を下回るとゴールデンハムスターは数日間の「疑似冬眠」を、ジャンガリアンハムスターは1日に数時間の「日内休眠」を取ることが分かっています。

これは、厳しい寒さから命を守るための防衛機能です。通常、冬眠しない動物が寒さにさらされると低体温症を起こし、機能が停止して死んでしまいます。

しかしハムスターは気温が一定まで下がると、冬眠する動物のように自ら基礎代謝を下げて体力を温存させることができます。

疑似冬眠は低体温症に近く昏睡のような状態になるため、そのまま死んでしまうケースもあるのですが、これも寒暖差の激しい環境で生きるハムスターに備わった、優れた体の仕組みといえるでしょう。

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◆飼育下との違い

野生下と飼育下におかれているハムスターは、どのような違いがあるのでしょうか。

ペットの個体も基本的には野生の本能をそのまま受け継いでいるため、野生種と飼育下の個体で、1日の生活リズム、食べ物の好みなどは大きく変わりません。

ただ、私たちが慣れ親しんでいる個体は、ブリーダーの手元で繁殖させたペット用のハムスターなので、野生種とは外見や性格などに違いがあります。

野生種は捕食される立場にあるのでとても警戒心が強く、ペットの子のようなおっとりした一面は持ち合わせていません。

一方、流通しているハムスターは飼いやすい個体をかけ合わせて品種改良されてきたため、温和な性格を持ち人によく慣れている個体が多くなっています。

野生種を品種改良することで毛色のカラーバリエーションが増えたため、私たちは見た目の美しさを観賞して楽しめるようにもなりました。

なお、ハムスターの寿命は2年前後ですが、ペットのほうが長生きしやすい傾向があります。

自然界ではほかの生物に襲われたり飢えたりして短命になりがちですが、飼育されている個体は安全な環境で食べ物を与えられながら暮らし、命を落とすリスクがぐっと減るためです。


ペットとしてのハムスターの歴史

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私たちがよく知るハムスターは、もとはといえば野生種を捕獲して飼育繁殖させたものです。

人間が野生のハムスターと初めて遭遇したのは1700年代後半、本格的な飼育が始まったのは1930年代という記録が残っています。それまでハムスターは捕獲や飼育すら困難だったため「幻の動物」と呼ばれていました。

◆初めて飼育されるようになったのはゴールデンハムスター

初めて人間に発見されたのはゴールデンハムスターです。スコットランドの医師アレクサンダー・ラッセルが1797年に出版した「アレッポ博物誌」には、シリアでゴールデンハムスターを目撃した情報が記録されています。

1839年にはシリアのアレッポでゴールデンハムスターが発見され、1880年にはゴールデンハムスターの捕獲、その後の飼育と繁殖に初めて成功しました。しかし、ハムスターの血はいったん途絶えてしまいます。

1930年には再び、アレッポの近郊でゴールデンハムスターの母親と子供が捕獲されました。そしてパレスチナの動物学者アハロニ教授が実験室に持ち帰り、子孫の繁殖に成功します。

アハロニ教授が繁殖させたゴールデンハムスターはヨーロッパに持ち込まれ、繁殖に成功すると一般にも広く販売されるようになりました。

そして1938年にはアメリカ、1960年代には日本にも実験用の動物としてゴールデンハムスターが持ち込まれました。

◆実験用動物からペット用動物へ

繁殖に成功した当初は実験用動物として流通していましたが、小動物で飼いやすいこと、鳴き声がうるさくないことなどからペット用の動物として普及していきました。

また代表種はゴールデンハムスターでしたが、新しい品種も次々とペット化され、1980年代から犬や猫に続く人気のペットとして普及していったのです。

◆hamsterという名前について

私たちが使っているハムスター(hamster)という名前は世界に共通する通称で、日本語ではキヌゲネズミともいいます。

hamsterは、ゴールデンハムスターを意味するhamsterが語源です。hamsterは、古いドイツ語の「大食い」を意味するhamustraが語源ともいわれ、ドイツでゴールデンハムスターが流通し始めた時にその名前が生まれたと考えられています。


日本にも野生のハムスターはいるの?

日本にも野生のハムスターは生息しているのでしょうか。

野生のハムスターは日本にはいません。ハムスターが目撃されたことはあっても野生種は確認されていません。

ただ、同じキヌゲネズミ科に属する「ハタネズミ」は全国各地に存在しています。

ハタネズミはハムスターと見た目も似ていて、ネズミの割には丸顔でコロンとした体形をしています。しかし可愛い見た目とは裏腹に農作物を食い荒らすので、日本の代表的な害獣としても有名です。


ハムスターを絶対に逃がしてはいけない理由

ハムスター脱走

ペットのハムスターを自然に返しても、野生化して生きていくことはできるのでしょうか。

結論からいえば、ペットの個体が野生化して生きていくことは不可能です。ペットを自然に返す行為が間違っていますし、生きていく力もないためです。

◆ペットを自然に返すことは禁止されている

ペットの遺棄(捨てること)は動物愛護管理法で禁止されています。また、ハムスターはもともと国内にいなかった生物なので、すみつくと自然のバランスが崩れる可能性があるのです。

◆自然で生き抜く力が備わっていない

ペット用のハムスターは、自然に返しても捕食者に攻撃されるか環境に順応できず、死んでしまう可能性があります。

ペットショップで売っている個体は生まれた時から人間の飼育下で管理されていて、ペットとしての生活しか知りません。野生動物が持つ生活能力は残っていないので、自然に返して生きていけるとは限らないのです。

◆脱走と見失いに注意しよう

飼い主さんはハムスターを逃がさないように気をつけましょう。

ハムスターはすばしっこいので、ケージから脱走すると捕まえることが難しく、見失ってしまうことがあるかもしれません。しかし脱走すると小さなすき間から家の外に逃げてしまう可能性があります。

脱走や見失いには十分に注意してください。もし脱走した場合は、家の窓はドアを締め切り、エサを置くなどしてハムスターが出てくるのを静かに待ちましょう。

ハムスターの幸せのためにも、ペットとしての人生がまっとうできるよう適切な飼育管理を心がけてくださいね。


まとめ

海外には野生のハムスターも生息しています。日本に野生種が存在しないため、私たちは写真でしかその姿を見ることができませんが、つぶらな瞳と丸っこい体はペットと同じ愛らしさがあります。ペットのハムスターも先祖は野生でした。野生種の生態を知ると、その遺伝子を継ぐペットのハムスターの見方が、また少し変わったものになるのではないでしょうか。



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うさ北

うさ北

2019年までうさぎを3代飼育、現在はブルーサファイアハムスター(ジャンガリアン)を飼育中。栄養学、人や動物のコミュニケーションを中心にライティングや企画などのお仕事をしています。


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