1.ハムスターの毛が抜ける原因
1-1.ストレス
1-2.ダニ・細菌など不衛生な環境が原因
1-3.皮膚病が原因
1-4.アレルギーが原因
1-5.こすれた・毛が挟まったなどの接触が原因
1-6.老化が原因
1-7.全身疾患
2.皮膚病やアレルギーは動物病院の治療が必要
2-1.病気による脱毛が起きている時の対処法
2-2.アレルギーが原因になっている時の対処法
2-3.ダニ・細菌など不衛生な環境が原因のときの対処法
3.ハムスターの脱毛の対処法
3-1.ストレスが原因のときの対処法
3-2.こすれた・毛が挟まったなどの接触が原因のときの対処法
3-3.老化が原因のときの対処法
ハムスターの毛が抜ける原因
脱毛は、下痢、外傷、腫瘍などに並んでハムスターによく見られる疾患のひとつです。
健康なハムスターでも春と秋には毛が抜けやすくなりますが、これは夏毛と冬毛を入れ替えするための換毛なので問題ありません。
心配なのは、換毛期ではないのに毛が異常に抜ける、急に部分的なハゲができる、ほかの症状を伴って毛が抜けるケースです。ハムスターの脱毛にはどのような原因があるのでしょうか。
◆ストレス
ハムスターに多いのが、ストレスによる脱毛です。
ハムスターに限らず動物は、ストレスを感じると自分の体を舐めたりかいたりしてストレスを紛らわせようとします。イライラした時にかくとスッキリすることから、習慣になってしまうことが多いようです。
ハムスターの場合、ストレスを感じて後ろ足でしきりにかくことで、脇腹、耳の付け根など部分的に毛が抜けることがあります。
ハムスターによって毛が抜ける原因となるストレスは異なりますが、主に次のような原因が考えられます。
- 飼い主がかまい過ぎる
- 飼育環境が落ち着かない(騒音、明るさ、狭さなど)
- 運動不足
- 温度・湿度が適切ではない
- ケージ内が不衛生
- 疾患による苦痛がある、通院や投薬の最中である
- 神経質な性格
- 多頭飼いで縄張り争いがある
ハムスターは神経が過敏で些細なのでストレスを感じやすいのです。
◆ダニ・細菌など不衛生な環境が原因
ストレスの次に毛が抜ける原因で多いのが、ダニ、細菌、寄生虫などによって発症する「感染性皮膚炎」です。
ケージが汚れた状態、濡れてジメジメした状態が続くと、ダニや細菌などが繁殖しやすくなり、ハムスターの体に発生したダニや細菌が皮膚炎を起こします。
ハムスターに多いのは「ニキビダニ症」「皮膚真菌症」です。
ニキビダニ症は、毛穴に常在するニキビダニ(別名は毛包虫、アカラスなど)が過剰に繁殖して起こります。
ニキビダニは人の顔や動物の皮膚の毛穴にすむ、普段はおとなしい寄生虫です。ハムスターが健康な時は、ニキビダニがいても問題ありません。しかし、ハムスターの免疫力が低下するとニキビダニが過剰に繁殖し、ニキビダニの死骸や糞が大量に発生して皮膚に炎症を起こすようになります。
ニキビダニ症を発症すると、背中など広い範囲で脱毛が起こり、悪化すると強いかゆみやフケを伴います。ゴールデンハムスターに多いといわれます。
「皮膚真菌症」は、真菌というカビの一種が感染して起こる皮膚病の総称です。
代表的なものに「皮膚糸状菌症」があります。これは白癬菌(皮膚糸状菌)が皮膚に浅いところに感染して脱毛を起こす病気です。白癬菌に感染した部分だけ脱毛が起こり、カサカサして赤みを帯び、フケが出やすくなります。
白癬菌は水虫菌と同じものです。ほかの動物、水虫を持っている人間からうつされたり、逆にハムスターが飼い主さんにうつしたりします。ハムスターの場合は、多頭飼いしているハムスター同士の接触、ケージ内がジメジメして皮膚がふやけることで白癬菌の感染が起こりがちです。
◆皮膚病が原因
ハムスターの脱毛は「湿性皮膚炎」や「栄養性脱毛」などの皮膚病が原因になっていることもあります。
