1.“ペットのうさぎ”と“野生のうさぎ”は何が違う?
1-1.ペットと野生のうさぎの違い①体重や体型、見た目の印象
1-2.ペットと野生のうさぎの違い②耳
1-3.ペットと野生のうさぎの違い③被毛の色
1-4.ペットと野生のうさぎの違い④暮らし方や習性
2.日本ならではの野生うさぎ
2-1.【北海道】エゾユキウサギ
2-2.【北海道】エゾナキウサギ
2-3.【東北】トウホクノウサギ
2-4.【九州】キュウシュウノウサギ
2-5.【奄美大島】アマミノクロウサギ
3.野生のうさぎに触るのはNG
3-1.1.法律で「野生動物の捕獲」が禁じられているから
3-2.2.赤ちゃんのノウサギには親がいるから
3-3.3.野兎病のリスクがある
“ペットのうさぎ”と“野生のうさぎ”は何が違う?
みなさんは「うさぎ」と聞くとどんな姿のうさぎを想像しますか?一口にうさぎと言っても耳がピンと立っている子から垂れている子、体の小さな子からがっしりとした体格になる子など、様々な特徴をもったうさぎがいます。
今ペットとして飼われているうさぎは、ウサギ目ウサギ科アナウサギ属に分類される「アナウサギ」を家畜化したもので、よく耳にする「ネザーランドドワーフ」や「ホーランドロップ」といった名前はアナウサギから品種改良をして生まれた種類になります。
つまり野生に生息しているうさぎは、人間が介入していない自然に生まれた種類のうさぎです。カイウサギの原種であるアナウサギはもちろんのこと、ノウサギやピグミーウサギなど沢山の種類が確認されています。
ここでは、同じアナウサギという括りの中でも、ペットのうさぎと野生のうさぎとではどのようなところに違いがあるのかをご紹介します。
◆ペットと野生のうさぎの違い①体重や体型、見た目の印象
【カイウサギ】
アナウサギを家畜化していく中で品種改良が行われた為、カイウサギと呼ばれるうさぎの中にもさまざまな種類がいます。
最も小さいカイウサギは、ネザーランド・ドワーフと言われるオランダ原産のうさぎです。理想体重が0.9キロほどとの小型サイズで、オランダをはじめ、イギリスやアメリカ、日本でも人気がある品種です。
反対に、最も大きいカイウサギはフレミッシュジャイアントといううさぎです。世界最大とも呼べるうさぎで、7~10キロ近くにもなるというから驚きです。うさぎというよりも、小型犬のようなサイズ感です。
カイウサギの見た目の特徴としては、丸まるとしたフォルムが印象的です。思わず触れたくなる“ぬいぐるみ”のような可愛らしい見た目です。
【野生のうさぎ】
実は野生のうさぎも、細かく種類を分けると数百グラム程度と小さい種類から、7キロほどまで成長する巨大な種類が存在しています。
見た目の特徴としては、野生のうさぎはとてもワイルドです。自然を颯爽と駆け回るのにふさわしく、筋肉質な体つきをしています。足も体に対して長い為、スマートで“カッコいい”という形容詞がぴったりな雰囲気です。
ペットのうさぎ・野生のうさぎを体重という観点で比べると、「小型で軽いうさぎもいれば、大型で重いうさぎもいる」といったところはあまり違いを感じないかもしれませんが、顔つきや耳、足などのそれぞれのパーツは違う点ばかりです。
◆ペットと野生のうさぎの違い②耳
【カイウサギ】
うさぎと言えば上方向に立っている長い耳のイメージが強いですが、カイウサギのなかには、「ホーランドロップイヤー」「イングリッシュ・ロップイヤー」という垂れた耳を持つ種類もいます。
【野生のうさぎ】
ノウサギに垂れ耳のうさぎはいません。野生のうさぎの耳の特徴としては、カイウサギに比べて耳が長く大きめです。
自然界で生きているうさぎは、肉食動物から獲物としてターゲットにされる動物です。自分の身を守るために、音で天敵の位置を把握できるよう、些細な音でも聞き取りやすく耳が大きく発達したのです。
ちなみに、うさぎの耳は音を聞く以外にも役割があります。耳内にある血管から体温の放熱させることで、汗をかかないうさぎの体温調整にも役立っているのです。
