1.ハムスターは骨折しやすい
1-1.骨折の種類
1-2.骨折が多い場所
6.ハムスターの骨折治療はどのように行う?
6-1.自然治癒
6-2.保存的治療
6-3.外科的手術
6-4.断脚
7.ハムスターが骨折しないためにできること
7-1.網目のないケージに変える
7-2.床材を多めに敷く
7-3.ケージに障害物になるものを置かない
7-4.ハムスターから目を離さない
7-5.骨折しにくい健康な体づくりを
ハムスターは骨折しやすい
ハムスターの様子がおかしいと思ったら骨折していた、ということは少なくありません。ハムスターの骨は細いので折れやすく、活発に動き回ることから、知らない間に骨折をしていることがあるのです。ケージの中にいても打ち所が悪ければ簡単に骨折してしまいます。
小動物であるハムスターの骨折と、体の大きな人間や犬猫の骨折は事情が少し異なります。ハムスターの骨折はどのような特徴があるのでしょうか。
◆骨折の種類
骨折とは、外部から骨に強い力がかかって折れたり壊れたりすることです。骨折は、状態によって次の3つに分けられます。
- 不全骨折:骨の一部にひびが入る状態
- 完全骨折:骨が完全に折れている状態
- 解放骨折:折れた骨が皮膚を破って飛び出ている状態
骨不全骨折は比較的軽症、解放骨折は重症といえます。どの骨折もハムスターに起こりうるもので、初めは軽症だったのが動き回ったために悪化してしまうケースもみられます。
◆骨折が多い場所
ハムスターが骨折しやすいのは四肢です。特に、後ろ足の薄下腿骨(すねの骨)や大腿骨(ももの骨)の骨折が多くなっています。
ハムスターの足は骨のクッションとなる脂肪が少なくて細いため、衝撃を受けた時に折れやすいのです。
ハムスターが骨折した?疑わしい時にみせる仕草
ハムスターは病気や怪我をしていても、それを隠して元気そうにふるまうため、すぐには骨折と分からない場合があります
このような症状から、骨折に気付くパターンが多いです。
- 歩き方がいつもと違う
- 片足を引きずっている
- 片足を浮かせている
- 触られるのを嫌がる
- 患部を自分で噛む
また、このような症状がある場合は明らかに骨折と判断できます。
- 足が大きく腫れている
- 足が違う方向を向いている、
- 出血して折れた骨が見えている
じっとしている、食欲がないという場合も骨折が原因になっている可能性があります。また、背骨を骨折して脊椎を損傷すると下半身が麻痺して足を引きずるようになります。
小さな異変にもすぐ気付けるよう、普段からハムスターの様子をこまめに観察しておくとよいでしょう。
ハムスターが骨折する原因は?
ハムスターの骨折の大半は「事故」が原因で起こっています。また、その多くが高い所からの落下によるものとなっています。
ハムスターは、高い所には登りたがりますが降りるのは苦手です。そのため、ケージ内が高い所に登れるレイアウトになっていると、誤って転落して怪我をすることがあります。特に網目のあるケージ、2階建てになっているケージは注意が必要です。
また、細いすき間にハムスターの指や足が引っかかり、足をひねって骨折するケースも多くみられます。ケージや遊具にある接点部分の細いすき間、布製品のほつれなどは足をとられやすいので注意が必要です。
そのほか、ケージの外に出ている時、人がうっかりハムスターを蹴ったり足を踏んだりしたために骨折させてしまうというトラブルもみられます。
ハムスターの骨折は自然治癒する?
骨が一度折れたらずっと折れたまま、というわけではありません。骨は、常に古い骨細胞を壊して新しい骨細胞に作り替え、丈夫な骨にリモデリング(再構築)をしています。骨は折れても自動的に修復され、自然にくっつくようになっているのです。
それならば、ハムスターが骨折しても自然治癒に任せておいて問題ないのでしょうか。
結論としてはハムスターの骨折をそのまま放っておいてはいけません。ハムスターの骨折が疑わしい場合は、受診して獣医師の指示に従いましょう。
たしかに、ひびが入った程度の軽い骨折ならば自然治癒で元通りになる可能性は高いです。しかし、骨は再生される段階で曲がってくっついてしまうことがあるため、骨折は治っても脚の形や向きが変わってしまうことがあるのです。
また、動きが鈍い、足を引きずる、などの症状があった場合、原因が骨折とは限りません。捻挫や打撲をしていることも考えられますし、外傷ではなくほかの病気が原因になっている可能性もあります。
獣医師でなければ、正確な病名は特定できませんし適切な治療もできません。家庭で自然治癒を選択した場合、ハムスターが苦痛を感じながら過ごすことになるかもしれません。異変がみられた場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
動物病院に行くまでにできる応急処置はある?