湿生皮膚炎は、皮膚の炎症を起こした部分から滲出液が出てジュクジュクする病気です。きっかけは虫刺され、外傷、アレルギーなどですが、細菌感染することで炎症が悪化し、化膿してただれや出血、脱毛を引き起こすようになります。
栄養性脱毛は、体に必要な栄養が十分にとれていないために代謝が低下して、被毛の成長が阻害されてしまう病気です。
被毛の維持に必要な栄養が不足するため、毛が弱くなって抜けやすくなったり新しい毛が生えてこなくなったりして、毛が薄くなります。赤みやかゆみなどは起こりません。
◆アレルギーが原因
ハムスターの中には、床材や特定の食べ物に対してアレルギー反応を起こす子もいます。アレルギーが原因で起こる皮膚病は「アレルギー性皮膚炎」と呼ばれ、皮膚の赤み、かゆみ、脱毛、目の周りの赤みなどを伴います。
ハムスターがアレルギーを起こす原因で特に多いのは、スギ、マツなど針葉樹を使った床材(ウッドチップ)です。床材によるアレルギー性皮膚炎を発症すると、床材に触れるお腹や胸に脱毛が起こりやすくなります。
床材によるアレルギーなら、床材を別の素材に変えることで症状は消えていきます。床材を変えても症状が消えない場合は食物アレルギーが考えられます。
◆こすれた・毛が挟まったなどの接触が原因
体が物にこすれる、毛が挟まるなど物理的な刺激で部分的な薄毛やハゲができることもあります。
回し車で走る、狭いすき間にもぐりこむ、など同じ場所で特定の行動を繰り返していると、同じ箇所がこすれるのでどうしても毛が抜けやすくなります。特に太っているハムスターは体の表面が物にすれやすく、毛が薄くなりやすいようです。
◆老化が原因
人間やほかの動物と同じで、ハムスターも高齢になると全体的に体の機能が低下します。
代謝の低下やホルモンバランスの乱れ、免疫力低下による皮膚炎が起こりやすくなり、結果として毛艶や毛並みが悪くなる、毛が抜けるといった被毛のトラブルが増えるようになります。
◆全身疾患
ハムスターは、皮膚以外の臓器が病気になることでホルモンの分泌異常や代謝低下が起こり、ほかの症状を伴って毛が抜けることもあります。
ハムスターの毛が抜ける疾患には内分泌系疾患、腫瘍などが挙げられます。「甲状腺機能低下症」「副腎皮質機能亢進症」などの内分泌疾患、「副腎腫瘍」や「皮膚型リンパ腫」など腫瘍が原因になることもあります。
脱毛のほかに全身の症状を伴うため、飼い主さんが異変を見逃すことはないでしょう。これらの病気は専門治療が必要になります。
皮膚病やアレルギーは動物病院の治療が必要
ハムスターの薄毛や脱毛に気付いたら、まずは動物病院に相談して原因を特定しましょう。そのうえで脱毛の原因に合わせた適切な対処をしていく必要があります。
目立たない薄毛や小さなハゲも放置していると、進行して治りにくくなる可能性があるので、異変に気付いたらハムスターを診察してくれる動物病院へ早めに相談しましょう。
受診する際は、脱毛が始まった時期、気になる症状(食欲不振、不機嫌、痒み、しきりにかく、など)、エサや普段使っている床材の種類など、診断のヒントになる情報を具体的に伝えましょう。
◆病気による脱毛が起きている時の対処法
病気が原因で毛が抜ける場合は、獣医師の指導のもとで病気の専門治療やケアをしていくことが必要になります。
皮膚病や脱毛を併発する内臓疾患には、ステロイド剤などの塗り薬や内服薬による治療が用いられます。また、感染性皮膚炎や湿生皮膚炎は抗生物質を、皮膚真菌症には抗真菌剤を継続して投与する必要もあります。
栄養性脱毛の場合は、食事の内容を見直し、たんぱく質やミネラルが不足しないように心がけることが大切です。獣医師の指導のもと、ペレットを中心とした栄養バランスの良い食事を与えましょう。
治療中は指示のとおりに薬を投与し、きちんと治し切ることが大切です。
◆アレルギーが原因になっている時の対処法