◆ペットと野生のうさぎの違い③被毛の色
【カイウサギ】
カイウサギの場合、季節によって被毛の色が変わることは基本的にありません。
色の変化はないものの、季節に応じてアンダーコートやオーバーコートの生え変わりはあります。この換毛が行われることによって、季節に合った体温調整をしています。
根本的な色は変わりませんが、毛が抜けたり生え変わったりすることで色の濃淡や模様の見え方に違いが感じられるケースもあるでしょう。
【野生のうさぎ】
野生のうさぎと言っても生息地によって異なりますが、冬になれば茶褐色から白い被毛に変わるケースがあります。
主に寒い地域に住むノウサギの場合、白い雪のなかでも体が目立たないようにするため、毛色が変化するように発達したと考えられています。
◆ペットと野生のうさぎの違い④暮らし方や習性
【カイウサギ】
ペットで飼われているうさぎは、「穴を掘った地下で集団生活をする」というスタイルを持つアナウサギを発展させたうさぎです。
おうちで飼育していても、床をホリホリしている場面をみることがあるでしょうし、ここに関しては野生のアナウサギと比べても大差はないでしょう。
【野生のうさぎ】
野生のアナウサギは、前述の通り穴を掘って地下を生活の拠点とするうさぎですが、ノウサギという括りの仲間は基本的に巣穴を作る習性がありません。あちこちと出かけまわり活動的です。
夜行性である為、日中は木陰や草むらなどで休んでいますが、早朝や夕方に活動します。行動範囲はかなり広いと言われています。
日本ならではの野生うさぎ
野生のウサギは、日本のあちこちに暮らしていて、地域によって特徴的な種類がいます。
どんなところに野生のうさぎがいるか見てみましょう。
◆【北海道】エゾユキウサギ
「エゾユキウサギ」は、体長が最大60cm、体重は1.6~3.9kgにもなり、日本の野生種のうさぎの中では最大です。尻尾が5~8cmと長いところも特徴的で、本州のノウサギと比較してみると、体格に対して耳が小さめです。
北海道の平野部や低山帯で暮らしていて、冬期間とそれ以外で被毛の色が変わります。暖かい季節は茶色の毛ですが、雪が降る季節には白く変化します。毛の色以外にも、寒い地域に特化したことというと、雪の上でも沈まないよう他のうさぎよりも面積の広い大きな足を持っています。足の裏には毛がみっしりと生えており、滑り止めの役割も担っています。
◆【北海道】エゾナキウサギ
「エゾナキウサギ」も北海道に分布しているうさぎです。主に大雪山系や日高山脈、北見山地などの標高の高い山の岩場で暮らしています。
体長は10~20cm程度、体重は60~150gほどとかなりのコンパクトサイズ。「短い足・小さな耳・丸い体」と、どちらかと言うとネズミを彷彿させる見た目です。
近年ではめっきりと数が激減し、準絶滅危惧種に指定されている野生のうさぎです。
また、“ナキ”ということからイメージできるかもしれませんが、エゾナキウサギの大きな特徴は「キーッ」「ピュー」などの高音で鳴くことです。
警戒心が強く、滅多に人前に姿を見せないと言われています。
◆【東北】トウホクノウサギ
東北地方や本州の日本海側に分布しているのが「トウホクノウサギ」と言われている野生のうさぎです。
山地や丘陵地などの草地に暮らし、ときには里山近辺にも姿を現すこともあります。体長は約50cm、体重は2~3kgほどです。
通常は褐色や灰色の被毛に覆われていますが、冬になると白く変化します。冬になっても、耳の先端部のみは黒い色のままというのも特徴のひとつです。
◆【九州】キュウシュウノウサギ
東北地方よりも南の太平洋側や九州、四国地方の雪の少ないエリアで暮らす野生のうさぎが「キュウシュウノウサギ」です。
山地、森林、草原などで葉っぱや樹皮を食べて生活しています。北国に住むウサギと違い、冬になっても毛色が変わりません。
体長は約45cmで、体重は2.4kgほどです。
◆【奄美大島】アマミノクロウサギ