ハムスターの骨折に気付いたら、動物病院に行くまで安静に過ごせるよう、できるだけの応急処置をします。
人間が骨折した場合は患部を冷却する、副木を当てて固定する、といった応急処置をとりますが、ハムスターに同じ対応をとるのはNGです。ハムスターは体が小さすぎるので大きな負担がかかってしまいます。また、嫌がって暴れ、症状が悪化する危険性もあります。
ハムスターが骨折した場合の応急処置は「ハムスターが動き回らないよう、静かに過ごしてもらうこと」になります。
骨折したハムスターが動くと折れた骨が動いて重症化する可能性があるので、小さなプラケースにケージ内の床材を入れ、その中にハムスターを移します。
ハムスターはなるべく早く動物病院に連れて行き、後は獣医師に処置を任せましょう。
ハムスターの骨折治療はどのように行う?
動物病院では、触診、レントゲンによって骨折の状況を確認し、骨折した部位を元の状態に整復する治療を行います。
患部を固定して骨を整復する治療が基本となりますが、骨の折れ方や炎症の度合いによっては手術が必要になることもあります。
◆自然治癒
経過を観察して自然治癒を待ちます。痛みや炎症に対しては、鎮痛剤や抗生剤などの投薬治療を行います。
◆保存的治療
外科的手術を行わず、患部をギプスで固定して骨の整復を待ちます。ただし、ハムスターが自分でギプスをかじって取ってしまうことがあります。
◆外科的手術
金属製のピンを骨に入れて固定させます。骨が動かないので、確実に整復できるメリットがあります。
◆断脚
足に解放骨折や組織の壊死がみられる場合は、治療が難しくなるため脚の切断に踏み切ります。
ハムスターが骨折しないためにできること
ハムスターの怪我のほとんどは、飼育環境に危険な箇所があるために起きています。骨折を防ぐためにも、ハムスターが安全に過ごせる飼育環境を用意しましょう。
◆網目のないケージに変える
ハムスターの骨折は、プラスチック製のケージや水槽よりも金網のケージで多発しているといわれます。ケージに網目があると、ハムスターが足を挟んだり天井によじ登って落下したりして骨折する可能性が出てきます。
網目のあるケージは通気性が良いというメリットもあります。ただ、事故を防ぐためには網目のないケージに変えることが望ましいです。
◆床材を多めに敷く
ハムスターがケージ内の高い所から転落して体を強く打ち付けた場合、骨折をしたり脳や内臓にダメージを受けるような大怪我をする可能性があります。
万が一を考え、ケージの底には床材をたっぷりと敷いておきましょう。床材がクッションとなり、ハムスターが落下しても大きな事故に遭う可能性が低くなります。
また、布や綿はハムスターの爪や足に繊維が絡まって怪我を招くことがあるので注意が必要です。繊維がほつれやすい布はケージ内に入れないようにしましょう。
◆ケージに障害物になるものを置かない
ケージ内に遊具やロフトなどを設置して複雑なレイアウトを施すと、ハムスターがよじ登って落下したり、すき間に足を挟んだりして怪我をする確率が高くなります。
危険なのでケージ内には障害物になるようなものは置かず、シンプルなレイアウトを心がけましょう。
高い場所だけでなく、パーツの接続部分、細かいすき間が危険な状態になっていないか十分に確認する必要があります。
また、ハムスターも老化によって運動機能が衰えてきます。加齢に伴い、段差でつまずく、高い所に登ろうとして落ちる、といった怪我が起こりやすくなります。ハムスターがシニア期に入ったら、ケージ内のレイアウトを見直しましょう。
◆ハムスターから目を離さない
ハムスターのお世話をしている時、ケージの外に出している時は、ハムスターから目を離さないようにしましょう。
ハムスターのお世話をしている時には、ケージのドアにハムスターの足を挟んでしまう、ドアを開けた時にハムスターがケージの外へ転落する、といった事故が起こることもあります。
また、ハムスターをお部屋に出している時に、飼い主さんやご家族がハムスターに気付かず、踏んだり蹴ったりして骨折させるトラブルも実際に起きています。
ハムスターはすばしっこく体が小さいので、動き回っていると見失うことがあります。ハムスターのいるお宅では、人の不注意でハムスター怪我をさせないよう、十分に注意しましょう。
◆骨折しにくい健康な体づくりを
飼育環境を整えて怪我を防ぐことに加え、ハムスターが骨折しにくい健康な体づくりを心がけることも大切です。骨がもろいハムスター、肥満体形のハムスターは骨折しやすくなります。
栄養バランスの良い食事と適度な運動によって、骨を丈夫にしましょう。
特に体重の重いハムスターは、体に負担がかかりやすいので、骨折や捻挫などの怪我をしやすくなります。ハムスターは肥満におちいりやすいこともあり、飼い主さんが日頃から意識して体重をコントロールすることが大切です。体重をこまめにはかり、食べ過ぎに注意して体形を標準範囲に保ちましょう。
まとめ
ハムスターはちょっとしたことで骨折してしまう動物です。知らない間に骨折していることも少なくありません。しかし骨折はケージ内の危険な箇所で多発しており、飼い主さんの注意によって予防することが十分に可能です。犬猫より治療が難しいことからも、安全な環境で飼育すること、骨折したらすぐ受診して適切な治療を受けることが重要となります。痛々しいテーマですが、ハムスターに幸せな一生を過ごしてもらうためにも、予備知識をしっかり頭に入れておきたいですね。
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