ウッドチップの床材が原因でハムスターがアレルギーを起こしている場合は、ペーパーチップに変えることで症状が出なくなります。
食物アレルギーの場合は、アレルギーの原因になる食べ物を与えないようにすることが再発の予防につながります。
ただし、人間の食物アレルギーと違ってどの食べ物が原因になっているのか特定することが難しいため、1種類ずつ食べ物を食べさせるのをやめて反応を確かめアレルギーの原因を探し出すしかありません。
ひまわりの種やスナック、野菜が原因になることもあるので、ペレット中心の食事にして経過を見ていくとよいでしょう。
◆ダニ・細菌など不衛生な環境が原因のときの対処法
ハムスターがダニや細菌による感染性皮膚炎にかかっている場合は、投薬による治療に合わせ、飼育環境を衛生的に保つことが必要となります。
ダニ、細菌、カビ(真菌など)はジメジメした環境で繁殖しやすいので、水や排泄物で濡れている部分はこまめに取り換え、定期的にケージ全体を水洗いして清潔に保ちます。
感染性皮膚炎を予防するためにも、日頃からケージやトイレをこまめに掃除して衛生的に保つことが大切です。
また、皮膚真菌症はほかのハムスターや動物、人間にも感染するので、相互にうつすことのないよう、発症しているペットはほかのペットと隔離し、飼い主さんはハムスターに触った後に手をしっかり洗うことも徹底しましょう。
ハムスターの脱毛の対処法
病気ではないのに毛が抜ける場合は、ハムスターの被毛にトラブルが起こらないよう飼育環境や管理の仕方を見直していきます。
◆ストレスが原因のときの対処法
はっきりした理由なく毛が抜ける場合は、ストレスが原因と考えられます。ハムスターが何に対してストレスを感じているのか探し出し、思い当たる点があれば取り除いてあげましょう。
チェックするポイント
- ケージが狭すぎないか
- 隠れる場所があるか、明るすぎないか
- ケージ内に汚れ、におい、濡れている場所がないか
- 飼育環境の温度・湿度は適切か
- テレビやドアの近くなど騒音が気になる場所ではないか
- ハムスターをかまい過ぎていないか、ケージをのぞき過ぎていないか
- 回し車やおもちゃで十分に遊べているか
- エサは十分に足りているか
◆こすれた・毛が挟まったなどの接触が原因のときの対処法
物理的な刺激で毛が抜ける場合は、ケージ内のレイアウトを見直してみます。体に合ったサイズの回し車に変える、体がこすれるおもちゃやトンネルは取り除く、狭いすき間に入り込めないようにする、などの調整をしてみましょう。
◆老化が原因のときの対処法
老化による脱毛は自然な現象なので、高齢まで生きたしるしと思って受け入れましょう。
高齢期の被毛をなるべくすこやかに保つためには、ハムスターが若いうちから正しい健康管理をしてあげることが大切です。
抜けてしまった毛は生えてくる?
ハムスターの毛がごっそり抜けて地肌が丸見えになっていると悲しくなりますね。毛は抜けてしまっても、また元通りに生えてくるのでしょうか。
毛の根元にある毛根が残っていれば、再び発毛して成長し、元通りの毛並みに戻ることが可能です。
ただし、毛根までダメージを受けていたり代謝やホルモンバランスに異常があったりすると、症状の改善に長く時間がかかるか、毛が生えてこない可能性も出てきます。
ハムスターの綺麗な毛並みを守るためにも、脱毛は軽症のうちに治療を始めることが大切です。
まとめ
脱毛や薄毛はハムスターに多いトラブルです。ハムスターの脱毛は、ストレスや何らかの病気を抱えていることを意味しているので、放置せずすぐに原因を見つけましょう。早めに対処するほど治りやすいので、脱毛や薄毛に気付いたらすぐ動物病院に相談して適切な対処をしてくださいね。
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