鹿児島県の奄美大島、徳之島だけに生息しているのが「アマミノクロウサギ」と言われるアナウサギです。体長は40~50cm、体重1.3~2.7キロほどで、体全体は黒および暗い褐色の被毛に包まれています。
樹木や岩穴周辺で暮らすアナウサギですが、個体数は年々減り、現在では絶滅危惧種となっています。
道路建設のための森林伐採によりアマミノクロウサギの生息地が狭まっていることなども、激減してしまった要因の1つであるようです。
2003年には、奄美大島で2000~4800頭、徳之島では200頭という生息情報がありましたが、それから20年近くも経過した現在ではさらに数が少なくなっているのかもしれませんね。
野生のうさぎに触るのはNG
ペットのうさぎとは少し印象が異なりますが、野生とは言ってもうさぎはやはり可愛らしいですよね。都市部では難しいかもしれませんが、自然の多い地域に行けば出会えることもあるでしょう。
ばったり遭遇すると、「撫でたい」「飼いたい」と思う方もいるかもしれませんが、野生のうさぎに出会ったときのベストな選択は「触らない」「連れ帰らない」です。
その理由をいくつかまとめてみました。
◆1.法律で「野生動物の捕獲」が禁じられているから
野生動物の捕獲については、許可を受けた人が狩猟できる場合もありますが、一般人が健康な野生動物を勝手に保護する行為は禁じられています。
また、ケガをしているうさぎを発見した場合に心配になる人もいるかもしれませんが、このような場合でも勝手に保護するのは好ましくありません。
見かけるとかわいそうに感じますが、あくまで野生動物です。野生動物は他の生き物に食べられたり、けがや病気で命を落としていくことが自然ですので、そっとしてあげましょう。
ただし、人が原因でケガをしている場合などは、必要に応じて自治体が保護してくれる可能性あります。ケガをしている野生動物を見て気になる方は、1度お住まいの自治体に問い合わせて相談してみましょう。
◆2.赤ちゃんのノウサギには親がいるから
明らかに赤ちゃんのノウサギがひとりぼっち…。そのような様子を見ると「親がいないのはかわいそう」と保護したくなるかもしれません。しかし、パッと見て親が近くにいなくても、実は近い範囲にいると言われているのがノウサギの親です。
子供に危険が及ぶことを察知すると、敵の視線を自分に向けて子供を守ろうとしています。適度な距離感を保ちつつも、親は子供が独立するまでは見放すことはありません。つまり、ひとりぼっちの赤ちゃんノウサギを見かけても、完全孤独とは言い難いのです。
もし、ひとりになっている赤ちゃんを見かけてもそっと見守ってあげるだけにしましょう。
◆3.野兎病のリスクがあるから
野生のうさぎから、「野兎病」という感染症をもらってしまうケースがあります。
野兔病とは、マダニが持っている菌がノウサギを媒介して人にうつる病気です。通常人から人へと移ることはありません。
野兎病の菌の感染力はかなり強く、感染すると「熱が出る・寒気がする・吐く」といった症状があらわれます。
万が一、野生のうさぎを触ってしまった後に体に何らかの異変があれば、まずは病院で診察を受けてみましょう。
また、これらのことから、ノウサギを守るためにも、自分を守るためにも安易に触ろうと近づくのはやめておきましょう。
まとめ
野生で暮らすうさぎは、ペットのうさぎとは違う点が多いことがお分かりいただけたかと思います。
ただ、タイプは若干違っても、どちらもとても可愛らしい見た目をしています。連れて帰らないにしても「せめて撫でたい」という人もいるかもしれません。しかし、感染症のリスクがあるので、触ることは止めておいた方がいいでしょう。
うさぎは元々警戒心が強い動物ですので、高山や山里などを散策中に運良くノウサギを発見するのはとてもラッキーなことです。
その奇跡的な出会いを胸に、ノウサギを刺激せずに遠くから暖かく見守ってあげてくださいね。
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